ペルー政治情勢 2010年

4月の内政と外交

 

1 概要

(1)4月は,インフォーマル鉱山労働者のストライキ,及び鉱山開発に反対する住民のストライキが実施され,道路封鎖が行われた。一部では事態収拾にあたった警察との衝突により怪我人が発生した。
(2)外交面では,ガルシア・ベラウンデ外相がアラブ諸国を訪問した。また,バレンズエラ米国務次官補,ゲーツ米国防長官,パティーニョ・エクアドル外相等がペルーを訪問した。
(3)チリとの領海境界線画定問題において,国際司法裁判所はペルーの抗弁書提出期限を,本年11月に定めた。

2 内政
(1)インフォーマル鉱山労働者のストライキ
 3月31日付官報は,4月4日から開始を予定している鉱山労働者の無期限ストの開催に備えて,右ストが行われるイカ州ナスカ郡,パルパ郡及びサン・フアン・デ・マルコナ郡,マドレ・デ・ディオス州タンボパタ郡及びマヌー郡,並びにアレキパ州カラベリ郡及びカマナ郡の7郡を対象に非常事態宣言の発令を公告した。
 4日,ペルー全国小規模鉱山者連合(FENAMARPE)及びマドレ・デ・ディオス鉱山連合(FIDEMIN)の呼びかけにより,ストライキが行われた。アレキパ州カラベリ郡チャラ村では、警察及び軍隊がパンアメリカン・ハイウェイの封鎖を行った約6千人の抗議運動者の立ち退きを行った際、暴力的行為に発展し、6名が死亡、27名が銃弾により負傷、32名の身柄が拘束された。イカ州ナスカ郡では、5千名のインフォーマル鉱山労働者及び800名の警察及び軍人が衝突し、10名(内5名は警察)が負傷し、15名の身柄が拘束された。マドレ・デ・ディオス州では、約1万人が主要道路にて行進を行い、交通が麻痺したが、抗議運動に先立って11名の身柄拘束があった他は、警察及び軍との衝突はなかった。
 今般の抗議運動は、2月18日に公布されたマドレ・デ・ディオス州の鉱山活動を整備する緊急令(D.U. 012-2010)の廃止及びブラック環境大臣の離任を求めるマドレ・デ・ディオス州の鉱山労働者が無期限ストを呼びかけ、アレキパ州及びイカ州でも鉱山労働関係者が呼応した。

(2)タバコ規制法承認
 2日,タバコ規制法の一部改正法が公告された。同法は,3月30日,議会本会議にて,閉鎖された公共空間,公共交通及び勤務施設内での喫煙を禁じる法案が承認されたもので,施設に禁煙を示す表示を掲げることも義務づけている他,10本以下のタバコの販売も禁じている。同法が公告されてから,タバコ会社が10本以下のタバコ販売を中断するまでに180日間の猶予が,現在分煙を行っている各施設等が同法に適応するまで360日間の猶予が与えられた。

(3)国内の泥流被害
 1日,土砂崩れに巻き込まれ,ワヌコ州アンボ郡にて26名が死亡した他,45名が行方不明となり,145世帯が被害を受けたため,国家防災庁は,危険地域に生活する住民を避難させた。これを受け,3日,川の増水により土砂滑りが発生し,泥流に巻き込まれて死者を伴う被害が発生しているワヌコ州アンボス郡、レオンシオ・プラド郡及びワヌコ郡チンチャオ地区に対して非常事態宣言が発令された。

(4)中国製戦車の購入延期
 6日,レイ国防相は,全国防衛委員会に中国製戦車の購入延期及び,予算を麻薬密輸対策,テロ対策及び自然災害対策用に充てるよう提案する旨発表した他,既存の戦闘機の改修及び近代化,ヘリコプター及び人員輸送用飛行機の購入,衛星通信機材,野戦病院,重機等の整備を優先すると述べた。

(5)教育施設における閣議の開催
 毎週水曜日に通常大統領府にて行われる閣議が,リマ市内の教育施設で行われた。7日,リマ市リマック区の学校,14日,リマ市バランコ区内の学校,21日,リマック区内の学校の改築後の開校式に大統領以下閣僚が出席した後,各校にて閣議が開催された。

