ペルーの政治情勢 1月

2017/2/22
ペルー政治情勢 2017年


【概要】
 内政
●サルガド国会議長(野党人民勢力党)が一院制から二院制への議会制度改革を含む選挙制度改革のための議論を開始することに前向きな姿勢を示した。
●「ラバ・ジャト」(Lava Jato)事件に関わる捜査を国内で行っていたペルー検察庁が事件に関与するオデブレヒト(Odebrecht)社との間で司法取引を行い,同社から情報提供を受けること等で合意した。
●チンチェロ国際空港(クスコ州)の建設起工式が延期された。
 外交
●薗浦外務副大臣が当地を来訪した。
●トランプ米新政権による米墨国境「壁」建設計画等をクチンスキー大統領が批判した。
●第三回ペルー・コロンビア合同閣議が開催された。
 
【本文】
1 内政
(1)議会制度改革をめぐる国会内の議論
 3~4日付報道によれば,サルガド国会議長(人民勢力党)は,一院制から二院制への議会制度改革を含む選挙制度改革のための議論を開始することに前向きな姿勢を示した。サルガド国会議長は,議会に少数のメンバーから成る上院を設置し二院制とする制度改革は国会が解決していない課題であると述べたが,サルガド議長の意向は人民勢力党員の一部にも驚きを与えた。ガラレタ(Luis Galarreta)議員によれば,二院制への議会制度変更は党内で議題にのぼっていない。またチャベス(Martha Chavez)前議員は二院制への移行に反対の立場を採っている。他方でシェプット(Juan Sheput),ブルース(Carlos Bruce)両与党議員は賛成の立場である。
 
(2)ブラジル大手建設企業によるペルー政府関係者への贈賄疑惑
ア 5日,「ラバ・ジャト」(Lava Jato)事件(2015年にブラジルで行われた複数の建設企業に対する一連の汚職捜査)に関わる捜査を国内で行っていたペルー検察庁は,事件に関与するブラジルの大手建設企業オデブレヒト(Odebrecht)社との間で司法取引を行い,ペルーにおける不正なコンセッション契約により同社が得た利益に相当する額を政府に支払うこと,及び検察に情報提供を行うことで合意した。
イ 2016年に発足した国会では,新たに「ラバ・ジャト」事件特別調査委員会を設置,検察に対し必要な情報の提供を求めたほか,調査委員会所属議員が情報収集のためブラジルに出張する可能性についても検討している。
ウ また,ウマラ前大統領及びナディン・エレディア前大統領夫人の資金洗浄疑惑を担当する検事は,米国に対し,両氏に関連する情報の提供を求める予定であるとした。両氏に対しては,2006年及び2011年の大統領選挙の際,オデブレヒト社から不正資金を選挙資金として受け取っていた容疑がかかっている。現在両氏は国外逃亡の恐れありとして,司法府の許可なしにペルー国外に出ることを禁じられている。
エ プリンシペ(Julia Principe)国家法務弁護審議会(Consejo de Defensa Juridica del Estado)議長は,本件を専門に担当する人物を任命するほか,検察庁に対し,本件の捜査対象としてオデブレヒト社前社長のマルセロ・オデブレヒト被告及び収賄のリストに実名が挙げられているとされる過去のペルー政権関係者を含めるべきであると述べた。また,トレド元大統領,ガルシア元大統領,ウマラ前大統領に加え,元閣僚であったクチンスキー大統領(元首相,トレド政権。),カスティーヤ(Luis Miguel Castilla)元経済財政相(ウマラ政権),コルネホ(Rene Cornejo)元首相(ウマラ政権),サバラ(Veronica Zavala)元運輸通信相(ガルシア政権。サバラ現首相の実姉。),ブルース元住宅上下水道相(トレド政権。現与党所属国会議員。)等80名以上を証人として聴取すべきであると述べた。
オ また,一部報道では,オデブレヒト社は長期にわたってペルーに投資をしていることから,フジモリ政権及び第一次ガルシア政権も捜査の対象とすべきであるとの声も出ている。
 
