ペルー政治情勢 2009年 4月の内政と外交 1 概要
(1)ペルーはデジタルテレビ方式で日本・ブラジル方式を採用すると決定し、コルネホ運輸通信大臣及び山口総理特使が大統領府にて発表した。 (2)外交関係では、オバマ政権になって初めてガルシア・ベラウンデ外相が米国を訪問し、クリントン国務長官と会談した。また、ガルシア大統領は第5回米国首脳会議のためにトリニダード・トバゴを訪問した他、ブラジルのリオ・ブランコ市を訪問し、ルーラ・ブラジル大統領と会談した。 (3)フジモリ元大統領に対する「バリオス・アルトス事件及びラ・カントゥータ事件」並びに「陸軍諜報局(SIE)地下における誘拐事件」の裁判において、有罪判決が出された。
2 内政 (1)監査庁長官の選出 4日、議会は、ベテタ監査庁長官候補が、要件として求められている条件を満たさないとして、ベテタ候補を却下した。昨年10月から空席となっている監査庁長官を巡っては、同年12月に選出されたスアレス監査庁長官が2月に履歴詐欺を問われて辞任しており、6日、ガルシア大統領は、議会によるベテタ候補の却下を残念に思うと述べ、3人目となる新たな候補者を提案することを発表した。
(2)国民保険法の公布 8日、ガルシア大統領は、国民保険保障法を公布し、個人の経済状況に関わらず、質の高い保険サービスが受けられると述べた。同法により、保健省の医療施設に加えて、軍及び警察の医療施設が市民に開放される。第一段階として、貧困問題の深刻なアプリマック州、ワンカベリカ州、アヤクチョ州にて適用される。
(3)デジタルテレビ方式の決定 23日、大統領府において山口総理特使がガルシア大統領と会談した後、コルネホ運輸通信大臣は山口総理特使他一行と共に、ペルー政府がデジタルテレビ方式において日本・ブラジル方式を採用すると決定した旨公式発表した。 同大臣は、アナログ式からデジタルテレビへの移行は歴史的に重大な決断であり、近代化への一歩であると評し、デジタルテレビ時代への突入は、全てのペルー人がより鮮明な画面を見られるようになるだけでなく、携帯電話やパソコンでのテレビ受信が可能になり、移動中でもテレビを見ることが可能になることを指摘した。また、採用方式の決定については、多分野の関係者からなる委員会が2年間にわたり綿密な分析を行った結果行われ、様々な分野でペルーがさらに発展することが可能となる満足いく決断を行うことができたと述べた。 これに対し、山口総理特使より、ペルーのデジタルテレビ時代参入を祝福し、日本方式は混信や騒音に耐久性があり、あらゆる場所で良好な受信をすることが出来る他、移動式受信機での映像受信やインタラクティブなプログラムを楽しむことができることを利点として述べた。
(4)新型インフルエンザ 24日、メキシコでインフルエンザとみられる症状の患者が死亡していることを受け、全国規模で航空、港湾及び国境地帯でのコントロールを開始したと、ウガルテ保健相が発表した。27日には、メキシコから帰国したペルー人女性が疑わしい症状を示し、病院に運ばれたが、自宅隔離の結果、新型インフルエンザではないと判明した。また、29日、ペルー政府はメキシコからの航空便の乗り入れを中止した(5月13日に右措置は解除)。
(5)ガルシア大統領の支持率 (イ)全国 今回 前回(3月) 支持 32% 34% 不支持 63% 60% わからない・無回答 5% 6% (ロ)地域別支持率(下段括弧内、前回〈3月〉) リマ 北部 中央部 南部 アマゾン 34% 42% 26% 14% 17% (40%) (34%) (30%) (16%) (29%)
3 外交 (1)ガルシア・ベラウンデ外相の米国訪問 6日、ガルシア・ベラウンデ外相は、米国を訪問しクリントン国務長官と会談を行い、共通の関心及び懸念事項に関して意見交換を行った。両者は、米州サミットに関しても触れ、ガルシア・ベラウンデ外相は、右サミットでは、世界的な金融危機にいかに対応するかという今後の方針が導かれる軸が必要であると述べた。
(2)ガルシア大統領とオバマ米大統領の電話会談 10日、ガルシア大統領がオバマ米大統領と電話会談をした。25分間にわたる会談で両大統領は、トリニダード・トバゴで開催される第5回米州サミット及び二国間アジェンダ等複数のテーマについて意見交換を行った。 オバマ米大統領は、二国間関係の強化を希望する意思を示し、国際金融危機及び米大陸における経済成長を維持する方法についても意見交換を行った他、ガルシア大統領の地域における麻薬密輸対策の指導力に感謝した。
