ペルー政治情勢 2013年

4月の内政と外交


1 概要
(1)リマ市では,3月のリコール投票の結果,22名の市会議員のリコールが決定した。また,客年リマ市役所が行った中央卸売市場の移転を不当とする判決が下された。
(2)外交面では,ウマラ大統領が中国を訪問し,ボアオ・アジア経済フォーラムに参加した他,当地では世界経済フォーラム中南米会合が開催され,メキシコ及びパナマの大統領が参加した。また,ベネズエラ大統領選挙を巡り南米諸国連合(UNASUR)の臨時首脳会合がリマで開催され,関係諸国の首脳が来訪した他,月末には岸田外務大臣が当地を訪問した。     

2 内政
(1)中央卸売市場の移転問題に係る判決
 2日,リマ第56刑事法廷のマルソン・ウルビナ裁判長は,リマ市役所が2012年10月に行った中央卸売市場(ラ・パラーダ)のサンタ・アニータ区への強制移転を不当とする判決を言い渡し,旧中央卸売市場の再開を訴える卸売人等の市場への侵入防止のためにリマ市が設置したセメントブロックの撤去及び周辺警備にあたっていた警官の退去を命じた。ウルビナ裁判長の判決を受け,リマ市長並びに内務省は,最高裁に対して右判決の取り下げを要求した。

(2)ディエス・カンセコ議員の議員資格停止無効の判決
 4日,リマ最高裁第5特別憲法裁判所は,人民行動・拡大戦線会派のディエス・カンセコ議員に対する90日間の議員資格停止(国会は客年11月16日,ディエス・カンセコ議員が親族に有利になる株式投資法を提出したとして90日間の議員資格停止を決定)及び同議員に対し処罰を科す旨の国会倫理委員会の報告を無効とする判決を提出した。右を受け18日,国会代理訴訟人は右無効判決を不服として上訴した。

(3)ヘリコプター墜落事故
 7日,ロレト州マイナス郡ナポ町で,石油会社ペレンコ(Perenco)の従業員9名が乗ったヘリコプター(Helipac社製)が墜落し,乗員を含む13名全員が死亡した。同機はイキトスの空港を出発しマラニョン川流域の第67石油鉱区に向かう途中だった。事故原因は技術的な欠陥による。

(4)ヒメネス首相の国会喚問
 12日,国会本会議は,ヒメネス首相に対し,国内の治安・犯罪対策につき喚問し,22の質問を行った。ヒメネス首相は,治安強化のために長期的な政策を適用する必要性を訴えるとともに,増加する国内犯罪に立ち向かうために5つの基本枠組み(法的枠組み,新しい国家警察,国内の治安強化に係る政策,一般犯罪対策,制度上の調整政策)を示した。

(5)アルマンド・ビリャヌエバ(アプラ党指導者)の逝去
 14日,アプラ党の歴史的指導者の一人として知られるアルマンド・ビリャヌエバ氏(享年97歳)が逝去した。ビリャヌエバ氏は,アヤ・デ・ラ・トーレ・アプラ党創始者の死去以降,党の顔として活躍し,1980年にはアプラ党から大統領選挙にも立候補した。また,第一次ガルシア政権時代には国会議長,首相及び内相を務めた。弔問には,ウマラ大統領,ガルシア前大統領をはじめ政界関係者が多数訪れた。

(6)リマ市会議員リコール投票最終集計結果の発表
 19日,選挙管理特別委員会(JEE)は,3月17日に実施されたリマ市会議員リコール投票の最終集計結果を発表し,市長を除くリマ市会議員全39名のうち22名(社会勢力党会派(FS)20名,キリスト教人民党会派(PPC)2名)のリコール決定を通知した。また25日には,リコールされた22名の議員の代理として,本年中に行われる補欠選挙までの間市政を担う代行議員(FS:17名,PPC:5名)に対して信任状が渡された。

(7)ウマラ大統領支持率
ア ダトゥム社:5日〜8日実施,全国(対象:1210名)
支持 60%(51%) 不支持 34%(42%)
イ CPI社:8日〜11日実施,全国(対象1450名)
支持 53.8%(52.2%) 不支持 37.7%(38.3%)
ウ アポヨ社:16日及び17日実施,全国(対象1201名)
支持 51%(53%) 不支持 40%(38%)
エ Gfk社:22〜24日実施,全国(対象1368名)
支持 47%(53%) 不支持 44%(39%)

3 外交
(1)グアテマラ外相のペルー訪問  1日,ペルーを訪問したカレラ・グアテマラ外相は,ロンカリオロ外相と会談を行い,二国間の諸課題について協議を行った。会談の中で両外相は,米州地域における民主主義の強化,人権の尊重と普及,社会的包摂を伴う経済発展,麻薬対策等について言及した他,2011年12月に署名した両国間の自由貿易協定の早期発効に向けて本年6月にも合同会合を開催し,二国間の協力強化を行う点で一致した。

(2)韓国国会議長のペルー訪問
 1日,韓・ペルー外交関係樹立50周年記念式典が開催され,右式典参加のため当地を訪問した姜韓国国会議長は,ウマラ大統領と会談を行った。式典の中で姜韓国国会議長は,両国の友好関係を強調するとともに,今後も両国の繁栄のために協力していく旨述べた。また,ウマラ大統領との会談では,両国の関係が,2011年のFTA発効及び2012年の戦略的連携協定の締結以来飛躍的に拡大し,政治,貿易,経済協力等,多分野において活発な交流が行われている点が強調された。

