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ペルー政治情勢 2008年
1月の内政と外交
1 概要
(1)ケイコ議員によるフジモリ派新党結成の発表が波紋を呼んだ。また、フジモリ元大統領の弟のサンティアゴ議員の無罪判決が確定した他、フジモリ政権下の閣僚に対し、政党登録のための署名偽造の件で有罪判決が出された。
(2)ペルー政府はチリとの領海境界線画定問題を国際司法裁判所に提訴した。また、ガルシア大統領はスペインを公式訪問し、経済関係に焦点を置きつつ二国関係強化に努めた。
(3)フジモリ元大統領に対する裁判は、週3日開廷され、被害者、軍関係者、警察関係者等検察、弁護側双方の証人による証言が行われた。
2 内政
(1)サンティアゴ・フジモリ議員の無罪判決
3日、リマ第五汚職法廷は、サンティアゴ・フジモリ議員に対する大統領専用機の違法な購入に関わったとする件において無罪を確定した。(注:昨年12月13日、リマ高検のカスタニェダ検事は、同議員の容疑を立証するに十分な証拠を得られなかったため、告訴を取り下げた。)
(2)国立病院医師のストライキ
9日、国立病院に勤務する医師のストライキが開始されたが、大きな影響はなかった。
(3)フジモリ派新党結成の発表
13日、夜のテレビ番組においてケイコ・フジモリ議員は、フジモリ派の新政党「フエルサ(Fuerza)2011」を設立する旨発表した。同設立の目的は、3党に分かれているフジモリ派を組織化し、フジモリ元大統領への支持を目に見える形で示すことである旨述べた。また、政党登録のため来年までに100万の署名収集を目標とし、2011年の大統領選挙を視野に入れていると述べた。
さらに、ケイコ議員は米国における修士課程を修了するため3ヶ月半ペルーを不在にする旨発表した。
他方、既存のフジモリ派党員は、突然の発表に驚きを隠さず、新党結成に納得がいかない旨表明した。
(4)フジモリ政権下の閣僚に対する有罪判決
23日、リマ高裁第六特別刑事法廷は、1998年の地方選挙及び2000年の大統領選挙に向けた政党の登録に必要な署名の偽造を巡る件で、フジモリ派のアブサロン・バスケス元農業大臣、レアテギ議員(注:現職)、ベリョタ元リマ市議会議員、モンテシノス元国家情報局(SIN)顧問に対し、有罪判決を言い渡した。
バスケス元農業大臣は、文書偽造、共謀罪等で禁錮7年、モンテシノス元国家情報局顧問に対しては禁錮8年、ベリョタ元リマ市議に対して禁錮6年、レアテギ議員は執行猶予付で禁錮4年の判決が出された。さらに、4名全員に対して合わせて80万ソル(約27万米ドル)の賠償金支払いが命じられた。
(5)ガルシア大統領の支持率
全国 今回 前回(07年12月)
支持 32% 33%
不支持 59% 62%
わからない・無回答 9% 5%
3 外交
(1)チリとの領海境界線画定問題
16日、ペルー政府はチリとの領海境界線画定問題につき、国際司法裁判所(ICJ)に提訴した。ペルー政府はICJに対し、国際的な慣習に基づき等距離線により領海境界を画定するよう要請した。また、チリの領土から200海里以上離れ、チリが公海と見なしている「三角地帯」におけるペルーの排他的権利を認めるよう要請した。
同日、ガルシア大統領は議会において、ICJへの提訴を公表した。
(2)ガルシア大統領のスペイン訪問
20〜22日、ガルシア大統領はサパテロ・スペイン首相の招待によりスペインを公式訪問した。36時間の滞在期間中、同大統領は、フアン・カルロス王との会談、同王主催の晩餐会への参加、サパテロ首相、マドリード市長との会談の他、企業家等と懇談し、二国間の政治・経済・社会・文化関係の強化に務めた。また、5月にペルーで開催される中南米EUサミットについても取り上げた。ガルシア大統領には外相、経済財政相、運輸通信相、エネルギー鉱山相等が同行した。
(3)ガルシア・ベラウンデ外相のコロンビア訪問
26〜28日にかけて、ガルシア・ベラウンデ外相は、南米諸国連合(UNASUR)関係者会合に参加するためコロンビアを訪問した。同外相は、フォックスレイ・チリ外相とのインフォーマルな会談にて、領海境界線画定問題について話し合った。
(4)グティエレス外務副大臣のロシア訪問
28〜29日、グティエレス外務副大臣は、モスクワで開催される第4回外交政策会合に参加するため、ロシアを訪問した。同副大統領は、ロシアのキスリアク外務副大臣、企業家、商工会議所の参加者等とも会談した。右会合で、キスリアク外務副大臣は、二国間関係の全ての分野における相互理解を深める絶交の機会である旨述べた。
グティエレス外務副大臣は、ペルーの安定した経済と持続的成長がロシアとの関係強化に寄与する旨主張した。
両副大臣は、南極、核エネルギー等の分野における協力関係を発展させる可能性等を検討した。
(5)ボリビアにおける自然災害への人道的援助
30日、ペルーはラ・ニーニャ現象による豪雨等の深刻な被害が出ているボリビアに対し、人道援助を行った。コトレル臨時外務副大臣とモスケイラ国家防災長副長官等は、長靴、トタン板、枕、毛布、プラスチック製水入れ、ウェットティッシュ、紙おむつ等8トンに及ぶ支援物資と共にコチャバンバの空港へ到着した。
4 フジモリ元大統領に対する裁判
(1)公判の様子
4日から再開された公判は、毎週月、水、金に行われた。7日はフジモリ元大統領の弁護を担当するナカサキ弁護士が体調不良で欠席して中断された。元軍人や警察関係者が証人として出廷した他、17日にはデル・カスティーリョ首相が証人として証言を行った。18日からは朝9時開始となった。月末から、殺害事件の実行部隊とされるコリーナ・グループの構成員が証人として出廷し始めた。
(2)第二の裁判で扱われる3案件の起訴
17日、ペラエス検事は、フジモリ元大統領の第二の裁判で扱われる「盗聴」、「マスコミ買収」及び「議会における野党議員買収」の汚職の案件における起訴状を提出した。同検事は、公金横領罪と自由に対する犯罪により、禁錮8年と300万ソル(約100万米ドル)の賠償金を求めた。(注:最高裁はチリから引渡を認められた6つの案件を、(1)人権侵害2件(現在公判中)、(2)汚職3件(上記)、(3)モンテシノス元国家情報局(SIN)顧問に対する1500万ドルの慰労金支払い(15millones)の3つのブロックに分けて裁判を行う旨決定している。)
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