ペルー政治情勢 2011年

11月の内政と外交

 

1 概要

(1)アプリマック州,カハマルカ州,アンカシュ州等で,鉱山開発に反対する抗議運動が発生した。サントス・カハマルカ州知事率いるカハマルカ州コンガ鉱山の抗議運動では,対話の場を設ける試みが滞り,同鉱山開発を行うヤナコチャ社は操業停止を発表した。
(2)ウマラ政権が100日を迎え,大統領は,各テレビ局の報道担当者を大統領府に招待し,成果を紹介した。
(3)ウマラ大統領は,ホノルルAPECに出席し,首脳会議他,アジア・太平洋地域の各国首脳と会談した。


2 内政

(1)国会倫理委員会によるチェハデ第二副大統領の召喚
 2日,国会倫理委員会は,アンダワシ社のサトウキビ畑の警察介入要請を巡るチェハデ副大統領に対する影響力の行使に関する告発調査のため,同副大統領を召喚した。同日,国会査察委員会には,チェハデ副大統領との会食に同席した3名の警察の将軍が呼ばれ,会食の場における話題について説明した。
 7日,国会憲法弾劾小委員会は,全員一致でチェハデ第二副大統領に対する,憲法違反,並びに違法な後援罪,贈賄罪,影響力行使罪及び虚偽罪に係る告発を扱うことで合意した。
 8日,チェハデ第二副大統領は,自身に対する調査が続く間,政府における第二副大統領の職務を休職する旨記したコミュニケを発表し,副大統領を辞任する意思はないことを明らかにした。また,同コミュニケの中で,自身の無実を主張した。

(2)ウマラ政権100日
 6日,ウマラ大統領は,各テレビ局の報道担当者を大統領府に招待し,政権100日間の成果を紹介した。ウマラ大統領は,投資家と結ばれた契約は尊重されると主張し,如何なる誤解も対話を通じて解決する旨述べた他,100日間の成果として,2007年の地震の復興作業の開始を強調した他,地方,特に山間部やジャングル地域に投資が届くように港やインフラ整備を促進することを確約した。他方,各郡に病院を建設すること,また現時点ではガス価格の引き下げという選挙公約を履行することは困難と認めた。

(3)第二期ガルシア政権汚職調査委員会
 6日,ディエス・カンセコ議員は,同委員会の委員長を自らが務める旨主張していたが,委員長就任が困難なことを受け,アブガタス国会議長宛に,同委員会を脱会する書簡を送付した。7日,同委員会の委員長を選出し,委員会を設置するため委員会の招集が行われたが,勝利するペルー党議員は,ディエス・カンセコ議員の後任委員が選出されていないことを理由に出席せず,定足数(5名)を満たさず,委員会設置に至らなかった。
 21日,テハダ議員(与党)が委員長を務めることが決定し,パリ議員(チェハデ第二副大統領後任)及びリャタス議員(ディエス・カンセコ議員後任)が新たな委員となり,30日には第一回会合を開催し,同政権の閣僚及び官僚の財産状況を調べる他活動内容を定めた。

