ペルー政治情勢 2012年

8月の内政と外交

 

1 概要

(1)7月末に誕生したヒメネス内閣の所信表明演説が国会で行われ,10の点からなる政権方針につき述べたところ,73票で信任された。
(2)アゼルバイジャン,ブラジル,エルサルバドル,アルゼンチンの外相がペルーを訪問した。
(3)ロンカリオロ外相は,UNASUR外相会合及びOAS外相協議の出席及び議長を務めた他,UNASUR議長国としてベネズエラ訪問,ECLAC総会へ出席した。


2 内政

(1)社会保険庁(EsSalud)医師の無期限ストライキ

 7日から,社会保険庁に属する医師が,継続的な給与改善及び病院施設の改善を要求し,無期限のストライキを開始した。

 

(2)国防政策副大臣の辞任

 10日,マイコック国防政策副大臣が辞任した。マスコミは,韓国の韓国航空産業(KAI)社からの航空機購入に関し,同副大臣が関与する不正があった可能性を指摘した。また,ブラジルのエンブラエル社が航空機を売却予定だったところ,韓国とブラジルの利益衝突にも憶測が及んだ。

 

(3)新たな国会内会派の形成

ア トレド大統領候補率いるペルー・ポシブレ連合として出馬し,議員連盟を形成していた5名の人民行動党員の議員が,議員連盟を脱退し,フジモリ派から脱退したヨベラ議員を加えた6名で新たに人民行動会派を形成した。さらに,与党勝利するペルーから脱退した4名の極左系議員が加わり,10名からなる人民行動−拡大戦線として会派を形成した。

イ 国会内会派は,(ア)与党:勝利するペルー(43議席),(イ)フエルサ2011(36議席),(ウ)議員連盟(15議席),(エ)大変革のための連合(12議席),(オ)人民行動−拡大戦線(10議席),(カ)国民連帯連合(8議席),(キ)協調(6議席)となった。

 

(4)ウマラ大統領実弟の政府調達への関与

 19日,テレビ番組「パノラマ」(5ch)が,大統領の実弟アレクシスが25%の株を所有するクラスニー社が,首相府,保健省,国防省,内務省,教育省等の調達元となり,50万ソル(約19万ドル)以上を売り上げている旨報道した。

 放送直後,ヒメネス首相は架電し,事案の調査を行う旨述べ,検察が予備調査を開始した。

 

(5)ヒメネス首相の所信表明演説

 20日,ヒメネス首相は,国会にて所信表明演説を行い,賛成73票,反対38票,棄権2票で信任された。演説は,主に,ア 治安・国防,イ 全国的対話及び紛争への対処,ウ 採取産業との関係の見直し,エ 市民サービス改革及び公共施策の改善,オ 質の高い教育への改革,カ 投資,生産及びイノベーション,キ 地方分権強化,ク 汚職対策,ケ 社会的・基礎的サービスの格差是正,コ 国の防護につき触れた。

 

(6)大統領支持率(括弧内前回7月)

ア ダトゥム社:8月3〜6日実施,全国(対象:1,208名)

支持   47%(45%) 不支持  44%(48%)

イ アポヨ社:8月15〜17日実施,全国(対象:1,204名)

支持  40%(40%)  不支持  49%(51%)

ウ GFK社:8月18〜19日実施,全国(対象:1,450名)

支持  43%(36%)   不支持  50%(55%)



3 外交

(1)バルセナECLAC事務局長の来訪

 1日,バルセナ国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)事務局長がペルーを訪問し,ロンカリオロ外相,カスティーリャ経済財政相,開発社会包摂省の政策社会評価副大臣等と会談し,経済社会開発及び環境等につき協議した。また,クスコで行われた南米諸国連合(UNASUR)社会開発政策ハイレベル実務者会合に出席した。

 

(2)メメディヤロフ・アゼルバイジャン外相の来訪

 1日,メメディヤロフ・アゼルバイジャン外相がペルーを公式訪問し,イスラ国会議長,シルバ通商観光相,メリノ・エネルギー鉱山相及びロンカリオロ外相と会談した。両外相は,両国の二国間関係の司法的枠組み強化のための交渉開始の必要性を強調した他,麻薬密輸及び組織犯罪対策といった共通の優先関心事項につき協力を促進していくことを確約した。

 

(3)UNASUR社会開発実務者会合の開催

 2〜3日,議長国としてペルーが主宰する初めての公式活動として,クスコにてUNASUR社会開発評議会第一回実務者会合が開催され,トリベリ開発社会包摂相が議長を務めた。同会合にはブスタマンテUNASUR事務局長の他,UNASUR加盟国の社会政策及び人材開発の専門家が出席した。