(6)ティア・マリア鉱山プロジェクトに反対する住民のストライキ
 14日,サウザン・カッパー社が開発計画するティア・マリア鉱山プロジェクトに反対するアレキパ州イスライ郡の住民が道路封鎖を伴う無期限ストライキを実施した。20日,ベラスケス・ケスケン首相,ブラック環境相,デ・コルドバ農業相,サンチェス・エネルギー鉱山相,サラサル内務相は,イスライ郡コカチャクラに向かい,住民と対話の機会を設け,90日間で環境インパクトを分析するための技術委員会を形成することで合意し,その間,鉱山活動は中断されることが決定された。

(7)センデロ・ルミノソ指導者のハンガーストライキ
 20日,センデロ・ルミノソ(SL)のナンバー2であるイパラギレが,収監先のリマ市チョリーリョス区にある女性刑務所より公衆電話でRPPラジオを通じ,SLの指導者グスマンとの結婚が認められないため,両者はハンガーストライキを実施すると発表した。両者は,約1年前から婚姻許可の申請をしているにもかかわらず,必要な書類が受け取れないとして抗議している。
 21日,ガルシア大統領は,両者の結婚に賛成であるとして,書類手続に時間がかかっていることが理解できないと述べた。22日,グスマン及びイパラギレはハンガーストライキを終了した旨,両者の弁護を担当するクレスポ弁護士が発表した。同弁護士は,刑務庁の担当者は(婚姻に賛同の意を示した)大統領の発言を検討すべきと述べた他,22日にイパラギレが刑務庁関係者と会合したと述べた。

(8)COFOPRIを巡るスキャンダル
 23日,不法占拠地正常化庁(COFOPRI)が,リマ南部の1200万ドル相当の土地を1700ドル程度で売却していたことが発覚し,談合及び不正蓄財の疑いで,COFOPRI幹部6名の身柄拘束が命じられた。これをうけ,ケサダCOFOPRI長官が辞任。同長官は,アプラ党機関幹事長の職務からも,右事件の調査が続く間外されることが決定した。ガルシア大統領の要請を受け,28日には,監査庁が違法な土地の売却に関する調査を開始した。
(5月18日,行方不明になっていたフリオ・カルデロンCOFOPRI事務局長は出頭し,身柄を拘束された。)

(9)フローレス・キリスト教人民党(PPC)党首のリマ市長選出馬
 24日,PPC党大会が開催され,フローレス党首がリマ市長選に出馬することが決定された。

(10)全国世論調査結果(アポヨ社):ガルシア大統領の支持率
ア 全国
         今回  前回(3月)
支持       27% 29%
不支持      67% 62%
わからない・無回答 6%  9%
イ 地域別支持率(下段括弧内、前回〈3月〉)
 リマ    北部    中央部   南部    アマゾン
 32%   27%   24%   21%   15%
(34%) (29%) (30%) (18%) (19%)

3 外交
(1)ボリビア元閣僚の亡命却下
 3日、ペルー政府は、汚職容疑に問われているギリェルモ・フォルトゥン元ボリビア内務相及びラ・パス市長候補の政治亡命申請を却下した旨、外務省筋が述べた。右判断は、同元内相に対する政治的迫害が認められないこと、追及は一般犯罪によることを基に下された。フォルトゥン元内相は、ボリビアにおいて検察により、公職に就いていた際、公金を個人の銀行口座に預け入れた容疑で告発されており、3月18日、チリ経由でペルーへ逃れてきた。同元内相は、チリ及びペルーに観光ビザで入国しており、ペルーにて政治亡命を申請した。

(2)日秘友好の日
 7日、ペルー議会において、4月3日の日秘友好の日を祝い,ヤマシロ秘日友好議員連盟会長主催による「日秘友好の日 移住111周年 記念式典」及び日系人協会主催レセプションが開催された。

(3)外相のアラブ諸国訪問
 4〜7日,ガルシア・ベラウンデ外相はアラブ諸国(サウジアラビア,アラブ首長国連邦,クウェート、バーレーン、カタール)を訪問し,各国の大統領,首相及び外相等と会談し,2011年3月にリマで開催予定の第3回南米アラブ諸国(ASPA)首脳会議及び第3回経済フォーラムの調整を行った他,各国との二国間関係強化のための協議を行った。

