ペルー政治情勢 2009年

5月の内政と外交


1 概要

(1)内政面では、ウマラ国民主義党(PNP)党首のナディン・エレディア夫人の多額の収入を批判する報道がされた。PNP議員はこれに対抗して、ガルシア大統領夫人やケイコ・フジモリ議員の夫の収入源の調査をすべきと主張した。

(2)外交面では、北朝鮮外相がペルーを訪問し、大統領、外相及び議会議長と会談を行った。また、ボリビアの元閣僚の政治亡命を巡り、ボリビア政府から批判された。

(3)フジモリ元大統領に対する裁判に関しては、第2の案件を担当する予定であった判事3名に対する忌避請求の結果、1名に対して認められた。また、同元大統領の兄弟に対する再審が決定された。

 

2 内政

(1)監査庁長官

3人目の候補者として複数名が選出された中、ファウッド・コウリ氏とフリオ・グティエレス氏の両者が最終的に候補者となり議会で検討され、5日、ガルシア大統領は公認会計士であるコウリ氏を監査庁長官として推薦した。13日、議会本会議でコウリ氏の監査庁長官任命が承認された。

 

(2)ナディン・エレディア、ウマラ夫人の違法な収入疑惑

5日、ナディン・エレディア、ウマラPNP党首夫人が、チャベス大統領と関連するベネズエラの新聞社及びアレキパ州の民間会社から収入を得ているとして、収入源を疑問視する報道がされた。7日、野党派議員は、アプラ党議員により提出されたウマラPNP党首及びエレディア夫人の収入を調べる議会調査委員会の設置案に反対した。他方、8日、エレディア夫人は、議会内の会見場にて、アプラ党による収入調査提案は、ガルシア大統領の関係あるセクターによるウマラPNP党首及び政党に対する迫害であると述べた。また、ベネズエラの新聞社及びアレキパの民間企業にコンサルタントサービスを提供しており、右収入に伴う所得税等の支払いを行っていると説明した。また、クレジット銀行に対し、収入の総額情報を漏洩した責任を問うた。

PNP議員は、ピラール・ノレス・ガルシア大統領夫人及びケイコ・フジモリ議員の夫の収入のための議会調査委員会の設置を要請する発言をした。

 

(3)議会「ALBAの家」調査委員会の報告書

7日、議会本会議にて、「ALBAの家」調査委員会が提出した、「ALBAの家」はチャベス政権の拡張計画の一環をなしており、司法命令により解体を勧告する最終報告書を賛成45票、反対33票、棄権4票で承認することを決定した。

 

(4)新型インフルエンザ

メキシコで発生した新型インフルエンザを受けて、メキシコとの航空便の乗り入れを停止していたが、13日、同停止措置を解除した。14日にはペルー国内で初の感染者が確認された。31日までに、感染確認数は40名となった。

 

(5)ガルシア大統領の支持率(アポヨ社による全国世論調査結果)

(イ)全国

          今回  前回(4月)

支持        30% 32%

不支持       62% 63%

わからない・無回答  8%  5%

(ロ)地域別支持率(下段括弧内、前回〈4月〉)

 リマ    北部    中央部   南部   アマゾン

 38%   28%   19%   16%   23%

(35%) (42%) (26%) (14%) (17%)

 

3 外交

(1)北朝鮮外相のペルー訪問

6日、ガルシア大統領は、朴宜春(パク・ウィチュン)北朝鮮外相と大統領府にて会談した。同外相には、Ri Mun Gyu大使、Bak Kun Gwang移動大使、Ho Yong Bok米州局長、Kim Hak Cholアジア・アメリカ課長が同行した。

7日、ガルシア・ベラウンデ外相は、朴宜春北朝鮮外相一行と会談し、両国の共通の関心のテーマである農業や再生可能エネルギー分野における協力を中心とした二国間アジェンダに関して協議した。同外相は、朝鮮半島の非核化及び同地域の和平と安定維持の目に見える解決を模索するための現実的な代替案を築くメカニズムである6者会合の即時の再開に対するペルーの呼びかけを繰り返した。

7日午後、ベラスケス・ケスケン議会議長は、朴北朝鮮外相と会談し、両国の友情の絆を強めるペルー北朝鮮友好議連の設立が提案された。同会談には、北朝鮮側からRi Mun Gyu大使、ペルー議会側からサンティアゴ・フジモリ議会外交委員長が同席した。

 

(2)ボリビア元閣僚に対する政治亡命

8日、ガルシア・ベラウンデ外相は、ペルー政府がサンチェス・デ・ロサダ元ボリビア大統領第二政権期(2002〜03)の閣僚の1名である、ホルヘ・トレス・オブレアス元ボリビア経済開発大臣の政治亡命を承認し、残り2名の申請を検討中であると明らかにした。

