ペルー政治情勢 2012年
3月の内政と外交
1 概要
(1)ウマラ大統領の実弟であり,禁錮19年の刑を受け収監中のアンタウロ・ウマラの収監先の移転が行われ,大統領の実弟であるための特権待遇であるとして批判が起こり,大統領支持率低下に繋がった。 (2)全国の複数の州で違法鉱業従事者が無期限ストライキを実施し,マドレ・デ・ディオス州では,警官との衝突で死傷者が発生した。政府との話し合いの結果,1年間かけてフォーマル化することで合意した。 (3)ロンカリオロ外相は,ブラジル,コロンビア及びウルグアイを訪問した。また,5月のウマラ大統領訪日の準備のため,ベラウン外務副大臣が,日本及び韓国を訪問した他,第3回南米アラブ諸国首脳会合の調整ため,中東諸国を訪問した。
2 内政
(1)アンタウロ・ウマラの刑務所移動
3日,警官4名が死亡したアンダワイラス州刑務所襲撃事件(05年)の責任を問われ,禁錮19年の判決を受けたウマラ大統領の実弟であるアンタウロ・ウマラが,それまで収監されていたピエドラス・ゴルダス刑務所からチョリーリョス区内の軍隊学校内の施設へ移転された。国家刑務庁は,ピエドラス・ゴルダス刑務所には,「アルテミオ」関係者が収監されたことから,アンタウロに面会する大統領家族の安全のために,刑務所を変更した旨説明した。
(2)違法鉱業従事者によるストライキ 5日,マドレ・デ・ディオス州,アプリマック州,ピウラ州,プノ州,ラ・リベルタ州,イカ州等で違法な鉱業を刑事罪とする法律の廃止を求めるための抗議運動が開始された。14日,マドレ・デ・ディオス州における同州鉱業連合(Fedemin)率いる違法鉱業従事者による抗議運動にて,事態の鎮圧に当たった警官との衝突により,2名の違法鉱業従事者及び1名の先住民の3名が死亡し,55名(うち警官17名)が負傷,60名の身柄が拘束された。 19日,政府代表とマドレ・デ・ディオス州鉱業連合代表は,フォーマル化のための期間を1年設けることで合意に達した。
(3)与党議員の離党 7日,リマラチン国会議員(与党勝利するペルー)が,2月のアルテミオ・センデロ・ルミノソ指導者の逮捕は,コンガ鉱山開発に抗議する水を求める運動に対する煙幕だったとしてウマラ大統領を批判したことから,政党から離党させられた。
(4)教育省倉庫における火災 8日夜,リマ市内の教育省の倉庫で火事が発生し,アマゾン地域を中心に配布予定であった幼児教育レベルの教材が焼失した。9日,サラス教育相は,記者会見にて,被害総額は,2億8千万ソル(約1億米ドル)程度であり,本年に生産された6割に相当する幼稚園児の作業ノート50万冊,初等教育用教員の指導要領2万冊以上,算数及びコミュニケーションキット3万個,精神運動発育キット2千個,教員用コンピューター4万台,ソーラーパネル6千個,ノートブックパソコン2万台以上が焼失したが,1週間から10日以内で教材の配布を補う旨述べた。
(5)ウマラ大統領の支持率(括弧内前回2月) ア ダトゥム社:9〜12日実施,全国(対象:1,206名) 支持 55%(58%) 不支持 34%(33%) イ アポヨ社:14〜16日実施,全国(対象:1,204名) 支持 53%(59%) 不支持 39%(29%)
3 外交
(1)日・ペルー経済連携協定(EPA)の発効 1日,日・ペルー経済連携協定(EPA)が発効した。
(2)外相のブラジル訪問 1日,ロンカリオロ外相はブラジルを訪問し,パトリオタ・ブラジル外相と会談し,国連総会の際の両国首脳の会談,ルセーフ・ブラジル大統領のペルー訪問等につき協議した。
(3)太平洋同盟のテレビ首脳会議 5日,第3回太平洋同盟首脳会議がテレビ会議形式で開催され,ウマラ大統領,ピニェラ・チリ大統領,カルデロン・メキシコ大統領,サントス・コロンビア大統領に加え,チンチーリャ・コスタリカ大統領及びマルティネリ・パナマ大統領が参加した。各国首脳は,署名に向けた太平洋同盟枠組み協定の文面を承認した。
(4)外相のコロンビア訪問 6日,ロンカリオロ外相は,コロンビアを訪問し,オルギン外相及びサントス・コロンビア大統領と会談した。両外相は,域内の地雷撤去作業の加速化を推進する宣言に署名した他,アマゾン地域の麻薬密輸及びその他の犯罪対策の活動を調整するために「2+2(外相及び国防相)」メカニズムを召集することで合意した。
(5)外相のウルグアイ訪問 9日,ロンカリオロ外相は,ウルグアイを公式訪問し,ムヒカ・ウルグアイ大統領及びアルマグロ・ウルグアイ外相と会談,また,アルバレス・ラテンアメリカ統合連合(ALADI)事務局長と会談した他,同組織本部で講演を行った。
