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ペルー政治情勢 2012年
12月の内政と外交
1 概要
(1)司法府では,エンリケ・メンドサ最高裁判事が次期最高裁長官に選出され,行政府関連では,ホセ・ビリェナ労働雇用促進大臣が辞任し,後任に弁護士のテレサ・ラオス氏が就任した。
(2)外交面では,ペルー・チリ間領海境界線画定問題の公判が,ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で行われた。
(3)フジモリ元大統領は,手記を通じて恩赦に向けた医師団の診察の要請や収監先での自身の状況等の声明を発表した。
2 内政
(1)新最高裁長官の選出
6日,最高裁において次期長官選出選挙が行われ,エンリケ・メンドサ最高裁判事が2013−2014年の最高裁長官に選ばれた。
(2)労働雇用促進相の交代
9日,ホセ・ビリェナ労働雇用促進大臣は,前月27日にアレキパ空港で起こした不祥事(LAN航空職員に対する暴行事件)の責任を取り辞任を表明した。後任に弁護士のテレサ・ラオス氏が任命され,同日夜新大臣の就任式が行われた。
(3)警官及び軍人の新給与制度の成立
9日,警察官及び軍人(陸・海・空)の給与を定めた新たな制度が成立した。新制度の下では,全体として給与水準が上昇した他,警察及び各軍種の階級に応じ各々8段階に給与が区分され,各段階の上限額が決まった。
(4)2012年通常国会会期の終了
14日,7月に開幕した今次通常国会の年内の会期が終了し,明年3月1日の再開まで,懸案事項については常任委員会で引き続き審議されることが決定した。
(5)アルテミオに対する裁判の開始
19日,センデロ・ルミノソのワリャガ地域の最高リーダーで,本年2月に逮捕されたアルテミオ(本名:エレウテリオ・フロレス・アラ)に対する裁判が収監先のカヤオ海軍施設内の法廷で開始した。アルテミオは,殺人,テロ行為,マネーロンダリング及び麻薬違法取引で起訴されており,検察側からは,無期懲役と政府及びテロ被害者に対する賠償金支払いが請求されている。
(6)大統領支持率(括弧内は11月結果)
ア ダトゥム社:11月30日〜12月4日に実施,全国(対象:1217名)
支持 50%(44%) 不支持 41%(48%) 無回答 9%(8%)
イ Gfk社:10日及び11日実施,全国(対象:1450名)
支持 50%(45%) 不支持 42%(48%) 無回答 8%(8%)
ウ アポヨ社:11日〜13日に実施,全国(対象:1,636名)
支持 48%(43%) 不支持 44%(50%) 無回答 8%
3 外交
(1)ウマラ大統領のメキシコ大統領就任式への出席
1日,ウマラ大統領はナディン・エレディア夫人及びロンカリオロ外相と共にメキシコを訪問し,ペニャ・ニエト新大統領の就任式に出席した。ウマラ大統領は,新旧大統領による大統領綬の引き継ぎ及び宣誓式に出席後,メキシコ大統領主催の午餐会に出席した。
(2)カナダ総督のペルー公式訪問
2〜5日,デイヴィッド・ジョンストン・カナダ総督がペルーを公式訪問し,ウマラ大統領及びロンカリオロ外相と会談した。二国間関係について協議した両首脳は,教育,開発,技術革新等の分野で両国が協力していく方針を固めた。
(3)ペルー・チリ間領海境界線画定問題の公判
3日〜14日,ハーグの国際司法裁判所(ICJ)においてペルー・チリ領海境界線画定問題の公判が開催され,ワグネルICJ担当大使をはじめとするペルー側弁護団による答弁が行われた。二度に亘る答弁の中でペルー側は,両国の間の領海線を定めた条約が存在していない旨を強調し,領海線は既に画定済みであるとするチリ側の主張の前提となる1952年のサンティアゴ宣言の有効性を否定した。その上でペルー側は,領海境界線をコンコルディア地点(Punto Concordia)を基点に(両国の海岸線から等距離にある)中間線で画定し,さらに陸地から緯線に沿って平行に境界線を引いた場合に,チリの200海里の外側にできる「外側の三角形」(表面積28,356km2)の部分の主権はペルー側に属すべき点を主張した。
(4)北朝鮮のミサイル発射に対する声明の発表
12日,ペルー政府は,外務省プレスリリースを通じて,北朝鮮が実施した長距離ミサイル発射に対して,強い懸念を表明するとともに,同国に対して6ヶ国協議への復帰及び,国際平和の発展を妨げる行為の中止を求めた。
(5)ペルー・チリ国境地帯の地雷除去作業の終了
19日,本年10月より行われていたペルー・チリ両国の国境地帯の地雷の除去作業が終了した。同作業は両国政府の依頼によりノルウェーのNGO団体「ノルウェー民衆支援(APN)」が実施し,2ヶ月に亘る作業で,対人地雷271個と対戦車地雷71個が除去された。これらの地雷は,チリの軍政,アウグスト・ピノチェト政権時代に敷設されたものである。
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