他方、ボリビア司法当局はサンチェス・デ・ロサダ政権期の元閣僚に対する、2003年10月に起きた抗議運動鎮圧の際の約60名の活動家の死亡に関する公判を今月18日に行うことを決定した。ペルーに政治亡命を求めている他2名は、ミルタ・ケベド元国民参加大臣及びハビエル・トレス・ゴイティア元保健大臣で、両者とも右案件で裁判にかけられている。

これに対し、8日、アルセ・ボリビア国防大臣は、ペルー政府に対して、3名の元ボリビア閣僚の政治亡命を却下するよう求めた他、10日、モラレス・ボリビア大統領は、ボリビア元閣僚の政治亡命を承認したことに関し、ガルシア大統領を「下卑た(chabacano)」同僚と呼び、ペルーへ亡命した犯罪者を追い出すよう求め、ペルー政府が亡命を認めることは大いなる過ちを犯すことであり、元閣僚の申請を却下するよう求めた。

 

(3)ガルシア・ベラウンデ外相のチェコ訪問

11〜15日、EU・リオ・グループ大臣会合、EU・アンデス共同体大臣会合等出席のため、ガルシア・ベラウンデ外相はプラハを訪問した。また、同外相は、第16回ユーロ商工会議にて、ヨーロッパの企業関係者を前に、ペルー経済の安定性及び投資の避難所となる利点を主張した。

 

(4)チリ上院議員のペルー訪問

18日、レテリエル・チリ上院議員(社会党)及びシルバ・チリ上院議員(全国改革党)は、ペルーを訪問し、大統領府にてガルシア大統領と会談した。サンティアゴ・フジモリ議会外交委員長が同席した右会談では、両国の経済面、文化面及び、教育面において意見交換が行われたほか、両国の多様性の重要性を指摘した。

 

4 フジモリ元大統領の裁判

(1)最高裁特別刑事法廷の3名の判事に対する忌避要請

ナカサキ弁護士は、第2の案件である「モンテシノス元国家情報局(SIN)顧問に対する1500万ドルの慰労金支払い」を担当する予定であったサン・マルティン判事、プリンシペ判事、プラド判事の3名の判事に対し、忌避要請を行った。

20日、最高裁特別刑事法廷にて忌避要請に係る意見聴取が行われ、ナカサキ弁護士は、右3名の判事は、既に人権侵害案件の判決において、フジモリ元大統領とモンテシノス元SIN顧問の間に犯罪上の関係があったと認定し、公平性に問題があると主張した。また、プリンシペ判事に関しては、同事件におけるフジモリ政権期の元閣僚に対する有罪判決を支持する意見を述べており、既に偏った認識があると主張した。

22日、最高裁特別刑事法廷は、サン・マルティン判事及びプラド判事に対する忌避要請を却下した。プリンシペ判事に関しては、同「モンテシノス元国家情報局(SIN)顧問に対する1500万ドルの慰労金支払い」案件において、元閣僚に対して下された判決に関与したため、忌避要請を認めた。

また、ナカサキ弁護士は、最高裁に対しフジモリ元大統領に下された「バリオス・アルトス事件及びラ・カントゥータ事件」並びに「陸軍諜報局(SIE)地下における誘拐事件」における25年の有罪判決の上訴を担当する最高裁第一臨時刑事法廷の判事に対する忌避を要請した。同弁護士は、ドゥベルリ判事長が、最高裁刑事法廷による同元大統領に対する有罪判決を支持したとされるビリャ・ステイン裁判所長官の記者会見に同席していたこと、また、バリオス判事、バランディアラン判事及びネイラ判事に関しては、暫定的な最高裁判事であることを忌避の理由としたと述べた。

 

(2)フジモリ元大統領の兄弟に対する裁判差し戻し判決

ドゥベルリ判事長率いる最高裁第一臨時刑事法廷は、フジモリ元大統領の兄弟であるフアナ、ロサ、ペドロの3名に対してリマ高裁第二汚職法廷により下された無罪判決を無効とした。フアナ、ロサ、ペドロの3名は、NGOアペンカイによる不正行為における共同謀議罪に関して、再度リマ高裁汚職第二法廷にて裁かれることとなる。リマ高裁汚職第二法廷は近日中に、現在国外にいる右3名に対する公判の日程を定める。

フジモリ元大統領の兄弟3名は、NGOアペンカイが日本の様々な機関及び国民から寄付として受け取った2千万ドルを不正使用した容疑に問われている。



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