6月の内政と外交
平成28年7月8日
<ペルー政治情勢 2016年
【概要】
大統領選挙
●「変革のためのペルー国民」のクチンスキー候補が大統領に当選した。
内政
●アルフレド・トルネ氏がクチンスキー次期政権の経済財政相に就任することが明らかとなった。
●ナディン・エレディア大統領夫人に対する出国禁止命令が下された。
●クチンスキー次期大統領とメンドーサ元大統領候補が会談を行った。
●ウマラ大統領とクチンスキー次期大統領が会談を行った。
●クチンスキー次期政権の政権移行チームの一部が明らかになった。
外交
●ウマラ大統領がOECD閣僚会合出席のためフランスを訪問した。
●クチンスキー次期大統領が就任後最初の外遊先を中国とする意向を明かした。
●ペルーが2017年のIAEA事務局長選挙で天野現事務局長の再選を支持する意向を表明した。
●ウマラ大統領及びサンチェス外相が太平洋同盟出席のためチリを訪問した。
【本文】
1 大統領選挙
5日,大統領選挙決選投票が実施され,「変革のためのペルー国民」のクチンスキー候補が僅差(約4万1千票差,有効得票率0.24%差)で人民勢力党のケイコ・フジモリ候補に勝利した。7月1日付官報掲載の公式最終結果は以下のとおり。
有効得票率 得票率 得票数
クチンスキー候補 50.120% 46.868% 859万6,937票
ケイコ候補 49.880% 46.644% 855万5,880票
白票 0.815%
無効票 5.673%
なお,クチンスキー候補は9日,ケイコ候補は11日に,それぞれ事実上の勝利宣言及び敗北宣言を行った。ケイコ候補については,人民勢力党が4月の国会議員選挙で73議席を獲得し国会第1党となることを強調しつつ,向こう5年間「責任ある野党」としてペルーの発展に寄与していく意思を表明した。一方のクチンスキー候補は,9日に上述の記者会見を行って以降,正式な勝利宣言をすることはなく,自身のツイッターを通じてケイコ候補への敬意を示すに留めている。
2 内政
(1)次期経済財政相の人事
9日,5日の決選投票に関し,事実上の勝利宣言を行ったクチンスキー次期大統領がテレビ局のインタビューに応じ,今次選挙で同陣営政策策定チームのトップを務めたエコノミストのアルフレド・トルネ氏を次期政権発足時の経済財政相に任命する意向を表明した他,サアベドラ現教育相の留任を希望していることも明らかにした。さらに,クチンスキー次期大統領は,3~4週間以内に次期政権の人事を確定させる旨発言した。
(2)ナディン・エレディア大統領夫人に対する出国禁止命令
16日,司法府は,検察が捜査中のナディン夫人の資金洗浄疑惑に関し,同大統領夫人が訴追を免れるため国外逃亡する可能性は排除できないとする検察の主張を聞き入れ,ナディン夫人及び関係者に対して4か月間の出国禁止命令等を言い渡した。検察は,ナディン夫人が党首の与党国民主義党が2006年及び2011年大統領選(注:当時党首であったウマラ大統領が立候補していた。)で受け取った違法な資金を重点的に捜査しており,当時国民主義党の資金を管理していたナディン夫人が,外部から提供を受けた資金の余剰分を私的な不動産購入に使用した可能性がある旨主張している。また,国民主義党への資金提供者は,ベネズエラのチャベス大統領(当時),ブラジル建設大手のオデブレヒト社及びOAS社であったと見込んでいる。ナディン夫人の弁護人は,検察が提出した証拠は信頼度が低いとして,同命令の取消しを求め控訴した。
(3)国会の細則改定
16日,国会本会議で,国会での会派形成に必要な最低議席数を現行の6議席から5議席に変更する細則の改定が可決された。改訂後の細則は,次期国会から適用される。同改定により,次期国会でそれぞれ5議席を有する人民同盟(アプラ党)及び人民行動会派が単独で会派を形成することが可能となった。
(4)クチンスキー次期大統領とメンドーサ元大統領候補の会談
20日,クチンスキー次期大統領は次期国会で第2党となる「正義・生活・自由のための拡大戦線(FA)」のメンドーサ元大統領候補と政策に関する意見交換を行った。会談後取材に応じたメンドーサ元候補は,FAが高い関心を有する汚職対策,農業やエネルギー分野における地方への投資等を盛り込んだ政策提言書をクチンスキー次期大統領に提出したことを明らかにした。また,FAが国会から与党を妨害するような姿勢を取るのではないかとの見方についてはこれを否定した。
(5)ウマラ大統領とクチンスキー次期大統領の会談
