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ペルー政治情勢 2008年
12月の内政と外交
1 概要
(1)ガルシア大統領は、世界的な金融危機への対応として、100億ソル(約33億米ドル)の追加財政支出を含む危機対策計画を発表した。また、2009年は「対外危機に対応する団結の年」であると発表した。
(2)外交面では、ガルシア・ベラウンデ外相はウルグアイを公式訪問し、二国間関係についてウルグアイ外相と会談した。また、ベタンクール元コロンビア大統領候補がペルーを訪問し、ガルシア大統領と会談をして、さらなる人質救出への支援を仰いだ。
(3)フジモリ元大統領に対する人権問題に関する裁判は、週に3日開催され、12月で文書及び映像・音声資料の検証が終了した。2009年1月からは最終弁論が開始されることとなった。
2 内政
(1)新最高裁長官の選出
4日、16名の最高裁判事が投票を行い、11票を獲得したビリャ・ステイン最高裁判事が、2009−2010年の最高裁判事として選出された。
(2)陸軍司令官の交代
5日、サン・ボルハ区にある国防省内の敷地で交替式典が実施され、チリから罷免を求められていたドナイレ陸軍司令官が任期を全うして退官し、ギボビッチ新陸軍司令官が就任した。
グスタボ・エスピノサ議員(議員資格停止中)がインターネット上に載せた2006年の私的な集まりにおけるドナイレ陸軍総司令官の映像を、テレビの報道番組が扱い、広く知られることとなった。その集まりで、ドナイレ陸軍司令官は、「ペルーに侵入するチリ人は全て棺桶に入ってペルーを後にする。」といった発言を行い、フォックスレイ・チリ外相は、ドナイレ陸軍司令官を離任させるようペルー側に申し入れたが、ガルシア大統領は、同陸軍司令官の発言映像が公に知らされた後、即座にバチェレ・チリ大統領に連絡を取り、私的な場での発言であり、軽率であったとして謝罪し、バチェレ・チリ大統領は右謝罪を受け入れ二国間関係の問題とすることはしない意向であった。
その後も、ビダル・チリ内閣官房長官及びフォックスレイ・チリ外相は、ドナイレ陸軍司令官の罷免を求め続けたが、予定通り12月5日まで同陸軍司令官は任務を全うした。
(3)危機対策計画の発表
8日、ガルシア大統領は閣僚と共に危機対策計画を発表した。大統領は、追加財政支出として100億ソル(約33億米ドル)、国際金融機関からの緊急クレジットとして30億米ドル、さらに70億米ドルの信用供与を確保しているとして、冷静さ、慎重さと自信を持って国際金融危機を克服できると述べた。
(4)地方分権化に向けたパイロット地域の設置
10日、大統領府にて、海岸部のアンカッシュ州、中央部のワヌコ州、ブラジルと国境を接するウカヤリ州の3州を一つのマクロ地域とする、北中央部パイロット地域計画の署名が行われた。3州の州知事は大統領府にて、地方分権化のプロセスを補強する、パイロット地域の設置に向けた計画案に署名を行った。
(5)2009年のペルーの目標
19日、リマ市リマック区の道路改善工事後の開通式に出席したガルシア大統領は、2009年は「対外危機に対応する団結の年」であると発表し、企業家、地方政府の長、政府及び市民に団結を呼びかけた。26日、右フレーズを正式なものとする大統領令を公布した。
(6)大統領府におけるテレトン(チャリティー活動)の実施
21日、大統領府にて経営困難にあるサン・フアン・デ・ディオス診療所の運営資金を調達するためのチャリティー活動が行われた。同チャリティーには、大統領の家族の他、閣僚、企業関係者、数多くのアーティストが参加し募金を呼びかけ、最終的に約1千万ソル(約333万米ドル)相当の義援金及び物資が集まった。目標の3倍近い金額が集まり、サン・フアン・デ・ディオス診療所の運営経費3年分が賄える見込みとなった。
(7)世論調査(アポヨ社):ガルシア大統領の支持率
(イ)全国
今回 前回(08年11月)
支持 25% 19%
不支持 70% 77%
わからない・無回答 5% 4%
(ロ)地域別支持率(下段括弧内、前回〈11月〉)
リマ 北部 中央部 南部 アマゾン
32% 23% 20% 14% 15%
(27%) (17%) (8%) (10%) (6%)
3 外交
(1)ガルシア・ベラウンデ外相のウルグアイ訪問
1日、ガルシア・ベラウンデ外相は、政治対話の発展、貿易量の拡大、様々な分野における協力関係強化のため、ウルグアイを公式訪問し、フェルナンデス・ウルグアイ外相と会談した。両国の外相は、共同声明、連携協定に署名した他、貿易・観光業・投資促進覚書、盗難された文化・考古学・歴史的財産の保護・復旧・返還のための合意に署名を行った。
(2)シオリ・ブエノス・アイレス州知事(元アルゼンチン副大統領)のペルー訪問
3日、シオリ・ブエノス・アイレス州知事(元アルゼンチン副大統領)がペルーを訪問し、ガルシア大統領と会談した。シオリ州知事は、ガルシア大統領の投資促進政策を評価し、ペルーをアジア太平洋地域への窓口と認識している旨述べた。
(3)ベタンクール元コロンビア大統領候補のペルー訪問
4日、ベタンクール元コロンビア大統領候補がペルーを訪問し、大統領府にてガルシア大統領と会談した。ベタンクール元大統領候補は2002年からのFARCの人質となっていたことから、今般南米諸国を回り、各国のコロンビアに対する協力への感謝及び未だに捕らわれたままの人質の解放への協力を呼びかけた。ガルシア大統領は、バチェレ・チリ大統領によるベタンクール元大統領候補のノーベル平和賞への推薦を支持する旨明らかにした。
(4)米国議員団のペルー訪問
13日、ミークス団長をはじめとする超党派の米国議員団及びウェイセンフェルドUSAIDペルー局長他は、大統領府を訪れ、ガルシア大統領と会談した。議員団は、ペルーの経済危機対策および貧困対策を評価した。ガルシア大統領は、ペルー米国FTA発効に向けた国内法の整備が近く終了することを伝えた。
(5)児童の権利委員会へのペルー候補者選出
16日、ニューヨークで開催された第12回児童の権利条約締約国会合にて児童の権利委員会委員の改選選挙が実施され、2009―2013年の任期でスサナ・ビリャラン候補が当選した。18名からなる委員にペルー候補が当選したのは今回が初めて。
(6)ハイチへの国連平和ミッション参加部隊の出陣式
22日、第9回、ハイチにおける国連平和ミッションに参加する、陸・海・空軍の混合部隊の出陣式が開催された。同ミッションはハイチにて6ヶ月間、平和維持活動に従事する。また、ベリーナ国防副大臣は、2010年には25名の女性隊員をハイチのミッションへ派遣すると発表した。
4 フジモリ元大統領に対する裁判
週3回、フジモリ元大統領に対する「バリオス・アルトス事件及びラ・カントゥータ事件」並びに「陸軍諜報局(SIE)地下における誘拐事件」に関する公判が行われ、被告側弁護士による証拠となる文書の検証及び音声・映像資料の検証が行われた。
24日には、フジモリ元大統領の体調が優れず、公判が中断された。31日をもって、音声・映像資料の検証が終了し、準備期間を設けてから、2009年1月12日より最終弁論が開始されることとなった。
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