ペルーの政治情勢 8月

ペルー政治情勢 2017年

【概要】

(内政)
●資金洗浄の疑いで勾留中のウマラ前大統領夫妻が行った勾留解除の訴えが裁判所で退けられ,同前大統領夫妻の釈放は認められなかった。
●2017-18年会期の国会常任委員会の委員長ポストが決定した。外交委員長には,人民勢力会派のサルガド議員が就任。
●ペルー検察庁が資金洗浄の疑いでケイコ・フジモリ人民勢力党(FP)党首に対する予備捜査を開始した。
●6月から続く教員組合(SUTEP)によるストライキに対し,政府が緊急令により給与アップ等の待遇改善を発表した。

(外交)
●ペルー政府の呼びかけによりリマにおいてベネズエラ情勢に関する米州地域の緊急外相会合が開催され,「リマ宣言」が採択された。
●ペルー政府がモレロ駐ペルー・ベネズエラ大使に対し国外退去命令を下した。
●ペルー国会の呼びかけによりリマにおいてベネズエラ情勢に関する米州地域及びスペインの国会議長・代表会合が開催され,共同宣言が発出された。
 
【本文】

1 内政
(1)勾留中のウマラ前大統領夫妻を巡る状況
4日,全国上訴審第2審は,資金洗浄の疑いで18か月勾留処分を受けているウマラ前大統領夫妻が提出した勾留解除を求める訴えを退けた。同前大統領夫妻の弁護士は,最高裁に今次判決の無効を求める訴えを起こす意向を示した。

(2)2017-18年会期国会常任委員会
14~16日,2017-18年会期の国会常任委員会の委員長ポストが決定した。外交委員長には,人民勢力会派のサルガド(Luz SALGADO)議員(リマ市選出,前国会議長)が就任。計24の委員長ポストの内訳は人民勢力会派15,変革のためのペルー国民会派3, 正義・生活・自由のための拡大戦線2, ペルーの進歩のための同盟2, アプラ会派1, 人民行動会派1。

(3)教員組合(SUTEP)によるストライキ
24日,政府は緊急令(Decreto de Urgencia No.011-2017)を公布し,教員最低給与の前倒し値上げ,各州政府の代表と組合各州代表との対話の場の設置等一連の教員の待遇改善策を発表した。これに対し,主にリマ市中心部で抗議活動を展開してきた教員組合(SUTEP)の一部グループは示威行動を継続する意思を示したが,24日以降各地で順次スト解除が始まり,8月末時点で約半数の学校で授業が再開された。また31日にはクチンスキー大統領がストライキ中の教員に対し,教室に戻り授業を再開するよう呼びかけた。

(4)ケイコ・フジモリ人民勢力党(FP)党首に対する捜査
29日,ペルー検察庁は,ブラジルの建設大手オデブレヒト(Odebrecht)社の元社長であるマルセロ・オデブレヒト(Marcelo Odebrecht)氏の携帯電話に「ケイコのために500増やす。そして自分が訪問すること。」(Aumentar Keiko para 500 e eu fazer visita)という文言のメモが見つかったとして,資金洗浄の疑いでケイコ・フジモリ人民勢力党(FP)党首に対する予備捜査を開始した。当地報道によれば,検察庁は,2011年大統領選挙キャンペーンにおいてオデブレヒト社から不正な資金を受け取った疑いでケイコ党首及び責任者に対する捜査を今後8か月間行う。FPも検察による捜査の対象となる。

(5)クチンスキー大統領支持率(特記ない限り括弧内は前月数値)
ア CPI社:1~5日実施,全国(対象1450名),誤差±2.6%,信頼度95.5%
支持:26.3%(35.2%) 不支持:69.5%(51.7%)
※前回実施月は5月
イ ダトゥム社:4~8日実施,全国(対象1205名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:34%(38%) 不支持:62%(56%)
ウ イプソス社:9~11日実施,全国(対象1298名)誤差±2.7%,信頼度95%
支持:29%(34%) 不支持:64%(58%)
エ GfK社:19~22日実施,全国(対象1228名)誤差±2.8%,信頼度95%
支持:19%(32%) 不支持:77%(58%)

