ペルー政治情勢 2008年

7月の内政と外交


1 概要
(1)複数の閣僚の交代が取り沙汰されていたが、カランサ経済財政大臣の辞任によりバルディビエソ経済財政大臣が就任した以外は、閣僚の異動はなかった。議会では新たに与党アプラ党のベラスケス・ケスケン議長が選出された他、野党勢力内で協力関係の中断及び新たな議員グループの形成などの動きがあった。28日の独立記念日には、現政権3年目を迎えるに当たり大統領教書が発表された。
(2)外交面では、ガルシア大統領が独立記念行事に際しコロンビアを訪問し、ウリベ・コロンビア大統領、ルーラ・ブラジル大統領と会談し、3ヶ国国境地帯の違法行為への対処及びインフラ整備等に関する合意に達した。また、ガルシア・ベラウンデ外相は、ベルギー及びオランダを訪問し、中南米EUサミットのフォローアップを行った他、EUとアンデス共同体(CAN)の連携協定交渉に関する意見交換が行われた。
(3)フジモリ元大統領に対する人権問題に関する裁判は、週に3回開廷され、証人による証言が続いた。

2 内政
(1)全国反汚職事務局(ONA)の局長の辞任
 カロリナ・リサラガONA局長が、健康問題を理由として辞表を提出し、7日付で受諾された旨の大統領決議が官報に公告された。(8月9日、政府はONAを廃止し、機能を会計監査院に譲渡することを決定したとデル・カスティーリョ首相が発表した。)

(2)全国規模のスト実施
 9日、全国労働者総連盟(CGTP)により呼びかけられた全国規模のストが実施されたが、大きな混乱を引き起こすことなく終了した。しかし、ワンカベリカ州では発電所が抗議運動者に占領された他、マドレ・デ・ディオス州の州庁舎が放火された。また、アルバ・カストロ内務大臣は、暴力行為を行った800名以上の人々の身柄が拘束されたと報告した。

(3)経済財政大臣の交代
 カランサ経済財政大臣が辞表を提出し、14日、バルディビエソ新経済財政大臣の就任式が行われ、同大臣が宣誓を行った。バルディビエソ大臣はIMFにて長年の勤務経験を有し、世界各国の経済政策を見てきた経済の専門家である。

(4)チャビン国立博物館の開館式
 18日、ガルシア大統領は、アンカッシュ州のチャビン国立博物館の開会式に出席した。同博物館は日本政府の文化無償援助により建設され、目賀田在ペルー日本大使、バルディビア・エネルギー鉱山大臣、バクラ文化庁長官等も同席した。

(5)新たな警察車両の配備
 25日、ペルー国家警察に対する700台(トヨタ車400台、日産車300台)の新たな警察車両の引渡式が行われた。同式典にはガルシア大統領も参加し、事務手続きで多くの問題を抱えた警察車両の調達を無事達成したアルバ・カストロ内務大臣を称すると同時に、現政権で1万3千名の警官が増加したことに言及し市民生活の安全確保を訴えた。

(6)議会の議長選挙
 26日、7月28日からの1年間の議長・副議長を選出する選挙が行われ、アプラ党のベラスケス・ケスケン議員を議長とするリストが選出された。新議長及び副議長は以下の通り。
●議長:ハビエル・ベラスケス・ケスケン(Javier VELASQUEZ Quesquen)(アプラ党)
●第1副議長:アレハンドロ・アギナガ・レクエンコ(Alejandro AGUINAGA Recuenco)(フジモリ派、秘日友好議連メンバー)
●第2副議長:アルバロ・グティエレス・クエバ(Alvaro GUTIERREZ Cueva)(人民ブロック)
●第3副議長:ファビオラ・モラレス・カスティーリョ(Fabiola MORALES Castillo)(国民統一、秘日友好議連副会長)

(7)大統領教書の発表
 187年目の独立記念日にあたる28日、議会にて大統領教書が発表された。ガルシア大統領は1時間45分におよび、これまでの進展および反省点からなる教書を発表した。文化省の設立の提案意外に特に目新しい点はなく、これまでの政府の取組の成果を強調しつつ、政策を継続していくという内容であった。

(8)2政党の協力関係の中断及び新たな議員グループ「国民統一(Union Nacional)」の形成
 30日、ファビオラ・モラレス議員(国民連帯党:SN、秘日友好議連副会長)及びワルテル・メンチョーラ議員(SN)は、議会内勢力である国民団結連盟(UN)を共に形成していたキリスト教人民党(PPC)に、同党との協力関係を中断したい旨書簡にて伝えた。同日、SN及びPPCは共同声明にて連盟を中断したと発表した。
 UNに所属していたSNの議員2名、議員連盟(AP)所属の国民復興党の議員2名及び民主特別議員グループを形成していたレノバシオンの議員2名の計6名が、新たな議員グループ「国民統一」を形成し、議会事務局に登録した。

(9)ガルシア大統領の支持率
(イ)全国
            今回        前回(08年6月)
支持          26%       30%
不支持         70%       67%
わからない・無回答    4%        3%

