ペルー政治情勢 2012年

4月の内政と外交

 

1 概要

(1)ウマラ大統領は,カミセアガス第88鉱区の天然ガスが,国内消費に利用される旨発表し,公約履行をアピールした。
(2)クスコ州で,武装したセンデロ・ルミノソにより,36名が誘拐されたが,全員無事に解放された。しかし,救出に向かった軍人・警官に死傷者が出た。
(3)日本大使公邸人質占拠事件のチャビン・デ・ワンタル救出作戦が実施15周年を迎え,国会他で各種式典が開催された他,報道でも大きく扱われた。
(4)ウマラ大統領が,コロンビアで開催された米州サミットに出席し,ペルーへの投資を呼びかけた。

2 内政

(1)大統領の実弟の収監先施設変更
 2日,3月にリマ市チョリーリョス区の士官学校内の施設に収監されていた大統領の実弟アンタウロ・ウマラは,カヤオ市の海軍基地内の収監施設へ移送された。ヒメネス法務人権相は,今般の移送は,士官学校内の施設には刑務規則上の誤りがあった他,海軍基地内では,収監者本人及び面会に訪れる大統領の家族の安全が確保できるためと説明した。

(2)カミセアガス第88鉱区の国内消費向け利用発表
 3日,ウマラ大統領は,クスコ州における式典にて,カミセアガス田第88鉱区の天然ガスは,独占的に国内市場に割り当てられる旨発表した。カミセア・コンソーシアム代表とメリノ・エネルギー鉱山相が,第88鉱区の天然ガスを国内市場向けに割り当てるとする協定へ署名した。

(3)坑道内に閉じこめられた鉱山従事者の救出
 5日,イカ州イカ市ロサリオ・デ・ユクラ区にあるカベサ・デ・ネグロ銅鉱山にて,坑道内で土砂崩れが発生し,インフォーマル鉱山労働者9名が,坑道内に閉じこめられた。救出部隊が派遣され,救出用のトンネルを開通する作業に従事した。この間,複数の閣僚が現地を訪問し,10日には,ウマラ大統領も現地を訪問した。11日朝,9名全員が無事に救出された。

(4)センデロ・ルミノソによる誘拐事件
 9日,クスコ州ラ・コンベンシオン郡エチャラテ区のケパシアト集落で,カミセア・ガス田で操業する企業の従業員36名が,滞在先の宿舎から武装したセンデロ・ルミノソに連れ去られた。10日,同地区に対して60日間の非常事態宣言が発令され,警察と軍が救出作業にあたり,犯人側から銃撃を受け,死傷者及び行方不明者が出た。15日,人質となった36名全員が解放された。

(5)日本大使公邸人質占拠事件チャビン・デ・ワンタル救出作戦15周年
ア 17日,国会にて,ケンジ・フジモリ議員のイニシアチブにより,日本大使公邸占拠事件のチャビン・デ・ワンタル人質救出作戦に参加した軍人に対する感謝式典が開催され,アブガタス国会議長他,与野党・様々な会派の議員,作戦に参加した軍人,元人質等が出席した。
イ 22日,チャビン・デ・ワンタル救出作戦15周年を迎え,各紙が本件につき報じた。また,小倉元書記官が事前にMRTAに情報提供をしていたとする記事も掲載された。

(6)コンガ鉱山の環境影響評価書の提出
 大規模な抗議運動により開発が中断され,国際評価団による調査が行われていたコンガ鉱山の環境影響評価書が提出され,18日,首相府のホームページに掲載され,公開された。20日,ウマラ大統領は,鉱山開発のための新たな条件を制定し,事業実施に係る枠組みを形成させる旨発表した。また,政府は住民の水へのアクセスを保障する旨明らかにした。

(7)大統領の支持率(括弧内前回3月結果)
ア ダトゥム社:13〜17日実施(対象:1,212名)
 支持   57%(55%) 不支持  34%(34%)
イ アポヨ社:18〜20日実施(対象:1,213名)
 支持  56%(53%)  不支持  34%(39%)


