7月の内政と外交

平成28年9月19日
<ペルー政治情勢 2016年

【概要】
 内政
●クチンスキー次期政権の閣僚が発表された。
●新国会議員の宣誓式が行われた。
●人民勢力党のサルガド議員を国会議長とする新国会執行部が選出された。
●クチンスキー大統領の就任式が行われ,日本からは二階俊博衆議院議員が出席した。
 
 外交
●我が国による対ペルー一般文化無償資金協力(パチャカマック遺跡の保全など)の署名式が実施された。
●サンチェス外相がアルゼンチンの独立200周年記念式典出席のため,同国を訪問した。
●気候変動に関する国際枠組みである「パリ協定」をペルーが批准した。
 
【本文】
1 内政
(1)次期首相の発表
 10日,クチンスキー次期大統領は,バックス社(国内飲料大手)社長のフェルナンド・サバラ氏を次期首相に任命することを発表した。
 
(2)クチンスキー次期政権の閣僚発表
 15日,クチンスキー次期大統領は次期政権の閣僚を以下のとおり発表した。
首相:フェルナンド・サバラ
バックス社社長,元経済財政相(2005-06年)
 
外相:リカルド・ルナ
元国連大使(1989-92年),元駐米大使(1992-99年),元駐英大使(2006-10年)
 
国防相:マリアノ・ゴンサレス
次期アンデス議会議員,元国防省顧問,元内務省顧問
 
経済財政相:アルフレド・トルネ
今次大統領選におけるクチンスキー陣営の政権プラン長,元世銀シニア・エコノミスト,JPモルガン社ラテンアメリカ分析部長
 
内相:カルロス・バソンブリオ
元内務副大臣,元内務省顧問
 
法務人権相:マリソル・ペレス
キリスト教人民党国会議員(2011-16年)
 
教育相:ハイメ・サアベドラ
現教育相(2013年10月~)
 
保健相:パトリシア・ガルシア
元国立医療研究所所長,カイェターノ・エレディア大学公衆衛生学科長
 
農業灌漑相:ホセ・エルナンデス
今次大統領選におけるクチンスキー陣営の農業政策担当
 
労働雇用促進相:アルフォンソ・グラードス
元自由及び民主主義研究所(ILD)代表,ビール会社事業部長
 
通商観光相:エドゥアルド・フェレイロス
元通商観光相(2010-11年),元ペルー貿易協会(COMEX)会長
 
エネルギー鉱山相:ゴンサロ・タマヨ
マクロコンスル社共同経営者,元電気通信民間投資監督庁(OSIPTEL)及び国営電力会社(ELECTROPERU)役員
 
運輸通信相:マルティン・ビスカラ
次期第一副大統領(運輸通信相との兼任),前モケグア州知事(2010-14年)
 
生産相:ブルーノ・ジウフラ
企業家,元ビジネス番組司会者
 
住宅建設上下水道相:エドメル・トルヒーヨ
モケグア州政府官房長,アレキパ州政府官房長
 
女性社会的弱者相:アナ・マリア・ロメロ=ロサーダ
元女性社会開発相(2002-03年,2003-06年)
 
環境相:エルサ・ガラルサ
生産省漁業担当副大臣
 
文化相:ホルヘ・ニエト
元ユネスコ職員
 
開発社会包摂相:カイェターナ・アルホビン
元運輸通信副大臣,元全国民間企業団体連合(CONFIEP)副総裁
 
(3)新国会議員の宣誓
 22日,新国会執行部選挙に先立ち,4月10日の国会議員選挙で当選した新国会議員(再選議員含む)130名の宣誓式が国会で執り行われた。式典は大きな混乱もなく進行したが,国会第二党である「正義・生活・自由のための拡大戦線」会派の複数の議員が宣誓した際にフジモリ政権に批判的な発言をしたため,人民勢力会派から批判の声が飛ぶ場面があった。
 
(4)新国会執行部の選出
 26日,新国会執行部の選挙(任期:2016年7月26日~2017年7月26日)が行われ,人民勢力会派のサルガド議員を議長とするリストが全130票中87票を集め当選した。唯一の対立候補であった「正義・生活・自由のための拡大戦線(FA)」会派のリストは20票で落選した。また,与党の「変革のためのペルー国民」(18議席)及び野党の人民行動党(5議席)は会派全体で白票を投じた。
 
