ペルー政治情勢 2012年

2月の内政と外交

 

1 概要

(1)12日,サン・マルティン州のワヤガ川上流地域にて,同地域のセンデロ・ルミノソ指導者である「同志アルテミオ」の身柄が拘束された。身柄はリマに移され,負傷していたため警察病院に数日入院した後,海軍基地内の収容所に移された。
(2)29日,第5回ペルー・エクアドル合同閣議が開催され,国境地域の開発等に係る共同宣言が発表された。

2 内政

(1)「全国テロ対策の日」を巡る議論
 3日,トレド元大統領は記者会見を開き,オモンテ議員(議員連盟スポークスマン,ペルー・ポシブレ党)他,議員連盟の議員が4月3日を「全国テロ対策の日」として定める法案を提出した旨明らかにした。また,1983年4月3日に,センデロ・ルミノソがアヤクチョ州ルカナマルカ集落に侵入し,18名の子供を含む69名を殺害したことから,同日を選んだ旨述べた。
 フローレス・アラオス元国防相等は,2007年に4月22日(注:日本公邸占拠事件の解放作戦の日)がテロと戦った者への敬意を示す日と定められているため,別の日を同様の目的で定めることは重複する旨指摘した。
 6日,ケンジ・フジモリ議員はフジモリ派所属議員と共に記者会見を開き,SLの指導者であるアビマエル・グスマン逮捕の日である9月12日を「全国テロ対策の日」とする法案を提示する旨述べた。

(2)センデロ・ルミノソ指導者「アルテミオ」の逮捕
 12日,サン・マルティン州トカチェ郡にてセンデロ・ルミノソ(SL)指導者の一人である「同志アルテミオ」(本名:エレウテリオ・フロレス・アラ,50歳)の身柄が拘束された。身柄はリマに移され,警察病院にて治療を受けた後,海軍基地内の施設に移送された。
 15日,サラサル国家警察長官は,テレビの報道番組にて,今回の作戦は,国家警察と陸軍の合同でなされたものであるが,作戦時の警察と軍の連携は良好だった旨述べた他,SLに潜入し,協力者工作を行い,逮捕に大きく貢献した2名の警察官については,現在,国家警察において厳重に保護している旨述べた。また,この6ヶ月間で,ワリャガ地域でアルテミオの部下である幹部メンバー24名を逮捕しており,さらにアルテミオを逮捕したとはいえ,ワリャガ地域からSLが完全に消滅したわけではなく,今後も警戒しつつ状況を見守る必要があることを指摘した。

(3)「実施者(gestores)」を巡る騒動
 アブガタス国会議長は,「実施者(gestores)」を通じて,国民の要望を聴取し,政策に反映させるための,開発のための実施者プログラムを打ち出したが,同プログラムにオブレゴン前議員,スミレ前議員,ルイス前議員等,与党関係者を採用しようとしたことから,野党から批判が起こり,アブガタス国会議長に対する罷免決議の可能性も生じた。27日,国会が実施者プログラムを中断したことから,罷免決議は提出されずに終わった。

(4)VRAE地域にある軍基地への攻撃
 16日,アプリマク・エネ川渓谷(VRAE)地域のアヤクチョ州ワンタにおいて,センデロ・ルミノソ(SL)によるとみられる軍事基地に対する襲撃事件が発生し,死傷者が発生した。軍関係者は,本件はVRAE地域のSLを率いる「同志ホセ」ことビクトル・キスペ・パロミノによって引き起こされた攻撃であり,政府によるアルテミオの拘束に対して挑戦する立場を明らかにしたものである旨述べた。

(5)ウマラ大統領の支持率(括弧内前回1月)
ア ダトゥム社:3〜7日実施,全国(対象:1,211名)
支持   58%(50%) 不支持  33%(39%)
イ アポヨ社:22〜24日実施,全国(対象:1,204名)
支持  59%(54%)  不支持  29%(36%)


3 外交

(1)ジェイコブソン米国務次官補代行(西半球局担当)のペルー訪問
 7〜8日,ジェイコブソン米国務次官補代行(西半球局担当)が,ペルーを訪問し,ロンカリオロ外相及びバルデス首相と会談した。同国務次官補代行は,米州人権委員会の規則変更を提案したペルーのリーダーシップを評価し,ペルーが,米州人権制度の再検討を要請したことを歓迎する旨述べた。また,米国は今後5年間,経済的・技術的支援による麻薬対策支援を継続し,共同して対策に取り組む旨述べた。

(2)在京ペルー総領事の任命
 12日付官報は,フリオ・アントニオ・カルデナス・ベラルデ(Julio Antonio CARDENAS Velarde)公使を在京ペルー総領事と任命する省令を公告した(RS No.032-2012-RE)。

(3)オタロラ国防相のブラジル訪問
 14日,オタロラ国防相はブラジルを訪問し,アモリン・ブラジル国防相との会談で,2つの国防産業における二国間協力協定に署名した。同国防相は,ルセーフ・ブラジル大統領とも会談した。後に,サン・パウロにて,EMBRAER社,ブラジル航空宇宙科学技術省,リオ・デ・ジャネイロではEMGEPRON社を視察した。
 アモリン・ブラジル国防相は,ペルーがブラジルのスーパーツカノ(注:軽攻撃機)10機の購入を検討している旨明らかにした。

(4)ヴェスターヴェレ・ドイツ外相のペルー訪問
 16日,ヴェスターヴェレ・ドイツ外相はペルーを訪問し,ウマラ大統領及びロンカリオロ外相等と会談し,貿易,ドイツからペルーへの投資,科学技術協力等につき協議した。同ドイツ外相は,SLの「アルテミオ」の逮捕を,人権を尊重した中でのテロ・麻薬対策の例として評価した。また,学術交流振興のための協力協定に署名がされた。

(5)第5回ペルー・エクアドル合同閣議
 29日,チクラヨ市にて第5回ペルー・エクアドル合同閣議が開催され,両国大統領は,二ヶ国の深化した統合及び国民のための共通の目的模索を促進する同閣議の重要性を評価した。
 両大統領は,二ヶ国の協力及び統合強化を強調し,社会的包摂と持続可能な開発を基にした今後5年間のアジェンダを定めた共同宣言に署名した。また,二国間計画の期限を10年間延長することで合意した。5年間のアジェンダには,二国間の保健サービス網強化,衛生状況の改善及びリスク予防の他,社会保障の相互受給,障害者対応の科学技術協力,プヤンゴ−トゥンベス計画,エネルギー統合,幹線道路整備等が含まれる。

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