ペルー政治情勢 2009年 3月の内政と外交 1 概要
(1)議会の調査委員会は10ヶ月におよぶ調査の結果、「ALBAの家」を閉鎖するよう勧告する報告書を提出した。また、議会に監査庁長官審査委員会が設置され、監査庁長官の新たな候補者の審査が行われた。 (2)外交面では、ペルー・ブラジル及びペルー・コロンビアの「2+2」会合が開催された他、南米アラブ諸国外相会議がエジプトで、同首脳会議がカタールで開催され、ガルシア・ベラウンデ外相及びベラスケス・ケスケン議長がそれぞれ出席した。 (3)チリとの領海境界線画定問題に関し、ペルー政府は、ペルー側の主張をまとめた申述書を国際司法裁判所に提出した。
2 内政 (1)新たな監査庁長官候補の選出 1日、ガルシア大統領は、経済学者のベテタ氏を監査庁長官として議会に推薦した。同氏はチリの公共政策及び社会政策の実施等に関与してきた経験を有する。19日、ベテタ氏自身が議会の監査庁長官審査委員会に出席し、自らの経歴の説明の他、監査庁長官としての計画を発表した後、議員との質疑応答に対応した。28日、議会の審査委員会は、ベテタ候補を拒否する報告書を提出した。(注:4月3日、議会の通常委員会は、ベテタ氏の監査庁長官としての任命を拒否した右調査委員会の報告書に関する投票を行い、賛成16票、反対8票で報告書の支持が決定し、同氏を監査庁長官として任命しないことが決定された。)
(2)「ALBAの家」調査委員会の報告書 2日、ペルー議会の「ALBAの家(Casas del ALBA)」調査委員会が、調査結果の報告書を提出し、ペルー国内の「ALBAの家」を閉鎖すべきと主張した。同調査委員会は、10ヶ月にわたり、「ALBAの家」がペルー国内において如何に構築され、行動したかの調査を行った結果、「ALBAの家」はベネズエラ及びボリビアによるペルーへの内政干渉の道具となっていると判断し、閉鎖すべきとの判断を下した。メンチョーラ委員長(国民連帯党:SN)は、特にロレト州、サン・マルティン州、プーノ州及びクスコ州で「ALBAの家」関係者が社会騒動をけしかけている他、抗議行動の前にボリビア人の存在が明らかになったケースがある旨も述べた。
(3)ガルシア大統領による演説 10日、ガルシア大統領はラ・ナシオン博物館にて閣僚、議員、地方政府長、民間企業、零細業者、外交団等を招集し、2009−2010年の成長と雇用への約束と題された演説を行った。右演説にて、ガルシア大統領はこれまでにも複数回明言してきているように、ペルーは今般の世界的な金融危機の影響を受けずに経済成長をすることが可能であると述べ、企業家には危機を恐れることなく投資を呼びかけ、国民に成長に向けて協力するよう求めた。
(4)ウマラPNP党首とガルシア・ベラウンデ外相の会談 17日、ウマラPNP党首は、オトロラ議員、エスピノサ議員、オルドニェス議員及びタピアPNPスポークスマンと共にガルシア・ベラウンデ外相と会談を行った。ウマラ党首は、チリとの領海境界線画定問題に関してペルー政府の活動を評したが、チリとのFTAに関しては反対する態度を維持した。
(5)アマゾン地域先住民との対話の機会を設ける大統領令 23日、ガルシア大統領は国家とアマゾン地域先住民間の継続的対話の機会を設ける大統領令に署名を行った。ガルシア大統領は、右大統領令により、先住民と国家が定期的に協議を行い、先住民が法により定められた他の国民と同様の権利及び機会を享受することが可能になると評した。
(6)世論調査(アポヨ社):ガルシア大統領の支持率 (イ)全国 今回 前回(2月) 支持 34% 32% 不支持 60% 60% わからない・無回答 6% 8% (ロ)地域別支持率(下段括弧内、前回〈2月〉) リマ 北部 中央部 南部 アマゾン 40% 34% 30% 16% 29% (39%) (29%) (24%) (22%) (17%) (ハ)支持理由 前政権の過ちを繰り返していない 43% 海外におけるペルーのイメージ改善 30% 公共事業 29% (ニ)不支持理由 物価の上昇 45% 公約の不履行 36% 雇用不足 36%
