9月の内政と外交

<ペルー政治情勢 2016年

【概要】
 内政
●政府と全国州知事による合同会議が行われた。
●国家警察機構改革の一環として警察高官39名が退官した。
●人民勢力会派から初の離脱者が出た。
●国会第三副議長が交代した。
●政府に対する立法権限委譲法案が国会で可決された。
 
 外交
●APEC中小企業大臣会合がリマで開催され,日本から井原巧経済産業大臣政務官が出席した。
●大野泰正国土交通大臣政務官がリマを訪問し,モリネリ運輸副大臣との会談等を行った。
●クチンスキー大統領が就任後初の外遊として中国を公式訪問した。
●クチンスキー大統領が第71回国連総会に出席するため,米国を訪問した。
●APEC食料安全保障大臣会合がピウラ州で開催され,日本からは磯崎陽輔農林水産副大臣が出席した。
 
【本文】
1 内政
(1)政府と州知事の合同会議
 1~2日,政府は,国と州政府による連携の向上を目的とした全国州知事との合同会議を開催した。同会議では,国と州政府の協力,行政手続きの簡素化,国から地方への財源交付,地方での投資及び公共事業,政府が国会に提出している立法権限委譲などが議題となった。次回の合同会議は11月8日に開催予定であり,現政権任期中は,2か月ごとに同様の会議が開催される予定。
 
(2)国家警察の機構改革
 2日,バソンブリオ内務大臣は,国家警察の機構改革の一環として39名の大佐を退官させた。バソンブリオ大臣は大臣就任前から,ペルー国家警察には近隣国と比べ,大佐等のハイレベルが多い点を構造上の問題として指摘しており,今回のような人員削減を公言していた。ウマラ政権中に退官が進まなかったことが今回の大幅な人員削減に繋がったとの理解が示されている一方,今後も貢献が期待できる人材まで退官させてしまったという批判的な声もある。
 
(3)ビルカトマ議員の人民勢力会派離脱
 16日,ケイコ・フジモリ党首を大統領候補に擁立した人民勢力党から,今年4月の国会議員選挙にリマ市及び在外選挙区のリスト2番手(全36候補者中)として出馬し,当選していたビルカトマ議員が,人民勢力会派を離脱する旨公表した。7月に発足した現国会で会派からの離脱者が出るのは,全会派を通じて今回が初めて。ビルカトマ議員は,国会での法案審議を巡って,同じ会派の議員を公然と批判したことがきっかけとなり,会派内での懲戒手続きに処されていた。ビルカトマ議員の会派離脱に伴い,国会監査委員長にはビルカトマ議員と同じ人民勢力会派のベセリル議員が就任した。
 
(4)国会第三副議長の交代
 28日,7月26日に選出されていた現国会執行部(任期:2016年7月26日~2017年7月26日)の第三副議長が,人民同盟会派のロドリゲス議員から同会派のレオン議員に交代した。今回の第三副議長交代は,ロドリゲス前第三副議長が8月末に国会に提出した法案に,新聞記事の無断転用が指摘されたことがきっかけとなった。
 
(5)政府に対する立法権限委譲法案の可決
 29日,国会本会議において,(1)経済の再活性化とフォーマル化,(2)治安対策,(3)汚職対策,(4)上下水道,(5)ペルー石油公社の再編に関する審議が行われ,全ての項目が可決された。投票は当初一法案として一括審議を行う予定であったが,野党第2党の「正義・生活・自由のための拡大戦線」の反対を受け,委譲の可否を投票した後は,各項目別に投票が行われた。経済の再活性化及び上下水道の分野については一部反対票があったものの,残りの項目については全会一致で可決された。権限の委譲期間は90日。
 
(6)クチンスキー大統領支持率
ア ダトゥム社:2日~6日実施,全国(対象1204名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 65%(61%)  不支持 17%(14%)
イ イプソス社:14~16日実施,全国(対象1245名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 63%(61%)  不支持 17%(16%)
ウ GfK社:17日~20日実施,全国(対象1249名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 62%(60%)  不支持 17%(14%)
 
2 外交
(1)APEC中小企業大臣会合
 9日,リマで第23回APEC中小企業大臣会合が開催され,日本からは井原巧経済産業大臣政務官が出席した。同会合では,各国の中小企業政策やケーススタディーの紹介が行われたほか,中小企業作業部会での取組や,今後4年間における戦略プランの策定が確認された。また,中小企業のグローバル・バリュー・チェーン参画の促進などの項目を含むAPEC中小企業大臣会合宣言文が採択された。
 
(2)大野国土交通大臣政務官の来訪
 12日,大野泰正国土交通大臣政務官がリマを訪問した。大野政務官は,モリネリ運輸副大臣とリマ首都圏都市交通事業(リマ・メトロ)をはじめとした,日本とペルーの協力関係をテーマにした会談等を行った。
 
(3)クチンスキー大統領の中国公式訪問
 12~16日,就任後初の外遊としてクチンスキー大統領は中国を公式訪問した。今次訪問では,習近平国家主席,李克強総理,張徳江全人代常務委員長との会談を行ったほか,Tian Guoli中国銀行会長,主要航空会社及び鉄道会社幹部等と対ペルー投資につき意見交換を行った。加えて,同訪問中には,クチンスキー大統領が,ペルーのアジア・インフラ投資銀行(AIIB)加盟申請の意向を表明したほか,ペルー産ブルーベリー及びエビの対中国輸出解禁予定,中国東方航空による中国・ペルー路線就航の可能性が明かされた。さらに,ペルーと中国が両国に文化センターを設置するための覚書,両国国営放送の協力に関する文書への署名が行われた。
 
(4)クチンスキー大統領の第71回国連総会出席
 16~22日,クチンスキー大統領が第71回国連総会に出席するため米国を訪問した。一般討論演説では,ベネズエラ国内問題解決への協力やペルーのOCED早期加盟への意欲を示したほか,ペルーの政策と「2030アジェンダ」の整合性をアピールした。国連総会のマージンでは,ケリー米国務長官,太平洋同盟各国首脳,テメル・ブラジル大統領,ドゥダ・ポーランド大統領との会談,フェリペ6世スペイン国王との立ち話等を行った。他方,クチンスキー大統領に同行したルナ・ペルー外相は,ムニョス・チリ外相と外相会談を行い,ペルー・チリ二国間政策協議の再開に向け調整中である旨公表した。
 
(5)クチンスキー大統領のコロンビア訪問
 25~26日,クチンスキー大統領は,コロンビア政府とFARCの和平最終合意署名式に出席するためコロンビアを訪問した。クチンスキー大統領は,和平最終合意の署名を高く評価する一方,同合意に同調しないFARCの残党の動きを牽制するため,ペルーとコロンビアとの国境地域における警備を強化する意向を示している。
 
(6)APEC食料安全保障大臣会合
 26~27日,北部ピウラ州で第4回APEC食料安全保障大臣会合が開催され,日本からは,磯崎陽輔農林水産副大臣が出席した。同会合では,地域フードマーケットの促進をテーマに議論が行われたほか,持続可能な食料システムを構築するための世界へのメッセージとして「APEC食料安全保障に関するピウラ宣言」が採択された。
 
(7)ペルーのIAEA理事国選出
 26~30日にウィーンで開催された第60回IAEA総会で,ペルーが2016~18年を任期とする理事国に選出された。今回の理事国入りを通じ,原子力の平和利用やイランや北朝鮮による核実験といったテーマに関する議論へのペルーの貢献を高めることが期待される。