ペルー政治情勢 2013年

6月の内政と外交


1 概要
(1)ウマラ大統領は,フジモリ元大統領が末期の病状にないことから,人道的恩赦を与えるに値しないとし,恩赦申請を却下した。
(2)立法府では,左派系の6政党が2014年統一地方選挙及び2016年総選挙に向け新たな政治連合「ペルーのための拡大戦線(Frente Amplio por el Peru)」を結成した。
(3)外交では,ウマラ大統領が米国を公式訪問し,オバマ大統領と会談した。また当地には,コロンビア外相が訪問した他,アンデス共同体外相及び通商担当相会合が開催された。

2 内政
(1)ペルー・チリ領海境界線画定裁判の判決に向けた決起集会の開催
 3日,ペルー・チリ領海境界線画定裁判の判決を前に,大統領府において主要政党党首及び本件の関係者等を集めた事前会合が開かれ,国際司法裁判所(ICJ)における公判プロセスについての説明が行われた。また,本会合で参加者等は,判決の遵守と一同が団結していくことを再確認した。

(2)ウマラ大統領によるフジモリ元大統領の恩赦申請却下の決定
 7日,ウマラ大統領は,フジモリ元大統領の恩赦を審査する恩赦委員会の報告書を精査した結果,元大統領の恩赦申請却下を決断した。ウマラ大統領によれば,恩赦委員会は,報告書の中で元大統領には末期の病状はみられず,人道的恩赦を適用するには値しないと報告しており,ウマラ大統領は恩赦委員会の忠告を受け入れるかたちで,元大統領に人道的恩赦を与えないという最終判断を下した旨述べた。同日,記者会見を開いたウマラ大統領は,フジモリ元大統領が末期の病状ではないことに加えて,「悔悟の念」に欠けることが恩赦申請却下の理由である旨説明すると同時に,フジモリ元大統領の健康状態が急変すれば,再度恩赦申請を行うことも可能であると述べた。

(3)トリベニョ生産大臣の国会召喚
 13日,国会本会議はトリベニョ生産大臣に対して,アンチョビー漁にかかる規制等を設けた新たな漁業法令につき,約5時間に亘り90の質問を行った。右法令は,アンチョビー漁を行う船舶の規模により3段階の漁業域を設けたもので,資源の豊富な10マイル以下を小規模漁民による食用アンチョビー漁の領域とする一方,商業用の大型漁船の漁獲域(主として魚粉用)を右以上と定めたことで漁業への悪影響が懸念されていた。トリベニョ大臣は,右法令が漁業資源の保護,小規模漁民の経済振興及びアンチョビーの食用化促進を目指している点を説明し,漁業へのネガティブな影響はないとした。

(4)国会会期の延長
 14日,イスラ国会議長は,人権擁護官,憲法裁判所判事及び中銀理事の選出とその他懸案事項の議論のため,今次通常国会会期(2013年6月15日までのところ)を7月5日まで延長する旨決定した。

(5)抽選による徴兵選出中止の発表
 18日,司法府は,兵士の人員不足を補うために軍が実施を予定していた,抽選による徴兵が,罰金を支払うことで免除されることが差別的であるとし,19日に実施予定であった抽選の中止を発表した。軍は本年4月に,18歳〜25歳の成年男子に対する徴兵義務の実施を発表したが,抽選で選ばれた成年が1850ソルの罰金を支払えば徴兵が免除されるとしたことで,家庭状況により不平等が生じる点が問題視された。

(6)ペルー国会における太平洋同盟枠組み協定の批准
 20日,国会本会議は,2012年6月6日にチリのアントファガスタで署名された太平洋同盟の枠組み協定を承認する決議を可決した(賛成85票,反対2票,棄権3票)。右枠組み協定は,加盟国の経済面における成長,発展及び競争力を高めることを目的としており,域内住民の社会的格差の是正と社会的包摂に資するものである。

(7)新左派連合の結成
 21日,左派系の6政党は2014年統一地方選挙及び2016年総選挙に向け新たな政治連合「ペルーのための拡大戦線(Frente Amplio por el Peru)」の結成を正式に発表した。右連合には,ビリャラン・リマ市長の「社会勢力党」,アラナ神父の「祖国と自由」,サントス・カハマルカ州知事の「社会確立運動」,サロモン・レルネル元首相の「変革を求める市民」の4政党に加え,共産党,社会党が加わる。

