1月の内政と外交
平成28年6月15日
大統領選挙
(1)19の政党・選挙連合が大統領・副大統領候補を擁立した。
(2)ケイコ・フジモリ候補陣営が治安政策担当チームの顔ぶれを公表した。
(3)人民勢力党の国会議員立候補者が公表され,フジモリ元大統領派現職議員数名の立候補が見送られた。
(4)エスピノサ第一副大統領がアクーニャ候補陣営に参画することを発表した。
(5)アクーニャ候補に博士論文剽窃疑惑が浮上した。
内政
(1)ペルー検察が,ナディン・エレディア大統領夫人の資金洗浄疑惑に関し,フランスを含む4か国の政府当局に同夫人及び関係者の資産情報を請求していることが明らかとなった。
(2)フランスとの身柄引渡相互協定が公布された。
外交
(1)カテリアーノ首相が訪米し,アルマグロOAS事務局長,ヘインズ米大統領副首席補佐官,フロマン通商代表,シャノン国務長官顧問と会談を行った。
(2)ウマラ大統領が第4回CELAC首脳会合出席のためエクアドルを訪問した。
2 大統領選挙
(1)11日,大統領・副大統領候補の立候補者リスト及び政権プランの提出が締め切られ,19の政党・選挙連合が立候補者を登録した。
(2)主要大統領候補の動向
ア ケイコ・フジモリ人民勢力党候補
(ア)6日,ロペス・ドルス元内務副大臣,ミヤシロ元内相,サラサール元内相が治安対策を担当することを発表した。ケイコ候補は否定しているものの,ロペス・ドルス元副大臣とモンテシーノス元国家諜報局顧問の関係が一部から指摘されている。
(イ)19日,リマ市・在外選挙区から立候補する国会議員候補者を公表した。フジモリ元大統領派現職議員の去就が注目される中,候補者リストに名を連ねたのはサルガド議員のみで,フレッシュな顔ぶれの登用が際立った。
イ クチンスキー「変革のためのペルー国民」候補
クチンスキー候補が大統領選挙への立候補のために全国選挙審議会に申告した資産情報に不備があるとの指摘がなされた。この指摘に対しクチンスキー候補は,一部情報の誤りを訂正したことを認めた上で,所有する不動産の大部分を娘に相続したことを明かした。
ウ アクーニャ「ペルーの進歩のための同盟」候補
(ア)6日,エスピノサ第一副大統領が,アクーニャ候補の「ペルーの進歩のための同盟」に参画することを発表した。エスピノサ副大統領は,「ペルーの進歩のための同盟」のピウラ州国会議員立候補者リストの筆頭に名を連ねる見込み。
(イ)昨年12月,アクーニャ候補が自身の政党である「進歩のための同盟」に,約6,000万円を貸し付けたことが明らかとなった。その後,貸付額とほぼ同額がアクーニャ候補の選挙参謀であるファブレ氏が役員を務めるブラジルのコンサルタント会社に送金されている。なお,国会「ラバ・ジャト」事件調査特別委員会は,ファブレ氏を近く国会に召喚する意向を示している。
(ウ)27日,アクーニャ候補の博士論文に数ページにわたる剽窃が認められるとの告発をきっかけに,同候補は大きな批判を浴びた。この告発を受け,博士号を授与したマドリード・コンプルテンセ大学が調査を開始した他,ペルー検察も本件に関する予備調査を開始している。アクーニャ候補は,自身の論文に引用が明示されていない箇所があることは認めたが,剽窃は否定している。また,アクーニャ候補が化学エンジニアの学位を取得した国立トゥルヒーヨ大学も,アクーニャ候補の学位取得過程に不正がなかったか調査を開始するとしている。
(3)主要大統領候補予想得票率(括弧内は昨年12月数値)
ア CPI社:9~12日,全国(対象1500名),誤差2.5%,信頼度95.5%
ケイコ・フジモリ人民勢力党候補 32.1%(33.1%)
アクーニャ「ペルーの進歩のための同盟」候補 15.2%(12.1%)
クチンスキー「変革のためのペルー国民」候補 13.1%(17.6%)
ガルシア「人民同盟」候補 7.2% (8.2%)
グスマン「全国民よペルーのために」候補 5.0% (1.2%)
イ ダトゥム社:8日~11日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
ケイコ候補 35%(35%)
クチンスキー候補 14%(14%)
アクーニャ候補 10%(12%)
ガルシア候補 6% (7%)
グスマン候補 4%(0.4%)
ウ イプソス社:12~14日実施,全国(対象1831名),誤差±2.3%, 信頼度95%
ケイコ候補 33%(33%)
クチンスキー候補 13%(16%)
アクーニャ候補 13%(13%)
ガルシア候補 8% (8%)
グスマン候補 5%
エ GfK社:22~26日実施,全国(対象1563名),誤差±2.5%,信頼度95%
ケイコ候補 32.6%(29.5%)
グスマン候補 10.4% (1.9%)
アクーニャ候補 10.0% (8.3%)
