ペルーの政治情勢 12月
平成30年9月27日
ペルー政治情勢 2017年
【概要】
(内政)
●オデブレヒト社による贈賄事件に関連してペルー国内企業3社の幹部が勾留された。
●ペルー検察庁が人民勢力党(FP)事務所の捜索を行った。
●クチンスキー大統領に対する汚職疑惑が浮上し国会に同大統領弾劾決議案が提出されたが否決された。
●フジモリ元大統領に対し恩赦が与えられた。
(外交)
●ペルー外務省が在ペルー北朝鮮大使館員2名を国外退去処分とした。
●ペルー外務省がエルナンデス・ホンジュラス大統領の再選に対する祝意のプレスリリースを発出した。
【本文】
1 内政
(1)オデブレヒト(Odebrecht)社による汚職問題等
ア ペルー国内企業3社幹部の勾留
4日未明,ペルー司法府は,公共事業受注のためペルー政府関係者に贈賄を行っていたとされるブラジルの建設会社オデブレヒト(Odebrecht)社と事業提携関係にあった3つのペルー国内建設会社の幹部に対する18か月勾留を命じた。これら幹部は12月現在,リマ市内の刑務所内に勾留中。
イ 検察庁による人民勢力党(FP)事務所の捜索
7日,オデブレヒト社による贈賄事件に関し,ケイコ・フジモリFP党首に対する捜査を行っているペルー検察庁がFPの事務所の捜索を行った。報道によれば,検察庁はFPがオデブレヒト社からの資金提供につき隠匿するため二重帳簿を作成していなかったかどうか等を調べた。本件捜索につきケイコ党首は,FPがサンチェス検事総長に対する罷免請求を行ったことに対する政治的復讐であるとして激しく反発した。
ウ クチンスキー大統領の汚職疑惑
13日,クチンスキー大統領がトレド政権期,経済財政大臣としてオデブレヒト社との間でインフラプロジェクトの署名を行った時期に,同社からクチンスキー大統領個人が設立した企業にコンサルティング料が支払われていたことが国会「ラバ・ジャト」調査委員会及び報道機関により明らかにされた。これに対して主として野党勢力から,クチンスキー大統領の辞任を求める声が公然と上がった。14日,クチンスキー大統領が国民向けメッセージを発出し,オデブレヒト社と自身の関係を否定しつつ大統領を辞任しない意向を示した。
(2)汚職問題を巡るクチンスキー大統領に対する政治的追及
ア 15日,野党4会派及び無所属議員の計27人により,クチンスキー大統領弾劾決議請求が国会本会議に提出され,圧倒的賛成により本件請求が受け入れられた。本件請求は,大統領の弾劾要件を定めた憲法第113条の第2項「恒久的な道徳的能力の欠如」(permanente incapacidad moral)を適用しようとしたもの。
イ クチンスキー大統領は報道機関に対する合同インタビュー及び国民向けメッセージで,自身に対する疑惑を改めて否定するとともに,国会による追及は民主主義に対するクーデターであるとして,辞任しない意向を繰り返した。またリマ市内等では,大統領弾劾に反対する抗議活動が行われた。
ウ 21日,国会本会議でクチンスキー大統領に対する弾劾決議案が審議され,投票の結果,賛成79票,反対19票,棄権21票で(1名欠席),賛成票が弾劾成立に必要な3分の2(87票)以上に満たなかったことから,本件弾劾決議案は否決された。弾劾否決直後から,ケンジ・フジモリ議員ら計10名の人民勢力党議員が弾劾賛成との党方針に反して棄権に回ったことが大きな注目を集めた。なお同本会議には米州機構(OAS)からオブザーバーが2名傍聴した。
(3)フジモリ元大統領に対する恩赦決定と恩赦後の内政動向
ア 23日午後,フジモリ元大統領が体調不良を訴え,リマ市内の収監先から同市内の日秘移住百周年記念病院に緊急搬送され,集中治療室に入院した。
イ 24日午後7時頃,大統領府コミュニケにより,クチンスキー大統領がフジモリ元大統領他7名に対し恩赦を与えることを決定したことが明らかになった。同日付の官報で,フジモリ元大統領に対し健康上の理由による人道的恩赦及び大赦(訴訟係属中の刑事裁判手続の終了)を与える旨の大統領決議が公布された。ケイコ党首及びケンジ議員がそれぞれツイッターで喜びのメッセージを発出した。
