ペルー政治情勢 2010年

2月の内政と外交

 

1 概要

(1)内政面では、再選を目指す地方政府の長が期選挙に別の政党から出る際には既存の政党を離党しなければならない期日が迫り、多くの現職区長が離党し、コウリ・カヤオ州知事と次期選挙と共に戦う意向を示した。
(2)外交面では、エクアドルで開催された南米諸国連合(UNASUR)の臨時首脳会議にガルシア大統領が出席した。また、ガルシア・ベラウンデ外相は、各種会合に出席するため、コロンビア及びメキシコを訪問した。
(3)フジモリ元大統領の次女サチの結婚式が、収容施設がある国家警察特別施設内の教会にて行われ、同元大統領は外出許可を得て参列した。

2 内政
(1)再選を目指す現役地方政府の長の離党
 5日までに、2010年の地方選挙に現在所属の政党とは異なる政党から立候補をする場合は、現在の政党から離党しなければならないため、複数の現職区長等の離党が相次いだ。エレシ・リマ市サン・ミゲル区長(PPC)、ディボス・リマ市ラ・モリーナ区長(PPC)、シエラ・リマ市スルキーリョ区長(SN)等は既存政党から離れ、リマ市長選に立候補予定のコウリ・カヤオ州知事の計画に合流した。
 選挙管理委員会は、2009年から約4千名近くが離党したと発表した。

(2)「実施者の核」による事業完成式
 5日、リマ市内の各所にて、2009年の大統領教書にて提案された「実施者の核」による事業の完成式が行われ、ガルシア大統領が出席した。「実施者の核」は、住民組織を通じて、地方政府等が公共支出を使うことが出来る仕組みであり、草の根型地方分権として、大統領が推進している。

(3)スエマツSEDAPAL解任
 10日、ギジェルモ・レオン・スエマツ上下水道公社(SEDAPAL)総裁兼住宅建設上下水道省副大臣が辞任した。同SEDAPAL総裁は、職務上の不正行為の責任を取る形で政府に辞表を提出した。その直後、検察は、同長官とその妹(アナ・イサベル・レオン女史)、及びホルヘ・バルテルメス・サンバルトロ市長を、サンバルトロ市におけるSEDAPALの下水処理施設建設計画を巡り不正行為が行われていたとする背任容疑で告発した。

(4)軍尊厳の日制定
 16日、1997年、日本大使公邸占拠事件救出作戦が実施された4月22日を「軍尊厳の日」と定める省令が公布された。1980年代及び90年代に、2万人近くの市民及び軍人の命を犠牲にしたテロに対する戦いの過程において、在ペルー日本大使公邸占拠事件の人質救出作戦は歴史的エピソードであることを受け、同日を「軍尊厳の日」とすること及び、毎年同日、本省令により定められる「軍尊厳のモニュメント」にて記念式典を開催することが定められた。また、リマ市チョリーリョス区軍事基地内にある日本公邸レプリカを「軍尊厳のモニュメント」と名付け、一般に向けて、歴史的資料及び関連物品を展示するために利用することが定められた。

(5)医師用保険の検討
 国立病院にて、間違いにより患者に重大な障害を残している件が相次いで発覚したことを受け、17日、ガルシア大統領は、早急な対応が必要であるとして、医師の怠慢により患者に重大な後遺症や被害を被った場合のための医師用保険を検討するために臨時議会を招集する旨議会に要請した。しかし、臨時議会は招集されず、3月1日からの通常会期にて扱われることとなった。

(6)新型インフルエンザのワクチン接種開始
 19日、59万5千回分のワクチンがペルーに到着した。26日より医療関係者を対象に新型インフルエンザのワクチン接種が開始され、大統領府にてワクチン接種キャンペーン開始イベントが行われ、ガルシア大統領、ウガルテ保健相他、複数の閣僚が出席した。
 ウガルテ保健相は、世界保健機関の勧告に従い、医療関係者、危険とされる慢性的基礎疾患を有する人々、妊娠中の女性及び先住民の約296万名を対象に3期にわたりワクチン接種を実施すると述べた。さらに、3月には残り3百万回以上分のワクチンが到着する予定である旨発表した。

(7)警察及び軍人に対する特別賞与
 20日、政府は現役の軍人及び警察官、また、職務上の理由で障害を持ち引退した家族に対して一度きりの1000ソルの特別賞与の支払いを決定した。また、軍人及び警察官の給与の段階的引き上げについて決定された他、給与改善のための検討委員会が設置されることが決定された。
(3月4日、ペルー警察全国連合(FENAPOL)は、特別賞与の対象に定年による退役者が含まれていないことを不服として、抗議運動を行った。)

(8)ガルシア大統領の支持率(アポヨ社)
(イ)全国
         今回  前回(1月)
支持       26% 28%
不支持      68% 66%
わからない・無回答 6%  6%
(ロ)地域別支持率(下段括弧内、前回〈1月〉)
 リマ    北部    中央部   南部    アマゾン
 30%   32%   16%   15%   15%
(35%) (30%) (17%) (13%) (21%)

