ペルーの政治情勢 9月

平成29年10月17日
ペルー政治情勢 2017年

【概要】

(内政)
 ●サバラ内閣が総辞職し,アラオス新内閣が発足した。

(外交)
 ●当地で第3回ペルー・ボリビア合同閣議が開催された。
 ●ペルー外務省が駐ペルー北朝鮮大使に対しペルソナノングラータを通告した
 ●ニューヨークで第2回「リマ・グループ」会合が行われた。
 ●クチンスキー大統領がバチカンを訪問した。
 ●メサ・クアドラ国連大使が第72回国連総会で一般討論演説を行った。
 ●クチンスキー大統領が,ベトナムAPECのための訪越前に中国を訪問する予定であると発言した。
 
【本文】

1 内政

(1)サバラ内閣の総辞職
 ア 13日,サバラ首相が記者会見で,国会に対し内閣信任決議請求を行うと発表した。サバラ首相は,同決議請求の理由として,8日に行われたマルテンス教育大臣の国会答弁後,人民勢力党(FP)ほか国会各会派が同大臣罷免の意向を示したことから,「昨年12月にサアベドラ前教育大臣が罷免された後、短い期間で新たにマルテンス教育大臣まで罷免に向かっている状況は受け入れられない。」として,国会本会議に内閣信任決議案を提出することで内閣として国会の信を問うと表明した。
 イ 14日,サバラ首相は閣僚と共に国会に赴いて本会議で演説を行い、正式に内閣信任決議案を提出したところ、同本会議にて本件審議が開始された。15日未明に採決に付された結果、反対多数で内閣信任決議が否決された(賛成22票、反対77票、棄権16票。FPからは、ケンジ・フジモリ議員が唯一賛成票を投じた。)。この結果、憲法規定に基づいて内閣は総辞職し、クチンスキー大統領は72時間以内に新たな組閣を行うこととなった。同日,クチンスキー大統領は国民向けメッセージで内閣信任決議の否決に不快感を示しつつ,予定されていた訪米をキャンセルして新規組閣の任に当たると述べた。

(2)アラオス新内閣の発足
 17日,クチンスキー大統領がアラオス新首相(兼第二副大統領兼与党議員)以下国務大臣の任命・宣誓式を行った。アラオス新内閣の閣僚リストは以下のとおり。なお前内閣から交代があったのは首相,経済財政,法務人権,教育,保健,住宅建設上下水道の6大臣で,ルナ外相を含む他の閣僚は留任。ケイコ・フジモリ人民勢力党(FP)党首,国会の主要各会派及び経済界が内閣を歓迎するコメントを出した。
 ア 首相
 メルセデス・アラオス:第二副大統領兼与党国会議員(2016年-),元通商観光大臣,元生産大臣,元経済財政大臣
 イ 外相(留任)
 リカルド・ルナ:元駐英大使,元駐米大使,元国連大使
 ウ 国防相(留任)
 ホルヘ・ニエト:前文化大臣,元ユネスコ職員
 エ 経済財政相 
 クラウディア・クーパー:前経済財政副大臣
 オ 内相(留任)
 カルロス・バソンブリオ:元内務副大臣,元内務省顧問
 カ 法務人権相
 エンリケ・メンドーサ:元最高裁判事,元司法長官
 キ 教育相
 イデル・ベクスレル:元教育副大臣
 ク 保健相
 フェルナンド・ダレッシオ:カトリカ大学ビジネススクール理事長
 ケ 農業灌漑相(留任)
 ホセ・エルナンデス:2016年選挙におけるクチンスキー陣営の農業政策担当
 コ 労働雇用促進相(留任)
 アルフォンソ・グラードス:元バックス社(大手飲料会社)人事部長,元Interbank(国内大手銀行)オペレーション副部長
 サ 生産相(留任)
 ペドロ・オラエチェア:与党国会議員(2016年-),元Vina Tacama社(ワイン及びピスコ酒造会社)役員,元全国工業協会(SNI)会長,
 シ 通商観光相(留任)
 エドゥアルド・フェレイロス:元通商観光相(2010-11年),元ペルー貿易協会(COMEX)会長
 ス エネルギー鉱山相(留任)
 カイェターナ・アルホビン:前開発社会包摂大臣,元通信副大臣,元投資促進庁(ProInversion)長官,元経済財政省官房長
 セ 運輸通信相(留任)
 ブルーノ・ジウフラ:前生産大臣,企業家,元ビジネス番組司会者
 ソ 住宅建設上下水道相
 カルロス・ブルース:与党国会議員(2016年-),元住宅建設上下水道大臣
 タ 女性社会的弱者相(留任)
 アナ・マリア・チョケワンカ:与党国会議員(2016年-),ペルー中小企業組合総裁
 チ 環境相(留任)
 エルサ・ガラルサ:元生産省漁業担当副大臣
 ツ 文化相(留任)
 サルバドール・デル・ソラール:俳優,映画監督,コラムニスト
 テ 開発社会包摂相(留任)
 フィオレラ・モリネリ:前建設・上下水道副大臣,元運輸副大臣

