ペルーの政治情勢 6月
平成29年9月4日
ペルー政治情勢 2017年
【概要】
内政
●トルネ経済財政大臣が辞任し,後任にサバラ首相が首相兼任で新経済財政大臣に就任した。
外交
●国連総会においてペルーが2018~19年度国連安保理非常任理事国に選出された。
●クチンスキー大統領がフランス及びスペインを訪問した。
●当国においてペルー・チリ両国の外務・国防大臣会合(2+2)が行われた。
【本文】
1 内政
(1)トルネ経済財政大臣の辞任
23日,トルネ経済財政大臣が辞任した。トルネ経済財政大臣は,5月17日に行われたアラルコン会計検査庁(Contraloria)長官との会合で,チンチェロ国際空港(クスコ州)の建設に係る政府と企業コンソーシアム「クントゥル・ワシ」(Kuntur Wasi)との契約の妥当性を審査していた同長官に対し,会計検査庁への交付予算の増額と引き替えに同契約に不利な審査結果を出さないよう圧力をかけたとの疑惑により野党から非難されていた。同大臣の辞任に至る経緯は以下のとおり。
ア 4日,TV番組「Panorama」において,5月17日に行われたトルネ経済財政大臣とアラルコン長官との会談の録音の一部が放送される。
イ 11日,TV番組「Panorama」において,同会談の録音の全部が放送される。
ウ 16日,トルネ経済財政大臣が国会に出席。また国会に対し,自身に対する信任決議請求を行う。
エ 19日,トルネ経済財政大臣がサルガド国会議長宛の書簡を提出し,同大臣に対する信任決議を行うよう国会に要請。同書簡でトルネ経済財政大臣は,16日の国会本会議における説明をもって会計検査庁に対し圧力をかけたとの疑惑を晴らしたと確信する旨表明。
オ 21日,国会本会議においてトルネ経済財政大臣の信任決議請求が否決。投票結果は信任11票,不信任88票,棄権2票。信任は与党「変革のためのペルー国民」のみで,野党全会派が不信任票を投じた(ケンジ・フジモリ議員(FP)及びビエイラ議員(無所属)は棄権。)。
カ 国会における信任決議否決を受けてトルネ経済財政大臣が辞任。
(2)サバラ新経済財政大臣の就任
23日,トルネ経済財政大臣の辞任を受け,後任にサバラ首相が兼任の形で新経済財政大臣に任命,宣誓式が行われた。新大臣略歴は以下のとおり。
フェルナンド・マルティン・サバラ・ロンバルディ(Fernando Martin ZAVALA Lombardi)
現首相。ピウラ大学及び英バーミンガム大学で経営学修士(MBA)。トレド政権で当時のクチンスキー経済財政大臣によって経済財政副大臣に登用された。トレド政権でクチンスキー経済財政大臣が首相に任命されたことにより,経済財政大臣に昇格。英国系大手飲料メーカー「バックス&ジョンソン」社社長及び「ナショナル・ビール」(パナマ)社社長を務めた。
(3)クチンスキー大統領支持率(特記ない限り括弧内は前月数値)
ア ダトゥム社:5月26~29日実施,全国(対象1202名),誤差2.8±%,信頼度95%
支持:45%(43%) 不支持:50%(44%)
イ イプソス社:7~8日実施,全国(対象1290名)誤差±2.7%,信頼度95%
支持:39%(43%) 不支持:51%(48%)
ウ GfK社:17~20日実施,全国(対象1220名)誤差±2.8%,信頼度95%
支持:38%(36%) 不支持:54%(54%)
2 外交
(1)ペルーの国連安保理非常任理事国入り
2日,国連総会においてペルーが2018~19年度国連安保理非常任理事国に選出された。ペルーの非常任理事国入りは1955~56年,73~74年,85~86年,2006~07年に続き5度目。ペルー外務省は今次の非常任理事国選出につき,ペルーの多国間主義の伝統,平和維持活動への貢献,国際法の擁護と促進,紛争の平和的解決及び予防,平和維持への支援,外交能力を通じた国連への積極的な関与が評価された結果であり,非常任理事国として,平和と安全の分野で重大な課題に直面している国際社会に貢献するべく力を注ぐ旨表明した。