ウ 25日,クチンスキー大統領が国民向けメッセージを発出し,フジモリ元大統領に対する恩赦に関し,人道上の理由によるものである旨改めて説明したうえで,国民和解を呼びかけた。
エ 26日朝,フジモリ元大統領がソーシャルメディアを通じ,クチンスキー大統領への感謝の意と同大統領による国民和解の呼びかけを支持する旨のメッセージを発出した。
オ 27日,バソンブリオ内務大臣の辞任(13日に辞任表明)を受け,ビセンテ・ロメロ・フェルナンデス(Vicente Romero Fernandez)新内務大臣の就任宣誓式が行われた。また同日,デル・ソラール文化大臣が辞任の意向を表明した。なおフジモリ元大統領への恩赦後,与党議員3名が離党した。
カ 28日,リマ市内及び地方都市でフジモリ元大統領に対する恩赦に抗議するデモ行進が行われた。また同日,ペルー検察庁がクチンスキー大統領及びケイコ党首に対し,汚職及び資金洗浄疑惑でそれぞれ事情聴取を実施した。
(4)クチンスキー大統領支持率(特記ない限り括弧内は前月数値)
ア ダトゥム社:1~5日実施,全国(対象1203名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:27%(26%) 不支持:67%(68%)
イ GfK社:9~12日実施,全国(対象1225名)誤差±2.8%,信頼度95%
支持:22%(26%) 不支持:72%(69%)
ウ イプソス社:13~15日実施,全国(対象1287名),誤差±2.7%,信頼度95%
支持:18%(27%) 不支持:75%(65%)
エ イプソス社:27~28日実施,全国(対象1294名),誤差±2.7%,信頼度95%
支持:25%(18%) 不支持:68%(75%)
2 外交
(1)22日,ペルー外務省が在ペルー北朝鮮大使館員2名に対し,外交官としての機能と相容れない活動をペルー国内で行っていたことを理由にペルソナノングラータを通告し国外退去処分とした。
(2)26日,ペルー外務省がエルナンデス・ホンジュラス大統領の再選に対する祝意のプレスリリースを発出した。
【概要】
(内政)
●オデブレヒト社による贈賄事件に関連してペルー国内企業3社の幹部が勾留された。
●ペルー検察庁が人民勢力党(FP)事務所の捜索を行った。
●クチンスキー大統領に対する汚職疑惑が浮上し国会に同大統領弾劾決議案が提出されたが否決された。
●フジモリ元大統領に対し恩赦が与えられた。
(外交)
●ペルー外務省が在ペルー北朝鮮大使館員2名を国外退去処分とした。
●ペルー外務省がエルナンデス・ホンジュラス大統領の再選に対する祝意のプレスリリースを発出した。
【本文】
1 内政
(1)オデブレヒト(Odebrecht)社による汚職問題等
ア ペルー国内企業3社幹部の勾留
4日未明,ペルー司法府は,公共事業受注のためペルー政府関係者に贈賄を行っていたとされるブラジルの建設会社オデブレヒト(Odebrecht)社と事業提携関係にあった3つのペルー国内建設会社の幹部に対する18か月勾留を命じた。これら幹部は12月現在,リマ市内の刑務所内に勾留中。
イ 検察庁による人民勢力党(FP)事務所の捜索
7日,オデブレヒト社による贈賄事件に関し,ケイコ・フジモリFP党首に対する捜査を行っているペルー検察庁がFPの事務所の捜索を行った。報道によれば,検察庁はFPがオデブレヒト社からの資金提供につき隠匿するため二重帳簿を作成していなかったかどうか等を調べた。本件捜索につきケイコ党首は,FPがサンチェス検事総長に対する罷免請求を行ったことに対する政治的復讐であるとして激しく反発した。
ウ クチンスキー大統領の汚職疑惑
13日,クチンスキー大統領がトレド政権期,経済財政大臣としてオデブレヒト社との間でインフラプロジェクトの署名を行った時期に,同社からクチンスキー大統領個人が設立した企業にコンサルティング料が支払われていたことが国会「ラバ・ジャト」調査委員会及び報道機関により明らかにされた。これに対して主として野党勢力から,クチンスキー大統領の辞任を求める声が公然と上がった。14日,クチンスキー大統領が国民向けメッセージを発出し,オデブレヒト社と自身の関係を否定しつつ大統領を辞任しない意向を示した。
