ペルーの政治情勢 6月

平成30年8月21日
【概要】
(内政)
●経済財政大臣が交代した。
●国会においてケンジ・フジモリ議員他が議員資格一時停止措置を受けた。
●国会において税制等の一部分野に関する国会から行政府への立法権限移譲法案が可決成立した。
●2017年国勢調査の結果が一部公表された。
(外交)
●ペルー外務省が米朝首脳会談の実施につきこれを歓迎する旨の声明を発出した。
 
【本文】
1 内政
(1)経済財政大臣の交代
ア トゥエスタ経済財政大臣の辞任
4日,トゥエスタ経済財政大臣が辞任した。5月には同大臣のもと選択消費税(ISC)の税率見直しが発表され,一部業界から反発の声が上がっていた。同日,ビスカラ大統領は国民向けメッセージで,順調な経済回復,鉱山開発の拡張,インフラ整備計画の進展を挙げつつ,今後の成長戦略として増税ではなく投資及び徴税率の向上に重点を置くために内閣改造を行ったと説明した。本件について,複数の与党議員が閣内の政策調整不足を憂慮する旨発言した。
イ オリバ新経済財政大臣の就任
7日,ビスカラ大統領は,トゥエスタ大臣の後任として,オリバ(Carlos Augusto OLIVA Neyra)元経済財政省財政副大臣(2011~15年)を任命し,宣誓式を実施した。オリバ新経済財政大臣は見直し後のISCの税率を維持するとしつつ,一般売上税(IGV)の増税は行わない,所得税(IR)の課税ベース拡大は行わない旨表明した。
(2)ケンジ・フジモリ議員他に対する議員資格一時停止措置
6日,国会本会議において,ケンジ・フジモリ議員を含む3名の国会議員に対する弾劾請求が審議され,賛成多数でこれら3名の議員に対する議員資格一時停止措置が決定した。ケンジ議員ら3名はいずれも野党人民勢力党(フジモリ派)を離脱したいわゆる「ケンジ派」議員で,同3名に対しては,クチンスキー大統領弾劾回避のため刑法に規定される買収(cohecho activo)及び地位の不正な利用(trafico de influencias)を犯したとして国会で追及されていた。今次措置の結果,「ケンジ派」議員3名は不起訴特権を解除され,今後刑事告発される可能性がある。また,3名の資格停止中は補欠が繰り上がりで議員代行を務める。これにより,人民勢力党は3議席を回復し62議席となった。
(3)政府に対する立法権限の移譲法案の可決
19日,国会本会議において,税制等の一部分野に関する国会から行政府への立法権限(facultades legislativas)移譲法案が可決成立した。本件立法権限の移譲により,行政府は税制のほか,財政,価格調整,競争力維持,復興事業,インフラ及び行政サービス格差の解消,汚職対策,弱者保護,行政の近代化の分野において60日間の期限付で法律としての効力を有する立法令(decreto legislativo)を制定することができる。なお,セルバ地域(東部熱帯雨林地帯)における優遇税制の見直しについては,当初の政府案から削除された。
(4)2017年国勢調査の結果一部公表
25日,国家統計院(INEI)が,2017年10月に実施した国勢調査について,暫定値としつつ結果を一部公表した。今次発表によれば,ペルーの総人口は3,123万7,385人で,ラテンアメリカでは伯,墨,コロンビア,アルゼンチン,ベネズエラに次いで6番目の人口規模。地域別では,コスタ(太平洋沿岸地域)が1,703万7,297人と最も多く,全体の58.0%を占め,次いでシエラ(高地山岳地域)826万8,183人(28.1%), セルバ(東部熱帯雨林地域)407万6,404人(13.9%)であった。また都市別ではリマ市が約857万人と最も多く,次いでアレキパ市(約108万人),カヤオ憲法特別市(約99万人)であった。
(5)ビスカラ大統領支持率(括弧内は特記ない限り前月のもの)
ア ダトゥム社:1~5日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:45%(54%) 不支持:44%(19%)
イ イプソス社:6~8日実施,全国(対象1290名),誤差±2.7%,信頼度95%
支持:37%(52%) 不支持:48%(24%)
ウ GfK社:23~26日実施,全国(対象1186名)誤差±2.9%,信頼度95%
支持:29%(47%) 不支持:56%(34%)
 
2 外交
12日,ペルー外務省は同日に行われた米朝首脳会談に関し,これを朝鮮半島における非核化の達成に向けた交渉プロセスの重要なサインであるとして歓迎し,今後の両国対話プロセス確立のための具体的行動に結実することを希望する旨の声明を発出した。