(2)クチンスキー大統領のフランス訪問
8日,クチンスキー大統領がフランスを公式訪問し,ラテンアメリカの元首として初めてマクロン大統領と会談した。ペルー大統領府報道発表によれば首脳会談後のプレスに対する発言概要は以下のとおり。
ア クチンスキー大統領
非常に建設的な会談であったと評価する。マクロン大統領とともに,気候変動に関するパリ協定の遵守及びラテンアメリカにおける民主主義を守る必要性につき確認した。
パリ協定の枠組における気候変動との闘い及びラテンアメリカの民主主義と発展という,我々の優先事項であり相互に合意しているテーマにつき非常に良い話し合いができた。ラテンアメリカの民主主義と発展について,我々はベネズエラを含む様々な国の情勢につき話し合った。
会談では,将来におけるペルーのOECD加盟等ペルーにとっての優先テーマにつきマクロン大統領に説明する機会があった。我々は妥当な期間内にOECDに加盟することを希望しており,今回の仏訪問の目的の一つは,OECD加盟に向けて取り組むことである。
マクロン大統領は,我々の招待を受け入れ,本年9月にリマで開催される第130回国際オリンピック委員会開催の機会にペルーを公式訪問する。
イ マクロン大統領
クチンスキー大統領を迎えることができ満足している。会談では両国が有する様々な関心事項が議題に上った。ペルーは重要なパートナーである。両国は人工衛星,技術協力等の分野に共に取り組んでおり,今後も共同で取り組んでいく。我々は今後運輸,飲料水等のテーマを進展させていく。
クチンスキー大統領から,ペルーは気候変動に関するパリ協定を遵守する旨表明があった。ペルーのパリ協定への積極的な関与に感謝する。我々はパリ協定の実施を約束しており,一致して協定が定める最低限の目標を達成できるよう取り組む意思を有している。
会談でクチンスキー大統領が話題にしたラテンアメリカに係るテーマを注視している。仏はペルーとともに,ベネズエラが現在の状況を乗り越えられるようにとの善意で行われる全ての取り組みをフォローし寄り添っていく。
本年9月にペルーを訪問する。
(3)クチンスキー大統領のスペイン訪問
12~13日,クチンスキー大統領がスペインを公式訪問した。12日にラホイ首相と会談し,「エル・パイス」紙主催「未来のペルー」フォーラムに出席した。また13日にはフェリペ6世国王と会談し,スペイン経団連(CEOE)主催「ペルー・スペイン・ビジネス会合」に出席した。当地報道によれば概要は以下のとおり。
ア ラホイ首相との会談
(ア)両首脳は,良好な二国間関係及び経済面でスペインが最大の対ペルー投資国であることを確認した。ペルーへの外国投資全体にスペインが占める割合は20%であり,約50億ドルに上る。特にエネルギー,炭化水素,金融,通信分野への進出が顕著である。また会談では,相互に裨益するために両国関係を継続的に深化させることが適切である旨指摘された。ペルーとスペインは双方の投資を促進するため租税協定の交渉を行っている。
(イ)ラホイ首相は改めて,ペルーのOECD加盟希望に対する確固たる支持を表明した。また国際関係につき両首脳は,ベネズエラの深刻な状況に対し憂慮を表明することで一致した。
(ウ)会談後クチンスキー大統領は,「ペルー及びスペインそれぞれの状況につき話し合った。スペインには,欧州におけるペルーの大使のような存在として,我々を支援して欲しい。現在スペイン企業と話し合っているが,これら企業は既にペルーに投資しており,今後更に投資を増やす見込みである。」と述べた。
イ 「エル・パイス」紙主催「未来のペルー」フォーラムでのクチンスキー大統領の発言