(3)クチンスキー大統領支持率(特記ない限り括弧内は前月数値)
 ア ダトゥム社:1~5日実施,全国(対象1204名),誤差±2.8%,信頼度95%
   支持:22%(34%) 不支持:75%(62%)
 イ イプソス社:14~15日実施,全国(対象1276名)誤差±2.7%,信頼度95%
  支持:22%(29%)  不支持:72%(64%)
 ウ GfK社:16~19日実施,全国(対象1228名)誤差±2.8%,信頼度95%
  支持:22%(19%)  不支持:75%(77%)
 
2 外交

(1)第3回ペルー・ボリビア合同閣議
 1日,リマにおいて第3回ペルー・ボリビア合同閣議が開催され,太洋間中央横断鉄道(CFBI)計画の推進等,二国間及び地域の統合に関するテーマを内容とする「リマ宣言」が採択された。また今回の合同閣議において、鉱業,食品衛生,都市・住居・建築関連技術,デサグアデロ(ペルー・プーノ州とボリビア・ラパス県の国境に跨がる市域)二国間合同サービスセンターの開設, 「チチカカ湖,デサグアデロ川,ポオポ湖,コイパサ塩湖合同管理機構(Autoridad Binacional Autonoma del Lago Titicaca, Rio Desaguadero, Lago Poopo y Salar de Coipasa)」(ALT)に係る7つの協定・文書に署名が行われた。第4回合同閣議は2018年,ボリビア・パンド県コピバ市で開催予定。

(2)駐ペルー北朝鮮大使に対するペルソナノングラータ通告
 11日,ペルー外務省は,キム(Kim Hak-Chol)駐ペルー北朝鮮大使に対しペルソナノングラータを通告した旨のプレスリリースを発出した。同プレスリリースでペルー外務省は,本年3月30日に口上書をもって在ペルー北朝鮮大使館の外交官数を6名から3名に削減したことに言及しつつ,「北朝鮮が繰り返し明確な形で国連安保理決議に違反し,国際的な義務の遵守,人権尊重,核開発計画の不可逆的且つ実証可能な形での終了に向けた国際社会からの継続的な呼びかけを無視してきたことから本件決定が下された。」と説明した。

(3)ベネズエラ情勢に関する第2回「リマ・グループ」会合
 20日,ニューヨークにおいて第2回「リマ・グループ」会合が開催され, アルゼンチン,ブラジル,カナダ,チリ,コロンビア,コスタリカ,グアテマラ,ホンジュラス,メキシコ,パナマ,パラグアイ,ペルーの12か国による共同宣言が発出された。同宣言は,8月8日に採択された「リマ宣言」のフォローアップとして,ベネズエラ制憲議会の行動を認めないことを繰り返し表明し,12か国の外相レベルでベネズエラ情勢のフォローを続けることを再確認したもの。

(4)クチンスキー大統領のバチカン訪問
 22日,バチカンを訪問中のクチンスキー大統領が法王フランシスコと会談し,2018年1月18~21日の日程で法王をペルー訪問に公式に招待した。会談後クチンスキー大統領は記者に対し,ペルーの現状及び政治状況,元大統領に対する捜査,貧困撲滅への取り組み,汚職問題が議題に上ったと述べた。またクチンスキー大統領は,2018年4月にリマで行われる米州サミットにおいて米州反汚職裁判所(Corte Interamericana contra la Corrupucion)の設置を提案する意向である旨法王に伝えたと述べた。

(5)メサ・クアドラ国連大使の第72回国連総会一般討論演説
 25日,メサ・クアドラ(Gustavo Meza-Cuadra)国連大使が第72回国連総会にて一般討論演説を行った。演説でメサ・クアドラ大使は,ペルーの2018-19年安保理非常任理事国入り,核兵器保有国に対する核兵器禁止条約加盟への呼びかけ,北朝鮮による核実験及び弾道ミサイル発射への非難,気候変動に関するパリ協定の遵守,国連持続可能な開発目標達成へ向けた貧困撲滅,上下水道整備等の取り組み,汚職との闘い,ペルーのOECD加盟希望,ベネズエラ情勢への憂慮等のテーマに言及した。

(6)クチンスキー大統領の訪中,訪越予定
 30日付当地「エル・ペルアノ」紙(国営)は,クチンスキー大統領が本年11月のベトナムAPECの機会にアジアを訪問し,中国で習近平国会主席と会談する予定であると報じた。クチンスキー大統領は,9月28日に在ペルー中国大使館で行われた中華人民共和国建国68周年行事に出席した際,本年のAPEC開催地であるベトナム・ダナン訪問に先立って訪中し,「立ち寄りでなく特別に」習主席と会談する機会を得たいと述べた。クチンスキー大統領と習主席は2016年9月に中国で会談している。