ペルー海外安全対策情報(2013年7月〜9月:邦人被害例等)
在ペルー日本国大使館
1 社会・治安情勢
テロ組織は依然として一部山間部地域において活動を継続しており,軍や国家警察との散発的な交戦により死傷者や逮捕者が出ている。2005年12月23日以降,テロ組織センデロ・ルミノソ(SL)が活動しているとされる場所を非常事態宣言地域(「VRAEM地域:アヤクチョ州ワンタ郡,ラ・マル郡,ワンカベリカ州タヤカハ郡,クスコ州ラ・コンベンシオン郡(キンビリ町,ピチャリ町,ビルカバンバ町),フニン州サティポ郡(アンダマルカ町,コマス町),コンセプシオン郡,ワンカヨ郡(サント・ドミンゴ・デ・アコバンバ町,パリアワンカ町)」,「クスコ州ラ・コンベンシオン郡エチャラテ町」,「ワリャガ川流域:ワヌコ州マラニョン郡チョロン町,同州ワマリエス郡モンソン町,同州レオンシオ・プラド郡,サン・マルティン州トカチェ郡,ウカヤリ州パドレ・アバド郡」)に指定し,軍・国家警察の治安部隊を派遣してSLの掃討作戦を展開している。また,過激なデモや抗議行動が各地で突発的に行われ,死傷者及び逮捕者が発生している。鉱山等労働者による賃金引き上げ要求,教師の待遇改善問題,労働環境改善要求,土地所有権問題,環境汚染問題などその内容も様々である。
2 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
国家警察犯罪捜査局誘拐捜査部の発表によれば,現在リマ市内で活動する外国人観光旅行者を狙った強盗グループの存在が把握されている。犯行手口としてはタクシー乗車中の旅行者等を狙った強盗が最も多く,外国人旅行者の玄関であるホルヘチャベス国際空港から市内へ通じる主要幹線道路において多発している。また,ペルー国内の一般犯罪は組織化,巧妙化が進んでおり注意を要する。
(1)殺人
殺人事件については,銃による強盗殺人事件が首都リマ市内及び地方都市において断続的に発生している。
ア 7月1日午前5時頃,リマ市ロス・オリボス区ウルバンバ通り及びアルフレド・メディオラ通りの交差点において,何者かが走行中の車から路上に,男性の遺体を投げ捨て逃走した。
イ 7月2日午後10時頃,リマ市ロス・オリボス区の自宅付近で,露天両替商が自動車強盗に遭い,犯人に抵抗したところ,発砲を受け死亡。
ウ 7月3日夜,カヤオ市エル・オリバル通りの中華レストランに男2人組が押し入り,客の男性2人に発砲し銃撃戦となった。その結果,客1名が死亡,銃撃戦に巻き込まれた女性客1名が負傷。
エ 7月6日午前9時30分頃,リマ市リマック区の運動場で,2人組の男が男性から携帯電話を盗もうとして襲い,抵抗されたため刃物で刺して殺害。
オ 7月6日未明,リマ市インデペンデンシア区のディスコの出入口から出た客を狙い,男5人組の武装グループが発砲して銃撃戦を起こし,警備員が銃撃戦に巻き込まれて死亡。
カ 7月15日,ワヌコ州で,元州法律顧問が,殺し屋と見られるグループから計7発の銃弾を受け,死亡。
キ 7月15日,フニン州で,チリ人元サッカー選手が帰宅途中に強盗に襲われ,殺害の上,自動車を盗まれた。
ク 9月1日夜,リマ市ラ・ビクトリア区サンタ・カタリナ地区ボテリン通りにおいて,34歳元米軍人が,男2人組の強盗に襲われ,抵抗したところ,発砲を受け,死亡。
ケ 9月19日,アプリマク州コタバンバス郡パンプタ集落において,何者かが鉱山従業員グループのリーダーの住宅に押し入り,同人が不在だったため,その妻と4歳の息子に発砲して殺害。
(2)強盗
強盗事件については,首都リマ市内及び地方都市において,日常的に発生している。
ア 7月7日未明,リマ州ワウラ郡の北パンアメリカンハイウェイにおいて,男6人の武装グループが,長距離バスを襲い,53人の乗客から金品を奪った。
イ 7月9日,リマ市サン・フアン・デ・ルリガンチョ区サンタ・ロサ通りで,男性がバイクに乗った2人組の強盗に抵抗し,5発の銃弾を受け負傷した。
ウ 7月10日午前11時15分頃,リマ市プエブロ・リブレ区ボリバル通り及びビクトル・パントハ通りの角に位置する国立銀行の入口付近に立っていた露天両替商が,武装した4人組の男に襲われ,現金を奪われた。
エ 7月10日午前3時頃,リマ市ラ・ビクトリア区カナダ通りにあるスロットマシン店に武装グループが押し入り,現金と客の金品を奪い,逃走した。