3 外交 (1)対チリ関係 1日、2月22日に発出された大統領決議により、チリとの経済補完協定(ACE)拡大版が発効した。 2日、野党派議員は、チリとのACEは法律の修正を伴うため、事前に議会で承認されるべきであり、また、領土について明記されていないため、憲法違反であると批判した。ガルシア大統領及びガルシア・ベラウンデ外相は、ACEは行政取り決めであり、議会の承認を必要とせず、憲法違反ではないと主張した。 2日、ガルシア大統領は、ペルー・チリ間労働及び移民協力に関する覚書を批准する大統領令を公布した。右覚書は2006年8月にリマにて署名されたもので、両国における両国民の労働者の権利の保護等に関して定められており、滞在資格の合法、非合法を問わずに適用される。
(2)米国統合参謀本部議長のペルー訪問 3日、ガルシア大統領は、ミューレン米国統合参謀本部議長と大統領府にて会談した。同統合参謀本部議長は、大統領による歓迎に感謝し、今回の訪問の目的はペルー・米国関係の強化であると述べた。
(3)ガルシア・ベラウンデ外相の南米アラブ諸国外相会議参加 4日、ガルシア・ベラウンデ外相は、エジプトで開催された第2回南米アラブ諸国外相会議に参加した。同会議は、3月末に開催される第二回南米アラブ諸国首脳会議の準備会合であり、両地域の外相は、首脳会議のための最終調整を行った。
(4)南米諸国連合(UNASUR)防衛審議会 11日、フローレス・アラオス国防大臣は、チリのサンティアゴで開催されたUNASUR防衛審議会に出席した。右審議会には12ヶ国の閣僚が集結し、域内共通の問題の早期解決を図りつつ南米を継続的な和平地域とすることに合意した。
(5)第3回ペルー・エクアドル対人地雷対策会合の開催 10〜11日、リマにて第3回ペルー・エクアドル対人地雷対策会合が開催された。同会合は、2008年2月に行われた両国の政策協議調整メカニズム「2+2」(外務省及び国防省)にて開催が約束されたものであり、全国エクアドル人道的地雷撤去センター(CENDESMI)関係者及びペルー対人地雷対策センター(CONTRAMINAS)の関係者が経験を共有した。
(6)ペルー・ブラジル「2+2」会合におけるブラジル外務副大臣のペルー訪問 13日、ピネイロ・ブラジル外務副大臣及びサボヤ・ブラジル国防省国際政治戦略局長がペルーを訪問し、グティエレス外務副大臣と会談を行った。右会合は、第二回ペルー・ブラジル協議調整メカニズム会合「2+2」(外務省及び国防省)の枠組みにて行われ、国境地域の開発及び協力等に関して意見交換を行った。ピネイロ・ブラジル外務副大臣は、ペルー政府のエイズ対策を支援するため抗HIV剤480セットを寄贈した。
(7)ローマ法王によるガルシア大統領に対するバチカンへの招待 16日、バチカン公国のムサロ教皇大使が大統領府を信任状捧呈のため訪問し、ローマ法王ベネディクト16世からガルシア大統領に対するバチカンへの招待を伝えた。ガルシア・ベラウンデ外相は、6月に大統領がバチカンを訪問する方向で調整すると述べた。
(8)駐ペルー北朝鮮大使の信任状捧呈 16日、大統領府にてRi Mun Gyu駐ペルー北朝鮮大使がガルシア大統領に信任状を捧呈した。同大使は、ニカラグア、メキシコ、キューバにおける勤務経験があり、北朝鮮外務省のラテンアメリカ課長を務めていた。
(9)チリとの領海境界線画定問題、国際司法裁判所への申述書提出 19日現地時間午前11時(ペルー時間午前5時)、ペルー政府は、チリとの領海境界線画定問題についてペルー側の主張する事実及び歴史的・法的・地理的根拠をまとめた4部からなる申述書をハーグの国際司法裁判所に提出した。ペルー政府は2008年1月16日に国際司法裁判所に対して、同問題に関する提訴を行い、今般、提出期限を20日に控えて申述書を提出した。 チリ政府は、6月20日までに、先決的抗弁を提出することができ、先決的抗弁を行わずに提訴を受ける場合には、2010年3月9日までに、答弁書を提出しなければならない。
