ペルー政治情勢 2012年
7月の内政と外交
1 概要
(1)23日,バルデス首相が辞任し,ヒメネス法務人権相を首相とする新内閣が誕生し,5名が新たに入閣した(国防,内務,法務人権,保健,農業)。
(2)28日,政権1年目を迎えたウマラ大統領は,1年の成果及び今後の目標からなる大統領教書を発表した。
(3)外交面では,ベラウン外務副大臣がアラブ諸国を訪問し,10月の第3回南米アラブ諸国首脳会議(ASPA)への働きかけを行った他,インドを公式訪問した。また,グアテマラ,スペイン及びウルグアイの外相がペルーを訪問した。
(4)27日,メキシコシティで開かれた太平洋同盟閣僚会合に,ベラウン外務副大臣及びポサダ通商副大臣が出席した。
2 内政
(1)カハマルカ州における抗議運動及び非常事態宣言の発令
カハマルカ州セレンディン郡におけるコンガ鉱山開発に反対する抗議行動にて,抗議活動参加者3名が死亡した他複数の負傷者が発生したことから,4日から30日間の非常事態宣言が,同州カハマルカ郡,ワルガヨク郡及びセレンディン郡に発出された。
(2)VRAEM地区における軍への攻撃
4日,アヤクチョ州ワンタ郡リョケグアの対テロ基地がセンデロ・ルミノソとみられる武装グループから襲撃され,軍兵士1名が死亡した。
(3)テロリストから幼児の救出
5日,国家警察及び国軍の共同部隊は,アプリマク・エネ−マンタロ川(VRAEM)地域のアヤクチョ州ワンタ郡カナイレ近くで,SLのキャンプを発見し,拉致され戦闘員としての訓練を強制されていたとみられる1歳から9歳までの幼児11名を救出し,リマ市内の養護施設に保護した。
(4)地方における閣議の開催
ア ロレト州イキトス
13日,ロレト州イキトス市にて,閣議が行われた。同閣議には,バスケス・ロレト州知事も出席した。
イ モケグア州
19日,州都であるモケグア州ヘネラル・サンチェス・セロ郡オマテ区の教育省の施設にて,閣議が行われた。同閣議では,モケグア州の地方自治体関係者も出席し,同州の要望を聞き入れた。
(5)内閣改造:ヒメネス内閣
23日,バルデス首相が辞任し,ヒメネス法務人権相が首相に任命され,新内閣が誕生した。
首相:フアン・ヒメネス・マヨール(Juan JIMENEZ)(前法務人権大臣)
外務大臣:ラファエル・ロンカリオロ(Rafael RONCAGLIOLO)(留任)
国防大臣:ペドロ・カテリアノ(Pedro CATERIANO)(前米州人権裁判所におけるチャビン・デ・ワンタル案件担当国家訴訟代理人)
経済財政大臣:ルイス・ミゲル・カスティーリャ(Luis Miguel CASTILLA)(留任)
内務大臣:ウィルフレド・ペドラサ(Wilfredo PEDRAZA)(前国防政策副大臣)
法務人権大臣:エダ・リバス(Eda RIVAS)(前法務副大臣)
教育大臣:パトリシア・サラス(Patricia SALAS)(留任)
保健大臣:ミドリ・デ・ハビッチ(Midori DE HABICH)
農業大臣:ミルトン・フォン・ヘッセ(Milton VON HESSE)(前投資庁長官)
労働雇用促進大臣:ホセ・ビリェナ(Jose VILLENA)(留任)
生産大臣:グラディス・トリベニョ(Gladys TRIVENO)(留任)
通商観光大臣:ホセ・ルイス・シルバ(Jose Luis SILVA)(留任)
エネルギー鉱山大臣:ホルヘ・メリノ(Jorge MERINO)(留任)
運輸通信大臣:カルロス・パレデス(Carlos PAREDES)(留任)
住宅建設上下水道大臣:レネ・コルネホ(Rene CORNEJO)(留任)
女性社会的弱者大臣:アナ・ハラ(Ana JARA)(留任)
環境大臣:マヌエル・プルガル(Manuel PULGAR)(留任)
文化大臣:ルイス・アルベルト・ペイラノ(Luis Alberto PEIRANO)(留任)
開発社会包摂大臣:カロリナ・トリベリ(Carolina TRIVELLI)(留任)
(6)コリーナ・グループへの減刑
20日,ビリャ・ステイン法廷裁判長(前最高裁長官)率いる最高裁常設刑事法廷は,「ラ・カントゥータ事件,ペドロ・ヤウリ失踪事件及びエル・サンタ事件」に関し,モンテシノス元国家情報局(SIN)顧問,エルモサ元陸軍司令官,コリーナ・グループ構成員等に対し,一審判決より減刑した内容の判決を下した。
フジモリ元大統領に下された判決と相反する内容を含むため,同元大統領が判決見直し請求をする可能性がある旨報じられたが,ナカサキ弁護士は,対応を検討すると述べるにとどめた。
24日,ヒメネス法務人権相の指示を受け,同省訴訟代理部は最高裁の判決に対する憲法保護請求(amparo)を請求した他,全国司法審議会(CNM)は同法廷を調べることを決定した。
(7)国会執行部選挙の実施
ア 25日,国会執行部選挙の立候補が締め切られ,与党連合及び野党連合の双方から2つのリストが提出された。26日,投票が行われ,イスラ議員(与党勝利するペルー)を議長候補とするリストが85票を獲得して当選した。
イ 新執行部
国会議長:ビクトル・イスラ議員(勝利するペルー,ロレト州,秘日友好議連メンバー)
第一副議長:マルコ・ファルコニ議員(議員連盟,ワヌコ州選出)
第二副議長:フアン・カルロス・エグレン(大変革のための連合,アレキパ州選出)
第三副議長:ホセ・ルナ議員(国民連帯連合,リマ市・在外選出,友好議連メンバー)