(4)国内における抗議運動
 国内各地において抗議運動が発生したところ,概要以下の通り。
ア アプリマック州
 11月初頭より,アプリマック州アンダワイラス郡及びチンチェーロス郡では,鉱山活動に反対する住民の抗議運動が行われていたところ,10日,政府代表者とアンダワイラス郡及びチンチェーロス郡水利用者委員会の間で,対話の席が設けられた。同日,治安維持に務める警察と住民の間で衝突が発生し,警察及び抗議者合わせて30名以上が負傷した。
イ カハマルカ州
 8日,カハマルカ州では,サントス・カハマルカ州知事が率先し,地域住民と共に,ヤナコチャ社によるコンガ鉱山の開発に反対する抗議活動を開始した。レルネル首相は,対話及び協調による解決を求めるとして,住民と対話の場を設けた。対話の結果,24日まで,政府が同地域の鉱山活動に対する措置を検討することで合意に達した。
ウ フニン州
 12日,フニン州のボルカン鉱山では,4,000名以上の労働者が,給与の引き上げを求め,無期限ストを開始した。
エ アンカシュ州
 アンカシュ州でも鉱山開発に抗議する運動により道路封鎖が行われ,商業活動に影響をもたらしていたが,11日,政府及び鉱山企業代表者と住民が対話の席を設けることで合意し,13日,平常に戻った。
オ マドレ・デ・ディオス州
 鉱山活動による環境汚染に対する抗議が行われていたマドレ・デ・ディオス州では,住民及び地方政府が鉱山企業に対し,環境への影響調査を行うよう要請した。
カ 11日,政府は,現地を訪問し,対話の場を設けて社会問題を解決するため,6名の閣僚からなる危機対策委員会を形成した旨,バルデス内務相が発表した。
 16日,ウマラ大統領は,記者会見にてカハマルカ州,アンカッシュ州,アプリマック州で発生した反鉱山運動に係る明確な姿勢を示し,誰の最後通告にも応じない旨述べた。

(5)コンガ鉱山を巡る動き
 24日,カハマルカ州においてヤナコチャ社コンガ鉱山に対する反鉱山運動が再開され,サントス・カハマルカ州知事,セレンディン郡,カハマルカ郡長等を含めた多くの人々が集結し,ヤナコチャ社コンガ鉱山の敷地内に侵入した。また,幹線道路が封鎖され,経済活動は麻痺状態となった。
 29日,ヤナコチャ社は,同鉱山の事業中断を発表した。(注:現在も政府とカハマルカ州知事他の抗議運動側の対話は継続している。)

(6)新たな麻薬戦略
 16日,麻薬なき開発及び生活国家委員会(DEVIDA)が会議を招集し,代替作物を推進するための持続可能かつ包括的な開発モデルの強化,常習者へのリハビリ,耕作面積減少,国際的責任の共有等からなる,ウマラ政権における麻薬対策に関する国家戦略を発表した。

(7)ウマラ大統領支持率(括弧内前回(10月)結果)
ア ダトゥム社:4〜7日実施,全国(対象:1,206名)
支持 57%(66%)  不支持 26%(24%)  未回答 17%(10%)
イ CPI社:4〜7日実施,全国(対象:1,450名)
支持 58.7%  不支持 25.5%  未回答  15.8%
ウ アポヨ社:16〜18日実施,全国(対象:1,200名)
支持 56%(62%)  不支持  34%(22%) 未回答 16%(10%)

 

(6)開発社会包摂省の設置

 20日,去る9月22日に国会本会議で承認された開発社会包摂省の設置法(法律第19792号)が公布された。開発社会包摂省は,貧困,不平等,脆弱性及び社会的危険の削減のための開発社会包摂分野の政策立案・執行を行い,全国開発社会包摂システム(Sinadis)の最高責任機関となること,組織は,大臣,社会政策・評価副大臣,社会援助副大臣,事務総長等からなること等が定められた。

 21日,クスコにてカロリナ・トリベリ開発社会包摂大臣の宣誓式が行われた。

 

(7)アニカマ議員(勝利するペルー党)のスキャンダル

 25日,国会倫理委員会は,アニカマ議員を召喚し,同議員が所有するオリオン社が違法なケーブルテレビ放送を提供していたとする告発に関し,質疑応答を行った。アニカマ議員は,オリオン社の運営方法については最近知ったばかりであり,実際に運営している元配偶者のヨング氏に全ての責任がある旨述べた。倫理委員会は,同議員の120日間の議員資格停止を提案した他,本件を憲法弾劾小委員会で扱うことを勧告した。

 

(8)チャビン・デ・ワンタル人質救出作戦の軍人に対する裁判

 米州人権裁判委員会は,1997年に72名の人質を救出した作戦に参加した140名の軍人を,3名のテロリストを違法に殺害した容疑で,軍事法廷ではなく通常の法廷で裁くべきとする勧告を行った。同委員会は,作戦の際に殺害されたテロリストの遺族に対する賠償金の見直しについても言及した。

