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ペルー政治情勢 2010年
6月の内政と外交
1 概要
(1)7月5日の締め切りに向けて,各政党内で地方選挙に出馬する候補者選出のための党内選挙等が行われた。
(2)外交面では,ガルシア大統領がオバマ政権となってから初めて米国を訪問し,オバマ米大統領と会談した。また,複数閣僚と共にブラジルのマナオスを訪問し,ルーラ・ブラジル大統領と会談した他,二国間の閣僚間会合が行われた。
(3)第40回OAS総会がリマで開催され,各国の外相等の代表が参加し,「米州における平和,安全及び協力」を主題とする各種会合の後にリマ宣言が採択された。
2 内政
(1)憲法裁判所判事の選出
4日,議会本会議にて,ラモス憲法裁判所判事候補に対する投票が行われたが,アプラ党議員が棄権し,承認に必要な81票に賛成票が達さず,承認されなかった。ラモス候補に対する投票は改めて行われることとなった。
10日,議会本会議にて,ウルビオラ同候補に対する投票が行われた結果,84票の賛成を得て,同候補の判事任命が決定された。憲法裁判所の7名の判事の内2名は,昨年12月に任期が終了しているが,後任判事の決定が遅れている。
(2)再選を目指す州知事の休職申請
5日,再選を目指す州知事,副州知事,州議会議員が,同様のポストに立候補するための休職を申請する期限を迎え,州知事では,タクナ,ラ・リベルタ,ピウラ,リマ,トゥンベス,アンカシュ,イカ,ロレト,ウカヤリ,サン・マルティン,アレキパ,ワンカベリカ,マドレ・デ・ディオス州の13名が再選を目指すために休職を申請した。コウリ前カヤオ州知事は,リマ市長選を目指すため,選挙6ヶ月前である4月に辞職済み。
(3)軍事法廷等のための行政立法権限の許可
10日,議会は,政府に対し,軍事法廷,軍の武力の行使及び有罪判決を受けた警察官及び軍人に対する訴訟規則等の法整備のため,60日間の行政立法権限を許可する旨決定した。
(4)ナスカの地上絵遊覧飛行機のハイジャック
10日,ナスカの地上絵を遊覧する飛行機がハイジャックされた。同機には,鉱山会社の従業員とする8名の乗客がいたとして,乗客は身分を偽り,同機をアプリマック・エネ河渓谷(VRAE)地域,又はブラジルとの国境地域に麻薬密輸のために利用したのではないかと推測された。パイロット2名は,30日,ブラジルと国境を接するマドレ・デ・ディオス州で無事発見された。機体は,ブラジル国内で違法に利用されていると見られる。(8月11日,リマ市ルリン区にて,ハイジャック犯の1名とされる容疑者が逮捕された。)
(5)議会における閣僚に対する質疑応答
15日,議会にて,閣僚に対する質疑応答が行われ,ベラスケス・ケスケン首相に対する政府の汚職対策,ガルシア・ベラウンデ外相する国際司法裁判所におけるチリとの領海境界線画定問題の進捗,アラオス経済財政相に対する各種投資計画等が取り上げられた。
(6)地方選挙に向けた各党の候補者選出
7月5日までに,10月3日の地方選挙の候補者リストを選挙管理委員会に提出する必要がるため,各政党は党内投票等で,地方選挙に出馬する候補者選びを行った。
(7)全国世論調査結果(アポヨ社):ガルシア大統領の支持率
ア 全国
今回 前回(5月)
支持 27% 26%
不支持 69% 69%
わからない・無回答 4% 5%
イ 地域別支持率(括弧内、前回〈5月〉)
リマ 北部 中央部 南部 アマゾン
30% 30% 22% 20% 16%
(32%) (26%) (20%) (19%) (14%)
3 外交
(1)ガルシア大統領の米国訪問
5月31日,ガルシア大統領は米国を訪問し,1日,ホワイトハウスにてオバマ米大統領と会談した。ガルシア大統領は,会談後,オバマ米大統領との共同記者会見にて,ペルーは,経済を開放し,投資を呼び込んだことにより,貧困削減,雇用の増大及び国際危機下でも経済成長を実現することができたと述べた。また,社会主義的な国家資本主義の影響は,南米において減少しているとし,オバマ米大統領と,地球規模の課題について協議し,核不拡散の必要性について一致したと述べた。オバマ米大統領は,両国の友好関係を強調し,ペルーの強固な民主主義及び経済面での成功について述べた。
(2)米国上院議員のペルー訪問
4日,民主党のクリストファー・トッド米上院議員及びマーク・ワーナー米上院議員がペルーを訪問し,ガルシア大統領と会談し,ペルーの経済成長を評価した他,核不拡散の必要性について確認した。
(3)第2回ペルー・エクアドル相互信頼と安全保障に関する二国間協議の開催
4日、第2回ペルー・エクアドル相互信頼と安全保障に関する二国間協議が開催され,両国の外務副大臣他,国防副大臣,三軍統合司令官,陸軍司令官等が出席した。同会合にて,標準化され透明な防衛費算出の方法のための二国間作業部会の設置,対人地雷撤去,自然災害,緊急時及び基本的サービス提供のための市民プログラムの開発等が協議された。
(4)第40回OAS総会の開催
6〜8日,「米州における平和,安全及び協力」を主題とする第40回OAS総会がリマで開催され,OAS加盟国代表者他,オブザーバー国代表者等が出席した。3日間に渡る各種会合の後,第41回総会をエルサルバドルで開催することが決定された他,リマ宣言が採択された。
(5)クリントン米国務長官のペルー訪問
7日,OAS総会に出席すると共に,ペルーを公式訪問したクリントン米国務長官は,大統領府にてガルシア大統領と会談し,ペルーの経済成長及び貧困削減等を称賛する旨述べた。ガルシア大統領は,米国とペルー及びラテンアメリカ間の友好及び協力の新たな推進を強調した他,両国が国民の安全,環境保護等で意見が一致した旨述べた。
(6)クリントン元米大統領のペルー訪問
8日,ガルシア大統領は,ペルーを訪れた,グローバルイニシアティブ基金の会長を務めるクリントン元米大統領と会談した。
(7)コレア・エクアドル大統領のペルー訪問
9〜10日,コレア・エクアドル大統領が,ペルーを国賓訪問し,ガルシア大統領と首脳会談を行った他,署名式への立ち会い等を行った。両大統領は,毎年行われている両国の首脳会談及び合同閣議を評価した他,両国の統合へ向ける取組を強化することで合意した。また,外国において両国を代表する「二ヶ国大使館」の設置でも合意した他,ペルー・チリ領海境界線画定問題についても意見交換を行った。
(8)ガルシア大統領のブラジル訪問
16日,ガルシア大統領は,ブラジルのマナオスにおいて,ルーラ・ブラジル大統領と会談した。両大統領は,統合,国境,エネルギー,貿易及び技術協力を含む二国間のアジェンダについて意見交換を行った他,両国の複数の閣僚が大統領に同行し,会合を行った。
(9)ピニェラ・チリ大統領との電話会談
21日,ガルシア大統領は,ピニェラ・チリ大統領と電話で会談し,ロシア製ヘリコプターの購入をペルーに優先してくれたこと及び国内のオランダ人の殺人容疑者の身柄拘束及び引渡し等に感謝した他,二国間関係について意見交換を行った。 |