ペルー政治情勢 2011年
8月の内政と外交
1.概要
(1)2日,大統領就任式での国会議員としての行動倫理を問われたマルタ・チャベス議員(フエルサ2011党)の120日間の議員資格が停止された。
(2)25日,レルネル首相が所信表明演説を行い,レルネル内閣が信任された。
(3)外交面では,ラブロフ・ロシア外相がペルーを訪問し,ロンカリオロ外相が初の外国訪問としてボリビアを訪問した。
2.内政
(1)マルタ・チャベス議員の議員資格停止
2日,国会本会議にて,マルタ・チャベス議員(フエルサ2011党)の120日間の議員資格が決定された。同議員は,7月28日,ウマラ大統領の国会における大統領宣誓の際,1979年憲法を尊重する旨述べたことに対し率先してシュプレヒコールを行ったため,議員としての行動倫理が問われた。非公開で行われた投票は,賛成72票,反対35票,棄権10票で,チャベス議員は,本会議終了後,国会規則で定められた手続に則っていないとして議員資格停止の決定を批判した。
(2)アンタウロ・ウマラに対する第二審判決
7日,最高裁常設刑事法廷は,警官が死亡したアンダワイラスにおける警察署襲撃事件により殺人罪,誘拐罪,反逆罪等の責任を問われ,第一審で禁錮25年の刑が下されたウマラ大統領の実弟のアンタウロ・ウマラに対し,禁錮19年の第二審判決を言い渡した。
(3)新政権による最初の措置
10日,ウマラ政権成立後,二回目の閣議が開催され,世界経済や国内治安状況の悪化に対する,世界経済情勢への対処,社会政策の早期・拡大実施,治安対策,透明性の確保からなる新政府としての最初の対応策が発表された。
(4)開発社会包摂省の創設に係る閣議決定
17日,ウマラ大統領の選挙公約を中心とした社会プログラム(年金給付,奨学金の付与,託児所の充実等)の企画・立案・実行・フォローアップを統合的に行う新しい政府機関,「開発社会包摂省」の創設に係る法案の閣議決定を行った。(9月22日,国会本会議にて開発社会包摂省の創設法案が承認され,10月20日に公布,同21日,トリベリ開発社会包摂大臣の宣誓式が行われた。)
(5)違法コカ葉栽培撲滅作戦
16日,政府は,アルト・ワリャガ地域のコカ葉栽培統制削減計画(CORAH)を無期限で中止し,作戦に従事していた500名の警察官を引きあげた。バルデス内務相は,作戦の中止は一時的なものであり,翌週にはコカ葉撲滅作戦は再開されると述べた。17日,リキンス駐ペルー米大使は,作戦中止を事前に通知してもらいたかった旨述べた。
23日,政府は,作戦を再開した旨発表した。
(6)ロレト州における地震発生
24日12時46分,ペルー東部ジャングル地帯のロレト州を震源地とする地震が発生した。マグニチュード7の地震で,揺れはリマ市内及びブラジル,エクアドル,ボリビア等近隣諸国でも感じられ,ロレト州及び隣接するウカヤリ州,フニン州では,学校や住居の一部がひび割れたり,軽度の怪我人が発生した。
(7)レルネル首相の所信表明演説
25日,レルネル首相が,国会にて所信表明演説を行い,質疑応答の後,信任投票が行われ,賛成90票,反対0票,棄権33票(フジモリ派)にて信任された。演説では,開発社会包摂省及び科学技術省の設置を含む4つの主要領域,法務省を法務人権省にする提案をした他,180日後の2012年2月に,国会にて改めて進捗状況を発表する旨述べた。
(8)大統領支持率(括弧内前回(7月)結果)
ア ダトゥム社:5〜8日実施,全国(対象:1,232名)
支持 62%(55%) 不支持 19%(31%) 未回答 19%(14%)
イ アポヨ社:10〜12日実施,全国都市部(対象:1,200名)
支持 55%(41%) 不支持 20%(31%) 未回答 25%(28%)
3.外交
(1)南米諸国連合(UNASUR)経済相会合
6日,リマにてUNASUR経済担当相会合が開催され,貿易だけでなく更なる統合プロセスを促進することで合意した。
(2)インスルサOAS事務総長
22日,ペルーを訪問中のインスルサOAS事務総長は,ウマラ大統領と会談した後,歴代政府に置き去りにされていた貧困層に対する同大統領の公約を評価した他,麻薬対策サミット開催のイニシアチブに同意する旨述べた。
同事務総長は,9月12日にリマにて,2001年9月11日にリマで署名された米州民主主義憲章の10周年式典を開催する旨発表した。
(3)ラブロフ露外相のペルー訪問
23日,ラブロフ・ロシア外相はペルーを公式訪問し,ウマラ大統領,外相代行のエギグレン法務相及びアブガタス国会議長と会談した。同露外相は,エギグレン法務相(外相代行)と,ペルー当局関係者のロシア訪問を通じた政治対話の強化,貿易促進,インフラへの投資計画及び科学技術文化分野における協力等,共通の関心事項について協議した他,11月にモスクワにて政治外交協議会及び第2回経済貿易・技術漁業協力混合委員会会合を開催することを確認する共同宣言を発表した。
(4)アンデス共同体(CAN)外相会合及び通商担当大臣会合
22日,リマにて第32回アンデス共同体(CAN)外相会合及び通商担当大臣会合が開催され,オルギン・コロンビア外相が議長を務め,チョケワンカ・ボリビア外相,パティーニョ・エクアドル外相,アステテ・ペルー外務省経済局長及びコントレラスCAN臨時事務局長が出席した。同会合では,市民参画のためのアフロ系作業部会,水資源戦略,気候変動,開発協力,スペインのCANオブザーバーとしての承認,文化相会合等のCAN強化のための7つの規則が採択された他,域内のエネルギー統合を促進するための規則が承認された。
(5)ロンカリオロ外相のボリビア訪問
30日,ロンカリオロ外相は,ボリビアを訪問し,チョケワンカ・ボリビア外相と会談した。両外相は,ボリビアのモケグア州にあるイロ港利用について検討した他,水資源の開発,社会政策等について協議した。また,貿易,投資及び観光業の促進,アンデス高地及びアマゾンの国境地域の統合,開発及び治安について協議した。
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