ペルー政治情勢 2012年

10月の内政と外交

 

1 概要

(1)ビリャラン・リマ市長を含むすべてのリマ市会議員を対象としたリコール投票が実施されることが決定した。
(2)ウマラ大統領の支持率は,世論調査会社によって若干の開きはあるが,40%前後から40%台の後半で,9月とあまり変わりはない。
(3)外交面では,第三回南米アラブ首脳会議及び社会包摂週間等が当地で実施されたこともあり,多くの国家元首を含む政府高官等がペルーを訪問した。

2 内政

(1)日本大使公邸占拠事件のチャビン・デ・ワンタル人質救出作戦に関する裁判

 15日,リマ高裁第3刑事清算法廷は,日本大使公邸占拠事件の人質救出作戦であるチャビン・デ・ワンタル作戦におけるテロ組織トゥパク・アマル革命運動(MRTA)の「ティト」ことエドゥアルド・クルス・サンチェス他2名の処刑疑惑へのモンテシノス元国家諜報局(SIN)顧問等の関与に関し,同顧問,エルモサ元三軍統合司令官及びワマン元大佐(元SIN局員)には処刑指示への関与が認められないとして無罪判決を言い渡した。この一方で,「ティト」に対する処刑疑惑に関しては否定せず,検察にさらなる調査を要求した。

 

(2)社会包摂週間の開催

 15日から19日まで,ペルー政府は,新設された開発社会包摂省が1周年を迎えることから,同週を「社会包摂週間」とし,種々のイベントを行った。16日に米州開発銀行との共催で,「成長と社会的包摂における牽引者としての女性の役割」に関する国際会議を開催し,バチェレUNウーマン事務局長及びクリントン米国務長官が同会議に出席した。右に先立ち,15日,クリントン国務長官は,ウマラ大統領と会談し,両者は会談後の共同記者会見において,「両国は,二国間関係を強化する政治的意思を確認した。社会的包摂に焦点を当てた中で,不平等及び貧困対策のための女性の能力の重要性につき一致した。治安を推進し,麻薬密売人に対峙するために協働する。厚生及び教育が,不平等との戦いのメカニズムとして,ペルーの極貧層における能力養成のために重要なテーマであることでも一致した。今次訪問が米国とペルーの関係強化に資する。」等述べた。

 27日,サン・マルティン最高裁長官は,右判決を,米州人権裁判所の決議に従い取り消したこと,新たな刑事法廷を設置し,本件につき再審議する旨発表した。

 

(3)ビリャラン・リマ市長に対するリコール

 25日,全国身分登録事務所(RENIEC)は,リマ市長を含むリマ市議会議員全員のリコールに必要な40万の署名を確認。同日,リコール派は,右をもって,全国選挙過程事務局(ONPE)に対しリコール投票の実施を要請し,さらに同日,ONPEは,全国選挙管理委員会(JNE)に対し,リコール投票の実施決議の公告を要請。31日,JNEは,明年3月17日にリコール投票を行う決議を公告。

 

(4)大統領支持率(括弧内前回9月)

ア ダトゥム社:6〜10日実施,全国(対象:1,222名) 

支持   47%(45%) 不支持  44%(44%)  無回答 9%(11%)

イ アポヨ社:10〜12日実施,全国(対象:1,198名)

支持   40%(41%) 不支持  51%(51%)  無回答 9%

ウ GfK社:23日及び24日実施,全国都市部(対象:1,450名)

支持   39%(37%) 不支持  51%(56%)


3 外交

(1)第三回南米アラブ諸国首脳会議(ASPA)の開催

 1日及び2日,首都リマ市において,第三回南米アラブ諸国首脳会議(ASPA)が開催された。また首脳会議の前には,ASPA外相会議及びASPA企業家会議も開催された。首脳会合に出席した元首級は,フェルナンデス・アルゼンチン大統領,モラレス・ボリビア大統領,ルセーフ・ブラジル大統領,ピニェラ・チリ大統領,サントス・コロンビア大統領,コレア・エクアドル大統領,ムヒカ・ウルグアイ大統領,スレイマン・レバノン大統領,マルズーキ・チュニジア大統領及びアブドッラー・ヨルダン国王であり,会議においては両地域の経済関係の拡大(含むインフラ,食糧確保,エネルギー,天然資源,輸送及び通信等)が期待されていたが,討議内容は多岐に亘り,採択されたリマ宣言においては,経済関係に加え,テロに対する非難,国際法の厳格な遵守,国際関係における武力の行使の拒絶,非核及び軍備管理の他,宗教の名の下に行われた暴力及び行き過ぎへの悲嘆の意を表し,宗教的なデリカシーへの尊重の不足と侮辱を非難することが含まれた。

 

(2)パネッタ米国防長官のペルー訪問

 6日,パネッタ米国防長官がペルーを訪問し,ウマラ大統領と,テロ対策及び麻薬密輸対策を中心とした国防分野につき協議した。同会談後,パネッタ米国防長官及びカテリアノ国防相は,共同記者会見にて,共同で対応すべき課題であるテロ及び麻薬密輸対策に関し,両国の協力活動の内容の詳細を詰めた旨明らかにした。また,地域の安全性についても協議し,カテリアノ国防相は,民主主義及び人権分野における両国政府の価値観と原則を再確認することができた旨述べた。

 

(3)ロンカリオロ外相とアルブハ・エクアドル外務副大臣との会合

 12日,ロンカリオロ外相とアルブハ・エクアドル外務副大臣は,本年2月のチクラヨにおける両国首脳会合の議題であったグアヤキル湾の歴史的入り江に関する共同宣言案を討議するための二国間作業会合の機会にリマ市で会合し,11月23日に,エクアドルのクエンカにおいて本年の二国間合同閣議の開催を決定するとともに,12月のジュネーブにおけるオタワ条約の次回締約国会合の枠組みにおける二国間地雷除去計画の共同提案で同意した。

 

(4)太平洋同盟高級事務レベル会合の開催

 15日及び16日,リマ市において,太平洋同盟高級事務レベル会合及び技術グループ会合が開催された。両同会合においては,査証免除及び通商分野の交渉において重要な進歩があり,また,奨学金プログラム及び中小企業促進のための協力において,重要なイニシアティブを具体化することが達成された旨発表された。高級レベル会合では,オブザーバー諸国の参加のためのガイドラインの採択を終え,太平洋同盟へのカナダ及びウルグアイのオブザーバー参加要請に対する前向きな回答を確認した。

 

 

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