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ペルー政治情勢 2010年
3月の内政と外交
1 概要
(1)ガルシア大統領は、チリにおける震災を受け、ペルー全体で震災に備えるため、地震対策プログラムを発表した他、学期開始に合わせて、国家選別中学校の開校式に参加した。
(2)クルシリャット元アメリカ・テレビジョン・オーナーへの恩赦取り消しを巡り、法務大臣が交代した。
(3)外交面では、活発な要人往来があり、ガルシア大統領がチリを二度訪問、アルゼンチン大統領が16年振りにペルーを国賓訪問した。また、外相がコスタリカ、中国及び米国を訪問した他、閣僚等のウルグアイ及びエクアドル訪問に加え、コロンビア、インド、パプアニューギニアの閣僚がペルーを訪問した。
2 内政
(1)フローレスPPC党首の航空会社理事職辞任
2日、フローレス・キリスト教民主党(PPC)党首は、麻薬密輸とつながりがあるとされたセサル・カターニョ氏がオーナーであるペルビアン・エアライン社の理事職を辞任していたことが公表された。
(2)全国規模の地震対策プログラム
3日、ガルシア大統領は、全国規模で都市部を中心として住民が震災時に備えるための、地震対策プログラムを開始する旨発表した。同プログラムでは、建物の耐震審査を行う他、津波予測及び警報システムの導入、また、閣僚、地方政府、軍、国家警察及び国家防災庁と共同で体制を整え、防災訓練を行う。6日、大統領府にて同プログラムの発表式典が行われた。
(3)全国司法審議会の新たな委員選出
3日、日系人のマエゾノ前ラ・モリーナ大学学長及びソト弁護士(元全国区選挙管理委員会委員)が全国司法審議会(CNM)の委員に選出された。CNMの委員は7名からなり、今般、国立学長推薦枠からマエゾノ前学長、私立大学学長枠からソト氏が選出された。任期は5年。
(4)クルシリャット元アメリカ・テレビジョン・オーナーへの恩赦取り消し及び法務大臣の交代
13日、昨年12月に出されたクルシリャット元アメリカ・テレビジョン・オーナーの恩赦を取り消す大統領決議を公布した。同元オーナーは,モンテシノス元国家情報局顧問よりフジモリ政権を支援する放送をする見返りに多額の金額を受け取っていたことによる行政に反する罪、影響力を行使したことによる収賄罪、公務員汚職罪及び公金横領罪にて告訴され、2006年、逃亡先のアルゼンチンから身柄を引き渡され、同年8月に有罪判決を受けていた。クルシリャットは、深刻な心臓病や高齢を理由に恩赦を求めており、2009年12月、恩赦が認められた。しかし、その後、健康に支障があるとは思えない姿が度々目撃され、恩赦の理由となった健康上の問題が疑問視され、12日には同人の身柄拘束令が出された後、恩赦取り消しとなった。現在、同人は行方不明。
パストール法務大臣は、クルシリャットの恩赦を認める手続に不備は無かったとして、恩赦が取り消される場合には辞任すると発言していたが,恩赦が取り消されたことで、16日、解任され、18日、日系のガルシア・トマ新法務大臣が就任した。
(5)国家選抜中学校
17日、2010年度の新学期が開始され、リマ市チャクラカヨ区ワンパニに「ペルー大統領」国家選抜中学校が開校した。また、同校に作られた韓国政府により寄贈された「ペルー韓国協定」情報センターも開設され、開校式典には大統領、閣僚の他、ハン駐ペルー韓国大使他が出席した。
「ペルー大統領」中学校は、良質の教育を施すために建設され、中等教育の3〜5年次の863名の生徒を対象とする無料の全寮制学校であり、生徒は全国から試験及び面接を経て選出された。
(6)豪雨被害
1ヶ月を通じて、ワンカベリカ、クスコ、アプリマック、プノ州で豪雨が続いたため、被害対策のための非常事態宣言が延長された。
(7)地方政府関係者の辞職
29日、コウリ・カヤオ州知事は、2010年の地方選挙に立候補するため州知事職を辞職した。現役の市長や州知事が現在の職務とは異なるポストに立候補する場合は、選挙の6ヶ月前である4月3日までに辞職しなければならない。
(8)デジタルテレビ放送開始
30日、日本ブラジル方式のデジタルテレビ放送が31日から開始されるにあたり、大統領府にて放送開始式典が行われた。
(9)全国世論調査結果:ガルシア大統領の支持率(アポヨ社)
(ア)全国
今回 前回(2月)
支持 29% 26%
不支持 62% 68%
わからない・無回答 9% 6%
(イ)地域別支持率(下段括弧内、前回〈2月〉)
リマ 北部 中央部 南部 アマゾン
34% 29% 30% 18% 19%
(30%) (32%) (16%) (15%) (15%)
3 外交
(1)ムヒカ・ウルグアイ大統領就任式
1日、メンドサ・デル・ソラル第2副大統領は、ムヒカ・ウルグアイ大統領の就任式に出席するため、ウルグアイを訪問した。
(2)中国とのFTA発効
1日、中国とのFTA発効に伴い、同発効式典が大統領府にて開催され、ガルシア大統領、ガルシア・ベラウンデ外相、ペレス通商観光相、ブラック環境相、Zhao駐ペルー中国大使等が出席した。中国は米国に次ぐペルーの貿易相手国。
(3)ガルシア大統領のチリ訪問