ア 当選
国会議長  ルス・サルガド(FP)
第一副議長 ロサ・マリア・バルトラ(FP)
第二副議長 リチャード・アクーニャ(ペルーの進歩のための同盟)
第三副議長 エリアス・ロドリゲス(人民同盟)
 
イ 落選
国会議長  ウィルベルト・ロサス(FA)
第一副議長 マリア・エレナ・フォロンダ(FA)
第二副議長 アルベルト・キンタニーヤ(FA)
第三副議長 エルナンド・セバーヨス(FA)
 
(5)カハマルカ前州知事の釈放
 27日,今年の大統領選挙に出馬し,予想外の健闘を見せたサントス・カハマルカ前州知事が釈放された。サントス前州知事は,2014年6月から,同州知事任期中(2010-14年)に汚職に関与した疑いで予防拘禁措置に処されていた。2014年10月に行われた州知事選で最多得票を得たが,予防拘禁中であったため州知事には就任できていなかった。サントス前州知事については,2021年大統領選で再度立候補する可能性を示唆する見方もある。
 
(6)クチンスキー大統領の就任
 28日,国会でクチンスキー大統領の就任式が行われた。クチンスキー大統領は,就任演説で,政府として以下の6つのテーマに取り組むことを強調した。
 
● すべての国民が上下水道にアクセスできるようにする。
● 良質な公共教育を提供し,若者に可能性を与える。
● 患者のニーズに応じた公的医療サービスを提供する。
● 国内の(経済)フォーマル化を進める。
● 国家発展のためのインフラを早急に整備する。
● 汚職,差別,犯罪をなくす。
 
 なお,今次就任式には,ペニャ・ニエト大統領(メキシコ),サントス大統領(コロンビア),コレア大統領(エクアドル),バチェレ大統領(チリ),マクリ大統領(アルゼンチン)及びカルロス前国王(スペイン)等,約80か国の代表がクチンスキー次期大統領就任式のためにペルーを訪問した。日本からは二階俊博衆議院議員(就任式当時は自民党総務会長,現自民党幹事長)が参列した。
 
(7)ウマラ大統領支持率(括弧内は前回数値)
ア ダトゥム社:7月8~12日実施,全国(対象1201名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 21%(17%) 不支持 74%(80%)
イ イプソス社:7月13~15日実施,全国(対象1196名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 25%(19%) 不支持 68%(70%)
ウ GfK社:7月16~19日実施,全国(対象1218名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 23%(15%) 不支持 73%(80%)
エ CPI社:7月30日~8月3日実施,全国(対象1450名),誤差±2.6%,信頼度95.5%
支持 23.9%(19.8%) 不支持 73.4%(77.2%)
 
2 外交
(1)日本政府一般文化無償資金協力署名式の実施
 5日,本使は,サンチェス外相とともに,平成27年度対ペルー一般文化無償資金協力「パチャカマック博物館遺跡保全機材及び教育機材整備計画」のE/N署名式に出席した。日本政府のペルー政府に対する供与額は1億4千890万円であり,提供された機材は,パチャカマック遺跡の保全と同博物館での教育活動のために活用される。同日ペルー外務省が発出したプレスリリースには,日本政府の協力は,ペルーが誇る歴史遺産の保存に向けた取組に貢献するものであり,二国間関係の強化を象徴するものであるとの評価が掲載されている。
 
(2)サンチェス外相のアルゼンチン訪問
 9日,サンチェス外相は,アルゼンチンの独立200周年記念式典が開催された同国のトゥクマン市を訪問し,ウマラ大統領の代理として公式行事に参列した。
 
(3)気候変動に関する「パリ協定」の批准
 22日,ウマラ大統領は,2015年12月のCOP21で採択され,本年4月22日にニューヨークで署名されていた「パリ協定」を批准した。サンチェス外相他関係閣僚等が出席した批准のための公式行事では,「パリ協定」が政治・外交努力の成果であること,また,「パリ協定」採択の道筋を付けたという意味でリマで開催されたCOP20の重要性が改めて強調された。