ペルー政治情勢 2010年

1月の内政と外交

 

1 概要

(1)26日、クスコ州及びアプリマック州の豪雨被害を受け、非常事態宣言が発令された他、防災のために鉱山カノン及びロイヤルティーの使用を許可する緊急令が公布された。また、外国人観光客を数多く含む約2,000名の観光客がマチュピチュ村に足止めされ、ヘリコプターによる救出作業が行われた。
(2)外交面では、スタインバーグ米国国務副長官及びタルール・インド閣外外相がペルーを訪問した。他方、シモン前首相がボリビアのモラレス大統領就任式、デル・カスティーリョ元首相がロボ・ホンジュラス大統領就任式のために、各国を訪問した。
(3)フジモリ元大統領に対する「バリオス・アルトス事件及びラ・カントゥータ事件」並びに「陸軍諜報局(SIE)地下における誘拐事件」に関する第二審判決が発表され25年の禁錮刑が確定した。また、同元大統領が体調を崩して検査入院した。

2 内政
(1)大統領府前における年越しイベント
 客年12月31日夜より大統領府前のアルマス広場にて、新年を迎えるイベントが開催され、ガルシア大統領他、複数の閣僚が出席した。ガルシア大統領は、2010年は経済社会強化の年であるとして、広場に集まった何千名もの市民とともに新年を迎えた。

(2)バグア事件の写真公開
 6日、客年6月にアマソナス州バグアにおける先住民及び国家警察が衝突し、20名以上が死亡した事件の際に行方不明になっているバサン国家警察少佐の写真が、警察により公開された。同写真は、バサン少佐が上半身裸で流血している様子で先住民により身柄が拘束されているもので、国家警察は、写真に写っている先住民を捜索している他、バサン少佐の生死の確認に努めていると発表した。

(3)刑務所脱獄事件他
 客年12月31日、チャチャポヤス郡ワンカスの刑務所から収監者が刑務所職員を人質にとり脱獄を企て、結果2名の収監者が死亡した。2日、アバンカイ州の刑務所から麻薬密輸で収監されていた4名が脱獄した。
 他方、客年12月28日、国家刑務庁(INPE)のレオン長官が、クルシリャット元アメリカ・テレビジョンオーナーに対して特別待遇をしていたとされる疑惑のため辞任しており、後任にアロ氏が就任すると発表されたが、アロ氏は家族に対する暴行にて裁判が継続中ということが判明したため、INPE長官は空席の状態であった。
 8日、ルベン・ロドリゲス新INPE長官が就任した。なお、レオン元INPE長官は、生産大臣となったニカノル元投資庁長官の後任となり、投資促進庁の長官に就任した。
 9日、カストロ・カストロ刑務所のバスケス所長が自宅前にて殺害された。同所長の殺害の原因として、カストロ・カストロ刑務所内に収監されている麻薬密輸による収監者の優遇措置を廃止したこと、又は、2009年9月より権力濫用の告訴がされていたこと等が挙げられた。24日、右刑務所内に収監中のマメルト・フロリアンの妹等がバスケス所長殺人容疑で身柄を拘束された。

(4)議員の任期短縮の提案
 8日、アプラ党議員は議会議員の任期を現行の5年から2年半に短縮する憲法改正案を、3月からの本会議の会期中に議会に提出する旨発表した。

(5)ナディーン・エレディアPNP国際局長への調査期間延長
 16日、組織犯罪特化検察のカスタニェダ検事は、ウマラ・ペルー国民主義党(PNP)党首夫人であるナディーン・エレディアPNP国際局長に対する、2006年から3年間の同人の銀行口座に対する不明瞭な資金預け入れに関する調査を60日間延長する旨発表した。

(6)運輸関係者のストライキ
 18〜19日、燃料の値上げに反対し、選択消費税(ISC)の減額により影響を緩和する対策を求める運輸関係者がストライキを全国規模で行った。トルヒーヨ市では暴力行為も見られた他、19日には主要長距離バス会社が閉鎖され、多くの市民に影響が出た。

(7)クスコ州他の大雨
 クスコ州及びアプリマック州で豪雨被害が深刻になり、26日、政府は緊急令を発し、鉱山カノン及びロイヤルティーを被災対策及び防災のために使用することを許可した。同様に非常事態宣言を発出した。
また、マチュピチュ村へつながる線路が河川の増水により遮断されたため、3,500名近くの観光客が足止めされた。ヘリコプターにより救出作業が行われ、30日までには全員が救出された。

(8)SLによる休戦提案
 ワヌコ州アルト・ワリャガ地域のセンデロ・ルミノソ(SL)指導者「同志アルテミオ」と名乗る人物は、26日夜、地元の「アウカヤク友情ラジオ」を通じて、政府に対話を求め、休戦を提案した。また、アルテミオは、アプリマック・エネ河渓谷(VRAE)地域で活動するSL指導者「同志ホセ」を「反ゴンサロ思想の傭兵」であると非難した。
 これを受け、27日、ベラスケス・ケスケン首相は、右発言の信憑性を疑問視した他、司法裁判を受けない者との対話はないとした。また、レイ国防大臣も休戦はありえず、まずは裁判を受けるべきと述べた。

(9)トゥンベス州における非識字者撲滅の成果
 28日、ガルシア大統領はトゥンベス州にて、同州における非識字率が2.8%となり、世界基準により非識字率が4%以下の地域は、非識字者はいないと捉えるため、同州から非識字者を撲滅できたとして、ガルシア政権下で取り組んできた識字教育の成果を評価した。