 エギグレン法相は,当初,裁判のやり直しの対象となっているのは,モンテシノス元国家諜報局(SIN)顧問,ウワマン大佐,エルモサ元三軍統合司令官,サムディオ大佐のみと述べていたが,140名の軍人全員が対象となっていることが明らかになり,各セクターが異議を唱えた。26日,同法相は,米州人権裁判委員会による勧告を受け入れたとする説を否定し,同委員会に対し,本件を検討するために3ヶ月の機関を与えるよう要請した旨述べた。

 

(9)大統領支持率

ア ダトゥム社:5〜8日実施,全国(対象:1,208名)(括弧内前回結果)

支持 66%(70%)  不支持 24%(17%)  未回答 10%(13%)

イ アポヨ社:12〜14日実施,全国都市部(対象:1,200名)

(1)ウマラ大統領の支持率(括弧内前回結果)

支持 62%(65%)  不支持 22%(18%)  未回答 16%(17%)

 

3 外交

(1)ウマラ大統領のアンデス共同体(CAN)臨時首脳会議出席
 8日,ウマラ大統領はボゴタを訪問し,サントス・コロンビア大統領,モラレス・ボリビア大統領及びコレア・エクアドル大統領と共に,CAN臨時首脳会議に出席した。エクアドルとコロンビア間の貿易問題を巡り,エクアドルがCANを脱退するとの脅しを受け,ウマラ大統領は,CANの統合は,世界の金融危機に対する一つの対応となると主張した。

(2)バカ文化大臣の第5回OAS文化大臣会合出席
 11日,バカ文化大臣は,米国で開催された第5回OAS文化大臣会合に出席し,同会合の議長を務めた。

(3)ウマラ大統領他のホノルルAPEC出席
 11〜13日,ウマラ大統領はハワイを訪問し,APEC首脳会議に出席した他,野田総理,胡錦涛国家主席,サン・ベトナム国家主席,オバマ米大統領,ハーパー・カナダ首相,メドベージェフ露大統領等各国首脳と会談した。また,ビジネス関係者とも会談し,ペルーへの投資の誘致を積極的に行った。
 13日,ロンカリオロ外相及びSung Hwan韓国外相は,航空運輸協定に署名した。

(4)第5回中南米・中国ビジネスサミット開催
 21〜22日,リマにて,ペルー中国商工会議所,通商観光省,貿易観光促進庁(PromPeru),投資促進庁(ProInversion),ペルー貿易協会(COMEX-Peru)等が共同で開催し,ペルーから約400名,その他中南米諸国から約200名,中国から約400名,計約1,000名の企業家が参加し,「包摂的成長」をスローガンに掲げ,両国,両地域間の貿易投資に係る協議,講演会,商談会,産品見本市等を内容とする第5回中南米・中国ビジネスサミットが開催された。
 開会式には,ウマラ大統領他,複数の閣僚及び国際機関の総裁等も出席した。

(5)ラガルドIMF専務理事のペルー訪問
 28日,ラガルドIMF専務理事は,ペルーを訪問し,大統領府にてウマラ大統領と会談した。同専務理事は,ペルーの政策を祝福する他,IMFは,財政政策は適切と判断する旨述べた。
 ラガルド専務理事は,リマ市庁舎を訪問し,ビリャラン・リマ市長の他,輸出者業界及び産業団体代表者等とも会談した。

(6)ブラウンフィールド米国務次官補(麻薬対策担当)のペルー訪問
 30日,ブラウンフィールド米国務次官補(麻薬対策担当)がペルーを訪問し,大統領府にてウマラ大統領,レルネル首相,ソベロン麻薬なき開発及び生活委員会(DEVIDA)委員長と会談した。同国務次官補は,ペルーは米国の麻薬対策において重要な地域であるとして,ペルー政府の麻薬対策を支持する旨述べた。

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