(3)ガルシア大統領他のトリニダード・ドバゴ訪問 17日、ガルシア大統領は、第5回米州首脳会議他に参加するため、トリニダード・トバゴを訪問した。同大統領にはガルシア・ベラウンデ外相が同行した。同首脳会議において、ガルシア大統領は、会議の参加諸国に対し、危機の際には保護主義に傾倒しがちであるが、結局は危機を存続させるとして、注意喚起を行った。また、国際金融危機に対応するために十分な財源を確保するため、IDBの資本拡大を支持した。 同大統領は、この機会を利用して、南米諸国連合(UNASUR)首脳とオバマ米大統領との会合に出席した他、バチェレ・チリ大統領及び米国上院議員と会談した。 ガルシア大統領は、UNASUR首脳及びオバマ米大統領との会合の後、米国と南米諸国の間には期待と信頼があり、米国政府は米国の発展及び危機脱出におけるラテンアメリカの役割を理解していると述べた。また、在米ラテン系人口の多さを挙げ、米国とは、他地域よりも緊密な関係があると強調し、共通の成長へ向けた尊重し合う平等なパートナーなる大きな可能性があることを指摘した。 バチェレ・チリ大統領と会談の後には、同大統領は、国際司法裁判所(ICJ)にて扱う領海境界線画定問題は司法問題であることに両国が合意していることを明らかにした。
(4)ベネズエラの市長による政治亡命申請 21日、ベネズエラ野党である新時代(UNT)党の創設者であり有力な指導者であるロサレス・マラカイボ市長は、外務省に対し政治亡命を要請したと、バリェ・リエストラ議員(アプラ党)が発表した。さらに同議員は、ロサレス市長は、チャベス政権からの攻撃を逃れ、政府レベル、議会、政党、労働組合などを通じ、政治亡命を獲得するための可能性を追求しているとし、亡命申請はペルー憲法、国連の国際人権規約、サン・ホセ憲章(米州人権憲章)等の条約で保護されていると述べた。 22日にロサレス・マラカイボ市長がテレビ番組を通じてチャベス・ベネズエラ大統領を批判したことに対し、ガルシア・ベラウンデ外相は、ペルーは外国人により政治的基盤として利用されることはないと述べ、同市長に政治亡命を申請する人物に相応しい振る舞いを期待すると述べた。27日、同外相は、議会外交委員会において、ペルー政府は人道的理由からロサレス・マラカイボ市長の政治亡命申請を承認したと発表した。
(5)ペルー・中国FTA署名 28日、北京にて、アラオス通商観光大臣及びYi Xiaozhun中国商務次官は、ジャンピエトリ第一副大統領及び習近平・中国国家副主席立ち会いの下、両国のFTAに署名した。中国側は本FTAが2010年初頭にも発効することを期待する旨述べた。
(6)ガルシア大統領他のブラジル訪問 28日、ガルシア大統領は、ペルー・ブラジル国境サミット・企業フォーラムに出席するため、アクレ州リオ・ブランコ市を訪問し、フォーラムへの参加の他、ブラジル企業家との会合、ルーラ・ブラジル大統領との会談、合意への署名式典に立会った。同大統領には閣僚複数、議員、州知事党が同行した。 ガルシア大統領はルーラ・ブラジル大統領との会談の後、11月にペルーで「ブラジル週間」を開催する際にルーラ大統領がペルーを訪問すると発表した他、両国外相がマチュピチュにて会合を行うことで合意した他、ペルーはブラジルとの関係強化の意思として、デジタルテレビで日本・ブラジル方式を採用した旨を述べた。 ルーラ・ブラジル大統領は、環境保護への憂慮を示し、両国は種の保存のためにアマゾン地域に生息する種の多様性の研究を行うと述べた。 また、両大統領はリオ・ブランコ宣言を発表した他、ペルー・ブラジル国境サミット・企業フォーラムにて10の合意、覚書及び科学技術協力のための補足合意が署名された。
4 フジモリ元大統領に対する裁判 (1)「バリオス・アルトス事件及びラ・カントゥータ事件」並びに「陸軍諜報局(SIE)地下における誘拐事件」判決 1日及び3日、フジモリ元大統領に対する「バリオス・アルトス事件及びラ・カントゥータ事件」並びに「陸軍諜報局(SIE)地下における誘拐事件」に関する公判が行われ、ナカサキ弁護士の最終弁論の後、フジモリ元大統領が最終意見の陳述を行った。また、7日に判決が読み上げられると発表された。 6日、ガルシア大統領は「公平で合法的」な判決を期待すると述べ、国は冷静を保つであろうと信頼を示した。 7日、同元大統領に対し、重殺人罪、重障害罪、重誘拐罪で禁錮25年及び280,800ソル(約9万ドル)の民事賠償金の支払いを命じられ、有罪判決が下された。 23日、ナカサキ弁護士は、右判決を不服として上訴した。 |
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