3 外交

(1)日秘友好の日
 3日,日秘友好の日を祝し,国会にてカンチェス外交委員長,タン日秘友好議員連盟会長他が出席し,祝賀行事が行われた。また,4日には,日系人協会が主催し,日秘友好橋への献花や記念式典が行われた。

(2)対韓国関係
 4〜10日,オタロラ国防相が韓国を訪問した際,ペルー政府と韓国政府間の海軍関係の協定に署名がなされた。また,アクリオ・クスコ州知事は,韓国訪問の成果として,韓国の投資家がクスコの国際空港建設に関心を抱き,フィージビリティスタディのために訪問を望んでいることを明らかにした。

(3)米州サミット
 14〜15日,ウマラ大統領は,カルタヘナにて開催された米州サミットに出席し,ペルーへの投資を呼びかけた。また,オバマ米大統領,ピニェラ・チリ大統領,ハーパー・カナダ首相及びチンチーヤ・コスタリカ大統領と会談した。

(4)次期世界銀行総裁のペルー訪問
16日,90年代,ペルーにおいて勤務したジム・ヨン・キム次期世銀総裁がペルーを訪問し,ウマラ大統領と会談した。

(5)ベトナム副首相のペルー訪問
 16日,ホワン・チュン・ハイ・ベトナム副首相がペルーを訪問し,ベラウン外務副大臣と会談した。同ベトナム副首相は,ベトナム独立戦争の際のペルーからの支援に感謝した他,任期2014−16年の人権委員会へのベトナム立候補への支持に感謝した。ベラウン外務副大臣は,両国が共有するAPEC及びTPP等のビジョンを強調した。

(6)ラテンアメリカ経済フォーラム
 16〜18日,エスピノサ第一副大統領他が,メキシコのプエルト・バリャルタにて開催されたラテンアメリカ地域版ダボス経済フォーラムに出席した。最終日,ペルーが2013年の同フォーラムの開催国として選出された。

(7)ポーランド外務副大臣のペルー訪問
 19日,Stelmachポーランド外務副大臣がペルーを訪問し,ベラウン外務副大臣と会談した。Stelmachポーランド外務副大臣は,輸送,鉱業及び軍事産業関係者と共に訪問しており,ペルーとの経済・貿易関係強化への関心から,国防省,鉱山エネルギー省及び運輸通信省の各副大臣の他,投資庁長官等とも会談した。

(8)外相のメキシコ訪問
 19日,ロンカリオロ外相は,メキシコを訪問し,エスピノサ・メキシコ外相と第8回共通関心事項における政策協議を行った。両外相は,二ヶ国,地域,グローバルの協力のルートマップを提案した他,麻薬密輸及び組織犯罪対策等の具体的メカニズムで合意した。また,両国がAPEC,太平洋同盟,CELACのメンバーであることから,地域レベルでの更なる統合を促進するための経済基盤を有していることで一致した。

(9)EUと南米諸国の麻薬前駆物質対策協力協定への署名
 19〜20日,リマにEU並びにボリビア,チリ,コロンビア,エクアドル及びペルーの代表及び専門家が集い,麻薬精製のための化学薬品等,麻薬前駆物質対策における情報交換を促進するための協定に署名した。

(10)ウクライナ外相のペルー訪問
 27日,ラテンアメリカ諸国訪問の一環として,グリシチェンコ・ウクライナ外相がペルーを訪問し,ウマラ大統領及びロンカリオロ外相の他,内相,国防相と会談した。

(11)中国との民法・商法に係る司法共助協定の批准文書の交換
 26日,ペルー及び中国は,民法・商法に係る司法共助協定の批准文書の交換を行った。これにより,中国にいるペルー人は,ペルー司法制度が中国人に対して与えるものと同様の保護を受ける他,民法・商法に係る司法共助を受けることが可能となる。

 

 

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