22日,ウマラ大統領はクチンスキー次期大統領を大統領府に招待し,政策に関する意見交換を行った。今次会談について,クチンスキー次期大統領は,治安,国会,教育といったテーマに関してウマラ大統領の見解を聴取できた点で有益であったと評している。
(6)政権移行チームの顔ぶれ
クチンスキー次期政権の政権移行チームの顔ぶれが徐々に明らかになってきている。首相府は,ビスカラ次期第一副大統領,アラオス次期第二副大統領,モリネリ(Fiorella Molinelli)元消費者保護庁(INDECOPI)長官,コスタ(Gino Costa)次期国会議員,外務省はリカルド・ルナ(Ricardo Luna)元駐英大使,経済財政省はトルネ次期経済財政相,通商観光省はフェレイロス(Eduardo Ferreyros)元通商観光相及びルナ(Jessica Luna)元通商観光副大臣,エネルギー鉱山省はモリネリ元INDECOPI長官(首相府と兼任)及びブトロン(Cesar Butron)全国経済運営システム連結委員会(COES,注:政府に対し電気料金の提案等を行う電力事業者団体)委員長,運輸通信省はビスカラ第一副大統領(首相府と兼任),内務省はモントーヤ(Luis Montoya)元国家警察長官及びコスタ元内相(首相府と兼任)となっている。なお,政権移行では,ウマラ現政権期間中の各省の財務状況や政策実施状況の確認が行われる。
(7)大統領当選証書授与式の開催
28日,全国選挙審議会(JNE)によるクチンスキー次期大統領への当選証書の授与式が行われた。その後の演説において,クチンスキー次期大統領は,自身に投票した国民に対しても,そうでない国民に対しても,結束を呼びかけた。
(8)ウマラ大統領支持率(括弧内は前回数値)
ア イプソス社:16~17日実施,全国(対象1237名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 19%(17%) 不支持 70%(76%)
イ ダトゥム社:16~21日実施,全国(対象1752名),誤差±2.3%,信頼度95%
支持 17%(17%) 不支持 80%(80%)
ウ GfK社:18~21日実施,全国(対象1336名),誤差±2.7%,信頼度95%
支持 15%(11%) 不支持 80%(85%)
3 外交
(1)ウマラ大統領のOECD閣僚会合出席
5月31日~6月1日,ウマラ大統領はフランスを訪問し,OECD閣僚会合及びオランド・フランス大統領との首脳会談に臨んだ。同閣僚会合で開始されたラテンアメリカ・カリブ地域プログラム(以下地域プログラム)について,ウマラ大統領は,地域プログラムを通じたOECDとの協力を通じ,ラ米の発展に向けた課題を解決し,より短期間で,「アジェンダ2030」に沿ったペルーの発展を達成できるとの期待を示した。地域プログラムでは,(1)生産性の向上,(2)社会包摂の改善,(3)制度強化,という3つの分野で,ラ米とOECDの経験の共有が行われる。このような経験の共有を通じ,より質の高い公共政策の実現とグローバル・バリューチェーンへの統合が進んだ経済に成長することが期待される。ペルーはOECD非加盟国代表として,加盟国代表のチリとともに地域プログラムの共同議長を務める。オランド大統領との会談では,二国間関係,ペルーのOECD加盟,ペルー人のシェンゲンビザ免除が話題となった。
(2)9日,クチンスキー次期大統領は,事実上の勝利宣言を行った後に行われたテレビ局のインタビューに対し,大統領就任後最初の外遊先を中国とする意向を明かした。トルネ次期経済財政相もクチンスキー次期大統領の意向を裏付ける発言を行っている。
(3)17日,ペルー外務省は,2017年IAEA事務局長選挙に関し,ペルー政府として天野現事務局長の再選を支持する意向を表明した。天野事務局長の再選支持に関しては,同事務局長の確固たる経歴と,原子力の平和的利用を目的とするペルーへの技術協力,特に医療分野における協力の実績を考慮したとしている。
(4)ウマラ大統領及びサンチェス外相の太平洋同盟出席
6月30日~7月1日,チリのプエルト・バラスで開催された太平洋同盟首脳会合にウマラ大統領及びサンチェス外相が出席した。なお,同会合にはクチンスキー次期大統領も招待を受け出席した。
ア サンチェス外相