(6)ベラウン外務副大臣の韓国・日本訪問 ベラウン外務副大臣は,8〜10日に韓国,11〜13日に日本を訪問した。韓国では,第3回ペルー・韓国ハイレベル政策協議会合に参加した他,韓国国際協力機構(KOICA)理事長との会談,麗水市の万博準備を視察した。 日本では,ウマラ大統領の訪日準備のため,外務省,JICA,日ペルー経済協議会の関係者と会談した。
(7)アブダッラー・アラブ首長国連邦外相のペルー公式訪問 12日,アブダッラー・アラブ首長国連邦外相がペルーを公式訪問し,ウマラ大統領及びロンカリオロ外相と会談した。
(8)ブラウン英外務閣外相のペルー訪問 16日,ブラウン英外務閣外相がペルーを訪問し,ウマラ大統領と会談し,奨学金等の教育分野の協力及び麻薬対策等につき協議した。同英外務閣外相は,大統領に英国を訪問するよう招待した。
(9)ベラウン外務副大臣の中東諸国訪問 ア イスラエル 18日,イスラエル外務省にて,第4回ペルー・イスラエル政策協議が開催され,ベラウン外務副大臣及びクリエル・イスラエル外務省局長補は,二国間関係,中東の政治情勢及び南米統合プロセスについて協議した。両者は,農業,水資源,国防,治安,社会開発,保健,教育等における人材育成のための奨学金の供与による技術協力を発展させる重要性につき意見交換し,ベラウン外務副大臣は,貧困削減のための科学技術協力枠組み拡大への関心を示した。また,交渉中の投資促進保護協定については,農産業,エネルギー,医薬品及び通信分野へのイスラエルからの投資が増加していることを受け,技術移転分野に拡大することの重要性を強調した。 イ パレスチナ 20日,ベラウン外務副大臣はパレスチナを訪問し,アッバース自治政府大統領と会談し,ウマラ大統領からの挨拶及び第3回ASPAへの招待状を手交した。アッバース自治政府大統領は,ASPAへの出席を約束した他,歴代のペルーからのパレスチナへの支持に謝意を表明した。同外務副大臣は,サレー・パレスチナ外務省米州課長とも会談し,両者は政策協議枠組みための覚書,並びに,外交パスポート及び特殊パスポート所有者に対する査証免除協定に署名した。 ベラウン外務副大臣は,ノファル・パレスチナ経済副大臣,マダラニ・パレスチナ農業相とも会談した他,在パレスチナ・ペルー人によるイベントに出席した。 ウ ヨルダン 21日,ベラウン外務副大臣は,モハメッド・ヨルダン外務省事務局長及びアブドゥッラー2世国王と会談し,第3回ASPAの際に,文化財保護促進協定に署名することで合意した。 エ レバノン 22日,ベラウン外務副大臣は,レバノンを訪問し,リャメド・レバノン外務省事務局長と会談し,両国が駐在大使館の設置により二国間関係を強化することで合意した。同外務副大臣は,スレイマン・レバノン大統領とも会談し,同大統領は第3回ASPAへの出席に関心を示した。また,ベリ・パレスチナ国会議長と会談し,議員交流の重要性を再確認した。
(10)英フリゲート艦モントローズの入港許可取り消し 19日,ロンカリオロ外相は,英フリゲート艦モントローズのカヤオ港への寄港許可を取り消した旨発表した。同決定は,アルゼンチンのマルビナス諸島の主権を巡る争いの権利に係る,南米諸国連合(UNASUR)内のラテンアメリカ連帯の約束に応じて取られた旨説明した。 同日,在ペルー英国大使館は,ペルーによる決定及び,ブラウン英外務閣外相に本件が伝えられなかったことを残念に思う旨のプレスリリースを発出した。 マスコミは,アルゼンチン国内の批判を受けて,国会で一度は許可された寄港を取り消したこと,及び説明に一貫性がないことから,ロンカリオロ外相を批判した。 22日,バルデス首相は,政府は,本件にてロンカリオロ外相を支持する旨発表した。
(11)カナダ外相のペルー訪問 20日,アブランシー(Ablonczy)カナダ閣外アメリカ諸国・領事担当相はペルーを訪問し,ロンカリオロ外相と会談した。同閣外相は,社会的包摂並びに奨学金や交換留学を通じた教育や能力強化分野プログラムを協調することで合意した他,ペルーの南米を非対人地雷地域にするイニシアチブを評価した。また,バルデス首相とも会談した。
(12)国際司法裁判所(ICJ)におけるチリとの領海境界線画定問題 22日,ロンカリオロ外相は,ペルー・チリの領海境界線画定問題に係る公判が12月3〜14日に実施される予定である旨発表した。具体的には,12月3〜4日及び11日にペルー供述,6〜7日及び14日にチリ供述し,,2013年6月頃に判決の予定。
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