ペルー政治情勢 2011年
10月の内政と外交
1.概要
(1)開発社会包摂省が設置され,初代トリベリ開発社会包摂大臣が就任した。また,ウマラ大統領の選挙公約であった「年金65」プログラムが正式に開始された。
(2)外交面では,ウマラ大統領のイベロアメリカ・サミット出席,エスピノサ第一副大統領のキューバ訪問,ロンカリオロ外相の欧州・ブラジル訪問,マドゥーロ・ベネズエラ外相のペルー訪問,レルネル首相の米国訪問等,往来が活発な1ヶ月となった。
2.内政
(1)ガルシア女性社会開発相の国会喚問
6日,国会本会議は,カハマルカ州のレドンド集落にて,9月21日に全国食糧支援プログラム(PRONAA)により提供された食事により3名の幼児が死亡,85名が具合が悪くなった責任を問い,ガルシア女性社会開発相を喚問した。同女性社会開発相は,17の質問に答え,PRONAAによる食糧に毒が混ざっていた説を否定した他,事件の発端となった食糧は,前政権期に購入されたものであることを主張した。
13日,国会本会議にて,フエルサ2011党及び議員協調派から提出された,ガルシア女性社会開発相に対する罷免決議が問われたが,却下された。
(2)政府支持の行進
12日,リマ市内にて,複数の労働組合等の呼びかけによる,政府が促進する社会的包摂及び麻薬対策政策への支持を表明するための行進が行われた。アレキパ,チクラヨ及びチンボテにおいても同様の行進が行われた。ペルー労働者総連(CGTP)指導者は,ウマラ政権による,最低賃金の引き上げや汚職対策,労働権の保護といった社会的包摂政策への支持を表明し,今般の行進は,抗議ではなく支持である旨明らかにした。
他方,アンカッシュ,プノ及びアプリマックでは,公共事業の遂行を求め,現政権に抗議する48時間のストライキが開始された。
(3)外務省と市民社会団体との会合実施
12日,ロンカリオロ外相は,社会的包摂政策の枠組みにおける,24の市民社会団体との,外交関係のための市民社会協議委員会設置のための第一回準備会合に出席した。
(4)第二次ガルシア政権調査委員会の委員決定
13日,国会本会議にて,9月14日に設立が承認されたガルシア政権の汚職を調査する委員会の構成員7名が決定された。勝利するペルー3名(ディエス・カンセコ議員,チェハデ議員(第二副大統領),テハダ議員),フジモリ派2名(トゥビノ議員,スパダロ議員),議員連盟1名(レスカノ議員),大変革のための連合1名(ウォン議員)からなる。
(5)「年金65」プログラム設立
19日,全国連帯支援プログラム「年金65」設立大統領令(DS No.081-2011-PCM)が発令された。2010年全国家庭調査によると,65歳以上の人口の9.9%が極貧層に属し,貧困対策の一環として右人口の保護は国の関心であることを受け,条件を満たす65歳以上の国民に経済支援を行う「年金65」プログラムを設立し,国内の最も貧しい地域から段階的に開始する。
(6)開発社会包摂省の設置
20日,去る9月22日に国会本会議で承認された開発社会包摂省の設置法(法律第19792号)が公布された。開発社会包摂省は,貧困,不平等,脆弱性及び社会的危険の削減のための開発社会包摂分野の政策立案・執行を行い,全国開発社会包摂システム(Sinadis)の最高責任機関となること,組織は,大臣,社会政策・評価副大臣,社会援助副大臣,事務総長等からなること等が定められた。
21日,クスコにてカロリナ・トリベリ開発社会包摂大臣の宣誓式が行われた。
(7)アニカマ議員(勝利するペルー党)のスキャンダル
25日,国会倫理委員会は,アニカマ議員を召喚し,同議員が所有するオリオン社が違法なケーブルテレビ放送を提供していたとする告発に関し,質疑応答を行った。アニカマ議員は,オリオン社の運営方法については最近知ったばかりであり,実際に運営している元配偶者のヨング氏に全ての責任がある旨述べた。倫理委員会は,同議員の120日間の議員資格停止を提案した他,本件を憲法弾劾小委員会で扱うことを勧告した。
(8)チャビン・デ・ワンタル人質救出作戦の軍人に対する裁判
米州人権裁判委員会は,1997年に72名の人質を救出した作戦に参加した140名の軍人を,3名のテロリストを違法に殺害した容疑で,軍事法廷ではなく通常の法廷で裁くべきとする勧告を行った。同委員会は,作戦の際に殺害されたテロリストの遺族に対する賠償金の見直しについても言及した。
エギグレン法相は,当初,裁判のやり直しの対象となっているのは,モンテシノス元国家諜報局(SIN)顧問,ウワマン大佐,エルモサ元三軍統合司令官,サムディオ大佐のみと述べていたが,140名の軍人全員が対象となっていることが明らかになり,各セクターが異議を唱えた。26日,同法相は,米州人権裁判委員会による勧告を受け入れたとする説を否定し,同委員会に対し,本件を検討するために3ヶ月の機関を与えるよう要請した旨述べた。
(9)大統領支持率
ア ダトゥム社:5〜8日実施,全国(対象:1,208名)(括弧内前回結果)
