ペルー政治情勢 2013年

1月の内政と外交


1 概要
(1)司法府では,メンドサ新最高裁長官が就任し,立法府関連では,フジモリ派の政党名を2011年選挙の際の「フエルサ2011党」から「人民勢力党」に名称変更した。
(2)外交面では,ウマラ大統領がキューバを訪問した他,チリで開かれたEU−CELAC(欧州−ラ米・カリブ共同体)首脳会談及びCELAC首脳会談に出席した。また,スペイン首相,ルーマニア大統領首相,欧州委員会の関係者等がペルーを訪問した。

2 内政
(1)エンリケ・メンドサ新最高裁長官就任

 2日,サン・マルティン最高裁長官の後任として,客年12月に最高裁判事の互選により選出されたエンリケ・メンドサ新最高裁長官(2013−14年)の就任宣誓式が行われた。就任に際しメンドサ新長官は,就任当初100日間の行動計画を策定し,訴訟件数の減少,汚職対策,法制度の問題改善等に取り組む姿勢を表明した。

 

(2)フジモリ派政党の名称変更

 4日,フジモリ派を率いるケイコ・フジモリ氏は,同日よりフジモリ派の政党名を2011年選挙の際の「フエルサ2011党」から「人民勢力党(Fuerza Popular)」に名称変更する旨発表し,新名称の下で一新した提案を行い,多様かつ民主的な提言を行う旨述べた。また,改称後も政党のロゴ・マーク「K」は引き続き使用する。

 

(3)ウカヤリ州におけるヘリコプター墜落事故

 7日,米国人エンジニア5名を乗せたヘリコプターが,ウカヤリ州コロネル・ポルティージョ郡ヤリナコチャで墜落し,乗員2名を含む7名全員の死亡が確認された。事故は,プカルパの空港から鉱山視察のためサン・マルティン州に向けて出発した直後に起こり,空中で二つに分裂後,地上に墜落・爆発した。

 

(4)カンポドニコ・ペルー石油公社総裁辞任

 9日,ペルー石油公社のウンベルト・カンポドニコ総裁が2名の同公社役員等と共に辞任し,後任としてエクトル・レイェス氏の就任が決定した。辞任の経緯については,タララ製油所近代化計画及び南部ガスパイプライン構想を巡り,メリノ・エネルギー・鉱山相との間に生じた軋轢が今般の辞任に繋がったと報じられている。

 

(5)カニャリアコ鉱山をめぐる抗議運動

 22日,ランバイェケ州フェレニャフェ郡のカニャリアコ銅鉱山の開発に対するカニャリス地区住民の抗議運動が激化し,制圧にあたった警官との衝突により住民数名が負傷した。

 

(6)大統領親族の大統領選挙立候補を認める法案の取り下げ

 大統領親族の大統領選挙への立候補を禁止する規定を削除した新選挙法の法案が,全国選挙過程事務局(ONPE)により国会に提出されたことを受け,23日,同法案の適正につき議員等の間で疑義及び批判が生じた。右法案が成立すれば,ナディン・エレディア大統領夫人の2016年大統領選の立候補が可能になるが,24日,右法案の適正に関する批判を受け,マグダレナ・チュウ・ONPE局長は,右法案の取り下げ及び修正を国会に申し出た。

 

(7)ヒメネス首相とカハマルカ州知事との対話の実施

 29日,ヒメネス首相とサントス・カハマルカ州知事は,同州が抱える問題解決に向け,初の対話を実施した。同対話では,貧困問題の克服等について言及されたものの,懸案課題であるコンガ鉱山開発をめぐる議論に進展はみられず,対談後サントス州知事は,コンガ鉱山の開発は実現の可能性がない旨述べた。

 

(8)ウマラ大統領支持率(括弧内は前回結果)

ア ダトゥム社:1月1日〜4日に実施,全国(対象1,209名)

支持 57%(50%) 不支持 37%(41%) 無回答 6%(9%)

イ CPI社:1月2日〜6日実施,全国(対象1,450名)

支持 52.2%(46.8%) 不支持 38.3%(44.2%) 無回答 9.5%(9%)

ウ アポヨ社:1月15日〜17日実施,全国(対象1,636名)

支持 53%(48%) 不支持 38%(44) 無回答 9%(8%)

エ Gfk社:1月21日〜23日実施,全国(対象1,450名)

支持 55%(50%) 不支持 37%(42%) 無回答 8%(8%)


3 外交
(1)チリとの領海境界線画定問題に関する地方説明会議の開催

 6日,ロンカリオロ外相は,客年12月に国際司法裁判所(ICJ)で行われたチリとの領海境界線画定問題の公判に出席した弁護団等とともにチリと国境を接するタクナ市を訪問し,右裁判に係る説明会議を開催した。同会議には,国会のICJ領海境界線問題フォローアップチームの議員及びガルシア・ベラウンデ国会外交委員長等の他,地元タクナ市の役人,主要機関代表者及び市民が参加し,同問題の経緯及び経過の説明が行われた。ロンカリオロ外相は,同会議出席者に対して,信頼と落ち着きをもって判決を待つべき点を強調するとともに,いかなる結果であってもICJが出す判決を然るべく受け入れる意思を示した。また,同会議に参加したロドリゲス・クアドロス元外相は,本裁判の判決は6月に下されることが想定されているが,実際は12月になる可能性を示唆した。

 

