ペルー政治情勢 2013年

2月の内政と外交


1 概要
(1)ビリャラン・リマ市長を含む全リマ市会議員に対するリコール投票を前に,各政党の支持状況が公表され,リコール賛成派にはアプラ党及び国民連帯党(SN)がついた一方,ペルー・ポシブレ党,人民行動党他の与党勢力が反対派支持を表明した。フジモリ派の人民勢力党及び与党ペルー国民主義党は,いずれにも属せず自由投票を表明した。
(2)国内では,米国大使館による誘拐脅威情報が発出された他,南部では豪雨被害が深刻化し,北部では鉱山開発に対する抗議運動が再開した。
(3)ウマラ大統領が南極大陸を訪問した他,ナディン・エレディア夫人が外相等とともに国連で開かれた国際キヌア年開幕式に出席した。また,ウマラ大統領の代理としてエスピノサ第一副大統領が韓国を訪問し,パク新大統領就任式に出席した他,ロンカリオロ外相が中国を訪問した。

2 内政
(1)ビリャラン・リマ市長を含む全リマ市会議員に対するリコール投票に係る支持状況
 6日,ビリャラン・リマ市長のリコール投票に係る,各政党の支持状況が発表され,アプラ党及び国民連帯党(SN)がリコール賛成派の支持を表明した。一方,フジモリ派の人民勢力党及びウマラ大統領が党首を務める与党ペルー国民主義党(PNP)は,党全体としては賛成・反対のいずれにも属せず自由投票の立場をとった。これに対して,トレド元大統領率いるペルー・ポシブレ党(PP),人民行動党(AP),ソモス・ペルー党(SP)の与党勢力及び,ペルー・キリスト教人民党(PPC)他はリコール反対派支持を表明した。
 また,3月17日のリマ市長リコール投票を前に,各社が模擬投票(スサナ・ビリャランは市長職を辞すべきか,SI(辞任),NO(続投))を実施した。なお,リコール投票では,全投票のうち,白票及び無効票を除いた有効票のみがカウントされる。
模擬投票(有効票):
ア ダトゥム社1:2月1〜5日実施(対象376名)
辞任 54%  続投 46%
イ ダトゥム社2:2月11〜14日実施(対象501名)
辞任 51%  続投 49%
ウ アポヨ社:13日実施(対象635名)
辞任 58%  続投 42%
エ CPI社:16〜21日実施(対象:600名)
辞任 54.4%  続投 45.6%
オ Gfk社:18〜20日実施(対象:666名)
辞任 57%  続投 43%

(2)米国大使館による誘拐脅威情報の発出
 14日,米国大使館は,コミュニケを通じて,クスコ州における米国人観光客の誘拐を計画している犯罪集団に関する情報を有している旨の脅威情報を発出した。同情報によれば,犯罪集団の標的及び手段の詳細については不明であるが,少なくとも本年2月末まで,右脅威は信用できるものとし,マチュピチュを含むクスコ州への米国人の旅行及び米国大使館職員の渡航を禁じた。これを受け,同日,ヒメネス首相及びシルバ通商観光相は,米国大使館による右脅威情報は,ペルー政府により然るべく立証された情報ではないと,右脅威情報を完全否定するとともに,国内の観光客の安全確保に務めることを確約した。

(3)コロンビアの国民解放軍に誘拐されたペルー人の解放
 15日,コロンビアの国民解放軍(ELN)に誘拐されていた2名のペルー人が,他3名の人質等とともに約1ヶ月ぶりに解放された。2名はいずれも地質研究者であり,1月18日,コロンビア国ボリバル県農村にある鉱山(Geo Exploer会社所有)に勤務していたところをELNに捕らわれた。右2名は,17日ペルーに無事帰還した。

(4)国内における豪雨被害
 政府は,2月に入り豪雨による被害が深刻化している国内各地(プノ州,ワンカベリカ州,ワヌコ州に対しては8日,アレキパ州及びクスコ州に対しては,13日及び15日)に対して非常事態宣言を発令した。右地域では,雨期の豪雨により土砂崩れ,地滑り,落石,河川浸食,洪水等が発生し,住居,通信網等,住民の生活が甚大の被害を受けている他,死者・行方不明者等の人的被害も報告されている。特にアレキパ州では,広い地域で洪水,地滑りが発生し,5名の死者が出た。13日,ウマラ大統領はクスコ州及びアレキパ州の被災地を訪問し,被災民及び被災地域の復旧のための緊急支援を行う旨述べた。

