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ペルー政治情勢 2013年
3月の内政と外交
1 概要
(1)サラサル国家警察長官が辞任し,後任にフローレス首席監察官が新長官として就任した。
(2)リマ市では,17日に市長を含む市会議員のリコール投票が行われ,ビリャラン・リマ市長はリコールをまぬがれ,市長の座に留まることが決定した一方,市会議員については半数以上の22名の退任が見込まれている。
(3)5日に逝去したチャベス・ベネズエラ大統領の葬儀にウマラ大統領夫妻,ロンカリオロ外相等ペルー代表が参列し,国内でも政府はチャベス大統領の死を悼み,3日間公式に喪に服すことを定めた。
2 内政
(1)国家警察長官の交代
6日,国内の治安問題に対する責任をとり,ラウル・サラサル・ペルー国家警察(PNP)長官が辞任を表明した。10日,サラサル長官の辞任が正式に承認されるとともに,右長官の後任にホルヘ・フローレス・ゴイコチェア首席監察官が任命され,11日,フローレス新国家警察長官の就任式が行われた。サラサル長官の辞任に先立ち,国会では5日,ペドラサ内相を召喚し,国内の治安対策不足に対する責任追及が行われており,右召喚の発端には,2月にリマ市内で相次いで発生した2件の凶悪犯罪(写真家銃殺事件及び公証人役場襲撃事件)があった。
(2)米国大使館によるクスコ州への渡航制限の発出
米国大使館は,2月13日にクスコ州における米国人観光客の誘拐脅威情報を発出(2月末まで有効)し,マチュピチュを含むクスコ州への米国人の旅行及び米国大使館職員の渡航を禁じていたが,6日に入り右続報を発出し,同州への渡航の制限を米国大使館職員のみに変更した。また8日,リキンス駐ペルー米国大使は,クスコを訪問しマチュピチュ等の観光地を巡り,自ら安全性を確認した。
(3)国内に帰還するペルー人移民に対する諸制度優遇法の公布
13日,国内に帰還するペルー人移民を対象にした「帰還移民に対する社会経済復帰法」が公布された。右復帰法は,欧州等ペルーからの移民が多数居住する国々が財政危機に見舞われる中,右影響により各国から帰還するペルー人移民とその家族に対し,帰還の際に家具や自動車,現金等に係る税金を免除することで帰還を支援する他,帰還後には「奨学金18」,「年金65」,「フントス」等の社会プログラムの受給も可能にする等,社会経済面での復帰を支援する。同法は,4年以上海外に居住後帰還したペルー人を対象としている。なお,2009−2011年に帰還したペルー人は25万人に達している。
(4)違法鉱業従事者と警官隊の衝突
15日,ラ・リベルタ州パタス郡のボニタ鉱山で,違法鉱業従事者約500名と右撤退を求める200名から成る警官隊との衝突で,違法鉱業従事者2名が死亡し,警官5名が負傷した他,4名の身柄が拘束された。
(5)リマ市長及び市会議員リコール投票
17日,スサナ・ビリャラン・リマ市長を含むリマ市会議員(39名)のリコール投票が行われ,ビリャラン・リマ市長はリコールをまぬがれ,市長の座に留まることが決定した。一方,リマ市会議員(全39名)については,全国選挙過程事務所(ONPE)の暫定結果では,22名近くがリコールされる見込みであり,市議会最大野党(左派)の社会勢力党(FS)の議員の大部分が議会を去る可能性が高い。また,本リコール投票の最大の勝者となったのは,ルルデス・フローレス元リマ市長選候補率いるキリスト教人民党(PPC)で,13名の市会議員のうち,リコールされるのは1名のみと報じられている。
(6)テロリストによる携帯電話アンテナ塔爆破事件
20日夜,ワンカベリカ州タヤカハ郡ワチョコルパ区で,クラロ社の携帯電話用アンテナ塔3本が爆破された。本件を受け軍関係者は,同区はセンデロ・ルミノソ(SL)の麻薬密輸ルートであり,右攻撃はVRAEM地域で活動するSLのリーダー「同志ラウル」ことホルヘ・キスペ・パロミノ率いる一派が,同地域の治安維持活動に従事する軍による諜報活動や情報操作の妨害を目的としたものである旨表明した。
(7)徴兵制度実施の発表
24日,ペルー国軍は,兵士の人員不足を補うために,本年5月より抽選により選出された国民に対する2年間の兵役義務の実施を発表した。本制度の対象となるのは,18歳〜25歳の成年男子で,年間30,000名の徴兵が予定されている。また,抽選により選ばれた成年が仮に兵役を拒否した場合には1,850ソルの罰金が課せられる。
(8)ウマラ大統領支持率
ダトゥム社:2月27〜3月1日実施(対象:全国1304名)
支持 51%(57%) 不支持 42%(36%)
アポヨ社:20〜22日実施(対象:全国1210名)
