ペルー政治情勢 2013年

5月の内政と外交


1 概要
(1)外務大臣及び法務大臣が交代し,新たにリバス外相,フィガロ法務人権相が就任した。
(2)外交では,コスタリカ大統領,カナダ首相が当地を訪問した他,第7回太平洋同盟首脳会合及び閣僚会合が開催され,ウマラ大統領,リバス外相等が出席した。また,チリとの間で2+2会合及びチリ・ペルー社会統合委員会の第1回閣僚会合が開催された。

2 内政
(1)ハビエル・ディエス・カンセコ議員の逝去
 4日,国会における左派の代表格であり,与党を離脱して人民行動・拡大戦線会派の議員になったハビエル・ディエス・カンセコ議員が逝去した。同議員は,本年1月より膵臓癌のため闘病中だった。右に伴い,17日,同議員の後任としてディエス・カンセコ議員が当選時所属していた与党勝利するペルーで次点で落選したマヌエル・ダンメル候補が繰り上げ当選した。

(2)ラ・コンベンシオン郡における軍及び警察による市民への誤射事件
 6日,クスコ州ラ・コンベンシオン郡エチャラテ町オソナンピアト地区において,軍及び警察の合同パトロール隊が市民の乗車する路線バスを誤って攻撃し,乗車していた乗客と運転手計14名のうち,妊婦1名,幼児1名を含む9名が負傷した。専門家によると,合同パトロール隊は事前に麻薬を運び出すトラックに関する情報を入手していたため現場で待機していたが,結果的に麻薬は別の場所から運び出されており,一般市民の乗った同車両を誤って襲撃した。

(3)外務大臣及び法務人権大臣の交代
 15日,健康上の問題を理由にロンカリオロ外相が辞任し,後任にエダ・リバス(Eda Rivas)法務人権相が任命された。右に伴い,リバス法務人権相の後任には,ダニエル・フィガロ(Daniel Figallo)法務人権省法務担当副大臣が就任し,同日,両新大臣の宣誓式が行われた。

(4)リマ市議会議員補欠選挙日の公表
 15日,全国選挙審査会(JNE)は,3月17日に実施されたリマ市長を含むリマ市議会議員のリコール投票で,リコールが決定した22名の議員の補欠選挙を本年11月24日に実施することを発表した。補欠選挙で選出される議員の任期は2014年末までである。

(5)ウルビナ判事に対する評価
 15日,全国司法審議会(CNM)は,リマ市の中央卸売市場(ラ・パラーダ)の移転問題で卸売人に有利な判決を下したことで知られるマルソン・ウルビナ判事に対する評価(CNMは6年毎に全判事に対する評価を実施)を発表し,リマ第56刑事法廷の裁判官を務めた2005−2012年期,同判事が提出した判決にかかる誤り及び学識不足により,同判事は裁判官としては不適格であり,ウルビナ判事の裁判官としての資格を認めない旨通告した。

(6)ウマラ大統領による緊急経済対策の発表
 24日,ウマラ大統領は本年第一四半期の経済成長率が4.8%と予想を下回る結果となったことを受け,投資促進及び経済発展に係る7つの緊急経済対策を発表した。具体的には,ペルー主要投資案件の監視理事会の創設,道路,空港・港湾の拡張及び建設等に係るインフラ整備のための土地収用の迅速化,中小企業のリマ証券取引所参入促進を目的とした株式資本市場改革に向けた法整備の検討等を掲げた。

(7)トレド元大統領に対する国会喚問
 27日,国会監査委員会は,アレハンドロ・トレド元大統領に対し,元大統領の義母による2件の高額不動産(総額約5百万米ドル相当)購入に関し,4時間に亘る喚問を行った。トレド元大統領は,本件への関与を完全に否定するとともに,汚職はない旨強調した。

