ペルー政治情勢 2009年 2月の内政と外交 1 概要
(1)内政面では、盗聴事件に関与しているとされるペトロテック社の売却を巡る議会の調査委員会の設置のため、特別議会が召集された。 (2)ガルシア大統領は、ペルー産品の購入促進キャンペーンや識字者への本の寄贈キャンペーンといった国内の零細企業支援策及び社会政策を積極的にアピールした。 (3)外交面では、議員のボリビア訪問に関するモラレス・ボリビア大統領の発言を巡り対ボリビア関係が話題になった。また、ガルシア・ベラウンデ外相及びアラオス通商観光大臣が訪日した。
2 内政 (1)国産品の消費促進キャンペーン開始 4日、ガルシア大統領は、国産品の消費を促進する「祖国を助けたいか?ペルー産品を買おう」とするキャンペーンを開始した。同キャンペーンは国産品の消費を通じて、雇用の促進、生産業の活性化を図り、国際金融危機に対応しようとするもの。
(2)特別議会の招集 6日、盗聴事件の発端となった石油採掘権を巡る汚職疑惑において、レオン元漁業大臣及びキンペル元ペルー・ペトロ理事が便宜を図ったとするディスカバリー・ペトロレウム社に入札で破れたライバル企業で、盗聴を依頼していたのではないかとされるペトロテック社が、コロンビア国営企業エコペトロル社及び韓国石油公社(KNOC)に売却された。 10日、超党派の議員10名が、ペトロテック社売却を調査する委員会を提案する決議案を提出した。同日、大統領府にてガルシア大統領との会談を終えたアプラ党議員を代表して、カバニーリャス議員は、盗聴問題に関与しているとされるペトロテック社が、外国企業に売却されたことに関する調査委員会の設置を議論するため、政府が議会に対して特別議会を召集する旨要請したことを発表した。 11日、同件の調査委員会の設置を論じる特別議会を召集する大統領令が公布され、12日、特別議会本会議が開催され、ペトロテック社売却に関する調査委員会設置が決定された。
(3)監査庁長官の選出問題 1月、スアレス監査庁長官の任命が議会で承認された直後、同氏の経歴詐称が判明し、空席になっていた監査庁長官候補として、9日までに12名が新たに挙げられた。
(4)インフラ整備のための土地所有合法化法(第29320号)の公布 8日、ビルチェス住宅建設上下水道大臣は、違法に占拠していた土地の所有権が不法占拠者に与えられる法が公布されると発表した。10日、ガルシア大統領は、基本的なインフラサービスの設置を容易にする、土地所有の合法化手続を定める法を公布した旨述べた。同法は、2006年3月に公布された「違法所有地合法化、土地アクセス、基本的サービス支給発展法」(第28687号)の第21条の修正及び必要に応じて経済財政省の介入を許可するもの。同法の公布に伴い、2004年までに占拠された土地の合法化が進められることとなった。
(5)「識字者へ本を」プログラム開始 12日、ガルシア大統領は、チャン教育大臣他、閣僚複数及びベラスケス・ケスケン議会議長等と共に「識字者へ本を」プログラムを開始した。同プログラムでは、2百万冊の本を収集することを目的としており、識字教育を受けた人々を対象に配布される予定。政府は2011年までに、非識字率を4%以下にすることを目的としている。
(6)雇用及び生産促進のための対処法発表 13日付官報に、雇用及び生産促進のための7つの対処法が発表された。右対処法は、経済財政省に対し、インフラ投資基金を設立するために開発金融公社に1億米ドルを充てる許可をする緊急令、零細企業を支援するため生産省に追加予算を許可する緊急令、債券発行を許可を与える大統領令、地方政府への追加予算を許可する大統領令、道路の維持・保全のための運輸通信省への追加予算を許可する大統領令、保健分野用にカリャオ州政府に対する追加予算を許可する大統領令、中央水力発電エネルギー計画への民間投資促進計画に公募を用いるとした投資促進庁の合意を承認する大統領決議からなる。
(7)シモン首相のランバイェケ州知事職の辞任 2008年10月から首相となったシモン・ランバイェケ州知事は、13日、州知事を辞職した。ガルシア大統領はシモン首相の行為を、責任ある行為と評した。 しかし、25日、ランバイェケ州議会は、シモン元州知事の辞任を拒否する決定を下した。(同州議会は、州知事のポストの空席を検討する委員会を設置した後、3月9日、正式に、ランバイェケ州知事のポストは空席であると認め、サルダリアガ副知事が知事に昇進することとなった。)
