ペルー政治情勢 2010年 11月の内政と外交
1.概要 ●2011年4月の大統領選挙に向け,与党アプラ党候補としてアラオス前経済財政相及びトレド前大統領が出馬表明をした。 ●当地紙に報道された高額の退職金受給を巡り,バリオス内務相が辞任し,イダルゴ警察長官が新内務相として就任した。 ●ガルシア大統領は,横浜APECに出席するため,訪日した。
2.内政 (1)大統領選への立候補表明 2011年4月の大統領選挙に向けて,2日,アラオス前経済財政相がアプラ党の大統領候補として出馬する旨会見を開いた他,10日,ペルー・ポシブレ党(PP)党首のトレド前大統領も会見を開き,次期大統領候補に出馬する旨発表した。
(2)最低賃金の引き上げ決定 10日,閣議にて,最低賃金を550ソルから600ソル(約214米ドル)に引き上げることが決定された。引き上げは2度に分けて行われ,1度目は12月に30ソル,2度目は2011年2月に20ソル引き上げ,最終的に600ソルとなる予定。
(3)トレド前大統領の政府批判 5日,トレド前大統領が大統領及び閣僚の銀行口座の情報を公開すべきと発言したことに対し,8日,ガルシア大統領は,然るべき機関の要請であれば,口座情報の公開に応じるが,街頭の狂った者に言われたくないと述べ,同前大統領及びケイコ・フジモリ・フエルサ2011党党首等,大統領候補となるべき者こそ口座情報を公開すべきと述べた。また,ガルシア・ベラウンデ外相は,トレド前大統領のことを「泥棒は,皆が同じ状況にあると考える」と発言したため,ペルー・ポシブレ党から,前大統領に対する名誉毀損と批判を受けた。 トレド前大統領は,ガルシア・ベラウンデ外相が,アンデス共同体(CAN)の勤務期間中,CANから給与をもらいつつも,外務省の休職手当を受取り,倍の給与を受け取っていたと非難し,ガルシア・ベラウンデ外相は,会計処理上の誤りがあったとして,07年には既に余分に受け取っていた分である6000ソル程を国庫に返金済であると回答した。
(4)テロ有罪者の仮釈放 5日,リマ高裁広域第一刑事法廷のレオン判事は,MRTAのメンバーと共に共和国議会への攻撃を計画したテロ罪にて,1995年に禁錮20年の判決を受けて服役していた米国籍ロリー・ベレンソンの条件付き釈放を言い渡した。ベレンソンは,本年6月に条件付き仮釈放が認められたが,手続き上不備があったとして,一度仮釈放が取り消されていたところ,今般,新たに認められた。
(5)ティア・マリア鉱山計画に対する抗議運動 22日,アレキパ州イスライ郡にて,環境破壊を理由にティア・マリア鉱山計画に反対する住民が道路封鎖を伴う抗議運動を実施し,警察と衝突し,怪我人及び身柄拘束者が出た。
(6)内務大臣の交代 23日午後,バリオス内務相が辞意を表明し,同日午後6時,イダルゴ国家警察庁長官が,内務相として就任した。当地紙が,バリオス前内務相が就任の際に,保険庁から多額を退職金を受給したとの批判したのに対し,同前内務相は,違法ではないと主張した。
(8)大統領支持率(アポヨ社:括弧内前回10月) 支持 34%(35%) 不支持 62%(58%)
3.外交 (1)第18回イベロアメリカ検察協会(AIAMP)総会の開催 2~5日,第18回イベロアメリカ検察協会の総会が開催され,会長であるコンデ・スペイン検事総長他,加盟21ヶ国の検事総長及び代表が出席した。
(2)欧州議会議員のペルー訪問 3日,ガルシア・マルガリョ欧州議会議員(スペイン),コルテス議員(スペイン)及びショルツ議員(ドイツ)がペルーを訪問し,ガルシア大統領と会談した。ガルシア議員は,ペルーの発展に感銘を受けた他,EUとペルー及びコロンビアとのFTA交渉に満足の意を示した。
(3)ドイツ経済協力開発相のペルー訪問 4日,ニーベル・ドイツ経済協力開発相は,バルテル下院議員(社会民主党),ハンセル下院議員(左翼党),コベル下院議員(自由民主党)と共にペルーを訪問した。ニーベル経済協力開発相他は,サン・マルティン州トカチェ郡を訪問し,カカオやコーヒーの代替作物栽培の状況を視察した他,ガルシア大統領及びペルー政府関係者と会談し,麻薬密輸対策へのドイツの支援を約束した。また,20年間に渡りペルーを襲った暴力を反省する場としてリマ市ミラフローレス区に建設される「回想の場(Lugar de la Memoria)」起工式に出席した。