(ア)ペルーは二つのものを必要としている。第一に大きな経済成長である。ペルーは未だ所得面で中下位の国であり,成長がなければ資源が得られない。しかしながら同時に我々は社会の変化を必要としている。ペルーの一人当たり平均所得は8,000~1万ドル水準に位置するが,これは欧州平均の5分の1である。
(イ)確かに電気はほぼペルー全土に行き渡っているが,未だに人口の3分の1が飲用に適した浄水にアクセスできていない。政府は地方における浄水整備事業を優先的に行う。自分(クチンスキー大統領)の最大の関心事は公共事業を実施しペルーの最貧困層に資することである。
(ウ)また,政権の優先政策は汚職との闘いである。困難ではあるが重要な政策である。計25人の州知事のうち14人が汚職の疑いで告発され,5,6人が収監された。オデブレヒト(Odebrecht)社が関わる汚職事件によって,南部ガス・パイプライン計画等の大型事業が中断している。(企業コンソーシアム「クントゥル・ワシ」(Kuntur Wasi)との契約が解除された)チンチェロ国際空港(クスコ州)の建設は他の方式での投資を得て進められるであろう。
(エ)(フジモリ派とどのように共存していくかとの問いに対し)人民勢力党(FP)との共存は愛の歌というわけにはいかない(no es una cancion de amor)ことは分かっている。しかしながらFPと共存できている。昨年7月28日の大統領就任式の際,FPは自分(クチンスキー大統領)の就任に拍手をしなかった。FPとの関係はやや冷たいものとして始まったが,しかしその後,サバラ内閣への信任,国会から政府への立法権限の移譲法案が国会で可決された。ビスカラ前運輸通信大臣は,どちらかといえば何人かの国会議員の個人的な動機によって国会に召喚され(辞任に至っ)たが,FPがチンチェロ国際空港の建設に係る契約を無効にしたのではない。我々は国のビジョンの中にFPを組み込まなくてはならない。
ウ スペイン経団連(CEOE)主催「ペルー・スペイン・ビジネス会合」でのクチンスキー大統領の発言
(ア)大規模鉱山開発が拡大し,南部ガス・パイプライン計画,リマ・メトロ2号線及び水害被災地域の復興計画が実施されることで,ペルーは年間5%の成長を取り戻すであろう。国の見通しは明るい。
(イ)オデブレヒト社が関わる汚職スキャンダルは国にとって経済的コストとなった。しかしながら,リマ・メトロ2号線計画など,同汚職事件と必ずしも関わりのない大型事業については近く実施されるであろう。
(ウ)ペルーは過去2年間,成長にブレーキがかかっていたが,これは主として中国経済の先行き不透明感から生じた金属価格の下落によるもので,我々はこの状態から抜け出しつつある。
(エ)政府による「変化を伴う復興」計画は,今後の2年間で計65億ドルの投資を見込んでいる。これはGDPの約3%に当たる。また復興計画に付随して上下水道整備への投資プログラムも進行中であり,雇用の機会を生み生活の質を向上させるであろう。
(4)チリとの2+2会合開催
28日,リマにおいてペルー・チリ両国の外務大臣及び国防大臣による2+2会合が開催された。今次会合はペルー・チリ両首脳による共同宣言(2016年11月29日署名)における合意に基づくもので,国防分野での協力の強化を目的とするもの。会談後,両国外務・国防大臣は,国防分野での協力,国連憲章,米州機構(OAS)憲章及び米州民主主義憲章の重要性の再確認,リスク及び災害対応,平和維持活動及び人道的地雷除去分野での協力,学術交流,女性の軍事への参加,UNASUR防衛審議会(CDS),OAS米州防衛評議会(JID)及び米州国防大臣会議への積極的な参加,両国軍の科学技術協力,両国軍事企業の防衛産業見本市への参加促進及び両国独立200周年記念行事の共同開催の可能性等を内容とする共同宣言を発出した。
