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ペルー政治情勢 2009年
12月の内政と外交
1 概要
(1)内政面では、3日、議会にて地方選挙法の改正案が承認され、2010年10月3日に実施される州知事選挙から決選投票が行われることが決定された。
(2)閣僚の交代が行われ、カランサ経済財政大臣が辞任し、アラオス生産大臣が新経済財政大臣に転任した。アラオス大臣の後任として、ゴンサレス投資庁長官が生産大臣に就任した。
(3)11日、ルーラ・ブラジル大統領がペルーを訪問し、ガルシア大統領と会談した他、共同声明を発表した。また、両大統領は両国の政治・企業関係者の代表団の会合等にも出席した。
2 内政
(1)エスピノサ議員の議員資格停止
3日、グスタボ・エスピノサ議員(無所属)の議員資格を問う投票が行われ、満場一致の賛成76票を得て、2年間の公民権停止が決定された。同議員は、ドナイレ元陸軍司令官の私的な集まりにおける発言を録画したビデオを、50名のチリの議員に送付したことにより、憲法違反を問われており、ブルース議員(議員連盟)が憲法第38条及び44条に違反したとして憲法弾劾を要請していた。同議員に対する議員資格停止は11月26日に投票が行われたが、必要な票数に達さず、ブルース議員等が再投票を求め、今般の結果となった。
(2)地方投票における決選投票実施等
3日、議会本会議にて、州議会議員の人数、選出法、及び政治団体の登録方法を定めた地方選挙法の改正案が賛成64票にて承認された。右改正により、地方州知事選挙において、有効票の30%以上の得票に満たない場合は上位2名による決選投票を行うことなどが定められた。同修正は、2010年10月の地方選挙より適用される。
13日、同法が公布され、2010年の地方選挙は10月の第一日曜日である3日に開催されることが定められた。
(3)軍事パレードの実施
7日、例年7月29日に行われるところ、新型インフルエンザの感染を恐れて延期されていた軍事パレードが、マルテ広場のペルー通りにて開催された。三権の長の他、各方面の要人が出席した。
(4)中国製戦車の購入検討
7日、政府が老朽化する既存の戦車の買い換えのため、中国製の戦車の購入を検討していることが報道され、8日、レイ国防大臣は、最低限の防衛力を維持するために中国製の戦車を購入する方向であると明らかにした。また、同大臣は、7日の軍事パレードでも中国政府から見本用に提供された5台の戦車が登場したと説明した。
9日、マスコミ等で中国製の戦車購入に対する技術面等の疑問が出てくる中、ベラスケス・ケスケン首相は、先進技術を備えており、かつ価格が他国製より抑えられている点を評価しているとして、国防省の判断を支持した。また、右購入は古くなった既存の戦車の買い換えかつ軍事的抑止力のためであり、南米諸国に推進する軍縮提案とは矛盾しないと述べた。
(5)アフリカ系ペルー人に対する謝罪式典
7日、ガルシア大統領、アフリカ系ペルー人に対する謝罪の式典を行い、アフリカ系の人々を奴隷として酷使してきたペルーの歴史を振り返り、大統領として謝罪した。
(6)オルドニェス議員の逝去
7日、フベニル・オルドニェス議員(ペルー国民主義党、61歳)が心臓発作のため死亡した。同議員で、今期の現役議員が死亡するのは4人目。
(7)軍及び警察の死体引き上げ許可
13日、軍及び国家警察は非常事態宣言が発令されている地域において、検察の立会なしに死体を引き上げることを可能とする法律が公布された。同法律は刑事訴訟法の第239条に追記されるもので、これまでは検察の立会を求められていたために、テロの攻撃等に遭ってもアクセスが困難で死体の引き上げに時間がかかっていた問題を解決するため改正された。しかし、一般市民の死体引き上げには、検察の立会条件が継続される。
(8)記念博物館への土地寄贈式
16日、記念博物館建設のためのミラフローレス区からの敷地寄贈式が行われ、ガルシア大統領、バルガス・リョサ記念委員会委員長を始めとする同委員会委員、ガルシア・ベラウンデ外相、ビルチェス女性社会開発相、マシアス・ミラフローレス区長、デ・クエヤル元国連事務総長、駐ペルー・ドイツ大使等が出席した。
記念博物館は、テロによる残虐な行為及び被害者を忘れずに追悼する施設として建設される予定。
(9)山岳高地における免税
17日、ガルシア大統領はフニン州ハウハにて、標高3000メートル以上の山岳部高地で活動する企業に対する免税法を公布した。