 

(4)パトリオッタ・ブラジル外相の来訪

 6日,パトリオッタ・ブラジル外相がペルーを訪問し,ウマラ大統領と会談した他,ロンカリオロ外相と共に民主主義のための研究センター(CEDEM)創設式に出席し,同センターにて基調講演を行った。

 

(5)エクアドル外務副大臣及び通商副大臣の来訪

 8日,アルブハ・エクアドル外務副大臣及びリバデネイラ・エクアドル通商・経済統合副大臣がペルーを訪問し,ベラウン外務副大臣及びポサダ通商副大臣と会談し,アンデス共同体(CAN),UNASUR及び二国間アジェンダにつき協議した他,ロンカリオロ外相を表敬訪問した。

 

(6)マルティネス・エルサルバドル外相の来訪

 13日,マルティネス・エルサルバドル外相は,ペルーを公式訪問し,ロンカリオロ外相と会談した。両外相は,ペルー内務省とエルサルバドル治安省とのビデオ会議の開催や,2013年第一四半期に麻薬対策のための第一回合同委員会を行うこと等を含む共同宣言に署名した。

 

(7)第2回パラグアイ情勢監視UNASUR委員会

 13日,パラグアイ情勢監視のための第2回UNASURハイレベル委員会が開催され,アリ・ロドリゲスUNASUR事務局長も出席した。会合では,各国の在パラグアイ大使館からの報告書が分析された。

 

(8)ティメルマン・アルゼンチン外相の来訪

 14日,ティメルマン・アルゼンチン外相は,ペルーを公式訪問し,ウマラ大統領及びロンカリオロ外相と会談した。両外相は,経済関係活性化,南極調査における協力,科学技術イノベーション及びエネルギー協力強化等につき協議した。

 

(9)UNASUR外相会合へのロンカリオロ外相の出席

 19日,ロンカリオロ外相は,グアヤキルにおけるUNASUR外相会合に出席し,アサンジュ・ウィキリークス代表問題に関して(英国との関係において)エクアドルの立場を支持し,ウィーン条約に基づく不可侵の原則を再確認した。

 

(10)中国商務部副部長のペルー訪問

 20日,リ・ジンバオ中国商務部副部長がペルーを訪問し,開発計画のための無償資金協力を発表した他,ベラウン外務副大臣と,小学校建設に係る交換公文に署名した。

 

(11)ナディン・エレディア大統領夫人のブラジル訪問

 22〜24日,ナディン・エレディア大統領夫人及びトリベリ開発社会包摂相は,ブラジルを訪問し,ルセーフ・ブラジル大統領と幼児及び食料確保を中心とした社会政策について会談した。

 ナディン夫人が大統領専用機を利用してブラジルを訪問したことに対し,国内では批判が起こった。

 

(12)ロンカリオロ外相のベネズエラ訪問

 23日,ロンカリオロ外相はベネズエラを訪問し,UNASUR議長国として,ルセナ・ベネズエラ全国選挙管理委員長と,10月7日に実施される大統領選挙の選挙監視協定に署名した。同署名式には,マドゥーロ・ベネズエラ外相等が出席した。

 両外相は,両国の経済補完関係を強調し,ベネズエラから輸入する尿素の支払いの一部としてペルー産の米の販売の可能性につき協議した他,違法な在ベネズエラ・ペルー人の合法化策開始や,ペルー人観光客のベネズエラ入国簡素化を強調した。

 

(13)ロンカリオロ外相の第27回OAS外相協議出席

 24日,米ワシントンにて,ロンカリオロ外相が議長を務めるOAS外相協議が開催され,外交団施設の不可侵を棄権に脅かすような行為への拒絶を表明し,国内の規則を国際的約束不履行のために利用しない義務を繰り返した。また,エクアドル及び英国政府が,解決のため協議を継続するよう求めた。

 

(14)ロンカリオロ外相の太平洋同盟閣僚級会合出席

 29日,メキシコにおける太平洋同盟閣僚級会合にて,ロンカリオロ外相は,年間400の奨学金を同盟国の学生及び教員に供与する学生・学術者の移動に係る基本計画を承認した他,観光協力に係る協定への署名等がなされた。また,ウルグアイとカナダをオブザーバー国として承認した。

 

(15)ロンカリオロ外相のECLAC総会出席(於サンサルバドル)

 31日,ロンカリオロ外相は,ECLAC総会に出席した。また,2014年にペルーがECLAC総会をホストする旨発表した。

 

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