【概要】
内政
●トルネ経済財政大臣が辞任し,後任にサバラ首相が首相兼任で新経済財政大臣に就任した。
外交
●国連総会においてペルーが2018~19年度国連安保理非常任理事国に選出された。
●クチンスキー大統領がフランス及びスペインを訪問した。
●当国においてペルー・チリ両国の外務・国防大臣会合(2+2)が行われた。
【本文】
1 内政
(1)トルネ経済財政大臣の辞任
23日,トルネ経済財政大臣が辞任した。トルネ経済財政大臣は,5月17日に行われたアラルコン会計検査庁(Contraloria)長官との会合で,チンチェロ国際空港(クスコ州)の建設に係る政府と企業コンソーシアム「クントゥル・ワシ」(Kuntur Wasi)との契約の妥当性を審査していた同長官に対し,会計検査庁への交付予算の増額と引き替えに同契約に不利な審査結果を出さないよう圧力をかけたとの疑惑により野党から非難されていた。同大臣の辞任に至る経緯は以下のとおり。
ア 4日,TV番組「Panorama」において,5月17日に行われたトルネ経済財政大臣とアラルコン長官との会談の録音の一部が放送される。
イ 11日,TV番組「Panorama」において,同会談の録音の全部が放送される。
ウ 16日,トルネ経済財政大臣が国会に出席。また国会に対し,自身に対する信任決議請求を行う。
エ 19日,トルネ経済財政大臣がサルガド国会議長宛の書簡を提出し,同大臣に対する信任決議を行うよう国会に要請。同書簡でトルネ経済財政大臣は,16日の国会本会議における説明をもって会計検査庁に対し圧力をかけたとの疑惑を晴らしたと確信する旨表明。
オ 21日,国会本会議においてトルネ経済財政大臣の信任決議請求が否決。投票結果は信任11票,不信任88票,棄権2票。信任は与党「変革のためのペルー国民」のみで,野党全会派が不信任票を投じた(ケンジ・フジモリ議員(FP)及びビエイラ議員(無所属)は棄権。)。
カ 国会における信任決議否決を受けてトルネ経済財政大臣が辞任。
(2)サバラ新経済財政大臣の就任
23日,トルネ経済財政大臣の辞任を受け,後任にサバラ首相が兼任の形で新経済財政大臣に任命,宣誓式が行われた。新大臣略歴は以下のとおり。
フェルナンド・マルティン・サバラ・ロンバルディ(Fernando Martin ZAVALA Lombardi)
現首相。ピウラ大学及び英バーミンガム大学で経営学修士(MBA)。トレド政権で当時のクチンスキー経済財政大臣によって経済財政副大臣に登用された。トレド政権でクチンスキー経済財政大臣が首相に任命されたことにより,経済財政大臣に昇格。英国系大手飲料メーカー「バックス&ジョンソン」社社長及び「ナショナル・ビール」(パナマ)社社長を務めた。
(3)クチンスキー大統領支持率(特記ない限り括弧内は前月数値)
ア ダトゥム社:5月26~29日実施,全国(対象1202名),誤差2.8±%,信頼度95%
支持:45%(43%) 不支持:50%(44%)
イ イプソス社:7~8日実施,全国(対象1290名)誤差±2.7%,信頼度95%
支持:39%(43%) 不支持:51%(48%)
ウ GfK社:17~20日実施,全国(対象1220名)誤差±2.8%,信頼度95%
支持:38%(36%) 不支持:54%(54%)
2 外交
(1)ペルーの国連安保理非常任理事国入り
2日,国連総会においてペルーが2018~19年度国連安保理非常任理事国に選出された。ペルーの非常任理事国入りは1955~56年,73~74年,85~86年,2006~07年に続き5度目。ペルー外務省は今次の非常任理事国選出につき,ペルーの多国間主義の伝統,平和維持活動への貢献,国際法の擁護と促進,紛争の平和的解決及び予防,平和維持への支援,外交能力を通じた国連への積極的な関与が評価された結果であり,非常任理事国として,平和と安全の分野で重大な課題に直面している国際社会に貢献するべく力を注ぐ旨表明した。