ウ イスラ新国会議長は,就任演説にて,国民が模範となることを求める機関として,国会は,国民の声を代弁することを尊重する旨述べた。
(8)大統領教書の発表
独立記念日の28日,国会にてウマラ大統領が,各分野における政権1年目の成果及び2016年までの目標からなる教書を発表した。大変革のプロセスが進行中であり,市場開放経済を維持しながら社会的包摂を伴う成長を目指すことを強調した。
(9)大統領支持率(括弧内前回6月)
ア ダトゥム社:6〜10日実施,全国(対象:1,207名)
支持 45%(43%) 不支持 48%(49%)
イ アポヨ社:10〜13日実施,全国(対象:1,210名)
支持 40%(45%) 不支持 51%(48%)
3 外交
(1)ベラウン外務副大臣の第3回南米アラブ諸国首脳会合(ASPA)働きかけのためのアラブ諸国訪問
ア サウジアラビア:3〜4日,ジャンダン外務省二国間関係担当次官補,商工会議所事務局長及び湾岸協力評議会の法的顧問事務総長補との会談,並びに在サウジアラビア・ペルー大使館の開設。
イ バーレーン:5日,ハッサン・ファクロ産業通商大臣,産業商工会議所会頭及び外務省次官と会談。
ウ オマーン:7日,バドル外務省事務総長,外務省官房担当次官,通商産業副大臣及び商工会議所メンバーとの会合。
エ クウェート:9日,サバーハ首長及び外務副大臣との会談,副首相,外相及び内閣担当閣外相への表敬,外務省米州局長との会合,投資庁長官,商工会議所第一副会頭等企業家との会合。
オ イラク:11日,コサイ副大統領及び外務副大臣と会合。
(2)外務副大臣のインド訪問
12日,ベラウン外務副大臣はインドを公式訪問し,アハメド外務担当閣外相,国会議員及び企業家等と会談した。また,13日,同外務副大臣及びガナパティ・インド外務次官は,第5回ペルー・インド政策協議会合を行い,科学技術イノベーション発展のための具体的な協力プロジェクトの特定を行った。また,国防,エネルギー,鉱山,観光業,農業及び教育分野についても意見交換した。
(3)外務副大臣のアラブ諸国訪問
ア アラブ首長国連邦:16〜17日,サイード外務大臣補,通商大臣,経済開発大臣,及び,アドナン・アミン国際再生可能エネルギー機関(IRENA)事務局長との会談。
イ エジプト:19日,アル・アラビ・アラブ連盟事務局長及びアブデルワハブ・米OAS担当外務副大臣との会談。
(4)南米諸国連合(UNASUR)パラグアイ監視ハイレベルグループ会合
10日,ロンカリオロ外相は,レルネル前首相が,パラグアイ情勢監視のためのUNASURハイレベルグループを率いる旨発表。
23日,リマにて,同グループの第一回会合が開催され,レルネル元首相の他,各国からのメンバー5名(アルバレス大使(スリナム),マッタロリョ大使(アルゼンチン),パトリオッタ大使(ブラジル),エスクデロ氏(エクアドル),フェルマンドイス(チリ))が集まり,パラグアイのUNASUR復帰のための条件が定められた。
(5)グアテマラ外相のペルー訪問
18日,カバリェロス・グアテマラ外相がペルーを公式訪問し,ロンカリオロ外相と会談した。カバリェロス外相は,APECエコノミーへの参加及び太平洋同盟オブザーバーへの関心を示した。両外相は,麻薬密輸問題への憂慮を共有し,両国の内務省が協力することで合意し,2011年12月に署名された両国間のFTAの重要性を強調した他,科学技術協力基本合意の署名を祝福した。
(6)ラテンアメリカ統合連合(ALADI)事務総長のペルー訪問
19日,アルバレスALADI事務総長がペルーを訪問し,ロンカリオロ外相と会談した。ペルーは,UNASUR議長国として,アンデス共同体(CAN),メルコスール及びUNASURの統合促進へのコミットを確認した。
(7)アッバス・パレスチナ大統領特使のペルー訪問
20〜26日,アッバス・パレスチナ大統領特使及びアサフ農業相がペルーを訪問し,23日,ロンカリオロ外相と会談した。アッバス特使は,10月の第3回南米アラブ諸国首脳会議(ASPA)へのパレスチナ大統領の出席を確認した他,同時に行われる企業家会合への関心を示した。
(8)スペイン外務・協力相のペルー訪問
23〜24日,ガルシア・マルガージョ西外務・協力相がペルーを訪問し,ウマラ大統領及びロンカリオロ外相と会談した。外相会談では,文化教育及び麻薬対策に係る担当専門機関間の協力等につき協議した。
(9)ウルグアイ外相のペルー訪問
24日,アルマグロ・ウルグアイ外相がペルーを訪問し,ウマラ大統領及びロンカリオロ外相と会談した。ウルグアイ外相は,太平洋同盟オブザーバーへの関心を示した他,両外相は,二国間身柄引き渡し条約の批准書を交換した。
(10)太平洋同盟
27日,ベラウン外務副大臣及びポサダ通商副大臣は,メキシコシティにおける太平洋同盟大臣級会合に出席した。同会合では,物品,サービス,資本,人の移動の自由化のため関税の引き下げ及び出入国・税関制度の簡素化を促進することで合意した。また,4カ国間の協力を具体化するため,学生及び教員に対する奨学金の整備,更なる物流を促進するための調査,気候変動に係る研究ネットワークの立ち上げに係る方法を取り決めた。
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