クチンスキー候補 9.5%(10.9%)
ガルシア候補 6.5% (4.7%)
3 内政
(1)ナディン・エレディア大統領夫人の資金洗浄疑惑
ペルー検察が,ナディン・エレディア大統領夫人の資金洗浄疑惑に関し,ナディン夫人,イボスカ・ウマラ氏(ウマラ大統領の姉),ベリータ駐仏ペルー大使の資産情報を仏政府当局に請求していることが明らかとなった。同請求は,昨年11月に申請され,スイス,ベネズエラ,バルバドス政府当局にも同様の請求がなされている。(注:2月3日,ナディン夫人の資金洗浄の証拠とされる手帳が,筆跡鑑定の結果,ナディン夫人のものであるとの結果が出た。)
(2)フランスとの身柄引渡相互協定の公布
17日,フランスとの身柄引渡相互協定が公布された。本件は,2013年2月にフランス政府との間で署名済みで,国会での承認手続きも済んでいたが,政府は一部修正が必要な部分があるとして差戻しを試みていた。元々現政権により署名された協定であったにもかかわらず,署名から公布までに時間を要したため,ウマラ大統領もしくはナディン夫人が資金洗浄疑惑などの訴追を恐れ,大統領任期終了後にフランスに逃亡することを想定しているのではないかとの憶測が流れていた。
(3)ウマラ大統領支持率(括弧内は12月数値)
ア CPI社:9~12日,全国(対象1500名),誤差2.5%,信頼度95.5%
支持 22.3%(18.1%) 不支持 76.3%(79.9%)
イ ダトゥム社:8日~11日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 17%(17%) 不支持 79%(80%)
ウ イプソス社:12~14日実施,全国(対象1831名),誤差±2.3%,信頼度95%
支持 18%(16%) 不支持 75%(78%)
エ GfK社:22~26日実施,全国(対象1563名),誤差±2.5%,信頼度95%
支持 12%(16%) 不支持 83%(79%)
4 外交
(1)カテリアーノ首相の訪米
11~16日,米国を訪問したカテリアーノ首相は以下の会談を行った。 ア アルマグロ事務局長(11日)
4月10日に実施される大統領・国会議員選挙へのOAS選挙監視団の派遣が話題となった。カテリアーノ首相によれば,OASは,選挙監視団派遣に向けた準備を開始しており,向こう数週間中に監視団長が決定する見通し。また,カテリアーノ首相は,米州における民主主義強化を目的としたプロジェクト向け資金の拠出をペルー政府が検討中であることをアルマグロ事務局長に伝達した。
イ ヘインズ大統領副首席補佐官(12日)
(1)TPP署名によりもたらされる米・ペルー共通の利益,(2)教育,科学技術,イノベーション分野での協力,(3)対ペルー投資の促進,(4)近日中に予定される米国医薬品企業団のペルー訪問,(5)治安及び国防分野での協力,(6)麻薬密輸対策,が主な話題となった。ヘインズ副首席補佐官は,ペルーは麻薬対策における米国の重要なパートナーであり,ウマラ政権の麻薬対策が着実な成果を上げている点を評価した。また,麻薬密輸対策に関する二国間ワーキング・グループの設置を検討することでカテリアーノ首相と合意に至った。
ウ フロマン通商代表(14日)
(1)FTA締結後のペルーと米国の経済・通商関係の発展,(2)TPP,(3)ペルー経済,ウマラ政権による教育及びインフラ開発,(5)太平洋同盟,(5)APEC及び今年5月に開催されるAPEC貿易担当大臣会合へのフロマン通商代表の出席,が話題となった。
エ シャノン国務長官顧問(15日)
(1)大統領・国会議員選挙へのOAS選挙監視団派遣,(2)国防分野における二国間協力,(3)麻薬密輸及び関連犯罪(違法鉱業・伐採)対策,(4)二国間FTA,(5)太平洋同盟,(6)APEC首脳会合,(7)TPP,(8)気候変動対策におけるペルーのリーダーシップ,が主な話題となった。シャノン顧問は,麻薬密輸対策及び違法コカ葉栽培根絶に関するペルー政府の取組を評価するとともに,麻薬対策における両国の目標の達成のためのメカニズムを模索していくことでカテリアーノ首相と一致した。カテリアーノ首相は,麻薬密輸対策における協力が二国間協力の鍵であり,次期政権でも現在の取組が継続されるよう努める意向を示した。
(2)ウマラ大統領のCELAC首脳会合出席
27日,エクアドルで開催された第4回CELAC首脳会合に出席したウマラ大統領は,モラレス・ボリビア大統領との会談を行った。同会談では,(1)投資協定,(2)税関協力,(3)麻薬密輸対策,(4)昨年6月に開催された「第1回ペルー・ボリビア合同閣議」,(5)ブラジルのサントス港とペルーのイロ港を繋ぐ「大洋間中央鉄道計画」,(6)二国間を繋ぐ道路網の統合,(7)チチカカ湖の水質及び生態系回復が話題となった。