(8)市民サービス法に対する全国各地での抗議活動
 29日,市民サービス法の国会本会議での審議を前に,全国各地で同法案に反対する公務員による抗議活動が発生し,リマ市,カハマルカ市,アレキパ市等の主要都市で大規模なデモ行進が行われた他,イキトス市では空港が封鎖された。また30日には,リマ市で2千人近い労組員が国会に向けてデモ行進した他,市内中心部の憲法(アルマス)広場では,抗議者と警官隊との衝突が起き,警察が催涙弾と放水車を用いて事態の鎮圧にあたった。右暴動により8人の逮捕者が出た。また,同日行われる予定であった国会本会議での審議は延期された。

(9)ウマラ大統領支持率
ア ダトゥム社:3日〜7日実施,全国(対象1216名)
支持 54%(60%) 不支持 41%(34%) 無回答 5%(6%)
イ アポヨ社:15日〜17日実施,全国都市部(対象1221名)
支持 46%(51%) 不支持 44%(40%)
ウ Gfk社:20〜22日実施,全国都市部(対象1207名)
支持 44%(47%) 不支持 49%(44%)
エ CPI社:25〜30日実施,全国(対象1450名)
支持 49.4%(53.8%) 不支持 45.2%(37.7%)

3 外交
(1)ペルー・チリ2+2会合
 2日及び3日,ペルー・チリ両国の外相及び国防相による第4回政策協議及び調整のための常設委員会(2+2)が開催された。同会合では,二国間関係の深化について協議が行われ,両国の国境地帯の通行の簡素化,平和維持活動に係る共同部隊の設置,両国の信頼及び治安強化に向けた両国軍間での交流の実施等の内容を盛り込んだ共同宣言への署名が行われた。

(2)太平洋同盟議会の創設
 6日,コロンビアの国会にて太平洋同盟4ヶ国(コロンビア,チリ,メキシコ,ペルー)の国会議長等の会合が開かれ,4ヶ国により構成される太平洋同盟議会設立合意書の署名が行われた。右議会は,太平洋同盟の経済・貿易の統合に係る法的な側面の進展を担い,各国の国会から10名の議員を同議会に任命することを決めた。

(3)駐ペルー・エクアドル大使をめぐるトラブル
 6日,リオフリオ駐秘エクアドル大使が,リマ市内のスーパーでペルー人女性に侮辱及び暴力行為に及んだとされる問題について,ペルー・エクアドル間での見解が相違したことで,二国間関係に亀裂が生じることが懸念されたことから,エクアドル政府がリオフリオ大使の任務終了を発表したのと合わせて,ペルー側もレオン駐エクアドル・ペルー大使の同任務の終了を発表した。本件に関して,ペルーでは,ロンカリオロ外相(当時)が,事情聴取のため本国に召還されていたリオフリオ大使をペルーに戻さないよう求めていたのに対し,コレア・エクアドル大統領はリオフリオ大使が侮辱され,攻撃されたと主張するとともに,ペルー側がリオフリオ大使を受け入れないのであれば,エクアドルもレオン大使を受入れない旨述べていた。

(4)コスタリカ大統領のペルー訪問
 13日,チンチージャ・コスタリカ大統領が同国のゴンサレス貿易相及びチャンコン広報相等と共にリマを訪問した。ウマラ大統領との会談では,二国間の貿易関係の強化,相互の科学技術協力の促進について触れた他,太平洋同盟の枠組みにおける地域情勢等に話が及んだ。

(5)クリントン元米国大統領のペルー訪問
 13日及び14日,ビル・クリントン元米国大統領はクリントン財団とペルー通商観光省との協定署名のためにペルーを訪問し,ウマラ大統領,シルバ通商観光相とともに右署名式に出席した。今般署名が行われた協定は,地元の生産者から産品を納入するクスコのホテル及びレストランの振興及び生産者への支援を行うもので,クスコ州における社会的包摂を伴う開発の促進を目指している。

(6)リバス新外相と南米各国外相との会談
 17日,アンデス共同体(CAN)外相会合及びイベロアメリカ事務局諮問委員会のため当地を訪問したボリビア,チリ,コロンビアの外相は,リバス新外相を表敬するとともに,各外相との会談では二国間関係,地域情勢について話し合いが行われた。会談にはロンカリオロ前外相も出席し,リバス新外相と各国外相との関係構築が行われた。

