ペルー政治情勢 2010年

7月の内政と外交

 

1 概要

(1)28日の独立記念日に,ガルシア大統領は議会にて教書を発表した。現政権最後となる教書発表では,5年間の成果を挙げた他,反省点にも触れた。
(2)27日,カミセア天然ガスの輸出に反対する住民による抗議運動が活発化し,警察と衝突し負傷者が発生した。
(3)外交面では,ルゴ・パラグアイ大統領,サントス次期コロンビア大統領(当時),米政府環境担当大使等がペルーを訪問した。また,CAN議長国の交代式が行われ,議長国がペルーからボリビアに移った。

2 内政
(1)アンカシュ州知事代行の殺害事件
 12日,ラ・リベルタ州トルヒーヨ市内のパン・アメリカンハイウェイにて,アンカシュ州ホセ・ルイス・サンチェス・ミリャ(Jose Luis SANCHEZ Milla)知事代行が乗車する車両が襲撃され,同州知事代行が殺害された。同州知事代行は,再選を目指すアルバレス・アンカッシュ州知事の休職に伴い知事代行の職にあった。警察は、犯罪と政治目的の暗殺の両面から捜査をしたが、同ハイウェイで多発している一般犯罪グループの犯行の可能性が高いとした。

(2)文化省の設立
 22日、文化省(Ministerio de Cultula)創設法が公布された。文化省は,従来の文化庁(Instituto Nacional de Cultura)が省に格上げとなるもので、現ガルシア政権下で設置された環境省に次ぎ、18番目の省となった。

(3)南部大洋横断道路の1区間完成
 26日,南部大洋横断道路のイカ州サン・フアン・デ・マルコナからアプリマック州チャルワンカ間を結ぶ1区間が完成した。最終的にはブラジルの大西洋側まで繋がり,地域住民に経済効果をもたらすことが期待されている。

(4)議会議長選挙
 26日,議会にて議会議長選挙(任期:2010年7月〜2011年7月)が行われ、スマエタ議員(アプラ党)が新議長に,第一副議長にアギナガ議員(フジモリ派),第二副議長にラソ議員(国民連盟),第三副議長にエスピノサ議員(UPP)が選出された。今年は,野党派リストは提出されなかった。

(5)大統領教書
 28日,議会にてガルシア大統領は,5年目,かつ現政権最後となる大統領教書を発表した。同教書で,現政権下において成し遂げた成果として経済社会成長,貧困削減を伴う成長,安定した経済政策,民主主義及び規制を通じた社会的側面の強化の目標の進捗を数字を用いて強調して発表した他,汚職と治安等における反省点に言及した。また,天然ガスの輸出政策についても触れた他,外交政策の中で,FTAを準備している国として日本についての言及があった。

(6)独立記念日の軍のパレード
 29日,例年通り,ブラジル通りで軍のパレードが行われた。昨年は新型インフルエンザのため年末まで延期されたが,本年は通常通りに行われ,ガルシア大統領を始めとする三権の長,軍司令官,閣僚等が出席した。

(7)カミセア天然ガスの輸出に対する抗議運動
 5月からクスコ州内各地で,カミセア天然ガスの輸出政策に反対する住民が抗議運動を行っていたところ,27日,住民と警察官の衝突があり,複数名が負傷,及び身柄を拘束された。また,妨害行為がガスの輸送に支障をもたらす可能性があり,同州ラ・コンベンシオン郡エチャラテ村に対して非常事態宣言が発令され,警察及び軍が事態の収拾に従事することとなった。

(8)全国世論調査結果(アポヨ社):ガルシア大統領の支持率
ア 全国
         今回  前回(6月)
支持       30% 27%
不支持      65% 69%
わからない・無回答 6%  4%
イ 地域別支持率(下段括弧内、前回〈6月〉)
 リマ    北部    中央部   南部   アマゾン
 37%   27%   20%   19%   25%
(30%) (30%) (22%) (20%) (16%)

3 外交
(1)ルゴ・パラグアイ大統領のペルー国賓訪問
 6日,ルゴ・パラグアイ大統領がペルーを国賓訪問した。16年振りのパラグアイ大統領のペルー訪問であり,ルゴ大統領はガルシア大統領と会談した他,共同コミュニケを発表した。また,両大統領の立会いの下,両国閣僚は,港湾設備,経済補完策定等に関する覚書,輸出関係の協力合意等,計6つの文書に署名を行った。

(2)米アリゾナ州移民法に対する憂慮
 13日,ガルシア・ベラウンデ外相は,議会の在外ペルー人特別委員会にて,ペルーは,不法移民を犯罪者とする米国のアリゾナ州移民法の無効を求める提訴を支持する,メキシコが始めた「法廷の友人」と名付けられた国々及び組織に加わると述べた。また,在ロサンゼルス・ペルー領事が巡回領事館を担当する等,同移民法に対応する行動計画が作成されたと発表した。アリゾナ州には約7,000名のペルー人が居住しており,内40%は不法であるとされる。

(3)米政府環境関係担当者のペルー訪問
 13〜14日,スターン特使(気候変動担当大使),バレンスエラ国務省西半球担当次官補他がペルーを訪問し,ガルシア大統領,ブラック環境大臣との間で両国間の環境協力等に係る会談等を行った。米国代表団は,ペルー政府の環境保護に対する取組を評価した他,アマゾン地域の森林保全や違法伐採防止等を二国間の協力課題として協議することで一致した。

(4)マクリ・ブエノスアイレス市長のペルー訪問
 14日,マクリ・ブエノスアイレス州知事がペルーを訪問し,ガルシア大統領と会談し,南米地域のエネルギー統合,保健,教育等について意見交換を行った。

(5)第9回ペルー・チリ政策協議の実施
 21日、シュミット・チリ外務次官がペルーを訪問し、ポポリシオ外務副大臣と共に、第9回ペルー・チリ政策協議を行った。両者は、国境地域統合に関する合意のための会合開催及び両国間の貿易の活性化について協議した他、鉱業分野における協力の可能性、税関における協力等について検討した。

(6)CAN議長国の交代
 22日,リマ市内のアンデス共同体(CAN)事務局において,第22回外相会合及び議長国の交代式典が開催され,議長国がペルーからボリビアに移った。ガルシア・ベラウンデ外相は,加盟国間に立場の違いはあるが,統合維持のための関係者の尽力に感謝する旨述べた他,チョケワンカ・ボリビア外相は,更なるCANの統合を進めていく旨述べた。

(7)サントス次期コロンビア大統領のペルー訪問
 27日,サントス次期コロンビア大統領(当時)が当地を訪問し,ガルシア大統領と会談した。両者は,地域の課題克服及び経済関係の深化のために協働する意思を確認した。

4 フジモリ元大統領関連
 23日,フジモリ元大統領に対する「モンテシノス元国家情報局(SIN)顧問に対する1,500万ドルの慰労金支払い」及び「盗聴,マスコミ及び野党議員買収事件」の第二審を担当する5名の最高裁判事に対する忌避請求の審査が,最高裁特別法廷で行われ,ナカサキ弁護士の主張が聴取された。

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