(ア)30日,サンチェス外相が出席した太平洋同盟合同閣議では,ペルーからチリへの議長国引継ぎが議題となった他,太平洋同盟オブザーバー国との間で合計21件の協力プロジェクトの実施,オブザーバー国との協力に関する新たな方針の採用,ASEANとの協力に関する文書の起案(今年9月,ニューヨークで開催される太平洋同盟・ASEAN閣僚会合で採択予定),今年6月メキシコ市で署名に至った太平洋同盟とカナダのパートナーシップに関する共同声明,今年5月の太平洋同盟・メルコスール副大臣会合の開催が,ペルーの議長国としての主な達成事項に挙げられた。
(イ)議長国引継ぎの後は,プエルト・バラス首脳宣言の内容に関する協議が行われた。同会合には,米州開発銀行(IDB)総裁,ラテンアメリカ開発銀行(CAF)総裁,国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)事務局長,さらに太平洋同盟企業家評議会(CEAP),EU及びOCEDの代表,ニュージーランドの通商担当大臣も参加し,太平洋同盟との協力に関する協議が行われた。
(ウ)また,同会合では,(1)太平洋同盟の貿易担当大臣が署名していた「貿易に関する統一窓口(VUCE)」での電子署名相互認定に関する合意書,(2)特許審査ハイウェイに関する共同宣言への署名がなされた。
イ ウマラ大統領
(ア)1日,ウマラ大統領は,各国大統領による共同記者会見で,太平洋同盟としてOECDのような世界基準の品質保証システムを構築するというアイディアを提案した。具体案としては,太平洋同盟4か国による合同機関を設置し,各国の大学や高等専門学校の平準化と教育レベルの質を保証することで,メンバー国の学生がどこでも学習できるようにしてはどうかという案を提示した。
(イ)ペルーの議長国としての成果については,太平洋同盟枠組み条約の発効及び追加議定書の可決,オブザーバー国との関係に関する新たな取決め,オブザーバー国の32か国から49か国への増加(アルゼンチンのオブザーバー国登録を評価),ASEAN,APEC及びカナダとの協力,16のオブザーバー国と21件のプロジェクトを実施した点を挙げた。
(ウ)ウマラ大統領は,太平洋同盟企業家サミットにも出席し,企業家から直接今後の太平洋同盟に求められるものについて意見を交わした他,太平洋同盟が重視する教育分野への投資にペルーが過去5年取り組んできた点を改めて強調した。
【概要】
大統領選挙
●「変革のためのペルー国民」のクチンスキー候補が大統領に当選した。
内政
●アルフレド・トルネ氏がクチンスキー次期政権の経済財政相に就任することが明らかとなった。
●ナディン・エレディア大統領夫人に対する出国禁止命令が下された。
●クチンスキー次期大統領とメンドーサ元大統領候補が会談を行った。
●ウマラ大統領とクチンスキー次期大統領が会談を行った。
●クチンスキー次期政権の政権移行チームの一部が明らかになった。
外交
●ウマラ大統領がOECD閣僚会合出席のためフランスを訪問した。
●クチンスキー次期大統領が就任後最初の外遊先を中国とする意向を明かした。
●ペルーが2017年のIAEA事務局長選挙で天野現事務局長の再選を支持する意向を表明した。
●ウマラ大統領及びサンチェス外相が太平洋同盟出席のためチリを訪問した。
【本文】
1 大統領選挙
5日,大統領選挙決選投票が実施され,「変革のためのペルー国民」のクチンスキー候補が僅差(約4万1千票差,有効得票率0.24%差)で人民勢力党のケイコ・フジモリ候補に勝利した。7月1日付官報掲載の公式最終結果は以下のとおり。
有効得票率 得票率 得票数
クチンスキー候補 50.120% 46.868% 859万6,937票
ケイコ候補 49.880% 46.644% 855万5,880票
白票 0.815%
無効票 5.673%
なお,クチンスキー候補は9日,ケイコ候補は11日に,それぞれ事実上の勝利宣言及び敗北宣言を行った。ケイコ候補については,人民勢力党が4月の国会議員選挙で73議席を獲得し国会第1党となることを強調しつつ,向こう5年間「責任ある野党」としてペルーの発展に寄与していく意思を表明した。一方のクチンスキー候補は,9日に上述の記者会見を行って以降,正式な勝利宣言をすることはなく,自身のツイッターを通じてケイコ候補への敬意を示すに留めている。
2 内政
(1)次期経済財政相の人事
9日,5日の決選投票に関し,事実上の勝利宣言を行ったクチンスキー次期大統領がテレビ局のインタビューに応じ,今次選挙で同陣営政策策定チームのトップを務めたエコノミストのアルフレド・トルネ氏を次期政権発足時の経済財政相に任命する意向を表明した他,サアベドラ現教育相の留任を希望していることも明らかにした。さらに,クチンスキー次期大統領は,3~4週間以内に次期政権の人事を確定させる旨発言した。