(3)チンチェロ国際空港建設起工式の延期
 クチンスキー大統領は,31日に出席予定であったチンチェロ空港(クスコ州)の建設起工式を数日間延期すると発表した。クチンスキー大統領は,同空港の建設は官民合同(APP)のプロジェクトであり,民間が担う分の入札は既に成功裏に行われたと述べた。また同日には同空港建設に係る政府とコンソーシアム企業Kuntur Wasi社(Andino Investment HoldingとCorporacion Americaで構成)との契約への付帯条項に署名が行われる予定であったがこれも延期された。同付帯条項については国会「ラバ・ジャト」事件調査委員会が,国に危害を及ぼす可能性があるとして署名を行わないよう要請していた。ベナベンテ(Patricia Benavente)前公共運輸投資監督庁(OSITRAN)長官によれば,Kuntur Wasiは事業全体の予算の19.3%しか負担しておらず,残りの80.7%を政府が担っていると指摘した。メンドーサ前大統領候補(「正義・生活・自由のための拡大戦線」)は,Kuntur Wasi社が保証金を支払っておらず,総工費のほとんどを政府が負担している現状に鑑みて,チンチェロ空港建設はAPPではなく公共事業として行われるべきであると主張した。他方,リコーナ(Edwin Licona)クスコ州知事は起工式延期に不快感を示した。
 
(4)クチンスキー大統領支持率(特記ない限り括弧内は前月数値)
ア ダトゥム社:6~10日実施,全国(対象1202名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:45%(53%) 不支持:48%(38%)
イ イプソス社:11~13日実施,全国(対象1260名)誤差±2.7%,信頼度95%
支持:43%(48%) 不支持:45%(35%)
ウ Gfk社:21~24日実施,全国(対象1216名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:35%(46%) 不支持:52%(44%) 
エ CPI社:25~28日実施,全国(対象1350名),誤差±2.7%,信頼度95.5%
支持:37.2%(46.2%) 不支持:58.3%(46.3%)
 
2 外交
  • 薗浦外務副大臣の当地来訪
17日,薗浦外務副大臣が当地を訪問した。薗浦副大臣は当地滞在中に日秘文化会館を訪問し,クニガミ・ペルー日系人協会(APJ)会長をはじめとする同協会幹部,パンアメリカン日系人大会(COPANI)関係者や若手日系人による日系青少年交流イベント「リーデルカンビオ」関係者との意見交換を行ったほか,ペルー進出日本企業関係者との懇談,ルナ・ペルー外務大臣表敬,ビスカラ・ペルー第一副大統領兼運輸通信大臣表敬を行い,サルガド国会議長ら国会関係者との懇談を行った。
 
(2)トランプ米新政権による米墨国境「壁」建設計画に対するクチンスキー大統領の批判
 18日付当地各紙報道によれば,クチンスキー大統領はトランプ米次期大統領の外交,通商政策を批判した。クチンスキー大統領は「米国の次期大統領は,メキシコとの間に壁を建設しその建設費用をメキシコに支払わせると宣言している。また米企業に対しメキシコでの自動車生産をやめるよう要求している。こうした政策は世界に悲惨をもたらす。いま世界は衰退をもたらす保護主義に直面している。」と述べた。
 
(3)第三回ペルー・コロンビア合同閣議
 27日,当国アレキパ市(アレキパ州)にて第三回ペルー・コロンビア合同閣議が開催され,クチンスキー大統領,サントス・コロンビア大統領及び閣僚が出席した。
同合同閣議後両国は,統治と社会問題(法治国家の尊重,民主主義と基本的自由の擁護と促進,コロンビア和平合意,汚職と無処罰との闘い,多国間協調),環境・鉱業・エネルギー(気候変動の緩和及び適応),通商・経済発展と観光(開放的かつ積極的な通商,二国間通商・投資の増大,太平洋同盟とアジア太平洋との経済統合計画の推進,OECD加盟へ向けた共同での取り組み),国境・移民問題(両国境地域の統合へ向けた取り組み)等のテーマを含む共同宣言(アレキパ宣言)を発出した。