3 外交
(1)韓国政府による戦闘機寄贈
 4日、韓国政府はペルーに対し、米国製の戦闘機A−37B機8台を寄贈した。6,600万米ドル相当の戦闘機8台は、アプリマック・エネ河渓谷(VRAE)地域における麻薬対策の他、ブラジル及びコロンビア国境地域におけるアマゾン地域保護のための監視及びペルー空軍の訓練等に利用される。
 リマ市スルコ区内のラス・パルマス空軍基地で行われた寄贈式には、Kim Joo Won韓国国防副大臣、レイ国防大臣の他、ジャンピエトリ第一副大統領、コントレラス三軍統合司令官等が出席した。

(2)アンデス共同体(CAN)外相会合
 5日、アンデス戦略アジェンダに関する協議のため、ベルムデス・コロンビア外相、パティーニョ・エクアドル外相、グスマン・ボリビア外務副大臣がペルーを訪問した。同会合にて、各国の外相等は、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイといったメルコスール加盟国が準加盟国としてCANの組織へ容易に参加できるようにすることを決定した他、CAN-メルコスール共同委員会の設置に合意した。
 また、EUとの関係において、次期ALC-UEの準備について取り上げられた。

(3)チリとのFTAに対する憲法裁判所の判決
 8日、憲法裁判所は、野党議員が提訴していたペルー・チリ自由貿易協定の違憲審査に関し、合憲であるとの判決を下した。
 ペルー国民主義党(PNP)を中心とする野党議員は、同FTAは議会外交委員会の採択に付す必要があったと主張していたが、政府側は、通商協定は議会が審議する対象ではないとしていた。憲法裁判所は、違憲性の根拠が無いと判断し、本判決は確定的であると発表した。

(4)南米諸国連合(UANSUR)臨時首脳会議の開催
 9日、キトにてUNASUR臨時首脳会議が開催され、ハイチへの支援が検討された。同会議は議長を務めるコレア・エクアドル大統領の呼びかけにより実施され、ガルシア大統領が参加した他、ウリベ・コロンビア大統領、ルゴ・パラグアイ大統領、プレバル・ハイチ大統領、ボリビア副大統領、アルゼンチン及びドミニカ共和国の外相、ブラジル顧問、ガイアナ、チリ及びウルグアイの代表、インスルサOAS事務局長、デ・ファルコ米州開発銀行代表が出席した。
 ガルシア大統領は、UNASUR諸国は、ハイチの上水道、住宅及び医療施設の復旧のために1億ドルの資金を集めることを提案し、ペルーは、学校及び上水道網復旧のために1,000万ドルを供与する用意があると述べた他、道路建設のための南米諸国の軍工兵部隊を創設を提案した。

(5)コロンビアとの「2+2」会合
 19日、ガルシア・ベラウンデ外相及びレイ国防相は、コロンビアにて開催された「2+2(外務省及び国防省)」会合に出席し、ベルムデス・コロンビア外相及びシルバ・コロンビア国防相と協議した。両外相及び国防相は、国境地域における麻薬密売、テロ及び組織犯罪対策などを共同に取り組んでいくこと等を確認する共同宣言に署名した。
 ガルシア・ベラウンデ外相及びレイ国防相は、ウリベ大統領とも会談した。

(6)ラテンアメリカ・カリブ会合
 22日、カンクンにて開催されている「ラテンアメリカ及びカリブ統一サミット」と名付けられたリオ・グループ会合にガルシア・ベラウンデ外相が出席した。同外相は、ラテンアメリカ及びカリブ統合のためには、明確な目標を掲げ、共通の価値を認めた上で、アンデス共同体や南米南部共同市場などによる異なる統合への過程を活用し、さらに大規模な平和と安全のためのフォーラムを目指すことが重要であると述べた。また、軍備に無用な支出をすることの無意味さ及び多様性への尊重を主張した。

(7)チリ大地震
 ガルシア大統領は、2月27日未明に発生した大地震に関し、チリ国民及びチリ政府へ連帯の意を示した他、ペルーはチリが復興のために必要とすることに対する用意があると述べた。また、チリ政府及びチリ国民との連帯のため、3月1日を追悼の日と定める大統領令を公布した他、バチェレ・チリ大統領に対し、チリ国民及びチリ政府に対する弔意及び兄弟としての連帯を表す書簡を送付した。
 なお、3月2日には、救援物資と共に、ガルシア大統領自らがチリを訪問した。

4 フジモリ元大統領関連:一時外出許可
(1)24日、サラサル内務大臣は、27日にリマ市アテ区内の国家警察特殊部隊の施設内にある教会にて、フジモリ元大統領の次女サチの結婚式を挙げることを許可した。
(2)エチャイス検事総長は、フジモリ元大統領に認められた次女サチの結婚式への出席許可の理由が人道的であるという点を疑問視し、批判的な意見を述べた。他方、ガルシア大統領は、挙式許可に関し、フジモリ派との政治的同盟でもなければ、特別扱いでもないと述べ、右許可は、現行の法制度及び政府の基準に則ったものであることを強調した。
(3)27日、国家警察特殊部隊の施設内にて、フジモリ元大統領の次女サチの結婚式が行われ、同元大統領は1時間半にわたり収監先の施設から外出して内輪で行われた式に出席した。

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