ペルーの政治情勢 8月
【概要】
(内政)
●政府が国会に対し政治・司法改革のための憲法改正法案を提出した。
●2018~19年会期国会委員長人事が決定した。
(外交)
●「リマ・グループ」13か国がマドゥーロ・ベネズエラ大統領に対する攻撃に関し共同声明を発出した。
●ポポリシオ外相がボリビアを公式訪問し,ワナクニ・ボリビア外相と会談した。
●ペルーに入国したベネズエラ人数が月末時点で41万人を超えたと発表された。
●ポポリシオ外相が訪中し王毅外相との間での第十回政策協議等を実施した。
【本文】
1 内政
(1)行政府による政治・司法改革案
ア 2日,政府は国会に対し,全国司法審議会(CNM)※委員の資格及び地位を定めた憲法第155及び156条の改正法案を提出した。本件憲法改正法案は,本年7月に発覚した司法府発の大規模な汚職疑惑を受けて,ビスカラ大統領が同28日の教書演説で司法改革案として打ち出したもの。現行体制では,CNMは7名の委員で構成され,最高裁,検察庁,国立及び私立大学の長,法曹協会等からそれぞれの代表が秘密投票により選出されるが,政府は業績に基づく公募制へと選出方式を変更することを提案している。
※全国司法審議会(Consejo Nacional de la Magistratura)は,ペルーの全ての判事及び検事の選抜・任命・罷免権限を有する独立の司法機関。
イ 9日,政府は国会に対し,政治制度改革のための憲法改正法案3本を提出した。政府は同3法案により,(1)国会議員の再選禁止,(2)二院制への復帰,(3)政治資金規制の3つの政治改革・憲法改正を行いたい考え。ビスカラ大統領は,7月28日の教書演説において本件を提案した際,憲法改正に係る国民投票に言及したが,国会に対し法案の通過後,本件憲法改正を国民投票にかけ国民の審判を仰ぐよう強く求めた。サラベリー国会議長は,これらの法案を優先的に審議する旨発言した。
(2)2018~19年会期国会委員長人事の決定
13~16日,24の国会常任委員会で,2018~19年会期の委員長ポストが決定した。全24委員長の内訳は,人民勢力(FP)会派13,変革のためのペルー国民(PPK)会派3,拡大戦線(FA)会派2,ペルーの進歩のための同盟(APP)会派2,新しいペルー(NP)会派2,人民行動(AP)会派1,アプラ(APRA)会派1。なお,外交委員長には,FP会派のルイス・ガラレタ議員(前国会議長)が就任した。
(3)ビスカラ大統領支持率(括弧内は特記ない限り前月のもの)
ア ダトゥム社:3~7日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:49%(39%) 不支持:42%(52%)
イ イプソス社:15~16日実施,全国(対象1266名),誤差±2.7%,信頼度95%
支持:46%(35%) 不支持:42%(48%)
ウ GfK社:18~22日実施,全国(対象1210名)誤差±2.7%,信頼度95%
支持:43%(27%) 不支持:46%(58%)
2 外交
(1)ベネズエラ情勢に対するペルー政府の反応
11日,ペルー外務省は4日に発生したマドゥーロ・ベネズエラ大統領に対するドローンを用いた攻撃に関する「リマ・グループ」13か国の共同声明を発出した。同声明において「リマ・グループ」諸国は,本件に関する透明性のある事実調査を行うようベネズエラ政府に求めるとともに,野党勢力を追及する目的での治安機構・司法制度の恣意的な利用に対する憂慮の意を示した。また,全ての政治勢力が参加する民主的な選挙を招集するよう緊急に呼びかけた。
(2)ポポリシオ外相のボリビア訪問
17日,ポポリシオ外相がボリビアを公式訪問し,ワナクニ・ボリビア外相と会談した。会談では,大洋間中央横断鉄道(CFBI)計画,イロ港の利用可能性,チチカカ港の環境浄化,下水処理,エネルギー統合,犯罪対策,道路インフラ整備,二国間共同行政サービス等が議題に上った。
(3)ベネズエラ人避難民問題
ペルー移民当局が28日付で発表したところによれば,これまでにペルーに入国したベネズエラ人数は414,011人にのぼり,ペルーはコロンビアに次ぐベネズエラ人移民受け入れ国となった。ペルーに入国するベネズエラ人数は,2017年末に約10万人であったのが,本年に入り顕著に増加した。かかる急激なベネズエラ人の流入を受け,これまで人道的措置として身分証のみでの入国を認めていたペルー政府は入国要件を変更,25日をもってパスポート所持者にのみ入国を認める措置をとった。また27日,ベネズエラ人が主として入国するトゥンベス州について,保健衛生上のリスクから緊急令が発出され,今後各省が緊急の措置を採る旨定められた。
(4)ポポリシオ外相の訪中
27~28日,ポポリシオ外相が中国を訪問し,王岐山副主席表敬,寧吉喆国家発展改革委員会副主任との第三回ペルー・中国経済協力戦略対話,王毅外務大臣との第十回政策協議等の会合を実施した。ポポリシオ外相は共同記者会見において,両国が近いうちに「一帯一路」に関する覚書への署名ができるよう交渉中であると述べた。また,中国側からリマ・メトロ3,4号線建設計画に対する興味が示されたと述べた。その他,二国間の貿易やクリーンエネルギー分野での協力等に言及があった。