(ロ)地域別支持率(下段括弧内、前回〈6月〉)
 リマ      北部     中央部     南部    アマゾン
 30%     32%     18%    11%    10%
(39%)   (26%)   (30%)   (7%)  (11%)

3 外交
(1)ボリビアとの問題
 モラレス・ボリビア大統領が、ペルーに米軍基地設置の可能性があるとして、ペルーに対し批判的な発言をしたことに関し、1日、ガルシア大統領は、モラレス大統領にペルーの内政干渉をすべきではないとマスコミに対して述べた。
 5日、ペルーは米州機構(OAS)に対して、モラレス大統領による継続的な介入に関する報告書を提出した。7日、サバラ駐OASペルー代表は、同報告書は同大統領に対する何らかの警告等を出すよう要求する性格のものではなく、単なる報告である旨主張した。

(2)国防大臣のエクアドル訪問
 4日、フローレス・アラオス国防大臣はエクアドルを訪問し、ポンセ・エクアドル国防大臣と両国の軍隊における相互信頼と人権及びジェンダー政策の促進に関する共同声明に署名した。また、両大臣は国境地帯における人道的地雷の撤去作業のための援助を共同でOASに要請することを検討した。また、自然災害の際の支援活動の協力、国連及びOASの平和ミッションへのさらなる参加等に関して話し合った。

(3)エルサルバドル外相のペルー訪問
 8日、アルゲタ・エルサルバドル外相がペルーを訪問し、ガルシア・ベラウンデ外相と会談した。右会談では二国間関係に関して、意見交換を行った他、環境分野における協力協定及びラ・モリーナ国立農業大学とエルサルバドル全国農業学校間の協力協定に署名した。アルゲダ・エルサルバドル外相は、ゴンサレス・ポサダ議会議長とも会談をし、「エルサルバドル・ペルー友好議連」の設立に関して話し合われた。

(4)外相のベルギー及びオランダ訪問
 11〜14日、ガルシア・ベラウンデ外相は、ベルギー及びオランダを訪問した。ベルギーではデ・グフト・ベルギー外相及びマイケル開発協力大臣と会談した。また、マンデルソンEU通商担当委員及びフェレロ・ワルドナーEU外務委員とは、第5回中南米EUサミットのフォローアップ、EU・アンデス共同体の連携協定交渉の進展具合及び移民に対する処置等に関する意見交換を行った。
 オランダでは、同外相はフェルハーヘン・オランダ外相と会談を行い、二国間関係及びEUとアンデス共同体関係等に関して話し合いをした他、国際刑事裁判所所長や企業関係者と会談を行った。

(5)ガルシア大統領のコロンビア訪問
 20日、ガルシア大統領は、ウリベ・コロンビア大統領及びルーラ・ブラジル大統領との三者会談及びコロンビア独立記念日行事参列のため、コロンビアのレティシアを訪問した。コロンビア独立記念日の記念行事では、ガルシア大統領は軍によるFARC人質の解放作戦を評価すると共にコロンビアの和平化に向けた取組が地域の良い見本となっていることを賞賛した。
 ウリベ・コロンビア大統領、ルーラ・ブラジル大統領との3ヶ国首脳会談では、国境地域の河川における違法行為との闘い、麻薬密輸、武器の密輸及びその他の犯罪に共同して対処することを目的とする覚書に署名した。また、国境地域のインフラ整備を行うことで合意した。

(6)コロンビア副大統領のペルー訪問
 独立記念日の式典に参加するため、サントス・コロンビア副大統領がペルーを訪問し、29日、軍事パレードを鑑賞した他、大統領府にてガルシア大統領と会談を行った。

(7)中国政府からの地雷撤去のための支援
 30日、エクアドルとペルーの国境地帯の対人地雷撤去のため、中国政府は10万ドルの贈与をした。同贈与は、オタワ条約及び両国の和平協定にて合意された国境地帯にある3万個近い地雷の撤去に利用される。

(8)ペルーのOECD投資委員会への参加
 31日、OECDは、ビジネス環境の改善及び貧困削減の進展を考慮し、ペルーが「国際投資に関する宣言」及び投資委員会の活動に参加する41番目の国となったことを発表した。信用格付会社であるスタンダード&プアーズ社及びフィッチレーティング社による投資適格をペルーが最近獲得したことも含め、国際的な機関による肯定的な評価も考慮された。

4 フジモリ元大統領に対する裁判
 週に3日、人権問題に関する公判が行われている。証人としてビリャヌエバ元陸軍司令官(91年)、エルモサ元陸軍司令官、ブリオネス元内務大臣(1992年の憲法停止措置当時)、ソサ・サアベドラ陸軍諜報局(SIE)員が出廷した。
 6月末の公判にモンテシノス元国家情報局(SIN)顧問が、途中までは証人として証言をしたが、突然黙秘権を行使したことに関し、特別刑事法廷は右証言を無効とする旨決定した。また、10日には、再度国立がん研究所において舌の一部の切除手術を受け、翌日11日(金曜日)の公判は中止となった。

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