(3)ウマラ大統領の中国訪問
 4日〜9日,ウマラ大統領はロンカリオロ外相,メリノ・エネルギー鉱山相,パレデス運輸通信相,フォンヘッセ農業相等と共に中国を訪問し,海南島,北京,上海にて公式行事を行った。海南島で習国家主席と会談したウマラ大統領は,ペルーにとり中国はペルーの重要な貿易パートナーである点を述べた他,今後の二国間関係の促進と強化を目指し,貧困対策,中小企業促進,経済・技術協力,農業,森林保全,教育,文化交流,防災等における二国間協定に署名した。また,7日には,海南島で開催されたボアオ・アジア経済フォーラムに参加し,投資家等を前にアジア・ラ米地域間の新たなモデルとスキーム形成の必要性を訴えた。
 さらに北京では,河北師範大学ペルー研究所開所式に出席した他,中国企業関係者との会合に出席し,ペルー側が中国との貿易関係強化に関心を持っている旨述べた他,再生可能エネルギー開発,南部沿岸地域の石油製油所の建設,海岸地帯の鉄道敷設等,ペルーが計画する事業について提示した。また北京では,李首相との会談に加え、中国人民政治協商会議主席との会談を行い,両国の経済関係を強化する点で一致した。
 最後に訪問した上海では,ロードショー(投資セミナー)に出席し,中国の企業関係者等に対してペルーへの投資機会をアピールした他,上海市長とも会談を行った。

(4)ボリビア外相のペルー訪問
 11日,ペルーを訪問したチョケワンカ・ボリビア外相は,イスラ国会議長及び国会外交委員会との会合を行い,ボリビアに対するイロ港(モケグア州)の利用を許可するイロ協定の補完議定書(Boliviamar)のペルー国会での早期批准を要請した。また,ロンカリオロ外相との会談では,両国の歴史的な関係を強調するとともに,イロ港のポテンシャルを高めるための二国間プロジェクトについて話し合いを行った他,二国間及び地域統合への決意を確認した。

(5)ポルトガル大統領のペルー訪問
 18日,ペルーを公式訪問したカヴァコ・ポルトガル大統領は,ウマラ大統領と二国間関係について協議を行った。両首脳は,経済面における投資の可能性について意見交換を行った他,保健(保健分野における専門家養成),テクノロジー(科学,技術分野での専門家交流),教育(言語教育支援)等に係る二国間協定に署名した。

(6)南米諸国連合臨時首脳会合開催
 18日夜,南米諸国連合(UNASUR)議長国のペルーのウマラ大統領の呼び掛けにより,ベネズエラ情勢に係るUNASUR臨時首脳会合がリマで開催され,ニコラス・マドゥーロ新ベネズエラ大統領を含む11ヶ国の代表が参加した。右会合で出席者等は,今般のベネズエラ大統領選挙におけるマドゥーロ候補の選出を後押しすることで一致した他,右選挙に係る暴動の調査を共に行うためにUNASURの委員会を任命することを決めた共同宣言を提出した。

(7)ウマラ大統領のマドゥーロ・ベネズエラ大統領就任式出席
 19日,ウマラ大統領はマドゥーロ・ベネズエラ大統領就任式に出席した。右に先立ち15日,ウマラ大統領はマドゥーロ大統領に架電し,今般の大統領選挙における勝利に対する,ペルー政府及びペルー国民からの祝意を表明するとともに,今後はベネズエラ国民の統合という大きな責務を担うことになる旨伝えた。

(8)ウマラ大統領のパラグアイ次期大統領に対する祝意表明
 22日,ウマラ大統領は,書簡及び架電をもって,オラシオ・カルテス・パラグアイ次期大統領に対し,ペルー政府及びペルー国民の名において祝意を表明した。また,同次期大統領に対し,2018年まで責務を全うすることを期待する旨を告げるとともに,両国の友好及び協力関係を今後も強化していく旨述べた。

(9)世界経済フォーラム中南米会合の開催
 23日〜25日,リマにて第8回世界経済フォーラム中南米会合(WEF−LA)が開催され,メキシコ(ペニャ・ニエト大統領),パナマ(マルティネリ大統領)の大統領,及び各国から約50名の閣僚級,約700名の政府,経済界,学術界,NGO等の関係者が参集した。今次会合では,昨今中南米諸国で見られる経済成長に関し,右経験の中南米諸国間での共有,世界的な経済・金融危機の影響回避,成長の持続可能性を高める方策,恩恵の敷衍と社会開発の拡充,マージナルな住民の生活環境改善・社会的役割の強化等のテーマを中心に議論が行われた。

(10)メキシコ大統領及びパナマ大統領の来訪
 24日,ウマラ大統領はリマで開催された世界経済フォーラム・ラ米会合参加のため当地を訪問したペニャ・ニエト・メキシコ大統領及びマルティネリ・パナマ大統領と会談を行った。ペニャ・ニエト大統領との会談では,教育,文化面における協力,二国間の人の移動及び観光促進,特に商用ビザの発給を促進する点で一致した他,国際組織犯罪及び麻薬対策において二国間の協力を強化することで合意した。また,マルティネリ大統領との会談では,二国間関係について協議を行い,ペルーとFTAを締結し,太平洋同盟にもオブザーバー参加しているパナマとの経済関係に期待する旨述べた。

(11)岸田外務大臣のペルー訪問
 30日,ペルーを訪問した岸田外務大臣は,ロンカリオロ外相との会談を行い,日・ペルーEPAを通じた経済関係の強化,我が国による対ペルー経済協力,TPP交渉における協力,東アジア情勢,中南米情勢等について意見交換を行った他,会談後は両外相により,ペルーの持続的な経済発展を後押しするために次世代自動車,及び我が国中小企業が製造する資機材(バイオトイレ)の供与に関する2件のノンプロ無償の交換公文の署名が行われた。また同日岸田外務大臣はウマラ大統領を表敬し,二国間関係等について会談した。

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