ペルーの経済情勢(2018年第2四半期)

平成30年6月22日
1 総論
 最新のペルーの月例主要経済指標は,経済成長率7.81%(4月:前年同月比),リマ首都圏のインフレ率0.93%(5月までの一年間),対米ドル為替相場3.274ソル(5月平均値),リマ首都圏の完全失業率7.0%(3月),財政収支847百万ソルの黒字(5月),貿易収支398百万米ドルの黒字(4月)となった。
 
2 各論
(1)主要経済指標
 ペルー中央準備銀行及び国家統計情報庁によれば,ペルーの主要経済指標は次のとおり。
ア 経済成長率
 最新の経済成長率(GDP成長率)について,4月は主に漁業及び製造分野の成長率の顕著な伸びが見られ,全体としてGDP成長率は7.81%(前年同月比)となった(5月分は未公表)。



 

イ インフレ率
 5月のリマ首都圏のインフレ率(消費者物価指数(前月比))は,0.02%となり,最近12か月(昨年6月~5月)の上昇率は,0.93%となった。




ウ 為替相場
 5月の対米ドル為替相場の平均は3.274ソルであった。
 


 

エ 失業率
 3月のリマ首都圏の完全失業率は7.0%であった。
 



オ 財政収支
 5月の中央政府の財政収支は,歳入が対前年同月比で33.4%増となった。歳出は,対前年同月比で7.4%減となった。全体では,プライマリーバランスは,1,441百万ソルの黒字となった。債務の利払いを含めると,847百万ソルの黒字となった。




カ 貿易収支
 4月の輸出額は,伝統産品(鉱物資源,魚粉,コーヒー等)が対前年同月比21.4%増,非伝統産品(アスパラガスなどの近代的農業産品,繊維製品,工業製品等)が27.2%増となり,全体では3,853百万米ドル(対前年同月比23.0%増)となった。主要輸出品目は銅,金,鉱油,鉛であった。
 輸入額は,対前年同月比で消費財が15.4%増,中間財は18.7%増,資本財が14.7%増となり,全体で3,455百万米ドル(対前年同月比16.0%増)となった。この結果,貿易収支は,398百万米ドルの黒字となった。主要輸入品目は原油,ディーゼル,自動車(消費財では,自動車,テレビ,バイク)であった。




キ 外貨準備高
 5月末の外貨準備高は,60,065百万米ドルとなった。


 

ク 対外累積債務
 2018年3月末の対外債務累積総額は,76,531百万米ドルとなった。



 
(注)上記表中の数値は今後修正される可能性あり。

(2)最近の主な出来事
・ペルー政府20億ソル節減に関する緊急政令を発表(5月4日)
 ペルー政府は各省庁宛てに約20億ソルの節減を命じる緊急政令を発表した。ペルー政府は,本措置の背景としては,2018年から2021年の多年度マクロ経済枠組み(MMM)からは予測できなかった昨年(2017年)税収の低迷,また,昨年の汚職事案が招いた結果による重要な公共事業の遅延としている。
 
・経済財政省,選択消費税(ISCImpuesto Selectivo al Consumo)の税率見直し発表(5月9日・以下自動車関連の見直し概要)
 ペルー経済財政省は,燃料消費の増加及び二酸化炭素排出量の増加傾向である一方,燃料への課税による税収が減少していることを踏まえ,最も純度が高く環境にも優しいガソリンに高い税率が課されていた状況を見直し,最も有害なディーゼル燃料に対する課税が高くなるよう調整したと発表した。
 
・投資促進庁,サラベリー多目的港湾ターミナルコンセッション契約を発表(5月31日)
 投資促進庁は,Tramarsa社及びNaviera Tramarsa社によるコンソーシアムとの間で,ラ・リベルター州サラベリー多目的港湾ターミナルのコンセッション契約を締結したと発表。同ターミナルの近代化事業は229百万米ドルの投資を要するものであり,ペルー北部の貿易発展及び雇用創出,また,同地域の経済発展の推進が期待される。
 
・ビスカラ大統領,トロモチョ鉱山事業の拡張を発表(6月1日)
 ペルー大統領府は,フニン州トロモチョ鉱山の拡張へ向けて1,355百万米ドルの投資が行われる旨を発表した。これにより2021年までに3500名の雇用創出ほか,同投資により教育,保健,下水道等の改善の期待もできる旨述べた。なお,トロモチョはChinalco Peruが操業している鉱山。
 
・投資促進庁,ミチキヤイ鉱山事業の譲渡契約締結(6月12日)
 エネルギー鉱山省において,投資促進庁とSouthern Peru Copper社との間でカハマルカ州ミチキヤイ鉱山事業の譲渡契約が行われた。同事業開発は,25億米ドルの投資を要し,銅,金,銀,モリブデン等合計10億トン以上が埋蔵されていると予想される。同企業は,2025年から同鉱山の操業が開始される見込みと発表した。
 
 
・運輸通信省,ペルー,ボリビア,ブラジル,パラグアイ政府間で南米大陸中央横断鉄道プロジェクト推進に向けた規則の合意を発表(6月15日)
 運輸通信省において,同省,ボリビア公共事業省,ブラジル交通省,パラグアイ公共事業・通信省が集まり,南米大陸で最も大きなインフラプロジェクト「南米大陸中央横断鉄道建設プロジェクト」を推進するための行動計画に合意。同事業は,3800kmの路線長をほこり,南米からアジア市場への通商達成が期待される新たな地域内統合インフラ事業として期待される。
 
(了)