(2)クチンスキー大統領のフランス訪問
8日,クチンスキー大統領がフランスを公式訪問し,ラテンアメリカの元首として初めてマクロン大統領と会談した。ペルー大統領府報道発表によれば首脳会談後のプレスに対する発言概要は以下のとおり。
ア クチンスキー大統領
非常に建設的な会談であったと評価する。マクロン大統領とともに,気候変動に関するパリ協定の遵守及びラテンアメリカにおける民主主義を守る必要性につき確認した。
パリ協定の枠組における気候変動との闘い及びラテンアメリカの民主主義と発展という,我々の優先事項であり相互に合意しているテーマにつき非常に良い話し合いができた。ラテンアメリカの民主主義と発展について,我々はベネズエラを含む様々な国の情勢につき話し合った。
会談では,将来におけるペルーのOECD加盟等ペルーにとっての優先テーマにつきマクロン大統領に説明する機会があった。我々は妥当な期間内にOECDに加盟することを希望しており,今回の仏訪問の目的の一つは,OECD加盟に向けて取り組むことである。
マクロン大統領は,我々の招待を受け入れ,本年9月にリマで開催される第130回国際オリンピック委員会開催の機会にペルーを公式訪問する。
イ マクロン大統領
クチンスキー大統領を迎えることができ満足している。会談では両国が有する様々な関心事項が議題に上った。ペルーは重要なパートナーである。両国は人工衛星,技術協力等の分野に共に取り組んでおり,今後も共同で取り組んでいく。我々は今後運輸,飲料水等のテーマを進展させていく。
クチンスキー大統領から,ペルーは気候変動に関するパリ協定を遵守する旨表明があった。ペルーのパリ協定への積極的な関与に感謝する。我々はパリ協定の実施を約束しており,一致して協定が定める最低限の目標を達成できるよう取り組む意思を有している。
会談でクチンスキー大統領が話題にしたラテンアメリカに係るテーマを注視している。仏はペルーとともに,ベネズエラが現在の状況を乗り越えられるようにとの善意で行われる全ての取り組みをフォローし寄り添っていく。
本年9月にペルーを訪問する。
(3)クチンスキー大統領のスペイン訪問
12~13日,クチンスキー大統領がスペインを公式訪問した。12日にラホイ首相と会談し,「エル・パイス」紙主催「未来のペルー」フォーラムに出席した。また13日にはフェリペ6世国王と会談し,スペイン経団連(CEOE)主催「ペルー・スペイン・ビジネス会合」に出席した。当地報道によれば概要は以下のとおり。
ア ラホイ首相との会談
(ア)両首脳は,良好な二国間関係及び経済面でスペインが最大の対ペルー投資国であることを確認した。ペルーへの外国投資全体にスペインが占める割合は20%であり,約50億ドルに上る。特にエネルギー,炭化水素,金融,通信分野への進出が顕著である。また会談では,相互に裨益するために両国関係を継続的に深化させることが適切である旨指摘された。ペルーとスペインは双方の投資を促進するため租税協定の交渉を行っている。
(イ)ラホイ首相は改めて,ペルーのOECD加盟希望に対する確固たる支持を表明した。また国際関係につき両首脳は,ベネズエラの深刻な状況に対し憂慮を表明することで一致した。
(ウ)会談後クチンスキー大統領は,「ペルー及びスペインそれぞれの状況につき話し合った。スペインには,欧州におけるペルーの大使のような存在として,我々を支援して欲しい。現在スペイン企業と話し合っているが,これら企業は既にペルーに投資しており,今後更に投資を増やす見込みである。」と述べた。
イ 「エル・パイス」紙主催「未来のペルー」フォーラムでのクチンスキー大統領の発言
