9月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり
【概要】
(内政)
●政府の司法制度改革法案が国会本会議で全会一致で可決成立した。
●政治・司法制度改革推進のため,ビヤヌエバ内閣の信任決議請求が再度行われ,国会本会議で賛成多数により同内閣が信任された。
●政府の政治資金規制法案が国会本会議で賛成多数で可決成立した。
(外交)
●「リマ・グループ」がアルマグロOAS事務総長の発言を受け,ベネズエラへの軍事介入を拒否する旨の共同声明を発出した。
●ビスカラ大統領が訪米し国連総会等で演説を行ったほか,バイ会談,太平洋同盟首脳会合等に出席した。
【本文】
1 内政
(1)政治・司法改革の動向
ア 国会審議・採決期日の決定
17日,サラベリー国会議長の招集により国会会派調整委員会(junta de portavoces)が開催され,同委員会において10月4日までに政府が提出した全ての政治・司法改革案の審議・採決を終えることが決定された。
イ 司法制度改革法案の可決成立
18日,国会本会議において政府の司法改革法案の審議が行われ,投票の結果全会一致で同法案が可決成立した。本件司法改革は憲法第154~156条を改正するもの。また,全国司法審議会(CNM)は全国司法評議会(Junta Nacional de Justicia)に改組される。JNJ評議員(定員7名)は公募により選出され,同評議員の就任要件は,弁護士資格保持者でかつ司法分野で25年以上の職務経歴又は25年以上の大学での教歴又は15年以上の法務研究歴を有し,専門分野で高い評価を受けている者に限定される。
ウ 再度のビヤヌエバ内閣信任
19日,国会本会議においてビヤヌエバ内閣の信任決議請求(cuestion de confianza)の審議が行われ,投票の結果賛成多数により同内閣が信任された。国会によるビヤヌエバ内閣の信任は本年5月に続き2度目。本件信任決議請求は,16日にビスカラ大統領が国民向けメッセージで発表したもので,政府が推進する政治・司法改革に対する国会の支持を得ることを目的としたもの。ビスカラ大統領は累次にわたり,国会は改革案の審議を遅らせるべきでないと発言しており,また外国メディアの取材に対し,改革推進のためあらゆるリソースを投入するとして内閣信任決議請求を行う可能性を示唆していた。
エ 政治資金規制法案の可決成立
26日,国会本会議において政府の政治資金規制法案の審議が行われ,投票の結果賛成多数により同法案が可決成立した。本件改革により,憲法第35条(市民の政治的権利及び政党について)の条文に,政治団体への資金提供に関して,透明性確保と収支報告の原則を担保する法律の規制を受けつつ,官民両セクターからの財政支援を受けることが出来る旨の文言が付加される。また,政治団体が違法な資金提供を受けた場合は,行政,民事,刑事上の制裁措置を受ける旨規定される。
(2)ビスカラ大統領支持率(括弧内は特記ない限り前月のもの)
ア ダトゥム社:1~4日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:47%(49%) 不支持:47%(42%)
イ イプソス社:12~14日実施,全国(対象1284名),誤差±2.7%,信頼度95%
支持:45%(46%) 不支持:44%(42%)
ウ GfK社:15~19日実施,全国(対象1184名)誤差±2.7%,信頼度95%
支持:52%(43%) 不支持:36%(46%)
2 外交
(1)ベネズエラ情勢
15日,ペルー外務省は「リマ・グループ」10か国の共同声明を発出し,ベネズエラにおける民主主義の再建と危機の克服へのコミットメントを改めて再確認し,同国政府に対し人権侵害の停止,政治囚の解放,三権分立の尊重等を求めるとともに,同国への軍事介入,暴力の行使又は威嚇行為を意味するいかなる行動又は宣言を拒否する旨表明した。本件共同声明は,アルマグロOAS事務総長がベネズエラに対するいかなる選択肢も排除すべきではない旨発言したことを受けてのもの。
(2)ビスカラ大統領の第73回国連総会出席等
23~26日,ビスカラ大統領が訪米し,第73回国連総会での一般討論演説,総会のマージンでのバイ会談,太平洋同盟首脳会合等を行った。
ア 国連総会における一般討論演説
汚職との闘いについて,国内での取り組みを紹介しつつ,本年4月の米州首脳会合で採択された汚職対策と統治のための「リマ・コミットメント」の履行,国連腐敗防止条約締約国会議の開催等を訴えた。また国際場裏におけるペルーの立場について,多国間主義,自由貿易の原則を堅持し保護主義,差別やゼノフォビアに歯止めをかけるよう呼びかけた。更にベネズエラ情勢について,同国における民主主義の再建支援を継続する旨表明しつつ,国際社会が集団で同国避難民問題に対応するよう訴えた。加えて,気候変動及び女性に対する暴力への取組を継続する旨表明した。
イ その他の国連会合等での演説
国連平和維持活動ハイレベル会合(25日)において,同平和維持活動へのペルーのコミットメントを再度表明した。また安保理(26日)において,全ての国における核兵器廃絶に賛成の立場を表明しつつ,北朝鮮のような国における非核化プログラムを優先しなければならない旨述べ,「朝鮮半島における完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)を達成するために展開されているハイレベルの外交を歓迎する。」と発言した。加えて,シリア紛争や英ソールズベリなどにおける化学兵器の使用を非難した。
ウ バイ会談
ベニテス・パラグライ大統領,ディアスカネル・キューバ国家評議会議長,モレノ・エクアドル大統領,ドゥケ・コロンビア大統領とそれぞれ二国間会談を実施。またグテーレス国連事務総長と会談したほか,トゥスク欧州理事会議長と会談し,ベネズエラ情勢,ペルーのOECD加盟,EUからペルーへの経済協力,技術支援,麻薬取引との闘いへの財政支援,ペルー・EU自由貿易協定の効率化と強化に向けた共同での取組につき話し合った。
エ 太平洋同盟首脳会合
投資促進にとっての司法改革,インフラ整備及び技術利用,太平洋同盟共同で保護主義と立ち向かうことの重要性について演説した。