(7)太平洋同盟加盟国間の査証免除に関する法令の公布
 21日,ペルーは太平洋同盟の枠組み及び相互主義の原則に基づき,チリ,コロンビア及びメキシコ国民の商用の場合におけるペルー入国に係る査証を免除する大統領令を公布した。本法令により,今後は加盟国間における商取引機会の増大及びペルーに対する投資機会の増進が期待される。なお,チリ及びメキシコに関しては,本法令に先立ち既にペルー人の商用の場合における査証が免除されていたが,コロンビアについては,未だペルー人の入国に係る査証免除を行っていないため,今般の法令の適用は,コロンビアがペルー人の査証免除を公布するまでは一時的に留保される。

(8)カナダ首相のペルー訪問
 21日及び22日,ペルーを訪問したカナダのハーパー首相は,ウマラ大統領と会談し,二国間関係及び両国の政策対話の強化を目指し協議を行った。会談では,二国間の協力,貿易,及び開発,教育,国防面における協力の他,環境保全の重要性及び鉱業分野における民間投資プロジェクト促進について話し合われた他,ペルーの軍事能力強化のための覚書への署名が行われた。

(9)太平洋同盟閣僚会合
 22日,コロンビアのカリにて開催される第7回太平洋同盟首脳会合に先立ち,同同盟4ヶ国(チリ,コロンビア,メキシコ,ペルー)による閣僚会合が開かれ,ペルーからはリバス外相が出席した。同会合では,太平洋同盟の様々な取り組みに資する協力基金の創設が決定し,基金は,環境,イノベーション,科学,テクノロジー,社会開発及び学術交流に充てられる予定である。

(10)ウマラ大統領の第7回太平洋同盟首脳会合出席
 23日,ウマラ大統領はコロンビア(カリ)で開催された第7回太平洋同盟首脳会合に出席した。本会合では,関税,税関協力,貿易の技術的障害の撤廃に関する合意書について署名が行われた他,協力分野では,協力基金の設立の他、奨学金制度の実施について確認した。また,本会合では新規加盟国の加盟の方針(コスタリカに限定)について合意した他,7ヶ国(エクアドル,エルサルバドル,フランス,ホンジュラス,パラグアイ,ポルトガル,ドミニカ共和国)のオブザーバー参加が承認された。

(11)ヒメネス首相のスペイン訪問
 27日〜31日,ヒメネス首相は,シルバ通商観光相,アンダーソン国家戦略的計画センター(CEPLAN)所長等とともに,ペルーに対する投資の呼び込み及び国内における産業発展促進のための技術移転及び専門家派遣について協議するためにスペインを訪問した。ラホイ首相と会談したヒメネス首相は,両国の有能な人材の移動に関する協定について協議すると同時に,イノベーション,科学技術及び教育に関するペルーの投資計画を提示した。また,スペインの投資家との会合では,欧州と比して経済的に好調なペルーに対する信頼を訴えた。

(12)カテリアノ国防相のイタリア訪問
 27日,イタリアを訪問したカテリアノ国防相は,マウロ伊国防相と会談し,二国間関係及び協力について協議した。会談では,治安及び防衛にかかる両国政府間覚書の国会承認について言及した他,マウロ国防相が8月半ばにペルーを訪問することで合意した。

(13)チリ・ペルー社会統合委員会第1回閣僚会合
 27日及び28日,チリのサンティアゴにおいてチリ・ペルー社会統合委員会(CIS)の第1回閣僚会合が開催され,ペルーからはリバス外相,トリベリ開発社会包摂相,ペドラサ内務相,フィガロ法務人権相,サラス教育相,デ・ハビッチ保健相,ラオス労働相,ハラ女性相が出席した。本会合では,二国間関係強化に向けた共同宣言の署名が行われ,同宣言の中では,CISの制度化に向けた基本方針が確認された他,両国の移民コミュニティ支援,二国間の協力強化に向けた一連の合意及び領海境界線画定に係るICJの判決に向けた両政府の取り組みについても触れられた。

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