(ア)ペルーは二つのものを必要としている。第一に大きな経済成長である。ペルーは未だ所得面で中下位の国であり,成長がなければ資源が得られない。しかしながら同時に我々は社会の変化を必要としている。ペルーの一人当たり平均所得は8,000~1万ドル水準に位置するが,これは欧州平均の5分の1である。
(イ)確かに電気はほぼペルー全土に行き渡っているが,未だに人口の3分の1が飲用に適した浄水にアクセスできていない。政府は地方における浄水整備事業を優先的に行う。自分(クチンスキー大統領)の最大の関心事は公共事業を実施しペルーの最貧困層に資することである。
(ウ)また,政権の優先政策は汚職との闘いである。困難ではあるが重要な政策である。計25人の州知事のうち14人が汚職の疑いで告発され,5,6人が収監された。オデブレヒト(Odebrecht)社が関わる汚職事件によって,南部ガス・パイプライン計画等の大型事業が中断している。(企業コンソーシアム「クントゥル・ワシ」(Kuntur Wasi)との契約が解除された)チンチェロ国際空港(クスコ州)の建設は他の方式での投資を得て進められるであろう。
(エ)(フジモリ派とどのように共存していくかとの問いに対し)人民勢力党(FP)との共存は愛の歌というわけにはいかない(no es una cancion de amor)ことは分かっている。しかしながらFPと共存できている。昨年7月28日の大統領就任式の際,FPは自分(クチンスキー大統領)の就任に拍手をしなかった。FPとの関係はやや冷たいものとして始まったが,しかしその後,サバラ内閣への信任,国会から政府への立法権限の移譲法案が国会で可決された。ビスカラ前運輸通信大臣は,どちらかといえば何人かの国会議員の個人的な動機によって国会に召喚され(辞任に至っ)たが,FPがチンチェロ国際空港の建設に係る契約を無効にしたのではない。我々は国のビジョンの中にFPを組み込まなくてはならない。
ウ スペイン経団連(CEOE)主催「ペルー・スペイン・ビジネス会合」でのクチンスキー大統領の発言
(ア)大規模鉱山開発が拡大し,南部ガス・パイプライン計画,リマ・メトロ2号線及び水害被災地域の復興計画が実施されることで,ペルーは年間5%の成長を取り戻すであろう。国の見通しは明るい。
(イ)オデブレヒト社が関わる汚職スキャンダルは国にとって経済的コストとなった。しかしながら,リマ・メトロ2号線計画など,同汚職事件と必ずしも関わりのない大型事業については近く実施されるであろう。
(ウ)ペルーは過去2年間,成長にブレーキがかかっていたが,これは主として中国経済の先行き不透明感から生じた金属価格の下落によるもので,我々はこの状態から抜け出しつつある。
(エ)政府による「変化を伴う復興」計画は,今後の2年間で計65億ドルの投資を見込んでいる。これはGDPの約3%に当たる。また復興計画に付随して上下水道整備への投資プログラムも進行中であり,雇用の機会を生み生活の質を向上させるであろう。
(4)チリとの2+2会合開催
28日,リマにおいてペルー・チリ両国の外務大臣及び国防大臣による2+2会合が開催された。今次会合はペルー・チリ両首脳による共同宣言(2016年11月29日署名)における合意に基づくもので,国防分野での協力の強化を目的とするもの。会談後,両国外務・国防大臣は,国防分野での協力,国連憲章,米州機構(OAS)憲章及び米州民主主義憲章の重要性の再確認,リスク及び災害対応,平和維持活動及び人道的地雷除去分野での協力,学術交流,女性の軍事への参加,UNASUR防衛審議会(CDS),OAS米州防衛評議会(JID)及び米州国防大臣会議への積極的な参加,両国軍の科学技術協力,両国軍事企業の防衛産業見本市への参加促進及び両国独立200周年記念行事の共同開催の可能性等を内容とする共同宣言を発出した。