3月の内政と外交

平成28年6月24日
1 概要
 大統領選挙
(1)グスマン「全国民よペルーのために」候補が,党内規違反を理由とする立候補取消し処分を受け,選挙戦から脱落した。
(2)アクーニャ「ペルーの進歩のための同盟」候補が有権者への贈賄を理由とする立候補取消し処分を受け,選挙戦から脱落した。
(3)与党国民主義党がウレスティ候補の立候補取下げを決定した。
(4)党内規への違反を理由とするクチンスキー「変革のためのペルー国民」候補への立候補取消し請求が提出されたが棄却された。
(5)有権者への贈賄疑惑を理由とするケイコ・フジモリ人民勢力党候補への立候補取消し請求が提出されたものの,第一審,第二審ともにケイコ候補の立候補取消し請求を棄却する判決を下した。
(6)上記(3)を含め5名の候補が立候補を取下げた。2月に立候補を取下げた2候補及び立候補取消し処分を受けた2候補と合わせ,計9名の候補が選挙戦から脱落した。
(7)グスマン候補及びアクーニャ候補の立候補取消しにより,支持先を失った有権者を取り込む形で,クチンスキー候補が以前の支持率を回復した他,メンドーサ候補が急激に支持を伸ばし決選投票に迫る勢いを見せた。

外交
(1)EU・ペルー査証免除協定への署名が行われ,暫定的に運用が開始された。
(2)サンチェス外相がメキシコを訪問し,太平洋同盟外相会合及びペルー・メキシコ戦略的パートナーシップ協定の第一回会合に出席した。

2 大統領選挙
(1)グスマン候補の立候補取消し
ア 4日,特別選挙管理委員会(JEE)は,有権者から提出されていたグスマン候補への立候補取消し請求に関し,党内規に違反する形で党内規の改定及び党内選挙でグスマン候補を大統領候補に選出した点が党内の民主主義に反するとして,グスマン候補の立候補を取り消す判決を下した。グスマン候補は同判決を不服とし,第二審にあたる全国選挙審議会(JNE)に控訴した。

イ 9日,第二審のJNEは,第一審判決を支持する形でグスマン候補の訴えを退けた。さらに,13日,JNEは,グスマン候補の立候補取消し判決に至るプロセスは正当であったとして,再審を訴えていたグスマン候補の特別上告を退けた。特別上告の棄却を受けたグスマン候補は,立候補取消し判決は,憲法で保障されている参政権を侵害するものであると主張するとともに,今次選挙プロセスに正当性がないことを訴えるため「全国民よペルーのために」からの国会議員立候補をすべて取り下げることを発表した。

(2)アクーニャ候補の立候補取消し
ア 4日,JEEは,アクーニャ候補が政治団体法第42条で禁止されている有権者への贈賄に違反したとして,同候補の立候補を取り消す判決を下した。アクーニャ候補は同判決を不服として,第二審にあたるJNEに控訴した。

イ 9日,第二審にあたるJNEは,第一審判決を支持する形でアクーニャ候補の訴えを退けた。さらに,13日,JNEは,アクーニャ候補の立候補取消し判決に至るプロセスは正当であったとして,再審を求めるアクーニャ候補の特別上告を退けた。アクーニャ候補は有権者に金銭を渡した行為は人道的行為であった等として,贈賄には当たらないとの立場を主張していた。

(3)ウレスティ候補の立候補取下げ
9日,与党国民主義党の意思決定機関である全国執行委員会(CEN)は,ウレスティ候補の立候補を取り下げる決定を下した。同決定につき党首であるナディン・エレディア大統領夫人は,政党登録の維持を優先した結果であると釈明した。他方,与党議員や党員からは,党執行部による一方的な決定であるとして厳しい批判が集まった。

(4)キリスト教人民党の党内規違反疑惑
アプラ党及びバモス・ペルー党と「人民同盟」を形成しているキリスト教人民党(PPC)が,同選挙連合形成に至る過程で党内規に違反した可能性が報じられた。具体的には,党内規で定められるものとは異なる特別委員会で「人民同盟」の形成が決定されたこと,また,JNEに提出された議事録からは,党内の意思決定にかかるプロセスが党内規に沿ったものであったかが確認できない点が報じられた。PPC関係者は党内規への抵触を否定するとともに,特別委員会による意思決定についても法律上問題ないとの立場を示した。なお,違反の可能性は指摘されたものの,「人民同盟」の選挙連合登録取消しを訴える請求はなされていない。

(5)クチンスキー候補に対する立候補取消し請求
ア 11日,「変革のためのペルー国民」が,党内規に違反する形でクチンスキー候補を同党の大統領候補に選出したことを理由とする立候補取消し請求が提出された。同党の内規では,党内選挙実施機関のメンバーが党員でなければならないこと等が規定されているが,実際の党内選挙では,これらメンバーが他党の党員であった点が指摘された。

イ 14日,第一審にあたるJEEは,クチンスキー候補に対する立候補取消し請求を棄却し,クチンスキー候補は選挙戦に踏みとどまった。JEEは,立候補の受理に関する異議申し立ては,立候補受理の公示(官報への掲載)から2日以内に申請しなければならないが,今次申請はこの期限を過ぎた3月11日に提出されたとして,クチンスキー候補の立候補受理を無効とすることはできない点,また,立候補受理後の場合,党内規への違反は立候補取消し事由に該当しない点を主な判決理由に挙げた。なお,本件は第一審のみで終結となった。