(2)ナディン・エレディア大統領夫人に対する出国禁止命令
16日,司法府は,検察が捜査中のナディン夫人の資金洗浄疑惑に関し,同大統領夫人が訴追を免れるため国外逃亡する可能性は排除できないとする検察の主張を聞き入れ,ナディン夫人及び関係者に対して4か月間の出国禁止命令等を言い渡した。検察は,ナディン夫人が党首の与党国民主義党が2006年及び2011年大統領選(注:当時党首であったウマラ大統領が立候補していた。)で受け取った違法な資金を重点的に捜査しており,当時国民主義党の資金を管理していたナディン夫人が,外部から提供を受けた資金の余剰分を私的な不動産購入に使用した可能性がある旨主張している。また,国民主義党への資金提供者は,ベネズエラのチャベス大統領(当時),ブラジル建設大手のオデブレヒト社及びOAS社であったと見込んでいる。ナディン夫人の弁護人は,検察が提出した証拠は信頼度が低いとして,同命令の取消しを求め控訴した。
(3)国会の細則改定
16日,国会本会議で,国会での会派形成に必要な最低議席数を現行の6議席から5議席に変更する細則の改定が可決された。改訂後の細則は,次期国会から適用される。同改定により,次期国会でそれぞれ5議席を有する人民同盟(アプラ党)及び人民行動会派が単独で会派を形成することが可能となった。
(4)クチンスキー次期大統領とメンドーサ元大統領候補の会談
20日,クチンスキー次期大統領は次期国会で第2党となる「正義・生活・自由のための拡大戦線(FA)」のメンドーサ元大統領候補と政策に関する意見交換を行った。会談後取材に応じたメンドーサ元候補は,FAが高い関心を有する汚職対策,農業やエネルギー分野における地方への投資等を盛り込んだ政策提言書をクチンスキー次期大統領に提出したことを明らかにした。また,FAが国会から与党を妨害するような姿勢を取るのではないかとの見方についてはこれを否定した。
(5)ウマラ大統領とクチンスキー次期大統領の会談
22日,ウマラ大統領はクチンスキー次期大統領を大統領府に招待し,政策に関する意見交換を行った。今次会談について,クチンスキー次期大統領は,治安,国会,教育といったテーマに関してウマラ大統領の見解を聴取できた点で有益であったと評している。
(6)政権移行チームの顔ぶれ
クチンスキー次期政権の政権移行チームの顔ぶれが徐々に明らかになってきている。首相府は,ビスカラ次期第一副大統領,アラオス次期第二副大統領,モリネリ(Fiorella Molinelli)元消費者保護庁(INDECOPI)長官,コスタ(Gino Costa)次期国会議員,外務省はリカルド・ルナ(Ricardo Luna)元駐英大使,経済財政省はトルネ次期経済財政相,通商観光省はフェレイロス(Eduardo Ferreyros)元通商観光相及びルナ(Jessica Luna)元通商観光副大臣,エネルギー鉱山省はモリネリ元INDECOPI長官(首相府と兼任)及びブトロン(Cesar Butron)全国経済運営システム連結委員会(COES,注:政府に対し電気料金の提案等を行う電力事業者団体)委員長,運輸通信省はビスカラ第一副大統領(首相府と兼任),内務省はモントーヤ(Luis Montoya)元国家警察長官及びコスタ元内相(首相府と兼任)となっている。なお,政権移行では,ウマラ現政権期間中の各省の財務状況や政策実施状況の確認が行われる。
(7)大統領当選証書授与式の開催
28日,全国選挙審議会(JNE)によるクチンスキー次期大統領への当選証書の授与式が行われた。その後の演説において,クチンスキー次期大統領は,自身に投票した国民に対しても,そうでない国民に対しても,結束を呼びかけた。
(8)ウマラ大統領支持率(括弧内は前回数値)
ア イプソス社:16~17日実施,全国(対象1237名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 19%(17%) 不支持 70%(76%)
イ ダトゥム社:16~21日実施,全国(対象1752名),誤差±2.3%,信頼度95%
支持 17%(17%) 不支持 80%(80%)
ウ GfK社:18~21日実施,全国(対象1336名),誤差±2.7%,信頼度95%