支持 53%(54%) 不支持 38%(37%)
Gfk社:18〜20日実施(対象:全国1588名)
支持 53%(53%) 不支持 39%(39%)
3 外交
(1)EUとの自由貿易協定(FTA)の発効
1日,交渉開始から足掛け5年を経て,ペルー・EU・FTAが発効した。本発効によりペルー産品の90%超がEU市場への参入に際し関税自由化の恩恵を受ける。また,ウマラ大統領は,本発効にあたり,当地産品の対EU輸出を手掛ける企業の9割強は中小・零細企業であることからも,特に付加価値を伴う非伝統的産品の対EU輸出が増加することで,中小・零細の企業・生産者を中心に,雇用を増加しその活動を活性化することが期待される旨発言した。
(2)チリ外相のペルー訪問
5日,モレノ・チリ外相がペルーを訪問し,ウマラ大統領及びロンカリオロ外相と会談し,二国間の諸課題について協議を行った。同会談で両外相は,両国の国境タクナ−アリカ間の物流及び人的交流の促進,太平洋同盟,南米諸国連合(UNASUR)及びラ米カリブ共同体(CELAC)等の地域統合メカニズムの重要性,環境問題及び治安対策に向けた両国間の協力強化,学術交流の促進等を含む二国間の強力及び統合の強化に向けた共同宣言に署名した。また,両国は,5月2日及び3日に国際司法裁判所(領海境界線画定裁判)をテーマに,両国の外相及び国防相による2+2会合を実施する旨発表した。
(3)ウマラ大統領他のチャベス大統領の葬儀参列
5日,ウーゴ・チャベス・ベネズエラ大統領の逝去を受け,ウマラ大統領は,ペルー国民を代表しベネズエラ国民及びチャベス大統領の遺族に対する弔意を表明するとともに,8日にベネズエラのカラカス市内の軍士官学校で行われたチャベス大統領の葬儀にナディン・エレディア夫人及びロンカリオロ外相等とともに参列した。また,ペルー政府は,チャベス大統領の訃報を受け,7日より3日間,公式に喪に服すことを定めた他,葬儀の間,大統領府及び公的機関は半旗を掲げる旨発表した。
(4)第三回ペルー・ベトナム政策協議会合の開催
6日,第三回ペルー・ベトナム政策協議会合が,両国の外務副大臣が出席する中,リマにて開催された。同会合では,二国間関係の促進及び多分野における協力強化について意見交換が行われた。特に,教育,科学技術発展,中小企業促進の重要性が指摘された他,麻薬対策及び組織犯罪対策の分野における協力の可能性についても話し合いが及んだ。
(5)スペイン国防相のペルー訪問
13日,モレネス・スペイン国防相がペルーを公式訪問し,カテリアノ国防相と会談を行った。同会談で両国防相は,治安及び防衛面における協力強化に向けた共同宣言に署名し,両国の治安を脅かす脅威に共に立ち向かい,さらに世界の平和を促すために協働していく方向で一致した。また,自然災害の際には復興支援のためにスペイン軍はペルーで部隊を組織することで合意した。
(6)第二回ペルー・ボリビア政策協議会合
15日,ロンカリオロ外相及びカテリアノ国防相は,サンタ・クルス市で開催された第二回ペルー・ボリビア政策協議会合(2+2(外相及び国防相))に出席し,治安及び防衛面における二国間協力について協議を行った。本会合で両政府は,国境地帯における両国軍による共同作戦の実施の他,両国軍の学術面での交流,湖上船舶の造船技術協力の促進,二国間国境委員会での両国に関わる情報共有等の内容を盛り込んだ共同宣言に署名した。また,本会合では,ペルーがボリビアに貸与しているイロ港の利用についても言及され,ロンカリオロ外相からはペルー国会における同港の利用を許可する議定書の承認手続きの進捗状況が伝えられた。
(7)ロンカリオロ外相の新ローマ法王就任式出席
19日,新ローマ法王就任式に出席したロンカリオロ外相は,フランシスコ新ローマ法王に対し,ペルー政府及びペルー国民からの祝辞を伝えるとともに,ウマラ大統領からのローマ法王に対するペルー訪問招請の意を改めて伝えた。また,ロンカリオロ外相は,ウマラ大統領がペルー国民の名の下にローマ法王に対して送った,ペルーとアメリカ大陸の守護聖人であるサンタ・ロサ・デ・リマの絵画を贈呈した。
(8)ロンカリオロ外相の米州機構(OAS)特別総会出席
22日,ロンカリオロ外相は,ワシントンで開催された米州機構(OAS)の特別総会に出席し,参加国の代表等とともに米州人権委員会改革に関する協議を行った。同総会では,ロンカリオロ外相は,米州人権システムを最大限支持するペルーの立場を表明するとともに,右強化に向けて今後も後押しをする旨述べた。
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