2 外交

(1)ベネズエラ情勢に関する米州地域緊急外相会合
8日,ペルー政府の呼びかけにより,リマにてベネズエラ情勢に関する米州地域の緊急外相会合が開催され,ペルー,パラグアイ,コロンビア,ブラジル,パナマ,コスタリカ,グアテマラ,サンタルシア,メキシコ,チリ,アルゼンチン,ガイアナ,ホンジュラス,ジャマイカ,カナダ,グレナダ,ウルグアイの計17か国の外相・代表が出席した。17か国のうちサンタルシア,ガイアナ,ジャマイカ,グレナダ及びウルグアイを除く12か国により,制憲議会及び同議会による行為を認めない,ベネズエラに対し米州人権憲章を引き続き適用する,メルコスールによる「民主主義遵守に関するウシュアイア議定書」の適用を通じたベネズエラの資格停止の決定を支持する,地域や国際的な枠組や機関へのベネズエラのいかなる候補者も支持しない等の内容を含む「リマ宣言」が採択された。ルナ外相は会合後の記者会見で,「ベネズエラの民主主義回復をサポートするために,オープンな形で本件問題をフォローするための外相グループ(通称「リマ・グループ」)を形成することが合意された。」と述べた。
なお同日,カラカスでは,ベネズエラ政府の呼びかけによりALBA諸国による緊急会合が行われ,ベネズエラに対する連帯及び同国における制憲議会に対する支持が表明された。

(2)駐ペルー・ベネズエラ大使に対する国外退去命令
11日,ペルー政府は,モレロ駐ペルー・ベネズエラ大使に国外追放することを決定したと発表した。同日に行われたインタビューでクチンスキー大統領は「マドゥーロ氏は去るべきである。なぜなら,ベネズエラ議会を制憲議会なるもので置き換えるために虚偽の選挙を行ってクーデターを起こした独裁者だからである。」と発言した。またルナ外相は,マドゥーロ大統領が行った地域諸国との対話の呼びかけについて,敵対的な形で行われた提案であるとしてこれを拒否すると述べた。なお3日にはペルー国会がマドゥーロ政権の独裁体制を拒否すると共に,ペルー政府に対し駐ペルー・ベネズエラ大使を退去させるよう勧告する内容の動議を可決していた。

(3)ベネズエラ情勢に関するトランプ大統領発言に対するペルー政府の反応
12日,ペルー外務省は,トランプ米大統領が「ベネズエラに対し軍事的な選択肢も排除しない」旨発言した後に声明を発出し,ベネズエラ制憲議会による決定を認めないことを改めて表明したうえで,「国内,国外を問わず武力に訴えようとするあらゆる意図は,ベネズエラにおける民主的な国家運営を再建するという目標及び国連憲章の原則を揺るがすものである。ペルーは,いかなる脅迫や国連安全保障理事会の承認を得ることのない武力行使も拒否する。」との立場を明らかにした。

(4)ベネズエラ情勢に関する米州・スペイン国会議長・代表会合
18日,ペルー国会の呼びかけにより,ベネズエラ情勢に関する米州地域及びスペインの国会議長・代表会合がリマにおいて開催され,アルゼンチン,ブラジル,カナダ,チリ,コスタリカ,メキシコ,パナマ,スペイン及びペルーの9か国の代表が出席した。今次会合につきガラレタ(Luis Galarreta)・ペルー国会議長は,8日に行われたベネズエラ情勢に関する米州地域の緊急外相会合に基づくものである旨説明するとともに,ベネズエラ政府の行動及び同国における制憲議会の設置への対応に関し南米諸国の議会間で調整を行っていくことが重要であると述べた。会合後,ベネズエラ制憲議会及びその行為を認めない旨の内容を含む9か国共同宣言が発出された。