支持 15%(11%) 不支持 80%(85%)
3 外交
(1)ウマラ大統領のOECD閣僚会合出席
5月31日~6月1日,ウマラ大統領はフランスを訪問し,OECD閣僚会合及びオランド・フランス大統領との首脳会談に臨んだ。同閣僚会合で開始されたラテンアメリカ・カリブ地域プログラム(以下地域プログラム)について,ウマラ大統領は,地域プログラムを通じたOECDとの協力を通じ,ラ米の発展に向けた課題を解決し,より短期間で,「アジェンダ2030」に沿ったペルーの発展を達成できるとの期待を示した。地域プログラムでは,(1)生産性の向上,(2)社会包摂の改善,(3)制度強化,という3つの分野で,ラ米とOECDの経験の共有が行われる。このような経験の共有を通じ,より質の高い公共政策の実現とグローバル・バリューチェーンへの統合が進んだ経済に成長することが期待される。ペルーはOECD非加盟国代表として,加盟国代表のチリとともに地域プログラムの共同議長を務める。オランド大統領との会談では,二国間関係,ペルーのOECD加盟,ペルー人のシェンゲンビザ免除が話題となった。
(2)9日,クチンスキー次期大統領は,事実上の勝利宣言を行った後に行われたテレビ局のインタビューに対し,大統領就任後最初の外遊先を中国とする意向を明かした。トルネ次期経済財政相もクチンスキー次期大統領の意向を裏付ける発言を行っている。
(3)17日,ペルー外務省は,2017年IAEA事務局長選挙に関し,ペルー政府として天野現事務局長の再選を支持する意向を表明した。天野事務局長の再選支持に関しては,同事務局長の確固たる経歴と,原子力の平和的利用を目的とするペルーへの技術協力,特に医療分野における協力の実績を考慮したとしている。
(4)ウマラ大統領及びサンチェス外相の太平洋同盟出席
6月30日~7月1日,チリのプエルト・バラスで開催された太平洋同盟首脳会合にウマラ大統領及びサンチェス外相が出席した。なお,同会合にはクチンスキー次期大統領も招待を受け出席した。
ア サンチェス外相
(ア)30日,サンチェス外相が出席した太平洋同盟合同閣議では,ペルーからチリへの議長国引継ぎが議題となった他,太平洋同盟オブザーバー国との間で合計21件の協力プロジェクトの実施,オブザーバー国との協力に関する新たな方針の採用,ASEANとの協力に関する文書の起案(今年9月,ニューヨークで開催される太平洋同盟・ASEAN閣僚会合で採択予定),今年6月メキシコ市で署名に至った太平洋同盟とカナダのパートナーシップに関する共同声明,今年5月の太平洋同盟・メルコスール副大臣会合の開催が,ペルーの議長国としての主な達成事項に挙げられた。
(イ)議長国引継ぎの後は,プエルト・バラス首脳宣言の内容に関する協議が行われた。同会合には,米州開発銀行(IDB)総裁,ラテンアメリカ開発銀行(CAF)総裁,国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)事務局長,さらに太平洋同盟企業家評議会(CEAP),EU及びOCEDの代表,ニュージーランドの通商担当大臣も参加し,太平洋同盟との協力に関する協議が行われた。
(ウ)また,同会合では,(1)太平洋同盟の貿易担当大臣が署名していた「貿易に関する統一窓口(VUCE)」での電子署名相互認定に関する合意書,(2)特許審査ハイウェイに関する共同宣言への署名がなされた。
イ ウマラ大統領
(ア)1日,ウマラ大統領は,各国大統領による共同記者会見で,太平洋同盟としてOECDのような世界基準の品質保証システムを構築するというアイディアを提案した。具体案としては,太平洋同盟4か国による合同機関を設置し,各国の大学や高等専門学校の平準化と教育レベルの質を保証することで,メンバー国の学生がどこでも学習できるようにしてはどうかという案を提示した。
(イ)ペルーの議長国としての成果については,太平洋同盟枠組み条約の発効及び追加議定書の可決,オブザーバー国との関係に関する新たな取決め,オブザーバー国の32か国から49か国への増加(アルゼンチンのオブザーバー国登録を評価),ASEAN,APEC及びカナダとの協力,16のオブザーバー国と21件のプロジェクトを実施した点を挙げた。
(ウ)ウマラ大統領は,太平洋同盟企業家サミットにも出席し,企業家から直接今後の太平洋同盟に求められるものについて意見を交わした他,太平洋同盟が重視する教育分野への投資にペルーが過去5年取り組んできた点を改めて強調した。