ペルー政治情勢 2012年
5月の内政と外交
1 概要
(1)10日,国防相及び内務相が,クスコ州における誘拐事件に対応した軍人・警官に対する処遇を巡り,辞意を表明し,その後辞任した。14日,新たな国防相,内務相及び生産相が就任した。 (2)クスコ州エスピナル郡にて,ロイヤリティーの拡大を要求する抗議運動が行われ,事態の鎮圧にあたった警官との衝突から死傷者が発生した。 (3)ウマラ大統領は,日本及び韓国を訪問した。同大統領は初のアジア訪問で,天皇陛下との会見,野田総理及び李明博韓国大統領との会談等を行った。
2 内政
(1)チャビン・デ・ワンタル人質救出作戦に係る裁判 2日,オタロラ国防相は,日本大使公邸人質占拠事件チャビン・デ・ワンタル救出作戦の際に処刑がなかったことを証明する,国家警察による新たな弾道に関する鑑定報告書及び法医学報告書が,裁判における新たな要素として,国務省国家訴訟代理人により第3刑事清算法廷及び米州人権裁判所に提出される旨発表した。 14日,第3刑事清算法廷は,作戦の際に処刑があったとする検察の仮説を覆すための鑑定報告書は,証拠としてではなく,参考資料として裁判に含めることを決定した。
(2)漁業副大臣の交代 4日,マフルフ漁業副大臣は,生産省による漁業分野の管理形態に関し,大いなる相違と不満があるとして辞任した。後任には,パストール前水産技術研究所(ITP)総裁が任命された。
(3)カランサ元経済財政相への憲法弾劾請求 国会常設委員会は,ガルシア政権期のカランサ元経済財政相を,農業債務の再構築を行った際に,法律を適用しなかったことを理由に,憲法弾劾請求を行う旨決定し,2名の議員に弾劾請求の資料作成を命じた。後に本会議にて,同請求につき議論される予定。
(4)閣僚の交代 10日,オタロラ国防相及びロサダ内務相が,クスコ州における誘拐事件の対応にあたった軍人及び警官の処遇を巡り辞意を表明し,その後辞任した。 14日夜8時過ぎ,大統領府にて新たな国防相,内相及び生産相の宣誓式が行われた。 ア 国防相:ホセ・ウルキソ・マヒア(Jose URQUIZO Maggia)(45歳) 生産相より国防相に横滑り。与党国会議員(アヤクチョ州選出,再選)。 イ 内相:ウィルベル・カリェ・ヒロン(Wilver CALLE Giron)(66歳) 国防政策副大臣より内相に任命。退役将軍。 ウ 生産相:グラディス・トリベニョ・チャン・ハン(Gladys TRIVENO Chan Jan) 生産省・零細小企業・産業副大臣(12年3月〜)から任命。弁護士。
(5)フニン州における爆発事件 17日,フニン州ワンカヨ郡ワンカヨのフニン州政府庁舎裏にて爆発が発生し,州庁舎の鉄柵を破壊した他,ワンカヨ郡庁舎,郵便局等の公的施設にも物的被害を生じた。
(6)アチャ議員に対する暴行に係る調査 15日,検察は,アチャ議員(与党「勝利するペルー」,アヤクチョ州選出)に対し,暴行疑惑での調査を開始した。同議員は,本年2月,プカルパ州コロネル・ポルティーリョ郡で,元プレス対策顧問に対し性的暴行を行った疑惑が持たれている。
(7)クスコ州エスピナル郡ティンタヤ銅山における抗議活動 19日,クスコ州エスピナル郡にあるティンタヤ銅山で,開発を行っているスイスのエクストラータ社から銅鉱山地域住民へのロイヤリティーの拡大の請求,及び同鉱山の操業により付近の河川が汚染されたと訴える地元住民による抗議活動が開始された。28日には抗議活動側に2名の死者が出た他,複数の負傷者が発生した。 同地域に,29日から30日間の非常事態宣言が発令され,29日には,抗議を先導していたカリャワンカ郡長の身柄が拘束された。
(8)大統領の支持率(括弧内前回4月) ア ダトゥム社:4〜7日実施,全国(対象:1,212名) 支持 55%(57%) 不支持 37%(34%) イ アポヨ社:16〜18日実施,全国(対象:1,219名) 支持 51%(56%) 不支持 40%(34%) ウ CPI社:16日〜19日実施,全国(対象:1,450名)(括弧内前回3月) 支持 49.1%(52.6%)不支持 41.1%(34.2%)
3 外交
(1)パナマとのFTA発効
1日,パナマとのFTAが発効した。
(2)大統領の日本・韓国訪問
8〜12日,ウマラ大統領は,日本と韓国を公式訪問し,ナディン夫人,ロンカリオロ外相,カスティーリャ経済財政相,シルバ通商観光相が同行した。
8〜10日の訪日では,天皇皇后両陛下との会見,野田総理及び横路衆議院議長との会談の他,日・ペルー経済協議会(CEPEJA)及び企業家との会合に出席した。
10〜12日の韓国訪問では,李明博大統領との会談,麗水万博のペルー館のテープカット,ウルサン市の石油化学プラントの視察等を行った。
(3)金星煥(Sung-Hwan Kim)韓国外交通商部長官のペルー訪問
23〜24日,金星煥(Sung-Hwan Kim)韓国外交通商部長官が,ペルーを訪問し,ウマラ大統領を表敬した他,ロンカリオロ外相と会談した。金長官は,7月に国際農業協力センターを開設する予定であること,ペルーにおいて,韓国及びペルー海洋調査地域研究ラボラトリーを稼動させ,ペルーの科学技術センター設立のために韓国が協力を行う旨述べた。
(4)ロンカリオロ外相のスウェーデン・ロシア訪問
28日,ロンカリオロ外相はスウェーデンを訪問し,ビルト(Carl Bildt)外相と会談した他,在スウェーデン・ペルー大使館を公式に再開させた。また,スキム(Joakim Skymme)文化副大臣とも会談し,スウェーデンの博物館に保管されているパラカス文化の185点の考古学的発掘品のペルーへの返還方法につき,協議した。
なお,ロンカリオロ外相は,スウェーデンに先立ち25日から27日までパリを訪問し,国際司法裁判所で裁判中のペルー・チリ領海問題に関してペルー側弁護団との打ち合わせを行った。
29日,外相はラブロフ・ロシア外相と会談し,教育・軍事分野の複数の協定に署名した他,企業家との会合に出席した。
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