(8)国会議員の会派離脱
 28日,人道党(PHP)のシモン議員(ガルシア政権時代の元首相)は,キリスト教人民党(PPC)とのイデオロギー及び政策における不一致を理由に,同党とともに連合を形成する「大変革のための連合(AGC)」からの離脱を発表した。AGCは,PPC,PHP,進歩のための同盟(APP),及び国家復興党(RN)の計12名の議員から構成され,クチンスキー元大統領選候補の2011年の大統領選挙出馬の際に結成された連合会派である。シモン議員は,当面いずれの会派にも属さないが,今後,他の議員とともに新たな会派の結成する見込みである。

(9)ウマラ大統領支持率(括弧内は前回の数値)
ア ダトゥム社:5月31日〜6月3日実施,全国(対象1220名)
支持 47%(54%) 不支持 46%(41%) 無回答 5%(7%)
イ アポヨ社:12〜14日実施,全国都市部(対象1226名)
支持 41%(46%)  不支持 53%(44%)
ウ Gfk社:18〜19日実施,全国都市部(対象1231名)
支持 39%(44%) 不支持 55%(49%)

3 外交
(1)リバス外相の第43回米州機構総会出席
 4〜6日,リバス外相はグァテマラのアンティグア市で開催された米州機構(OAS)第43回総会に出席した。同総会でリバス外相は,米州人権憲章及び米州社会憲章の原則と価値の普及に向けた決意を確認するとともに,米州人権システムの強化を支持した。また,本総会の枠組みでリバス外相は,ケリー米国国務長官及びインスルサOAS事務総長と個別会談を行った。

(2)ウマラ大統領の米国訪問
 10〜13日,ウマラ大統領は,リバス外相,シルバ通商観光相,カテリアノ国防相と共に米国を訪問した。今次訪問でウマラ大統領は,オバマ大統との首脳会談及びヘーゲル国防長官と会談した他,米国上院外交委員会との会合,アメリカ進歩センターにおける講演,米州機構(OAS)常設理事会出席等の一連の公式行事を行った。11日に行われた首脳会談では,麻薬対策の他,教育,科学技術面における協力について協議し,両首脳は,経済繁栄・社会的包摂・教育・科学技術・市民の安全について協力関係を更に深化することにより、二国間関係を強化する旨を示した共同声明を発表した。また,12日にはウマラ大統領はボストンを訪問し,ペルー政府とマサチューセッツ州との協定に署名した他,今次訪問中にはマサチューセッツ工科大学等,米国の大学関係者等とも会談し,ペルーの教育,科学技術の促進,及び学術交流の可能性について協議を行った。

(3)ロハス外務副大臣のFEALAC外相会合出席
 13日及び14日,インドネシアのバリで開催された第6回FEALAC外相会合に出席したロハス外務副大臣は,「ウルワトゥ宣言」に署名し,アジア大洋州地域への外交政策を促進していく点で一致した。また,ロハス副大臣は,本会合の枠組みで,ベトナムのレ・ルオン・ミン・ASEAN事務局長と会談し,ペルーとASEANとの関係の更なる強化と統合の可能性についても協議した。

(4)アンデス共同体外相及び通商担当相会合の開催
 15日,リマのアンデス共同体(CAN)事務局にて,CAN外相及び通商担当相会合が開催され,リバス外相,オルギン・コロンビア外相,パティーニョ・エクアドル外相,チョケワンカ・ボリビア外相,及び同加盟国の通商担当相が出席した。今次会合は,CANのアンデス統合制度の再検討を目的としており,CANの活動分野に関する新たなビジョン及び戦略方針を策定するために,ハイレベル作業グループを結成することを決定した。

(5)コロンビア外相のペルー訪問
 24日,ペルーを訪問したオルギン・コロンビア外相はリバス外相と会談し,二国間関係について協議した。両外相は,両国の国境地帯の住民の生活改善のために,ペルー・コロンビア国境統合地域開発計画に署名した他,違法鉱山対策,麻薬対策等についても両国が協力していくことで一致した。

(6)リバス外相の第8回太平洋同盟閣僚会合出席
 29日及び30日,リバス外相は,コロンビアで開催された第8回太平洋同盟閣僚会合に出席した。今次会合では,域内貿易品目92%の関税即時撤廃について合意された他,トルコ,韓国,中国及び米国からの新たなオブザーバ申請が発表された。また,リバス外相とオルギン・コロンビア外相は,30日,コロンビアに入国するペルー人の商用査証免除にかかる覚書に署名した。

法的事項 | アクセシビリティについて | プライバシーポリシー |