2日、ガルシア大統領が、地震の被災者への人道的支援を届けるため、ガルシア・ベラウンデ外相、ウガルテ保健相他と共にチリを訪問した。同大統領はバチェレ・チリ大統領及びピニェラ次期大統領と会談し、同日夜、30名のペルー人被災者と共にペルーに帰国した。
(4)小火器に関する国連行動計画地域会合の開催
2日、ラテンアメリカ・カリブにおける国連平和・武装解除・開発のための地域センター(UNLIREC)及びスペイン政府の協力で、31ヶ国のラテンアメリカ・カリブ地域代表が、リマで開催された小火器に関する国連行動計画地域会合に参加した。
(5)外相とクリントン米国務長官の会談
4日、ガルシア・ベラウンデ外相は、コスタリカで開催された「アメリカ繁栄のための道」イニシアチブの第3回外相会合に出席した際、クリントン米国務長官と会談した。同国務長官は、6月にペルーを公式訪問する旨発表した。
(6)EU移民に関するミッションのペルー訪問
1〜4日、EUの移民に関するミッションがペルーを訪問し、政府及び市民団体等の関係者と、2008年にリマで開催された第5回中南米EUサミットにおけるリマ宣言に基づき、ラテンアメリカ・EU地域の対話構築の枠組みの中で移民に関する協議を行った。
(7)第11回CAN・EU合同委員会
5日、ブリュッセルにて第11回CAN・EU合同委員会が開催され、ポポリシオ外務副大臣が出席した。同委員会では、移民、環境、気候変動及び違法麻薬等について協議された他、リスボン条約の効力発効に伴う組織の変化、経済危機の影響等に関しても意見交換がされた。また、5月18日に予定される第6回中南米EUサミット開催を確認した。
(8)ガルシア大統領のチリ大統領就任式出席
11日、ガルシア大統領はピニェラ・チリ大統領就任式に出席し、両政権は実りある関係を推し進める意志があると述べた他、地震復興の困難な作業を遂行することを期待すると述べた。
(9)コロンビア国防相のペルー訪問
23日、シルバ・コロンビア国防相はペルーを訪問し、レイ国防相とFARCがセンデロ・ルミノソを支援しているとする電子メールの情報につき協議した。両国防相は、テロ対策、麻薬対策、国境地域の治安対策にて協力を拡大することの他、両国の警察が国境を渡る両国民の身柄紹介のための情報を共有すること等で合意した。
(10)アルゼンチン大統領のペルー訪問
22〜23日、フェルナンデス・アルゼンチン大統領がペルーを国賓訪問し、ガルシア大統領と会談し,共同宣言に署名した。両大統領は、両国の閣僚による、政治、経済、貿易、社会及び文化の関係強化に係る13の合意及び協定署名に立ち会った。フェルナンデス大統領と共に、タイアナ外相、トマダ労働相、バラニャオ科学相、ガレ国防相、ジョルディ生産相等がペルーを訪問した他、企業関係者も同行し、ペルーの企業関係者と協力及び投資のための二国間企業委員会を開催した。
同大統領は、1995年にアルゼンチン政府がセネパ紛争においてペルーと対峙していたエクアドルに武器を売却したことに関し、今次訪問は、ペルー人に対する謝罪の行為及び歴史的修復であるとした。また、ペルー議会及びリマ市長舎を訪問した。
(11)通商観光相のエクアドル訪問
3月23〜25日、ペレス通商観光相はエクアドルを訪問し、コレア・エクアドル大統領と会談した他、ペルー展に参加した。同通商観光相は、観光促進庁の理事長として、エクアドルの輸出及び投資促進公社(Corpei)のエガス会長と共に、二国間貿易の増加を促進するため、機関間協力協定に署名した。
(12)UNASUR南米防衛委員会会合
25〜26日、リマにて南米諸国連合(UNASUR)南米防衛委員会会合が開催され、UNASUR加盟国の外務省及び国防省代表は、「平和、安全及び協力のための議定書」の内容について論じた。
(13)インド都市住宅貧困削減相のペルー訪問
26日、Kumari Seljaインド都市住宅貧困削減相がペルーを訪問し、カスタニェダ・リマ市長の案内でリマ市が運営する連帯病院を訪問した。
(14)パプアニューギニア国家計画大臣のペルー訪問
26〜27日,ティエンステン・パプアニューギニア国家計画大臣が、協力及び投資に関し、公共機関及び民間企業と協議するためにペルーを訪問した。同国家計画大臣は、ペルー外務省アジア太平洋局が主催した、APCI長官、漁業技術機関,ペルー海洋研究所関係者が参加する会合に参加し、南南協力の枠組みにおける協力メカニズムを形成することで一致した。
(15)ガルシア・ベラウンデ外相の中国訪問
26日、ガルシア・ベラウンデ外相は中国を公式訪問し、楊潔チ(YANG Jiechi)中国外交部長と会談し、1日に発効したFTAを活用することの他、戦略的連携関係の推進を確認した。同外相は、ペルーにおける中国人移住160周年について紹介する上海万博のペルー・パビリオンを訪問した。
(16)外相のOASに対する軍縮提案
30日、ガルシア・ベラウンデ外相は、ワシントンのOAS本部におけるOAS常設委員会にて、6月6〜8日にリマで開催されるOAS第40回総会の中心テーマとして、「平和、安全及び協力のための議定書」を提案し、同常設委員会に出席した加盟国の多くは、ペルーによる提案を支持した。 |