ペルー政治情勢 2011年

12月の内政と外交

 

1 概要

(1)立法府関係では,国会倫理委員会で,120日間の議員資格停止を勧告された3名の与党議員の議員資格停止が決定された。また,1月末まで国会会期が延長されることが決定された。
(2)レルネル首相が辞任し,バルデス内相が首相となり,新内閣が誕生した。8名の閣僚は再任された。
(3)ウマラ大統領は,第3回ラ米カリブ首脳会議(於ベネズエラ),第2回太平洋連合首脳会議(於メキシコ)及びフェルナンデス・アルゼンチン大統領再就任式に出席予定であったが,コンガ鉱山等内政事情を理由にキャンセルし,ロンカリオロ外相が代理で出席した。

2 内政

(1)与党(勝利するペルー)議員3名の議員資格停止
ア ロメロ議員
 2日,国会本会議にて,ロメロ議員がマドレ・デ・ディオス州にて違法な鉱山活動に従事しており,違法鉱業に有利となる,金の採掘船の利用を禁止する緊急令第012号の廃棄を含む2つの法案を提案したことから,議員倫理法違反における罰則審議が行われたところ,賛成68票で,国会倫理委員会が勧告した120日間の議員資格停止が決定された。
イ チェハデ議員(第二副大統領)
5日,国会本会議にて,チェハデ第二副大統領に対する議員資格の120日間の停止を内容とする国会倫理委員会による勧告が,賛成103票,棄権5票で承認された。チェハデ副大統領のみ反対した。
 同日,憲法弾劾小委員会は,違法な助成罪の廉で同議員の公民権の5年間停止を求めると結論づけた報告書を作成した。
ウ アニカマ議員
 6日,国会本会議にて,ケーブルテレビを違法に利用していたことに関与していたとされる件で,アニカマ議員の120日間の議員資格停止が承認された。
 右罰則は,ライ国会倫理委員会委員長が率いる委員会より勧告されており,賛成102票,反対0票,棄権2票で決定された。

(2)コンガ鉱山を巡る動き
ア 4日,ウマラ大統領は,5日午前零時から,カハマルカ州のカハマルカ市,セレンディン(Celendin)郡,ウクルガヨック(Hualgayoc)郡,コントゥマンサ(Contumanza)郡の4カ所に平和と秩序を回復するため60日間の非常事態宣言を発動した。
イ レルネル首相は,4日に行われたカハマルカ州地方自治体及び関係者との会合において,一部の地域代表が,反鉱山運動の解除に反対の意を示したことから,合意に至らなかったと発表した。同会合は,レルネル首相に加え,トリベリ開発社会包摂相,バルデス内務相,ベガ労働雇用促進相,コルネホ住宅建設上下水道相,ビルカ鉱山副大臣,サントス・カハマルカ州知事,カハマルカ州各郡長等が出席し,コンガ鉱山を含む地域の発展計画を議論する対話の開催を含め,カハマルカ州の正常化に向け議論が行われた。
ウ 15日付官報は,カハマルカ州内の4郡に対して発出されている非常事態宣言を,16日より無効とする旨の大統領令を公告した。
エ (11日の内閣改造の後,)19日には,バルデス首相,メリノ・エネルギー鉱山相,プルガル環境相及びトリベリ開発社会包摂相がカハマルカを訪問し,対話の機会を設けた。また,27日には,首相府にて対話を行い,コンガ鉱山への環境面での影響に係る国際評価を進める方向での合意が達成され,右評価の要領等を内容とする議事録への署名に至った。

(3)SL指導者アルテミオによる休戦提案
 6日,ワリャガ河上流地域のセンデロ・ルミノソ(SL)の指導者である同志「アルテミオ」こと,ホセ・フローレスは,人権NGOである法令擁護協会(IDL)により公開されたインタビューにて,武装解除のため政府に休戦及び交渉を提案した。
 8日,エギグレン法務相は,7日に「アルテミオ」との合意や休戦に同意していると発言したと捉えられたことを否定し,マスコミによる誤解があったとした上で,「アルテミオ」は武装解除し,司法に身を委ねるべきと述べた。
 また,モラ国防相は,「アルテミオ」の休戦の申し出は,自らの身柄拘束が差し迫っているためである。警官や軍人だけでなく女性や子供を含む一般市民の命を奪った犯罪者集団に対して休戦はあり得ないとし,武装解除を望むのであれば,武装解除をして出頭し,裁判を受けて刑を全うすべきと述べた。

(4)法務省の名称変更
 8日付官報は,法務省を法務人権省(Ministerio de Justicia y Derechos Humanos)と名称を変更する旨の法第29809号を公告した。

(5)内閣改造
 10日,レルネル首相は,ウマラ大統領に辞表を提出し受理されたため,憲法に則り,レルネル内閣の総辞職となった。ウマラ大統領は,レルネル首相の後任として,バルデス内相を新首相として任命し,11日午後8時,バルデス内閣の宣誓式が行われた。19名の閣僚のうち,8名が再任,11名が交替となった。顔ぶれは以下の通り。
オスカル・バルデス・ダンクアルト首相(前内相)
ラファエル・ロンカリオロ・オルベゴソ外相(再任)
ルイス・アルベルト・オタロラ・ペニャランダ国防相(元国防副大臣)
ルイス・ミゲル・カスティーリャ・ルビオ経済財政相(再任)
ダニエル・ロサダ・カサピア内務相(前内務省司法顧問部長)
フアン・ヒメネス・マヨール法務人権相(前法務副大臣)
パトリシア・サラス・オブライアン教育相(再任)
アルベルト・テハダ保健相(再任)
ルイス・ジノッキオ・バルカサル農業相
ホセ・アンドレス・ビリェナ・ペトロシノ労働雇用促進相
ホセ・アントニオ・ウルキソ・マヒア生産相(与党国会議員)
ホセ・ルイス・シルバ・マルティノット通商観光相(再任)
ホルヘ・メリノ・タフールエネルギー鉱山相
カルロス・パレデス・ロドリゲス運輸通信相(再任)
レネ・コルネホ住宅建設上下水道相(再任)
アナ・ハラ・ベラスケス女性社会開発相(国会議員)
マヌエル・プルガル・ビダル環境相
ルイス・ペイラノ・ファルコニ文化相
カロリナ・トリベリ開発社会包摂相(再任)