(10)新型インフルエンザの感染者数及び死者数
 保健省疫学局は、11日時点で、国内の感染計9,284名、死亡例208名が確認できたと発表した。

(11)全国世論調査結果(アポヨ社)ガルシア大統領の支持率
(イ)全国
         今回  前回(09年12月)
支持       28% 29%
不支持      66% 64%
わからない・無回答 6%  7%
(ロ)地域別支持率(下段括弧内、前回〈09年12月〉)
 リマ    北部    中央部   南部    アマゾン
 35%   30%   17%   13%   21%
(36%) (33%) (15%) (22%) (13%)

3 外交
(1)ニカラグアに亡命中のピサンゴ元AIDESEP会長
 12日、ボルヘス駐ペルー・ニカラグア大使は、ニカラグアに政治亡命をしたピサンゴ元ペルーアマゾン地帯開発インターエスニック協会(AIDESEP)会長は、亡命先で政治活動を行わないとする亡命許可の条件に反しているとして、同元会長に対する亡命許可を疑問視したが、ペルー国内の先住民に配慮して、亡命取り消しは行わないとした。

(2)アリソン元住宅建設上下水道大臣に対する判決
 客年11月5日、米国マイアミの空港からペルーへ告知せずに現金5万ドル以上を持ち出そうとして身柄を拘束されたアリソン元住宅建設上下水道大臣及び同夫人は、12日、金銭の違法持ち出し及び虚偽において、有罪と認めた。28日、判決が下され、禁錮4日、罰金6,300ドルの支払いの有罪判決を受けた。

(3)スタインバーグ米国務副長官のペルー訪問
 14日、スタインバーグ米国国務副長官がペルーを訪問し、ガルシア大統領と会談し、同大統領は米国にとって評価されたパートナーであると述べた他、オバマ大統領はガルシア大統領都の会談に非常に関心があると述べた。また、両者は共通の関心である二国間関係および地球規模課題について協議し、コカ葉の代替産品を再検討すると述べた。

(4)ハイチ地震への支援
 13日、政府は12日に発生したハイチ地震に対して、600万ソル(約200万米ドル)を上限に、食料、医療等の寄付及び医療関係者派遣からなる人道支援を行うための緊急令を公布した。また、14日を追悼日と設定した。同日、ベラスケス・ケスケン首相、デ・コルドバ農業相及びビルチェス女性社会開発相は支援物資と共にハイチを訪問した。

(5)グルジアとの外交樹立
 14日、ペルーはグルジアと大使レベルの外交を樹立した。国連における両国代表団であるグティエレス大使及びロマイア・グルジア大使は、共同宣言に署名を行い、政治、経済及び文化分野における両国民及び政府の友情及び協力関係を促進させることで合意した。

(6)対チリ関係:ピニェラ次期チリ大統領の当選に対するペルー政府の反応
 17日、チリの大統領選挙の結果、ピニェラ氏が当選したことを受け、ガルシア大統領は、同氏に対する祝意の書簡を送付した。また、ベラスケス・ケスケン首相は、チリ国民の民主的決定を歓迎した他、ペルーとチリはより継続的な信頼関係に向かわねばならないとし、ペルーとチリの間には、ハーグの国際司法裁判所における司法上の対決及びスパイ行為という問題があるが、我々の国民が望む円滑な通商関係を進めるべきと述べた。
 18日、ガルシア・ベラウンデ外相は、領海境界線問題により、ペルーとチリが経済及び政治に関する相互の利益となるテーマへの取り組みが阻まれるべきではないとして、ピニェラ次期大統領の意見一致していることを強調した。

(7)ポポリシオ外務副大臣のFEALAC外相会合参加
 16〜17日、ポポリシオ外務副大臣は東京で開催された第4回FEALAC外相会合に出席した。同外務副大臣は、世界のダイナミックな2地域を結ぶ場であるFEALACは、国際市場へのアクセス拡大を提供すべきとステートメントで述べた。

(8)シモン前首相のボリビア訪問
 20〜22日、シモン前首相がモラレス・ボリビア大統領の二期目就任式に政府特使として出席するためボリビアを訪問した。

(9)インド閣外外相のペルー公式訪問
 20日より22日まで、タルール・インド閣外外相がペルーを訪問し、ガルシア・ベラウンデ外相と会談し、二国間関係を強化し、貿易、投資並びに二国間及び多国間協力における共通の関心事項について協議した。また、同外相は、ペレス通商観光相、ゴンサレス生産相及びサンチェス・エネルギー鉱山相と会談した。

(10)デル・カスティーリョ元首相のホンジュラス訪問
 27日、デル・カスティーリョ元首相は、ロボ・ホンジュラス大統領の就任式に出席するため、ホンジュラスを訪問した。

4 フジモリ元大統領に対する裁判
(1)「バリオス・アルトス事件及びラ・カントゥータ事件」並びに「陸軍諜報局(SIE)地下における誘拐事件」に関する第二審判決
 2日深夜、最高裁は、「バリオス・アルトス事件及びラ・カントゥータ事件」並びに「陸軍諜報局(SIE)地下における誘拐事件」に関する第二審判決をホームページに掲載し、第一審判決を支持し禁錮25年の刑を確定した。焦点となっていた「重誘拐罪」が「単純誘拐罪」になるか否かに関しては「重誘拐罪」のままとなった。

(2)フジモリ元大統領の体調
 14日夜7時頃、フジモリ元大統領は頭及び舌に不快感と痛みを感じ、国立がん研究所(INEN)に移送され、検査のため翌日まで入院した。
 19日又は20日に、同元大統領の口内にできた潰瘍に発癌性があるかを調べるために摘出手術を行う予定であったが、同元大統領の体調不良で血液の凝固に問題が見られため摘出手術日が延長された。27日、息子のケンジ氏は、舌にできた2つの腫瘍は快方に向かっており、取り急ぎ手術は行わないが、医師により再検査が勧告された旨発表した。

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