(5)アリトミ元駐日ペルー大使夫妻に対する逮捕命令の延長
 23日付当地紙は,不正蓄財の罪で10年の禁固刑が求刑されているビクトル・アリトミ元駐日ペルー大使,フジモリ元大統領の妹のロサ・フジモリ同元駐日大使夫人及び同夫妻の娘に対する国際逮捕命令が延長された旨を報じた。起訴状によれば,アリトミ氏は,駐日ペルー大使を務めた1991年から2001年の間に,違法に蓄財したとされ,本件には夫人と娘の関与が確認されている。現在,右3名はペルー国外滞在中である。

(6)鉱山開発をめぐる抗議活動
 21日,ラ・リベルタ州のキリビルカ(サンティアゴ・デ・チュコ郡)のバリック金鉱山開発に対する抗議活動で,住民の経済及び生活改善に向けた対話を求めて200名余りの住民が,鉱山に続く道路の封鎖を決行した。企業側との対話は実現されたものの,合意に至らず,道路封鎖は26日まで続いた。
 また,28日,カハマルカ州のコンガ鉱山では,一時休止状態であった住民等による反対運動が再開し,500名近くの地域住民がラグーナ・アスールに集結した。

(7)ウマラ大統領支持率(括弧内は前月)
ア ダトゥム社:1日〜5日実施(対象:1217名)
支持 57%(57%) 不支持 36%(37%)
イ アポヨ社:20日〜22日実施(対象:1300名)
支持 54%(53%) 不支持 37%(38%)

3 外交
(1)北朝鮮の核実験実施に対する非難声明の発出
 4日,ペルー政府は,北朝鮮による3回目の核実験実施予告を受け,プレスリリースを通じて右行為に対する懸念を表明するとともに,北朝鮮に対し6ヶ国協議への復帰と国際平和の発展を妨げる行為を直ちに中止することを求めた。
 また,12日の北朝鮮の核実験実施を受け,ペルー政府は,13日,右行為が朝鮮半島および世界の平和と安全を脅かす行為かつ国際社会の義務に違反する行為であると強く非難し,再度,6ヶ国協議への復帰を呼び掛けた。

(2)ウマラ大統領の南極大陸訪問
 12日,ウマラ大統領は南極大陸にあるマチュピチュ科学基地を訪問し,ペルーの南極大陸探査25周年記念式典に出席した。ウマラ大統領は同基地の研究所及び施設を訪問し,同施設の改善,専門家等の研究環境の向上に取り組む意思を表明した。また,同大統領は,南極大陸に新たな常設基地を設置する意向を述べた。

(3)太平洋同盟4ヶ国の国会議長会合
 13日,太平洋同盟4ヶ国の国会議長等による会合がペルーで開かれ,ロンカリオロ外相,イスラ・ペルー国会議長,モンケベルク・チリ下院議長、ポサダ・コロンビア下院議長,アロヨ・メキシコ連邦下院議長が出席した。同会合では,社会的包摂を伴った経済成長に資する地域統合のメカニズムである太平洋同盟の今後の見通しと課題について協議が行われた。また,太平洋同盟加盟国の国会は,今後,同会合に出席した議長を通じ,同同盟の制度化の枠組協定を承認し,加盟国の製品の関税撤廃に向けた取り組みを行うことを決めた。会合後,加盟国間の貿易交流上のあらゆるハードルの撤廃を目標に,加盟国相互の貿易において90%以上の品目に対する関税をゼロにする方向を示した合意書への署名が行われた。