(8)2008年の経済成長率発表 16日、ペルー統計情報院(INEI)は、2008年の経済成長率が9.84%であったと発表した。キスペINEI院長は、このGDP成長率は過去14年で最高であり、10年連続で成長しており、全ての経済セクターが成長したと述べた。
(9)内務大臣の交代 19日、2008年10月から内務大臣を務めていたエルナニ内務大臣が辞任し、シモン首相の推薦でカバニーリャス議員(アプラ党)が後任として任命された。同日夜、カバニーリャス議員の宣誓式が行なわれた。
(10)偽造書類による収監者の脱走及び国家刑務庁(INPE)長官の辞任 18日、麻薬密輸を行っていた2名の収監者が、偽造した人身保護令の書類にてルリガンチョ刑務所から出ていたことが判明した。後に、2008年12月15日に、さらに2名の収監者も別の刑務所から同様の手口で脱獄していたことが判明した。 26日、カパロス国家刑務庁(INPE)長官は同件の責任を取って辞任を提出し、27日、バリェン氏が新たにINPE長官として就任した。
(11)全国世論調査結果:ガルシア大統領の支持率 (イ)全国 今回 前回(09年1月) 支持 32% 28% 不支持 60% 67% わからない・無回答 8% 5% (ロ)地域別支持率(下段括弧内、前回〈09年1月〉) リマ 北部 中央部 南部 アマゾン 39% 29% 24% 22% 17% (35%) (32%) (18%) (12%) (19%)
3 外交 (1)アルジェリア・エネルギー鉱山大臣のペルー公式訪問 1〜4日、ヘリル・アルジェリア・エネルギー大臣他がペルーを公式訪問した。へリル大臣は、2008年にOPEC総会議長を務めた。2日、大統領府にて、サンチェス・エネルギー大臣が同席するなか、ガルシア大統領と会談した。ヘリル・アルジェリア・エネルギー大臣は2004年以来2度目のペルー公式訪問であり、両国間の友好関係を評した他、カミセア・ガス計画への投資3億米ドル以上に増加すると発表した。
(2)スペインとの地方選挙権相互認証合意への署名 6日、ガルシア・ベラウンデ外相は、モラティノス・スペイン外相と共に地方選挙権相互認証協定に署名した。これにより、スペインに在住するペルー人は、現地の地方選挙に参加することが可能となった。また、両外相は、2008年10月にスペイン国王がペルーを訪問した際に署名が行われた両国間の戦略連携協定の肯定的な効果を強調した。
(3)ファルコニ・エクアドル外相のペルー訪問 12日、ファルコニ・エクアドル外相がペルーを訪問し、ガルシア大統領を表敬した。ガルシア・ベラウンデ外相、グティエレス外務副大臣、リバデネイラ在ペルー・エクアドル大使、ロハス駐エクアドル・ペルー大使、ポポリシオ外務省米州局長が同席した。 ガルシア・ベラウンデ外相は、ファルコニ・エクアドル外相が、エクアドル政府は、ペルーが懸念する両国の貿易関係について協議する意思を有すると表明した点を強調した。エクアドルはペルー産品のエクアドルへの輸出に制限を設けているが、ファルコニ外相は、世界経済危機への措置であると説明し、ペルー側の理解を求めるとともに、本問題の解決法を模索する意図があるとした。 他方、ファルコニ・エクアドル外相は、エクアドルはEUとのFTA交渉に関して(同交渉に反対する)ボリビア政府の立場を尊重するが、エクアドルとしては国の発展のために同交渉を進めると述べた。
(4)議員の活動を巡るモラレス・ボリビア大統領の発言 9日、議会の「米州ボリバル代替構想(ALBA)の家」調査委員を務める2名の議員がボリビアを訪問したことに関し、13日、ボリビア政府は、ロハス駐ボリビア・ペルー大使に説明を求めた。また、モラレス・ボリビア大統領は、これら議員がボリビアを訪問し、調査を行ったことを非難した他、在ペルーの米軍基地を調査するためボリビアの議員をペルーに送りこみたいと述べ、チョケワンカ外相等は、右議員の調査活動は内政干渉であると批判した。同日、ガルシア・ベラウンデ外相は、ボリビア政府スポークスマンの発言に重要性はないとした他、議員の活動を支持した。 15日、ガルシア大統領は、モラレス・ボリビア大統領のペルーにある米軍基地を調査すべきという発言を、「政治的な言葉のいたずら」であるとした他、行き過ぎた行動に発展しないよう頭を冷やすべきと述べた。 16日、メンチョーラ議員は、理由がないとして、ボリビア政府に対する謝罪の可能性を否定した他、ボリビア訪問は突如実施したのではなく、以前から予定されていたものと主張し、内政に関与していないと述べた。 18日、グティエレス外務副大臣は、「ALBAの家」に関する調査を目的とするペルーの議員団訪問を原因とするペルー・ボリビア間の問題は解決したと述べた。同副大臣は、ロハス駐ボリビア・ペルー大使が、17日にフェルナンデス・ボリビア外務副大臣とペルー議員団のボリビア訪問について意見交換を行った結果、問題は完全に解決したと説明した。