(2)ウマラ大統領のキューバ訪問

 11日及び12日,キューバを訪問したウマラ大統領は,ラウル・カストロ国家評議会議長及びフィデル・カストロ前国家評議会議長と会談を行い,両国の歴史的な友好関係を確認するとともに,二国間アジェンダについて協議した。同会談で,両国首脳は,二国間の経済及び社会発展の上に必要な資本とサービスの交流の促進を目的とした「ペルー・キューバ経済補完協定No.50」に係る合意書に署名した他,ペルー・キューバ両国外務副大臣により,保健,文化,教育及びスポーツの分野における「技術協力に関する基礎協定を補足する協定」の署名が行われ,二国間アジェンダである学生の交換留学プログラムやワクチン製造に関する技術や知識の供与等の実施に向けた具体的な方策が定められた。

 

(3)アシュトン・EU外務・安全保障政策上級代表のペルー訪問

 22日,ペルーを訪問したキャサリン・アシュトン・EU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は,ウマラ大統領及びロンカリオロ外相と会談を行い,民主主義,人権,地域統合及び社会的包摂を伴う発展の重要性について意見を交わした他,今後,麻薬違法取引対策,人権の普及及び環境保護に向けて両者が一体となって取り組むことで合意した。また,アシュトン代表は,ナディン・エレディア大統領夫人と共に,EUとペルー政府が共同で支援を行っている,貧困地域における幼児の栄養失調及び飢餓の削減に向けた社会プログラムEUROPANの行事にも参加した。

 

(4)タヤーニ欧州委員会副委員長の来訪

 23日,欧州の企業関係者等と共にペルーを訪問したアントニオ・タヤーニ欧州委員会副委員長(産業・企業担当)は,ウマラ大統領と会談し,EUとペルーとの経済協力強化に向けた対話を行った。また,タヤーニ副委員長は,ロンカリオロ外相,トリベリ生産相,メリノ・エネルギー鉱山相,中銀総裁,通商観光副大臣等と会談し,ペルーとEUとの間における産業,観光等の発展に係る技術協力に関する5つの合意に署名した。

 

(5)首相及び経済財政相の世界経済フォーラム出席

 ヒメネス首相及びカスティーヤ経済財政相は,23日〜27日にダボス(スイス)で開かれた世界経済フォーラム(WEF)に出席した。同会議でヒメネス首相は,ペルー政府の経済社会政策(開発社会包摂省の創設,各種社会プログラムの実施,社会紛争の解決に向けた努力,域内初の電子マネーの導入に係る取り組み等)につきスピーチするとともに,鉱業・エネルギー分野を中心とした当国への投資のメリットを訴えた。また,カスティーヤ経済財政相は,本年4月23〜25日にリマでWEF中南米会合が開催される旨を発表した。

 

(6)スペイン首相のペルー訪問

 24日,ペルーを訪問したスペインのマリアノ・ラホイ首相は,ウマラ大統領と会談し,二国間関係について協議を行った。両首脳は,貿易及び投資分野における両国の関係の重要性を確認するとともに,経済,貿易,教育等の多様な分野における二国間関係の更なる発展に向け,「ペルー・スペイン戦略的協定に係る新計画」の署名を行った。

 

(7)ウマラ大統領のチリ訪問

 26日〜28日,ウマラ大統領はチリを訪問し,EU−CELAC(欧州−ラ米・カリブ共同体)首脳会談及びCELAC首脳会談等に出席した。

 欧州及びラ米の60ヶ国の代表が出席するなか開催されたEU−CELAC首脳会談では,両地域間の協力及び投資に関する協議が行われた。また,同会談では,欧州とラ米・カリブ地域における麻薬問題に対する協力,貿易・投資促進のための政策,持続可能な発展のための協力の実施等について記された「サンティアゴ宣言」への署名が行われた。

 また28日に開催されたCELAC首脳会談には,33ヶ国の首脳及び代表者が出席した。同会談でウマラ大統領は,教育分野への投資,産業発展に係るエネルギー問題,麻薬対策への国際的な取り組み,ラ米における女性の積極的な役割等に関する発言を行った。特に,環境問題については,違法採掘による環境汚染等の問題への更なる取り組みの必要性を提起するとともに,金(鉱山)に勝る水の重要性を訴えた。

 チリ滞在中ウマラ大統領は,チリ,コロンビア,メキシコの大統領と共に,EU−CELACのマージンで開催された第6回太平洋同盟の首脳会談に出席した他,コロンビアのサントス大統領,ファン・ロンパイ欧州理事会議長及びバローゾ欧州委員会委員長との会合にも参加し,EU−ペルー・コロンビア包括的自由貿易協定に署名を行った。

 

(8)ロンカリオロ外相のチリ訪問

 26日〜28日,チリを訪問したロンカリオロ外相は,ボリビアのチョケワンカ外相と会談し,二国間の協力の活性化と地域統合の促進について協議した他,ベネズエラのハウア外相とも会談し,両国間の貿易を通じた交流と協力の促進について話し合いを行った。また,ロンカリオロ外相は,28日,サンティアゴに新たに開設されたペルー領事館の開設式にも出席した。

 

(9)バセスク・ルーマニア大統領の来訪

 29日,ペルーを訪問したトライアン・バセスク大統領は,ウマラ大統領と会談を行った。同会談では,麻薬対策,スポーツ及び教育等の協力について話し合いが行われた他,医薬品の製造等に係る技術協力や両国の企業間における技術移転及び共同生産活動の実現の可能性についても協議が行われた。

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