(2)汚職問題を巡るクチンスキー大統領に対する政治的追及
ア 15日,野党4会派及び無所属議員の計27人により,クチンスキー大統領弾劾決議請求が国会本会議に提出され,圧倒的賛成により本件請求が受け入れられた。本件請求は,大統領の弾劾要件を定めた憲法第113条の第2項「恒久的な道徳的能力の欠如」(permanente incapacidad moral)を適用しようとしたもの。
イ クチンスキー大統領は報道機関に対する合同インタビュー及び国民向けメッセージで,自身に対する疑惑を改めて否定するとともに,国会による追及は民主主義に対するクーデターであるとして,辞任しない意向を繰り返した。またリマ市内等では,大統領弾劾に反対する抗議活動が行われた。
ウ 21日,国会本会議でクチンスキー大統領に対する弾劾決議案が審議され,投票の結果,賛成79票,反対19票,棄権21票で(1名欠席),賛成票が弾劾成立に必要な3分の2(87票)以上に満たなかったことから,本件弾劾決議案は否決された。弾劾否決直後から,ケンジ・フジモリ議員ら計10名の人民勢力党議員が弾劾賛成との党方針に反して棄権に回ったことが大きな注目を集めた。なお同本会議には米州機構(OAS)からオブザーバーが2名傍聴した。
(3)フジモリ元大統領に対する恩赦決定と恩赦後の内政動向
ア 23日午後,フジモリ元大統領が体調不良を訴え,リマ市内の収監先から同市内の日秘移住百周年記念病院に緊急搬送され,集中治療室に入院した。
イ 24日午後7時頃,大統領府コミュニケにより,クチンスキー大統領がフジモリ元大統領他7名に対し恩赦を与えることを決定したことが明らかになった。同日付の官報で,フジモリ元大統領に対し健康上の理由による人道的恩赦及び大赦(訴訟係属中の刑事裁判手続の終了)を与える旨の大統領決議が公布された。ケイコ党首及びケンジ議員がそれぞれツイッターで喜びのメッセージを発出した。
ウ 25日,クチンスキー大統領が国民向けメッセージを発出し,フジモリ元大統領に対する恩赦に関し,人道上の理由によるものである旨改めて説明したうえで,国民和解を呼びかけた。
エ 26日朝,フジモリ元大統領がソーシャルメディアを通じ,クチンスキー大統領への感謝の意と同大統領による国民和解の呼びかけを支持する旨のメッセージを発出した。
オ 27日,バソンブリオ内務大臣の辞任(13日に辞任表明)を受け,ビセンテ・ロメロ・フェルナンデス(Vicente Romero Fernandez)新内務大臣の就任宣誓式が行われた。また同日,デル・ソラール文化大臣が辞任の意向を表明した。なおフジモリ元大統領への恩赦後,与党議員3名が離党した。
カ 28日,リマ市内及び地方都市でフジモリ元大統領に対する恩赦に抗議するデモ行進が行われた。また同日,ペルー検察庁がクチンスキー大統領及びケイコ党首に対し,汚職及び資金洗浄疑惑でそれぞれ事情聴取を実施した。
(4)クチンスキー大統領支持率(特記ない限り括弧内は前月数値)
ア ダトゥム社:1~5日実施,全国(対象1203名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:27%(26%) 不支持:67%(68%)
イ GfK社:9~12日実施,全国(対象1225名)誤差±2.8%,信頼度95%
支持:22%(26%) 不支持:72%(69%)
ウ イプソス社:13~15日実施,全国(対象1287名),誤差±2.7%,信頼度95%
支持:18%(27%) 不支持:75%(65%)
エ イプソス社:27~28日実施,全国(対象1294名),誤差±2.7%,信頼度95%
支持:25%(18%) 不支持:68%(75%)
2 外交
(1)22日,ペルー外務省が在ペルー北朝鮮大使館員2名に対し,外交官としての機能と相容れない活動をペルー国内で行っていたことを理由にペルソナノングラータを通告し国外退去処分とした。
(2)26日,ペルー外務省がエルナンデス・ホンジュラス大統領の再選に対する祝意のプレスリリースを発出した。