(5)米国議員団のペルー訪問 18日、ニタ・ロウイ下院議員他、所有権委員会に属する米国議員団がペルーを訪問し、大統領府にてガルシア大統領と会談した。
(6)麻生総理との電話会談 20日、ガルシア大統領は麻生総理と電話会談を行い、国際金融危機及び二国間の経済協力に関して意見交換が行われた。
(7)ガルシア・ベラウンデ外相の訪日 23〜27日、ガルシア・ベラウンデ外相及びアラオス通商観光大臣は日本を訪問した。24日、両大臣は、中曽根外相と会談を行い、EPAの交渉開始のための条件を整備する準備会合を3月に東京で行うことで合意した。両外相は高村元外相による日秘友好議員連盟の再開、マンゴー等ペルー農産品の日本への輸出、気候変動に関する協力、天野ルート等について話し合った。また、日本人ペルー移住110周年に関連し、両国の関係の重要性や、在日ペルー人を巡る問題についての意見交換が行われた。会合には二階経済産業大臣及びアラオス通商観光大臣が同席した。
(8)ルーラ・ブラジル大統領との電話会談及びコスタ・ブラジル通信大臣のペルー訪問 25日、ガルシア大統領はルーラ・ブラジル大統領と電話会談を行い、国際金融危機及び二国間の経済協力に関して意見交換を行い、ブラジルはペルーにエイズの治療薬38万錠を提供することを確認した。また、両国の大統領はデジタルテレビに関して意見交換した。 26日、コスタ・ブラジル通信大臣がペルーを訪問し、大統領府にてガルシア大統領と会談した。エスクラグノレ駐ペルー・ブラジル大使及びコルネホ運輸通信大臣が同席した会談の場で、ルーラ・ブラジル大統領との電話会談の内容が再確認された他、コルネホ運輸通信大臣のブラジル訪問等について話し合われた。コスタ・ブラジル通信大臣は、5億米ドルの投資と共にデジタルテレビ分野における科学的協力の用意がある旨発表し、ブラジル、ペルー、日本間の緊密な科学技術協力が行われる可能性及びブラジル国内における2年間の日本・ブラジル方式の試験放送の結果、素晴らしい成果が得られていると指摘した。
4 フジモリ元大統領に対する裁判 (1)フジモリ元大統領に対する人権問題に関する公判 最高裁特別刑事法廷によるフジモリ元大統領に対する「バリオス・アルトス事件及びラ・カントゥータ事件」並びに「陸軍諜報局(SIE)地下における誘拐事件」裁判の公判は、週に2回行われ、2月前半は民事賠償担当の弁護士による最終弁論が行われた。コリーナ・グループの行動は国家政策の一部であったと主張する他、フジモリ政権による人権侵害事件の隠蔽工作、被害者の悲惨な状況等を指摘して、フジモリ元大統領の責任を追及した。16日より弁護側のナカサキ弁護士の最終弁論が開始され、11のポイントに基づき弁論を進めると述べた。
(2)ケイコ・フジモリ議員に対する横領容疑裁判の取り止め確定 10日、最高裁第一臨時刑事法廷は、2002年に開始されたケイコ・フジモリ議員に対する横領容疑による刑事告発の裁判取止めの決定に対して出された不服申立に対し、証拠不十分のため刑事裁判を行わないとする決定を確定した。 本件は、同議員がファースト・レディを務めていた1998年に、エル・ニーニョ現象の被災者に対する米国からの寄付を横領したとされる容疑で、国家訴訟代理人は裁判を取り止めるとの予審の決定に意義を申し立てたが、リマ高裁第二刑事法廷が、同議員に対する予審の判断を支持した。しかし、国家訴訟代理人は右判断に対する不服申立を行い、今般、最高裁第一臨時刑事法廷にて同不服申立の審理が行われたもの。
(3)判決に関する規則 25日、最高裁は、フジモリ元大統領に対する「バリオス・アルトス事件及びラ・カントゥータ事件」並びに「陸軍諜報局(SIE)地下における誘拐事件」の判決に関する規則が定められた旨伝えるプレスリリースを発出した。 同規則では、判決が長時間を要することを想定し、主文は全文が読まれるが、それ以外は要約を読むことが決定された。また、判決全文は、最高裁のホームページに掲載されることも定められた。
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