(4)第8回南米アラブ諸国首脳会合(ASPA)高級実務者会合の開催 8日,第8回ASPA高級実務者会合が開催され,ポポリシオ外務副大臣及び各国大使等が,2011年2月にリマで開催される南米12ヶ国,アラブ諸国22ヶ国の首脳が参加予定の第3回首脳会合の準備にあたった。
(5)チリとの領海境界線画定問題:抗弁書提出 9日,バグネル駐オランダ・ペルー大使は,国際司法裁判所(ICJ)により定められた期限を守り,チリとの領海境界線画定問題に係るペルーの抗弁書を提出した。チリの再抗弁書の提出期限は2011年7月11日であり,右文書提出により文書手続は終了する。ICJの定める期間の後,口頭審査が行われ,その後,ICJは判決を出す。
(6)コロンビア国防相のペルー訪問 9日,リベラ・コロンビア国防相がペルーを訪問し,トルネ国防相と会談した。両国防相は,麻薬密輸対策のため,両国が情報交換を行うことで合意した。
(7)ガルシア大統領の横浜APECにおける訪日及び韓国訪問 12~15日,ガルシア大統領は,横浜で開催されたAPEC首脳会議に出席するため,ガルシア・ベラウンデ外相と共に日本を訪問し,APEC関係行事の他,菅首相と日・ペルーEPAの交渉完了に関する共同声明に署名した。また,グエン・ミン・チエット・ベトナム国家主席,アピシット・タイ首相,リー・シンガポール首相及びピニェラ・チリ大統領と会談した。 15日,ガルシア大統領は韓国を訪問し,イ・ミョンバク大統領と会談し,FTA発効に先立つ覚書への署名に立ち会った。
(8)ロシアとの査証免除協定署名 13日,APEC開催中の日本にて,ガルシア・ベラウンデ外相及びラブロフ・ロシア外相は,査証免除協定に署名した。
(9)ジャンピエトリ第一副大統領の中国訪問 16日、ジャンピエトリ第一副大統領は,China Mining 2010の組織委員会に招待され中国を訪問してXu Xhaoshi中国国土資源相と会談し,中国企業のペルー国内における鉱山活動等について要請を受けた。
(10)エール大学に対する遺跡返還要求 19日,ガルシア大統領は,元メキシコ大統領であるセディーリョ・エール大学グローバリゼーション・センター長と,マチュピチュ遺跡からの発掘品返還要求について協議したところ,エール大学長を代表するセディーリョ・センター長は,同大学に所属していたハイラム・ビンガム考古学者により持ち出された全ての発掘品を返却する旨述べた。エール大学からの返還は2011年から開始され,クスコ州内のサン・アントニオ・アバド大学の管理下に置かれる予定。
(11)スペイン皇太子夫妻のペルー訪問 22~25日,スペイン皇太子夫妻がペルーを訪問し,ガルシア大統領,スマエタ議会議長及び議会外交委員会メンバー等と会談した。また,当地企業関係者他と会合した他,アレキパ州を訪問し,スペイン国際協力開発庁の支援で復興プロジェクトを行ったサイト訪問及び州知事との会談等を行った。
(12)ピニェラ・チリ大統領のペルー訪問 25日,ピニェラ・チリ大統領がペルーを公式訪問し,ガルシア大統領と会談し,共同宣言を発表した後,「鉱業開発協力に係る覚書」及び「犯罪人引渡条約」の署名式へ立会った他,勲章授与式及び晩餐会に出席した。また,ピニェラ・チリ大統領は,アラオス前経済財政相(アプラ党候補),クチンスキー元首相(国民復興党及びペルー人道党の連合より立候補予定)及びウマラ・ペルー国民主義党(PNP)党首と会談した。
(13)オルギン・コロンビア外相のペルー公式訪問 29日,オルギン・コロンビア外相がペルーを公式訪問し,ガルシア・ベラウンデ外相と会談した後に共同コミュニケを発表した他、ガルシア大統領と会談した。
(14)第10回アマゾン協力条約機構(OCTA)外相会合の開催 30日,第10回アマゾン協力条約機構(OTCA)外相会合が開催され,アマゾンを有する諸国の外相等が出席し,同機構の発効30周年及びアマゾン地域の開発への貢献及びOTCA事務局強化への加盟国の政治的意思を強調した他,アマゾン地域の開発の行動指針となる新たなアマゾン協力戦略アジェンダを採択した。OTCA外相会合は,5年振りに開催され,新たにペルーに事務局を設置した。 。
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