支持 66%(70%) 不支持 24%(17%) 未回答 10%(13%)
イ アポヨ社:12〜14日実施,全国都市部(対象:1,200名)
(1)ウマラ大統領の支持率(括弧内前回結果)
支持 62%(65%) 不支持 22%(18%) 未回答 16%(17%)
3.外交
(1)エスピノサ第一副大統領のペルー訪問
4日,エスピノサ第一副大統領は,キューバを公式訪問し,マチャド国家評議会第一副議長と会談した。同会談には,サラス教育相,ロドリゲス・キューバ外相,ディアス−カネル・キューバ高等教育相,ヒメネス・キューバ・スポーツ庁長官が同席した。
(2)第2回ペルー・セルビア政策協議の開催
10日,ペルー外務省にて,第2回ペルー・セルビア政策協議が開催され,両国代表は,文化,教育,科学技術面における貿易及び協力関係の促進,査証免除,国際選挙における協力等について協議した。
(3)マドゥーロ・ベネズエラ外相のペルー訪問
14日,マドゥーロ・ベネズエラ外相はペルーを公式訪問し,ロンカリオロ外相と会談した。両外相は,特権関税の維持や国防分野の協力促進といった内容に触れた共同宣言を発表した。同ベネズエラ外相は,ウマラ大統領とも会談した。
(4)第4回ペルー・韓国・経済・科学技術協力合同委員会の開催
17日,ペルー外務省にて,メイエル外務副大臣及びLee Sihyung韓国貿易副大臣が率い,第4回ペルー・韓国・経済・科学技術協力合同委員会が行われた。同会合で,両国は,2012年に予定されるウマラ大統領の韓国訪問中に「統合的戦略連携」を促進することで合意し,二国間関係の最高レベルとなる政治,経済,文化,貿易,投資,協力,教育,科学技術等で両国の絆を深化することが確認された。また,11月のホノルルAPECにて,2012年から韓国航空会社が貨物と旅客輸送を可能とする航空運輸協定へ署名することで合意した。
(5)ロンカリオロ外相の欧州訪問
15〜23日,ロンカリオロ外相は欧州諸国を訪問した。17日,ロンカリオロ外相は,ヒメネス西外相,イグレシアス・イベロアメリカサミット事務局長及びラホイ民衆党(PP)党首と会談した他,王立エルカノ財団にて講演した他,在西ペルー人コミュニティと会合を設けた。
18日,同外相は,ジュッペ仏外相と会談し,両国の友好関係を更に強化する意向を確認した。ジュッペ外相は,サルコジ仏大統領の招待によるウマラ大統領へのフランス訪問実現への希望を示した。
19〜20日,ロンカリオロ外相は,欧州委員会及び欧州対外行動局の幹部,並びに欧州議会議員と会合した。
21日,ロンカリオロ外相は,ヴェスターヴェレ独外相と会談し,ペルーを公式訪問する旨招待した他,ニーベル経済開発協力相と会談し,「回想の場(Lugar de memoria)(注:テロの被害を後世に伝えるための施設。リマ市ミラフローレス区に建設中)」への支援に感謝した。
(6)グアテマラ閣僚等のペルー訪問
20〜21日,メノカル・グアテマラ内務相,アロンソ・グアテマラ教育相他がペルーを訪問し,首相府,教育省,内務省,法務相,生産省,外務省及び麻薬なき生活と開発委員会(DEVIDA)関係者と協議した。
(7)レルネル首相の米国訪問
25日,レルネル首相は米国を訪問し,クリントン米国務長官と会談した。同首相は,ペルーの麻薬対策モデルについて伝え,両者は麻薬対策並びに貧困対策及び社会的包摂プログラムにおいて二国間関係を強化する重要性を確認した。レルネル首相は,米国はペルーの戦略的パートナーであり,全ての分野において日に日に重要となっていると述べ,ロンカリオロ外相の米国は最重要ではないとする発言を否定した。
(8)第10回ペルー・エクアドル合同委員会の開催
27日,ピウラ市にて,ロンカリオロ外相及びパティーニョ・エクアドル外相が,11月17日に行われる予定の二ヶ国首脳会議及び合同閣議のための準備会合を行った。(注:11月の首脳会議及び合同閣議は2012年第一四半期に延期された。)
(9)ウマラ大統領の第21回イベロアメリカ・サミット出席
29日,ウマラ大統領は,パラグアイで開催された第21回イベロアメリカ・サミットに出席し,国家は,主要な目的である社会包摂を実現するために強化する必要があることを訴え,国家の目的は全ての市民に同様の機会を与えることである旨主張した。同ウマラ大統領は,スペイン国王及びサパテロ・スペイン首相との会談の他,ピニェラ・チリ大統領と非公式の会談を行った。
(10)ロンカリオロ外相のブラジル訪問
31日,ロンカリオロ外相はブラジルを訪問し,パトリオッタ・ブラジル外相と会談し,政治,社会,経済及び文化面で両国の戦略的同盟強化の強化及び,両国首脳会議実現に向け働きかけを行うことで合意した。また,両国の物理的統合及び経済及びエネルギーの補完関係促進のため,外相が率いるハイレベル統合開発メカニズムを構築することで合意した。さらに,麻薬等の密輸対策,南米諸国連合(UNASUR)強化等につき協議し,ペルーにおけるデジタルテレビ適用技術支援等の6つの協定に署名した。 |