(6)ケイコ・フジモリ候補に対する立候補取消し請求
24日,第一審にあたるJEEは,4日に有権者から提出されていた有権者への贈賄を理由とするケイコ候補の立候補取消し請求を退けた。JEEは,ケイコ候補が直接,または第三者を通じて有権者に金銭を渡した事実は確認できない点を判決理由に挙げている。(注:4月1日及び8日には,それぞれ第二審と特別上告の判決が下され,ケイコ候補は選挙戦に踏みとどまった。)

(7)2月から3月の間に以下計9名の候補が立候補を取下げ,または除外処分を受けたため,4月10日の大統領選挙に残ったのは10候補となった。
(1) カスティーヨ候補(恒常的団結党),2月10日,立候補取下げ
(2) レッジアルド候補(ペルー安全な祖国党),2月19日,立候補取下げ
(3) グスマン候補(「全国民よペルーのために」),3月9日,除外
(4) アクーニャ候補(「ペルーの進歩のための同盟」),3月9日,除外
(5) ウレスティ候補(与党国民主義党),3月9日,立候補取下げ
(6) セロン候補(自由主義者のペルー党),3月24日,立候補取下げ
(7) シモン候補(人道主義党)3月28日,立候補取下げ
(8) ゲラ候補(国民連帯・UPP選挙同盟),3月29日,立候補取下げ
(9) ディエス=カンセコ候補(ペルー・ナシオン党),3月29日,立候補取下げ

(8)主要大統領候補予想得票率等(括弧内は2月数値)
グスマン候補及びアクーニャ候補の除外により支持先を失った有権者を取り込む形で,クチンスキー候補が以前の支持率を回復した他,メンドーサ候補が急激に支持を伸ばし決選投票に迫る勢いを見せた。バルネチェア候補も一時支持を伸ばしたが,キャンペーン中の言動などからイメージが悪化し失速した。

ア イプソス:22~24日,全国 (対象1791名),誤差2.3%,信頼度95%
ケイコ・フジモリ人民勢力党候補           32%(30%)
クチンスキー「変革のためのペルー国民」候補     16% (9%)
メンドーサ「正義・生活・自由のための拡大戦線」候補 12% (4%)
バルネチェア人民行動党候補             11% (4%)
ガルシア「人民同盟」候補               6% (5%)

イ CPI社:25~27日,全国 (対象11,355名),誤差±0.9%,信頼度95.5%
ケイコ候補    34.6%(34.1%)
クチンスキー候補 15.0% (7.7%)
バルネチェア候補 11.3% (2.1%)
メンドーサ候補  10.9% (2.7%)
ガルシア候補    6.0% (6.2%)

ウ GfK社:28~30日実施,全国(対象1828名),誤差±2.3%,信頼度95%
ケイコ候補    35.0%(34.6%)
クチンスキー候補 16.1% (6.9%)
メンドーサ候補  14.0% (3.7%)
バルネチェア候補  9.7% (5.1%)
ガルシア候補    5.5% (4.3%)

エ ダトゥム社:28~30日実施,全国(対象1500名),誤差±2.5%,信頼度95%
ケイコ候補    36%(35%)
クチンスキー候補 17%(11%)
メンドーサ候補  15% (2%)
バルネチェア候補 10% (3%)
ガルシア候補    4% (4%)
         4.3% (6.5%)

3 内政
(1)ウマラ大統領支持率(括弧内は2月数値)
ア CPI社:13~16日,全国(対象1650名),誤差2.4%,信頼度95.5%
支持 16.7%(18.9%) 不支持 79.8%(77.2%)
イ イプソス社:15~17日実施,全国(対象1792名),誤差±2.3%,信頼度95%
支持 15%(17%) 不支持 77%(75%)
ウ ダトゥム社:17~20日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 14%(18%) 不支持 83%(79%)
エ GfK社:28~30日実施,全国(対象1828名),誤差±2.3%,信頼度95%
支持 12%(15%) 不支持 84%(80%)

4 外交
(1)EU・ペルー査証免除協定の署名と暫定発効
 10日,ウマラ大統領は,14日のEU・ペルー査証免除協定への署名及び翌15日からの暫定運用開始を発表した。査証免除協定への署名及び運用は予定どおり実施され,ペルー国民は,90日までの短期滞在(就労目的以外)であれば,シェンゲン領域内30か国に査証なしで渡航できることとなった。
(2)サンチェス外相のメキシコ訪問
ア 17日,サンチェス外相は太平洋同盟外相会合に出席した。今次会合では,同盟国とオブザーバー国との関係強化について意見交換が行われた。また,バルセナECLAC事務局長が漁業分野における協力プロジェクトを提示した。

イ 同17日,サンチェス外相は,ルイス=マシュー・メキシコ外相とともに,2014年7月のウマラ大統領のメキシコ公式訪問時に署名されたペルー・メキシコ戦略的パートナーシップ協定の第一回会合に共同議長として出席した。今次会合では,パートナーシップ協定の下に設置された各特別委員会から提出された報告書の評価が行われた他,太平洋同盟,APEC首脳会合,ECLAC第36回総会,メキシコとの二国間FTAの効果につき意見交換が行われた。