(4)カタール国首長のペルー訪問
 14日,ペルーを公式訪問したカタール国のハマド首長は,ウマラ大統領と会談し,貿易,投資及び観光を中心とする二国間関係の発展・強化に向けた協議を行った。また同会談では,ペルーとカタール双方のエネルギー鉱山省(金融,貿易分野での取り組み),外務省,商工会議所,通信社(通信交流)及び教育機関(高等教育及び科学調査の学術交流)間で,二国間の協力強化に向けた協定への署名が行われた。

(5)カナダ外相のペルー訪問
 18日,ペルーを訪問したカナダのベアード外相は,ウマラ大統領他,ペルー政府関係者等と会談を行った。同会談でベアード外相は,太平洋同盟のオブザーバー国であるカナダの同同盟に対する関心について触れるとともに,今後も引き続き同同盟の取り組みを支援していく意向を表明した。また,両国の外相は二国間の交流と協力関係について確認した他,今後の取り組みとして,カナダ政府がペルー政府に対し,奨学金制度を通じた教育面での協力を行う旨述べた。

(6)国際キヌア年開幕式
 20日,国際キヌア年(2013)の開幕式がニューヨークの国連本部で行われ,ペルーを代表してナディン・エレディア大統領夫人,ロンカリオロ外相,フォン・ヘッセ農業相が出席した。同式典では,アンデス原産の「金の穀物」であるキヌアの重要性,特にその栄養価及び世界的な食糧危機に対する「代替作物」としての価値が改めて強調された。また同式典では,モラレス・ボリビア大統領とナディン・エレディア大統領夫人が,国際キヌア年の国連農業食糧機関(FAO)の特別大使に正式に任命された。ナディン夫人は,FAOの特別大使として,ミレニアム開発目標に掲げられている世界の飢餓問題解決に向け,キヌアの普及に努める意思を表明した。また,同夫人は,世界におけるアンデス産の作物の研究と改良技術を促進するために,キヌア及びアンデス産穀物に関する研究所の設立を提案した。

(7)フランス外相のペルー訪問
 21日,ペルーを公式訪問したファビウス仏外相は,ウマラ大統領及びロンカリオロ外相と会談した他,二国間のハイレベル会合に参加し,二国間関係強化について協議した。同会談で両国外相は,両国間の引渡条約,テロ及び組織犯罪対策に係る二国間協定に署名した。

(8)エスピノサ第一副大統領の韓国訪問
 22日〜27日,韓国を訪問したエスピノサ第一副大統領は,25日に開催されたパク・クネ新大統領就任式に出席した他,同大統領及びユン外交通商相と会談した。エスピノサ副大統領は,今後もペルーが,経済,貿易,科学技術等,多分野に亘り韓国との関係の深化に努める意向を示した。また,同大統領は,対ペルー投資の拡大を促進する点で合意した他,両国の外交関係樹立50周年を機に,学生の交換留学の拡大等を通じて,文化及び教育面でも両国の関係拡大する方針を固めた。

(9)ロンカリオロ外相の中国訪問
 25日及び26日,ロンカリオロ外相が中国を公式訪問し,中国のヤン外相及び政府高官等と会談を行った。会談では,二国間の貿易並びに外交関係が非常に高いレベルに達している点が確認されたとともに,両国間の協力プログラムや奨学金を通じた学術交流の拡大等,今後の二国間関係拡大・強化に向けた話し合いが行われた。また,ロンカリオロ外相は,ペルーにおける中国投資が多様化し,技術開発等の分野にも投資が及ぶことを期待する旨述べた。両国間では今回,APECの枠組みにおける二国間の協力に関する覚書の他,持続可能な森林利用及び森林再生に関する覚書,エネルギー及び鉱山分野における協力強化に関する覚書にも署名が行われた。

(10)ハラ女性社会的弱者相の第3回南米アフリカ首脳会合出席
 20日〜23日,ハラ女性社会的弱者相とベラウン外務副大臣は,赤道ギニアのマラボにおいて開催された第3回南米アフリカ首脳会合(ASA)に出席した。同会合でハラ女性社会的弱者相は,漁業,農業,鉱業分野におけるペルーの貢献の可能性について言及した。また,同会合では,南米諸国連合(UNASUR)とアフリカ諸国間の関係強化について協議が行われた他,南−南協力強化のための戦略とメカニズムについても話し合いが及んだ。

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