(4)ポルトガルミッションのペルー訪問
 6〜7日,ポルトガルから,ブラガ在外ポルトガル人コミュニティ担当次官率いる一行がペルーを訪問し,アルバ・カストロ議会議長,ポポリシオ外務副大臣等と会談した。また,第1回ペルー・ポルトガル・ハイレベル政策協議が開催され,ペルー・EU・FTAの交渉の進捗状況他,相互理解覚書の交渉について協議した他,4つの二国間協定に署名が行われた。

(5)マルスディ・インドネシア外務省アメリカ欧州担当局長のペルー訪問
 9日,マルスディ・インドネシア外務省アメリカ欧州担当局長がペルーを訪問し,ペルー・インドネシア技術経済協力協定に署名を行った。

(6)バレンズエラ米国務次官補のペルー訪問
 9日,バレンズエラ国務次官補はペルーを公式訪問し、同日にガルシア・ベラウンデ外相と,10日に,ガルシア大統領と会談し,二国間関係の緊密化,麻薬密輸対策、開発、防衛及び安全、並びに貧困対策における協力に関するアジェンダを検討した。同国務次官補は、麻薬代替作物計画を視察するためサン・マルティン州を訪問した他,次期OAS総会のテーマとしてペルーによる軍縮提案を評価した。

(7)ゲーツ米国防長官のペルー訪問
 14日,ゲーツ米国防長官はペルーを公式訪問し,ガルシア大統領と会談した他,レイ国防大臣と会談した。同米国防長官は,ペルーの安全は米国にとって非常に重要であるとして、ペルーが取り組む麻薬密輸及びテロ対策を支援するとの米国のコミットメントを確認した。

(8)アンデス共同体(CAN)事務局長の辞任
 20日、エレルスCAN事務局長は、3年3ヶ月間務めたCAN事務局長職の辞表を提出し,各国の大統領、外相等に対して辞意が正式に伝えられた。同事務局長は,約2年の任期を残し,5月7日に辞任することが発表された。(後に,同元事務局長は,エクアドル観光大臣に就任した。)

(9)パティーニョ・エクアドル外相等のペルー訪問
 15日,パティーニョ・エクアドル外相がペルーを訪問し,ガルシア・ベラウンデ外相と会談した。同エクアドル外相は,南米諸国連合(UNASUR)の議長として,5月4日にブエノスアイレスで開催される次回のUNASUR会合の内容について協議するためにチリ,ウルグアイ,アルゼンチンに次いでペルーを訪問した。同日,アルバ・カストロ議会議長は,コルデロ・エクアドル国会議長と会談した後,議会本会議にて,UNASURの基本条約(Tratado Constitutivo)の批准を優先すると約束した。

(10)ペレス通商観光相のパナマ及びドミニカ共和国訪問
 22日,ペレス通商観光相他はパナマ及びドミニカ共和国を訪問し,各国の企業関係者と会談した。同相は,シャマ・パナマ観光相と会談した他,ラモン・ドミニカ共和国通商相と会談し,両国の経済関係,歴史的友好関係及び将来のFTAの可能性について協議した。

(11)韓国外務通商副大臣のペルー訪問
 22〜25日,Shin Kak-soo韓国外務通商副大臣がペルーを訪問し,ガルシア・ベラウンデ外相,ポポリシオ外務副大臣と会談した他,韓国が支援したプロジェクトを視察するためクスコを訪れた。

(12)イグレシアス・イベロアメリカ事務局長のペルー訪問
 27日,イグレシアス・イベロアメリカ事務局長がペルーを訪問し,ガルシア大統領と会談した。同事務局長は,国際金融危機におけるペルー経済の動向を評価した。

(13)チリとの領海境界線画定問題
 28日,ハーグの国際司法裁判所(ICJ)は,チリとの領海境界線画定問題においてペルーが抗弁書を提出する期限を本年11月9日と定めた。また,チリの再抗弁書提出期限を2011年7月11日に定めた。
 ペルーは2008年1月16日,ICJに対し,本件を提訴し,2009年3月19日に申述書を提出した。他方,チリは本年3月9日に答弁書を提出した。抗弁書及び再抗弁書の書面による手続の後,口頭による審査に続いて,判事間での議論が行われるため,判決は2012年頃に出されると予想される。

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