(6)国会会期の延長
 15日,アブガタス国会議長は,新内閣の所信表明演説の実施とその他懸案事項の議論のため,国会が会期を2012年1月31日まで延長する旨決定したと述べた。

(7)「奨学金18」プログラムの開始
 21日,ウマラ大統領は,選挙キャンペーンの中で公約として行う社会的包摂施策の一つである「奨学金18」プログラムの開始イベントをカヤオ市の学校で行った。同大統領は,国の変革は教育から始めねばならず,良質の教育無しに国を変えることは出来ない旨述べた。また,同プログラムは,一年で,5,000件の奨学金を提供し,5年間で年間2万5千件まで増加すること,極貧層の若者を対象に国内外の大学の学費だけでなく,教科書,補習授業,交通費及び生活費等も含まれている旨述べた。
 奨学金は,公立学校を卒業した,成績が優秀で経済的問題を抱える16〜20歳を対象としている。

(8)ウマラ大統領の支持率
ア ダトゥム社:?8〜10日実施,全国(対象:1,207名),?12〜13日実施,全国(対象:1,218名)

 

?内閣改造前

?内閣改造後

11月

支持

49%

48%

57%

不支持

38%

41%

26%


3 外交

(1)ロンカリオロ外相の第3回ラ米カリブ首脳会議出席
 3日,ロンカリオロ外相は,ベネズエラで開催された第3回ラ米カリブ首脳会議に出席した。同会議では,ペルーのイニシアチブによる「社会的包摂のためのラテンアメリカ及びカリブのコミットメント」が承認された。また,ラ米カリブ共同体(CELAC)が誕生した首脳会議にて,ラ米カリブの首脳は,2012年に麻薬の国際的問題に対処するための具体的な方法を分析し,コミットするためのハイレベル国際会議開催に向けたペルーの提案を支持した。
 ウマラ大統領は,同会合及び,その後メキシコで開催される第2回太平洋連合首脳会議に出席予定であったが,国内事情に鑑み,外遊予定を取り止めた。

(2)ロンカリオロ外相の第2回太平洋連合首脳会議出席
 4日,メキシコのメリダにて第二回太平洋連合首脳会議が開催され,カルデロン・メキシコ大統領,ピニェラ・チリ大統領,サントス・コロンビア大統領及び,ウマラ大統領の代理でロンカリオロ外相が出席した。同会議では,貿易及び統合,サービス及び資本,人とビジネスの動き及び(各国間の)差異解決のための協力及びメカニズムの4つのテーマについて扱われ,加盟国間のビザ免除が議論された。

(3)モレノ・エクアドル副大統領のペルー訪問
 12日,ウマラ大統領は,ペルーを訪問したモレノ・エクアドル副大統領と会談し,兄弟国の絆強化を継続することを確認した。同会談には,エスピノサ第一副大統領,ロンカリオロ外相及びハラ女性社会開発相等が同席した。会談後,同エクアドル副大統領及びハラ女性社会開発相は,身体障害者への対応に係る情報交換覚書に署名した。

(4)ロンカリオロ外相のフェルナンデス・アルゼンチン大統領再就任式出席
 9日,出席を予定していたウマラ大統領に代わり,ロンカリオロ外相がアルゼンチンを訪問し,フェルナンデス大統領の再就任式に出席した。

(5)モラレス・ボリビア大統領のクスコ訪問
 22日,モラレス・ボリビア大統領は,子息2名と共にクスコを訪問し,ウマラ大統領と会談した他,フットサルの試合を行った。同ボリビア大統領は,クスコの名誉賓客とされ,クスコ市内視察の他,マチュピチュ遺跡を訪問し,5日間滞在した。ウマラ大統領との会談後,両大統領は,二国間の協力,地域間の協力等への意思を示したクスコ宣言を発表した。

(6)米州人権裁判委員会の勧告に対するペルー政府の反応
 23日,ヒメネス法務人権相は,米州人権裁判所がペルー政府を裁判にかける可能性について,記者会見の場で,ペルーは,米州人権裁判委員会に疑問を抱く他国の支持を得て,OASに対し,同委員会の権限を再検討する提案を行う旨発表した。
 同相は,日本大使公邸人質占拠事件のチャビン・デ・ワンタル救出作戦に従事した軍人に対する通常法廷における裁判やり直しという勧告にペルー政府が従わない場合,米州人権裁判所に提訴するとする同委員会の告発を,ペルー政府として拒絶する旨述べた。
 25日,バルデス首相は,ペルー政府は,チャビン・デ・ワンタル救出作戦に従事した軍人を擁護し,支援を行う他,同軍人は,ペルー人だけでなく世界の称賛に値する旨述べた。

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