ペルーの政治情勢 5月

平成30年6月6日
【概要】
(内政)
●ビヤヌエバ内閣が国会で信任され内閣が正式に発足した。
●北部水害復興の分野で国会から行政府へ立法権限を移譲する時限立法が成立,公布された。
●選択消費税(ISC)の税率見直しが発表され,一部業界から反発の声が上がり,一部抗議活動に発展した。
(外交)
●「リマ・グループ」がベネズエラ大統領選挙の正統性を認めない旨宣言した。
●英国外相が当地を公式訪問した。
●中国国務院発展研究センター長が当地を訪問した。
 
【本文】
1 内政
(1)ビヤヌエバ内閣の国会信任
2日,ビヤヌエバ首相が閣僚とともに国会本会議に出席して所信表明演説を行い,審議を経て賛成多数により信任されビヤヌエバ内閣が正式に発足した。
演説の中でビヤヌエバ首相は,無駄な政府歳出のカットと租税負担率の向上を掲げ,同負担率をGDP比で現行の2.4%から2021年までに15.3%に上昇させること,経済成長率を2.5%から5%に,民間投資成長率を0.3%から8%に,貧困率を現在の21.7%から18%へと改善することを目標とした。また同年までに計1,800億ソーレス(約550億ドル)を全国での公共投資に振り向けること,民間投資成長率を8%に引き上げること,北部復興事業の工程を短縮しつつ計3年間で250億ソーレス(約77億ドル)を投入することを目標に掲げた。
更に社会分野では,2021年までに公立小中学校におけるインターネット普及率を現行の14%から35%に引き上げること,上下水道普及率を農村部で85%,都市部で100%とすべく40億ソーレス(約12.2億ドル)を投資すること,被災地を含む全国で24万4千戸の住居を新規に建設又は改修することを掲げた。
(2)国会から行政府への立法権限の一部移譲
ア 2日,政府は,税制,財政,価格調整,競争力維持,復興事業,インフラ及び行政サービス格差の解消,汚職対策,弱者保護,行政の現代化の分野で,国会から行政府へ立法権限を移譲する法案を提出した。同法案が可決成立した場合,行政府は以上の分野において,60日間に限り法律としての効力を有する立法令(decreto legislativo)を制定することができる。
イ 24日,復興・インフラ及び行政サービス格差の解消分野での立法権限移譲法(法律第30776号)が公布された。同法は北部水害復興事業の緊急性に鑑み,他の分野から切り離す形で優先的に審議され可決成立したもの。同法は60日間の時限立法。
(3)税制改革の発表
9日,政府は官報臨時版により,選択消費税(ISC)の税率見直しを発表した。本件ISCの税率見直しの範囲は新品及び中古の自動車,砂糖入り飲料,タバコ,アルコール飲料,燃料に及ぶ。経済財政省は,税収増,国民の健康増進及び環境汚染改善を目的としたものであると説明したが,自動車販売や飲料業等のセクターからは反発の声が上がった。また,ディーゼル等汚染度の高い燃料に対しより高額の税が課せられたことから,南部を中心に運送業者が反発し,一部では抗議活動に発展した。
(4)ビスカラ大統領支持率(括弧内は特記ない限り前月のもの)
ア ダトゥム社:5~9日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:54%(55%) 不支持:19%(19%)
イ イプソス社:9~11日実施,全国(対象1279名),誤差±2.7%,信頼度95%
支持:52%(57%) 不支持:24%(13%)
ウ GfK社:19~22日実施,全国(対象1226名)誤差±2.7%,信頼度95%
支持:47%(52%) 不支持:34%(23%)
 
2 外交
(1)ベネズエラ情勢に対するペルー政府及び「リマ・グループ」の動き
ア 14日,「リマ・グループ」及びスペインと米国が共同宣言を発出し,20日のベネズエラ大統領選挙につき,正統性及び信頼性を欠く非民主的な選挙であるとしてこれを中止するよう求めた。
イ 18日,「リマ・グループ」は,ベネズエラ大統領が同国には移民危機は存在しないと宣言したことに反応し,2017~18年の間に,アルゼンチンへ8万2千人,ブラジルへ5万人,コロンビアへ80万人,コスタリカへ4千人,チリへ16万人,グアテマラへ1万5,650人,メキシコへ6万5,784人,パナマへ6万5,415人,パラグアイへ2,893人,ペルーへ29万8,559人のベネズエラ人が移民したことを挙げ,このような状況に対応するための人道支援アクセスメカニズムの構築を呼びかけた。
ウ 21日,「リマ・グループ」は共同声明を発出し,20日のベネズエラ大統領選挙につき,その正統性を認めない旨宣言した。
エ 21日,ポポリシオ外相はメディアのインタビューを受け,ベネズエラ大統領選挙の正統性を認めない旨再度表明しつつ,「リマ・グループ」の移民当局間会合の主催,疫病対策等保健分野,人道支援,金融情報調査において各国と協力していくと発言した。また同日,国会外交委員会においてペルーに在留するベネズエラ人に関する政府の対策につき説明した。
(2)英国外相の公式訪問
19日,ボリス・ジョンソン英国外相がペルーを公式訪問した。英国外相のペルー訪問は50年ぶり。ジョンソン外相はビスカラ大統領及びポポリシオ外相とともにイキトス(ロレト州)を訪問し,同地で実務会談を行った。同会談では,ペルーのOECD加盟,通商・観光・投資促進,汚職との闘い,経済協力,教育,野生生物の違法取引対策,持続可能な開発,2019年パンアメリカン競技大会,インフラ整備,学術交流,租税協定交渉,国連安保理等が議題に上った。
(3)中国国務院発展研究センター長の来訪
22~23日, Wei Li 中国国務院発展研究センター(DRC)長が当国を訪問し,デ・セラ外務副大臣との間で「一帯一路」構想等につき意見交換を行った。ペルー外務省の発表によれば,今次Wei Liセンター長の訪問は,中国の対ペルー協力・投資プロジェクトの形成のため,ペルー政府の優先分野を特定することを目的としたもの。