オ 7月13日午前11時30分頃,リマ市ミラフローレス区ベインティオチョ・デ・フリオ通りとレドゥクト通りの交差点において,バイクに乗った男2人組が拳銃で露天両替商を負傷させ,現金を奪い逃走した。
カ 7月18日午前7時30分頃,リマ市コマス区ウニベルシタリア通りにおいて銃撃戦の末,自動車強盗の3名の容疑者が逮捕された。
キ 7月22日午前5時頃,アヤクチョ州ラ・マル郡タンボ町アパチェタ地区のハイウェイにおいて,男8人の武装グループが15台の車両を停車させ,乗っていた者から金品を強奪した。
ク 7月24日午後4時30分頃,リマ市インデペンデンシア区ディエシセイス・デ・マルソ通りにおいて,男4人組の武装グループが,帰宅途中の会社社長を拳銃で負傷させ,直前に銀行から引き出した現金を強奪した。
ケ 7月30日午前10時30分頃,リマ市サン・フアン・デ・ルリガンチョ区にあるバス会社が,小銃で武装し覆面を被った14人に襲われ,現金の他,同施設を警備していた警察官3名の武器等を強奪した。
コ 8月1日,リマ市コマス区において,ドライバー工具で脅し女性乗客の金品を奪おうとした三輪タクシーの運転手が逮捕された。
サ 8月6日午後10時30分頃,リマ市サン・イシドロ区ドス・デ・マヨ通りの警備会社プラン・インベストに武装グループが侵入し,大量の武器弾薬を奪った。
シ 8月7日,リマ市リマ区ナシオネス・ウニダス通りにおいて,フランス人女性観光客が,ホルヘ・チャベス空港からの移動中に乗車していたタクシーの窓ガラスを割られ,旅行鞄を盗まれた。
ス 8月9日,リマ市サンティアゴ・デ・スルコ区ロス・ロサレス地区ドニャ・カタリナ通りのBBVA銀行支店から現金を引き出した女性が,その直後,バイクに乗車した犯人2人に襲われ,同現金を盗まれた。
セ 8月11日,リマ州ワウラ郡ベゲタ町メディオ・ムンド集落アンドレス・ヤレス通りにある大手パッションフルーツ専門店に客を装った男数人が侵入し,拳銃で従業員を脅して,金庫から現金10万ソルを強奪した。
ソ 8月28日,リマ市サン・ボルハ区アビアシオン通りにおいて,バイクを使用した男2人組が,露天両替商を負傷させ,現金12,500ソルを強奪した。
タ 9月2日,リマ州ワウラ郡ワチョ町北パンアメリカンハイウェイにおいて,男8人の武装グループがパピヨン楽団の移動バスを襲い,現金6万ソルを強奪した。
チ 9月4日午前9時30分頃,リマ市サン・マルティン・デ・ポレス区のクリア社ジェット・ペルー支店に覆面を被った男数人のグループが侵入し,現金35万ソルを盗み逃走した。
ツ 9月5日,リマ市ロス・オリボス区サラベリ通りの外貨両替専門店に,5人組の男が押し入り,店内で警備員を拘束した後,現金約10万ソルを奪って逃走した。
テ 9月11日午後1時30分頃,リマ市サンティアゴ・デ・スルコ区ベナビデス通りのレストラン駐車場で自動車を駐車していた女性1名を含む外貨両替商4人のグループが男2人組の強盗に襲われ,現金4万ドルを強奪された。
ト 9月26日午後7時30分頃,リマ市マグダレナ・デル・マル区ハビエル・プラド西通りとフアン・デ・アリアガ通りの交差点脇所在のスターバックスに複数人の武装グループが押し入り,拳銃で脅迫してレジの女性従業員から現金1,500ソルを強奪した。また,男性従業員2人を拳銃で殴り,負傷させ,店内にいた客からも現金,携帯電話,パソコン等を奪った。
(3)邦人被害事案
ア 7月1日,アヤクチョ州内においてリマからクスコに向かう長距離バスが8人組の強盗団にバスジャックされ,邦人男性3名が巻き込まれた。3名とも現金を含む貴重品を奪われ,内1名は旅券も奪われた。また,3名中1名は強盗団に暴行を加えられ軽傷を負った。
イ 7月28日,リマ市ミラフローレス区のレストランにて邦人男性が食事中,椅子の背もたれにかけていた鞄を盗まれた。鞄には,旅券及び現金が入っていた。
ウ 7月28日,リマ市サン・ミゲル区の動物園にて邦人男性が子どもを肩車している際に上着に入れていた財布をすられた。
エ 8月10日,リマ市ビヤ・エルサルバドル区にて,現地子ども劇団に強盗が入り,同劇団を取材中であったNHKの取材機器を強奪した。また,犯人は劇団内で威嚇発砲をした。
