12月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり。
【概要】
(内政)
●チャバリ検事総長が辞任しアバロス最高検事が検事総長代理に就任した。
●ペサ保健大臣が辞任しトマス新保健大臣が就任した。
●サラベリー国会議長が人民勢力党会派を離脱したほか,国会内に新たに4つの会派が結成された。
(外交)
●「リマ・グループ」がベネズエラ大統領就任式を前にマドゥーロ体制の正統性不承認とベネズエラ国民議会への支持等を表明した。
●ペルー政府によりベネズエラ高官のペルー入国禁止,在ベネズエラ・ペルー臨時代理大使の召還等の措置がとられた。
●「リマ・グループ」及びペルー外務省がフアン・グアイド・ベネズエラ国民議会議長の一時拘束を非難する声明を発出した。
●「リマ・グループ」及びペルー外務省がグアイド・ベネズエラ暫定大統領を承認した。
●グアイド暫定大統領により新たに駐ペルー・ベネズエラ外交代表が任命され,ペルー政府が正式に接受した。
【本文】
1 内政
(1)チャバリ検事総長の辞任
8日,ペドロ・チャバリ検事総長が辞任した。チャバリ検事総長を巡っては,客年7月にNGO・メディアが犯罪捜査情報のリークをもとに司法府における大規模な汚職疑惑を報じて以来,汚職への関与が疑われていた。またチャバリ検事総長は客年12月31日,自身に公然と対立するペルー検察庁「ラバ・ジャト」特捜部の検事を特捜部から外す決定を行った(2日に撤回)が,これに対しかねてから同検事総長の辞任を求めてきたビスカラ大統領が外遊先から急きょ帰国し,検察庁組織改正緊急法案を国会に提出するなど両者の緊張が高まっていた。検察庁最高検事会議はチャバリ検事総長の辞任を承認するとともに,ソライダ・アバロス最高検事を検事総長代行に任命した。
(2)保健大臣の交代
ア 5日,シルビア・ペサ保健大臣が辞任した。報道によれば,体調不良等一身上の都合によるもの。ペサ大臣は前政権で公衆衛生担当副大臣を勤めた疫学の専門家で,大臣在任中に食品への糖分,塩分,脂肪分等の成分表記義務付を推進した。他方で,栄養不良による子供の貧血問題への対応について批判の声もあった。
イ 7日,スレマ・トマス新保健大臣が就任した。トマス新保健大臣は麻酔科を専門とする医師で,これまでにリマ市内の全国児童保健機構(INSN)ブレニャ区病院長及び同サン・ボルハ区病院長を勤めた。
(3)国会の動向
9日,サラベリー国会議長ほか複数の人民勢力党議員が同会派を離脱した。サラベリー議長は客年ケイコ・フジモリ人民勢力党党首が逮捕・勾留されたことを受けて同会派を一時休会していた。また1月末までに,国会内に新たに「カンビオ21」(C21),「リベラル会派」(BL),「共和国のための団結」(UR),「共和国行動」(AR)の4つの会派(grupo parlamentario)が結成された。客年,憲法裁判所が新たな国会会派の結成を禁止する国会細則に対し違憲の判断を下し,サラベリー国会議長が同判決により新会派結成を可能とする規則変更を行ったことを受けてのもの。
(4)ビスカラ大統領支持率(括弧内は特記ない限り前月のもの)
ア ダトゥム社:11~13日実施,全国(対象1203名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:66%(62%) 不支持:28%(30%)
イ イプソス社:16~18日実施,全国(対象1213名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:63%(66%) 不支持:26%(25%)
ウ IEP:19~23日実施,全国(対象1260名)誤差±2.8%,信頼度95%
支持:60%(61%) 不支持:29%(32%)
2 外交
(1)ベネズエラ情勢に関する「リマ・グループ」外相会合の開催
4日,リマにおいて「リマ・グループ」外相会合が行われ,ベネズエラ大統領就任式(10日)を前に,マドゥーロ大統領体制の正統性不承認,ベネズエラ国民議会への支持,「リマ・グループ」諸国へのベネズエラ高官の入国制限措置,ベネズエラ避難民支援の継続等を内容とする共同声明が発出された。
(2)ペルー政府による対ベネズエラ措置
7日,ペルー政府は,「リマ・グループ」共同声明に基づき,ベネズエラ政府高官及びその家族に対するペルー入国禁止措置をとった。また10日,ペルー外務省は,在ベネズエラ・ペルー臨時代理大使の召還,マドゥーロ体制のメンバーリストの経済財政当局・金融機関への共有等の措置をとったとする声明を発出した。なお同日,デル・カスティーヨ議員(野党アプラ党)の呼びかけに応じ,ペルー国内のベネズエラ支援グループや一部の在留ベネズエラ人が中心となって在ペルー・ベネズエラ大使館前で抗議活動が行われた。これに対し,アレアサ・ベネズエラ外務大臣は,抗議者が同大使館の鉄門を破ったとした上で,かかる暴力行為の責任はペルー政府にあるとの批判をツイッターで発信した。
(3)ベネズエラ国民議会議長の一時拘束に関する「リマ・グループ」の反応
13日,ベネズエラにおいてフアン・グアイド・ベネズエラ国民議会議長が同国諜報機関により一時拘束されたことを受け,「リマ・グループ」がこれを非難する旨の共同声明を発出した。またペルー外務省が同趣旨の非難声明を発出した。
(4)「リマ・グループ」によるグアイド暫定大統領承認
23日,フアン・グアイド・ベネズエラ国民議会議長による暫定大統領就任宣誓を受け,「リマ・グループ」がグアイド暫定大統領を承認し支持するとともに,同国における早期の大統領選挙実施による民主化移行プロセスを求める旨の共同声明を発出した。またペルー外務省がこれと同趣旨の声明を発出した。
(5)グアイド暫定大統領による駐ペルー・ベネズエラ外交代表任命
当地報道によれば,29日,グアイド暫定大統領はペルー在住のカルロス・スクル氏を新たに駐ペルー・ベネズエラ外交代表として任命した。これを受け31日,デ・セラ・ペルー外務副大臣は外務省でスクル氏を迎えると共に,ペルー政府として同氏を正式に接受した。当地紙によればスクル氏(32歳)はカラカス出身の政治学者で,1年半前にペルーに移住してきた人物。