(10)アスナル元スペイン首相のペルー訪問 20日、アスナル元スペイン首相がペルーを訪問し、大統領府にてガルシア大統領と会談した。会談後、同元首相は、ペルーには大きな可能性があり、経済の安定化が進んでおり、全てのペルー人に恩恵となることを確信していると述べた。
(11)ペルー・コロンビアの「2+2」会合 20日、ペルー・コロンビアの「2+2」(外相及び国防相)会合に参加するため、ベルムデス・コロンビア外相及びサントス・コロンビア国防相がペルーを訪れた。同会合で署名された共同声明において、両国は、エクアドルがとっているような保護主義措置に対する拒否を表明し、アンデス共同体及び地域の国々に統合の精神を維持するよう呼びかけた。 両国の外相は、国際協力における戦略的連携宣言に署名し、国境地域の開発のための協力強化に合意した他、第9回ペルー・コロンビア統合会合の議事録及び第2回政策協議調整会合の議事録に署名した。両国の国防相は、治安対策に関して話し合うため4月にメデジンにて会合を行うことで合意した。
(12)チリとの領海境界線問題を巡るボリビア大統領の発言 23日、モラレス・ボリビア大統領は海の日の祝賀イベントにおいて、ペルーにより国際司法裁判所に提訴されたチリとの領海境界線画定問題は、ボリビアが希望する太平洋への出口問題の解決に影響を及ぼすと述べた。同日、外務省は、ペルー政府は、チリとの領海境界線画定問題を国際法に則り解決するため、国際司法裁判所における手続を開始し、これは二国間の問題であるとするプレスコミュニケを発表した。また、ペルーは、ボリビア国民及び政府の海の出口問題解決への要望に影響を与える意図は一切ないと表明した。
(13)クリントン元米大統領のペルー訪問 27日、クリントン元米大統領がペルーを訪問し、大統領府を訪れた。同元米大統領は、自身が運営するクリントン財団、ペルー保健省及びカルロス・スリム財団が「ペルーにおける眼の健康改善プラン:白内障手術共同プログラム」を実施するための合意へ署名した。同プログラムでは、クリントン財団及びカルロス・スリム財団が半額ずつ出し合い、計1千億ドルの寄付を行い、貧しい地域を優先し、全国レベルでの眼科を改善する目的で、4年間で5万件の白内障の手術を行うことが可能となる。
(14)ペルーのOECD開発センターへの参加 27日、ペルー外務省は、OECD開発センターへ正式に参加した。(ペルーは、OECDの委員会及びワーキンググループへの統合戦略を進めてきており、2008年7月には投資委員会のオブザーバー国となっている。)
(15)第2回南米アラブ諸国首脳会議 31日、カタールにて第2回南米アラブ諸国首脳会議が開催され、ペルーからベラスケス・ケスケン議会議長が大統領代理で参加した。同議会議長にはガルシア・ベラウンデ外相が同行した。2005年にブラジルで開始された同会議は、両地域の国々が協力関係を効率的に進められるメカニズムを模索している。なお、ペルーが2011年前半に第3回南米アラブ諸国首脳会議の開催国となることで合意した。
4 フジモリ元大統領に対する裁判 (1)公判 週に2日、フジモリ元大統領に対する「バリオス・アルトス事件及びラ・カントゥータ事件」並びに「陸軍諜報局(SIE)地下における誘拐事件」に関する公判が開催され、ナカサキ弁護士による最終弁論が行われた。フジモリ元大統領の体調不具合により、例外的に金曜日にも公判が開催され時間が補填されることとなったが、ナカサキ弁護士が入院し、予定以上に弁護側の最終弁論が長引いた。
(2)フジモリ元大統領の体調 12日、フジモリ元大統領は、1週間前より腹痛及び下痢が続いているため、主治医であるアギナガ議員に同伴され、国立ガン研究所に移動した。同元大統領は大腸内視鏡検査を行い、大腸におけるガン細胞の有無を検査した。また、18日の公判ではフジモリ元大統領の血圧が高く発熱など咽頭炎の症状があることから、医師より48時間の安静が必要と診断された。 |
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