オ 8月25日,リマ市のホルヘ・チャベス空港内にて邦人男性が買い物中に鞄から数秒目を離した隙に盗まれた。鞄には,旅券,ノートパソコン,現金等が入っていた。
カ 9月26日,クスコ州のマチュピチュ村にて邦人男性がクスコ行きのペルーレイル(列車)に乗車しようとしたところ,駅がストライキの影響で混雑しており,その間にズボンのポケットに入れていた旅券をすられた。
(4)その他
ア 7月7日,PNPの発表によると,本年1月から7月4日まで,リマ市における飲酒運転による反則切符の件数は4,618件となったとのこと。これは,昨年同時期の3,294件よりも40.19%増えている。
イ 7月17日午後,リマ市チョリーヨス区エル・ソル通りにおいて,住宅統計調査の女性調査員が,三輪タクシーを使用した3人組の男に襲われ,性的暴行を受けた。
ウ 8月5日,運輸通信省(MTC)は,同省の職員と名乗り寄付金を求める電話詐欺が多発していることについて,注意喚起を行った。
エ 8月11日、国家警察犯罪捜査局ハイテク犯罪捜査課は,市内でPOS支払機によるクレジットカード等から個人情報等の窃取が多発傾向にある旨発表した。
オ 9月4日,プノ州プノ郡プノ町で住民約300人が,バイクを盗もうとした男の体に放火して集団暴行した。
カ 9月24日,国連の調査発表によると,ペルーは2012年のコカ葉の世界一の生産国になった。
キ 9月24日,リマにおいて,性的略取目的でインターネットを使って地方の若者を誘い出していた10から14の犯罪組織が解体された。
3 テロ・爆弾事件発生状況
一部の特定の山間部地域では,国軍や警察に対する襲撃が繰り返され,双方に死傷者が出ている。都市部においては武力による攻撃は発生していないが,プロパガンダ活動が継続的に行われており注意を要する。
(1)7月14日未明,国家警察麻薬取締局は,テロ及び麻薬の容疑により,ガルシア元政権時代のナンシー・オブレゴン元議員(GP党)を逮捕した。
(2)7月23日午後11時頃,アヤクチョ州ワンタ郡シビア町トゥトゥンバル地区にある企業キヌアのキャンプがテロリストに襲われた。襲ったのはSLの幹部アリピオの一派とみられる。
(3)8月11日午後10時頃,アヤクチョ州ワンタ郡リョチェグア地区で,SLと国家警察及び陸軍の合同パトロール隊との銃撃戦で,SL軍事部門のナンバー1とナンバー2が死亡した。
(4)9月17日未明,イカ州イカ郡イカ町ホセ・カルロス・マリアテギ通りにあるイカ州建設業労働者組合書記長の住宅前で,何者かがダイナマイトを爆発させ,その爆風により正面の玄関と窓に物的被害が出た。
(5)9月29日,PNPは,アヤクチョ州内のVRAEM地域において,SLの協力者として10人の容疑者を逮捕した。
4 誘拐・脅迫事件発生状況
(1)7月10日午後9時45分頃,リマ市サン・ボルハ区陸軍総司令部の周辺で,アルゼンチン人事業家が誘拐され,5時間の拘束後,解放された。身代金を支払った模様。
(2)7月27日,ワンカベリカ州タヤカハ郡において,SLによって拉致された児童グループが救出された。
(3)9月7日,リマ市チョリーヨス区カラマンドゥカ通りの住宅から,ペルー人の男に騙され売春を強要されていたパラグアイ人女性(19歳)が救出された。
(4)9月9日午後2時頃,リマ市カラバイヨ区ロス・ヒロサロレス地区において,自宅前の道路で遊んでいた6歳の女児を男3人が無理矢理車に乗せて連れ去った。
(5)9月12日午前11時頃,リマ市サン・ボルハ区ハビエル・プラド通りの文化省で,「地下施設に爆弾を仕掛けた」との匿名男からの電話があり,職員や来省者が外部へ避難する騒ぎとなった。
(6)9月17日,リマ市ヘスス・マリア区サラベリ通りの労働省で,建物の4階に爆弾が仕掛けてある旨の爆破予告の電話があり,職員や来省者が避難した。
5 日本企業の安全に関する諸問題
一般的に対日感情は良好である。
1. 首都リマ市を中心に国内の治安に関する情報収集を行い,必要に応じて現地警察当局等に対し警備強化を依頼し,在留邦人及び邦人旅行者の安全確保の強化を図った。
2.在留邦人に対して,スポット情報や危険情報等の渡航情報を適宜発信し,安全対策に関する注意喚起を行った。
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