(10)経済財政大臣及び生産大臣の交代
22日12時過ぎ、ガルシア大統領はプレスに対し、カランサ経済財政大臣が辞任し、アラオス生産大臣が経済財政大臣に就任すると発表した。同大統領は、カランサ経済財政大臣は、2009年1月より1年という期限で大臣職を担っており、本人より民間活動に再度従事したいとの希望があり辞任を要望したので、右要望を受け入れたと説明した。
同日午後2時過ぎ、ベラスケス・ケスケン首相は、アラオス生産大臣の後任に、ゴンサレス投資庁長官が任命されたと発表した。
同日午後7時、大統領府にてアラオス経済財政大臣及びゴンサレス生産大臣の宣誓式が行われた。
(11)ガルシア大統領のメッセージ
31日、ガルシア大統領は国民に対するメッセージを発し、対外危機に立ち向かう国民連帯の年であった2009年を終えるに際し、危機からペルーを救った全てのペルー人に感謝の意を示した。また、180億ソルの公共投資、600億の民間投資がされ、2010年は経済社会強固の年として成長することを信頼するよう呼びかけた。
(12)全国世論調査結果:ガルシア大統領の支持率
(イ)全国
今回 前回(11月)
支持 29% 26%
不支持 64% 66%
わからない・無回答 7% 8%
(ロ)地域別支持率(下段括弧内、前回〈11月〉)
リマ 北部 中央部 南部 アマゾン
36% 33% 14% 22% 13%
(34%) (27%) (15%) (14%) (14%)
3 外交
(1)第2回オタワ条約協議会合
3日、ポポリシオ外務副大臣は、コロンビアにて開催された第2回オタワ条約協議会合において対人地雷禁止条約に対するペルーの義務を果たすことを改めて約束した。同会合において、ペルー及びエクアドル代表は、国境地域における地雷撤去活動に関する共同声明を発表した。
(2)エドワース・カナダ外務副大臣のペルー訪問
4日、エドワース・カナダ外務副大臣がペルーを実務訪問し、ガルシア・ベラウンデ外相と、二国間、地域間及び国際的テーマに関し意見交換を行った。また、ペルー・カナダ第4回調整協議が開催され、コウトリエール同協議担当臨時副大臣及びブガイリスキス・カナダ外務省ラテンアメリカ・カリブ担当副大臣率いる代表団が、自由貿易協定の適用及びその範囲の科学技術協力及び文化教育交換等の拡大、社会保障協定等に関して協議した。
(3)中国海軍艦隊のペルー訪問
5日、中国海軍の艦隊2隻がカヤオ港に入港し、関係者は大統領府を訪問し、ガルシア大統領に迎えられた。また、ガルシア大統領は停留中のShijiazhuang号を訪問した。
(4)中国とのFTA
6日、4月に署名されたペルー・中国自由貿易協定を批准する大統領令(No.092-2009-RE)が公布された。ペレス通商観光大臣は、今後、両国はそれぞれの国内手続きが終了した旨の外交公文を交換することが必要であるが、明年1月には同協定が発効することが期待される旨述べた。他方、バイスマン議会議員(元議会通商委員会委員長)は、同協定は憲法の規定に従い議会承認が必要であるとして憲法裁判所に提訴する予定である旨述べた。
(5)ルーラ・ブラジル大統領のペルー訪問
11日、ガルシア大統領及びルーラ大統領は、約2時間に及ぶ首脳会談を実施した他、両国の閣僚、政府関係者、地方政府代表者及び企業関係者等からなる代表団の会合、各種署名及び共同宣言の発表を行った。
今回で7回目となる両大統領による首脳会談にて、両国は国境地域の統合、エネルギー、貿易、インフラ整備、観光及び投資の促進、社会開発、麻薬対策、技術・文化・教育協力等で合意に達した。
ルーラ大統領は、カスタニェダ・リマ市長及びウマラ・ペルー国民主義党党首とも会談した。
(6)第2回ペルー・キューバ協議委員会の開催
16日、ペルー・キューバ協議委員会のためにシエラ・キューバ外務副大臣がペルーを訪問し、ポポリシオ外務副大臣と会談した。両副大臣は共通の関心である科学技術協力の強化、麻薬密輸対策、観光業、保健及び教育の促進等に関し意見交換を行った。また、経済補完協定交渉の必要性について協議した。
(7)国連平和構築委員会へのペルー選出
23日、国連総会は、ラ米・カリブグループからペルーを2010-11年任期の平和構築委員会のメンバーに選出した。ペルー外務省は、同決定はペルーの軍縮政策及び、国連平和維持軍へのペルー軍の参加に見られる平和構築・維持に対するペルー政府の積極的姿勢が評価されたものと評価した。
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